25 / 242
第二十五話:エルフの里での生活7(ダークエルフの里)
しおりを挟む
セリアと一緒に、ガリムの陰謀を暴くために、片っ端から部屋の扉を開けていた。もちろん中に誰もいない事を確認した上でだ。
そして今、俺たちはとある部屋の前にいる。
恐らくガリムの部屋なのだろう。他の部屋とは違い、部屋にはカギが掛かっていた。
セリアに中から開けてもらう。
精霊は、物体をすり抜ける事が出来るので、非常に便利なのだ。
セリアと組めば、世紀の大泥棒にだってなれるかもしれない。
部屋の中に入り、真っ先に机の上に置いてある封筒が気になった。
中身を開けて読んでみると、そこには驚愕の内容が書かれていた。
要約するとこうだ。
お前に精霊族を従わせる力をやろう。その変わりに次期教皇選で必ず当選すること。
その力を使えば、容易いだろう。
精霊を密偵として使えば、ライバルや上層部の弱みなど握り放題だ。
また、精霊を前面に出せば、選ばれた存在として民衆から崇められるだろう。
お前が教皇となったあかつきには、我らの悲願がまた一歩前進する。
その際は追って連絡をする。
全ては我らの神、サージャ様の為に。
なんだかヤバい物を見つけてしまったようだ。
これを証拠に、出すところに出せばガリムを捕まえる事が出来るだろうか?
いや、そうとは限らない。
この書面だけではいくらでも便宜の余地がある。
何せ彼はまだ表立って行動を行っていないのだから。
取り敢えず、手紙は机の上に戻す。
それ以外には特に怪しいものは見られなかった。
俺たちは部屋を後にする。
これ以上屋敷を物色しても恐らく何も出てこないだろう。
違う観点から追い詰めていくしかない。
そっとエレナの所へと戻った。
ちょうどガリムとの話が終わるタイミングだったようだ。
俺は、エレナの肩の上に手を置く。
そして、表向きの要件を終えたエレナはガリム邸を後にする。
その際、ガリムが一言。
「王様には、是非よろしくお願い致しますと口添えをお願いしますね。私めが教皇になることが出来れば、この里の生活を必ずや一変してみせますと」
「お父様は、皆に対して公平中立な立場にあります」
エレナがキッパリとそしてハッキリと返していた。
屋敷へ戻る道中、俺は透明化を解いた。
「エレナのおかげで無事にセリアを助け出すことが出来たよ。ありがとう」
セリアも出てきて、お礼を言っている。
「いえいえ、お二人の力に慣れて私も嬉しいです」
ガリム邸で見聞きした事は、屋敷に帰ってからエレナに話すことにした。
外だと、誰が聞いているか分からないしね。
帰る前に、ユイたちのお土産を買っておくのを忘れないようにしよう。
ユイは基本なんでも食べるのだが、中でも一番の好物は肉なのだ。
ということもあり、フライドチキンのような食べ物をお土産として数本購入した。
こっちの呼び名では、ビアブルと言うらしい。
鳥モンスターの足の骨付き肉だった。
道中、エレナと味見したが、中々に美味だったけど、若干ピリ辛だった。
屋敷へと戻ってきた俺たちを出迎えたのは、以外にもメイドのルナだけだった。
他の皆はどうしたのだろうか?
どうやら、あまりにもユイたちが暇だ暇だ言うものだから、執事のザンバドさんと夕飯の買い出しに付き添っているらしい。
食堂で、ルナにお茶を出してもらい、エレナと一緒にガリム邸で見聞きした内容について確認していた。
「ユウ様の言うように、彼が精霊を使って何をしているのか?また、何をしようとしているのかを暴く必要が有りますね」
エレナは続ける。
「あと、最後のサージャ様と言うのは、有名な人物ですよ」
エレナが教えてくれた。
なんと、邪神の名前らしい。
おいおい、邪神とかやめて欲しい。
しかし疑問がある。
「彼が教皇になることが邪神に対して何か影響するのだろうか?」
エレナは、ガリムから今日聞いた内容を思い出していた。
そういえば彼が興味深い内容を話していたそうだ。
なんでも、彼が教皇となり、やり遂げたい政策の一つにダークエルフと友好関係を結ぶというのがあるそうだ。
「ダークエルフ?」
「ユウ様はご存知ないですかね?ダークエルフというのは、祖先は我々エルフと同じなのですが、遥か昔に、我々エルフ族を裏切って、魔族側に寝返った者たちです」
俺自身もダークエルフという言葉は聞いたことがあった。エルフと同種で、肌が黒いという簡易な情報だけだが。
「現在もエルフとダークエルフはほぼ絶縁関係にあります。ガリムさんの政策は、この絶縁関係にあるダークエルフを過去の所業は水に流して、元々同種同士友好関係を築こうといったものでした」
内容としては、俺も悪くないと思う。
しかし、この里に住む人々の反応は半々だそうだ。
ダークエルフに直接的に何かをされた。というのはないのだが、子供のころから、学校や親たちから、彼らは裏切者だったという教育を皆受けて育って来ていた為だ。
しかし、エルフ族は本来心優しき種族の為、昔の事は水に流そうと思っている人たちがいる事もまた事実だ。
なるほどね、安易な考えだけど、俺の考えをエレナに伝えた。
「仮に、あの手紙の送り主がダークエルフだったとして、エルフ族をも巻き込み、一緒に邪神を崇めようという事なのだろうか?そもそも邪神って何者なんだ?」
「私も詳しくは知らないのですが、邪神というのは、たった一人で数千年前に滅びたと言われる存在です。この世の全てを破壊し尽す寸前まで陥れた存在だと言われています」
「化け物か・・・魔王とは違うんだよな?」
「はい、魔王ではありません。魔王は寧ろその邪神を倒すために一緒に戦ったと言われています」
「セリアはどう思う?」
俺の問いかけにセリアが出てきた。
「ダークエルフは、エルフの悪しき心が生み出したと言われています。しかし、それも遥か昔の話。今の彼ら彼女らには、そういう思想は根付いていないと思われます。仮にユウさん、エレナさんの推測通りだったとしても、ダークエルフ全体ではなく、一部の邪神信者たちの行動だと思います」
3人の意見は出揃ったな。
「エレナ、ダークエルフの里はこの近くにあるのか?」
「馬車で2日と行ったところです。もしかして、行くのですか?」
「こうなったら、行ってみないと分からないしね」
エレナは少し考えていた。
ダークエルフの里とは、現在絶縁関係にあり、関係を持つことは法律で禁止されていたからだ。
だから、誰も里の現状がどうなっているかを知らないのだ。
もちろんセリアも知らなかった。
「教皇選挙まで、もう1週間を切っている。俺は真実が知りたいんだ」
真剣な俺の表情にエレナが承諾してくれた。
「分かりました。ユウ様の意思は固いようですね。こちらはこちらで調べておくことにします」
「ありがとうエレナ」
善は急げだ、早速明日の朝出発する事になった。
馬車の調達はエレナにお願いした。
巻き込みたくはなかったのだが、無断で屋敷を開ける訳にもいかない。
俺は、執事のザンバドさんやメイドのルナさんにもこの話をする。
ユイとクロは、もともと同行して貰うつもりだ。
戦力としては申し分ないからね。
最近俺が忙しくしているので、かまってやることが出来なかったのだが、ユイとクロは屋敷の裏手で毎日組手をやっているそうだ。
ザンバドさんの話だと、ユイはともかくクロの動きもユイに負けておらずなかなかのものだと言う。
もしかしたら、2人とも俺より強いんじゃね?なんて思ったりもしていた。
話をすると、ザンバドさんが私も着いていくと言い出したのだ。
「元々私は、王より勅命(ちょくめい)を受け、貴方に仕えるようにと言われています」
「だけど、ダークエルフとの接触は法律で禁じられているんじゃ・・」
「心配には及びません。私は王の命令通り、主人様のお供をしているだけに過ぎないのですから」
ザンバドさんがいれば、確かに何かと安心だ。戦力としても然(さ)ることながら、何よりダークエルフの里までの道のりを知っているそうだ。
ついでに言うと、馬車の操作までお任せ下さいという事だ。
有能すぎる・・。一家に1台は欲しいね。うん。
昔、里の任務でダークエルフの里近辺までの調査をしたことがあるそうだ。
この話を聞きながら、ユイとクロは、俺のお土産である、ビアブル(フライドチキンみたいなもの)を骨ごと美味しそうに食べている。
明日の朝、俺とユイ、クロ、ザンバドさんの4人でダークエルフの里に向かう事になった。
早速食料の買い出しを行う。
いつものように買ってはストレージに放り込んでいくだけの簡単な作業だ。
俺が食料調達から戻ってくると、馬車が屋敷の中庭に止めてあった。
仕事が早いな・・。
俺は、ある程度の食料を馬車に積み込んでおく。
夜が明けて、朝になった。
さぁ、出発だ。
時間が惜しいので、まだ早朝だったのだが、馬車は出発していた。
若干馬車のスピードが以前乗った馬車に比べて早い気がしていたのだが、進む速度が少しだけ速くなる、精霊の加護が掛かっている馬車だそうだ。
きっとザンバドさんの腕が良いのも速い理由の一つなのだろう。
道中は特にイベントも起こらず、時々モンスターが出てくる程度で、全てユイやクロが倒してしまった。
そして、エルフの里を出発して二日目の朝に、ダークエルフの里の近辺までやってきていた。
俺たちは旅の者で、ダークエルフの里を訪れたという設定だった。
途中立ち寄ったエルフの里で案内役を雇って、連れてきて貰ったことにする。
ダークエルフの里の前まで馬車が来たところで、門番と思われる若者が話しかけてくる。
俺の想像通り、エルフの肌を小麦色にしたような感じの外見だ。まだ若い青年のようだ。
間違いなく話に聞いていたダークエルフだろう。
「そこの馬車、止まれ!」
その声に反応してザンバドさんは、馬車を止める。
「貴様、エルフだな。ここがダークエルフの里と知っての来訪か!」
俺は慌てて馬車から降りる。
「私は、街から街を放浪している冒険者です。彼は、ここに来るための道案内役です。それとも、この里は同族以外は誰も通すなという決まり事でもあるのですか?」
門番の青年は少し考えていた。
「少し待て」と言い、建物の中に入ってしまった。
恐らく、誰かと相談しているのだろう。
暫くして、先ほどの青年と年配のダークエルフがやってきた。
そして、年配のダークエルフが口を開く。
「通行を許可しよう」
良かった、無事に通れそうだぞ。
「しかし、エルフ族はだめだ。それ以外の者のみ通行を許可する」
やはりそう来たか。予想はしていたけどね。
俺は、ザンバドさんと話す。
元々こうなる事は予想していた為、ザンバドさんは馬車と一緒にこの近くに停留しておくとの事だ。
ザンバドさん以外の俺たちは馬車から降りて、ダークエルフの里の中に入る。
入る際に、簡単な手荷物チェックを受けた。
こうしてようやく、里の中に入る事が出来た。
里の規模は、そこまで大きくない。エルフの里の1/4くらいだろうか?
他種族が珍しいのだろう。すれ違う者が皆、驚いた表情を見せていく。
観光をしたいのは山々なのだが、それはまた別の機会にするとしよう。
偉そうな事を言ってここまで来たが、アテがあるわけではなかった。そもそもダークエルフの里の住人がガリムと繋がっていると言う確証もないのだ。
しばらく歩いていると警備隊だろうか?いつの間にか俺たちを取り囲んでいた。
「旅の者。王が会いたいと申している。悪いが我々と同行して頂く」
半ば強制だったので、いい気分はしないが、俺にとってもこれは願っても無いチャンスだった為、素直に従う事にした。
警備隊に連れられ、俺たちは立派な屋敷の前に辿り着いていた。
エルフ里の王宮とは、比べ物にならないが、俺が住んでいる屋敷と同じくらいだろうか。
このダークエルフの里の王が待つと言う広間に案内された。
王と言われたので、てっきり、高齢の方だと思っていたのだが、今目の前にいるのは、どうみても20代の美しい女性だ。
そして今、俺たちはとある部屋の前にいる。
恐らくガリムの部屋なのだろう。他の部屋とは違い、部屋にはカギが掛かっていた。
セリアに中から開けてもらう。
精霊は、物体をすり抜ける事が出来るので、非常に便利なのだ。
セリアと組めば、世紀の大泥棒にだってなれるかもしれない。
部屋の中に入り、真っ先に机の上に置いてある封筒が気になった。
中身を開けて読んでみると、そこには驚愕の内容が書かれていた。
要約するとこうだ。
お前に精霊族を従わせる力をやろう。その変わりに次期教皇選で必ず当選すること。
その力を使えば、容易いだろう。
精霊を密偵として使えば、ライバルや上層部の弱みなど握り放題だ。
また、精霊を前面に出せば、選ばれた存在として民衆から崇められるだろう。
お前が教皇となったあかつきには、我らの悲願がまた一歩前進する。
その際は追って連絡をする。
全ては我らの神、サージャ様の為に。
なんだかヤバい物を見つけてしまったようだ。
これを証拠に、出すところに出せばガリムを捕まえる事が出来るだろうか?
いや、そうとは限らない。
この書面だけではいくらでも便宜の余地がある。
何せ彼はまだ表立って行動を行っていないのだから。
取り敢えず、手紙は机の上に戻す。
それ以外には特に怪しいものは見られなかった。
俺たちは部屋を後にする。
これ以上屋敷を物色しても恐らく何も出てこないだろう。
違う観点から追い詰めていくしかない。
そっとエレナの所へと戻った。
ちょうどガリムとの話が終わるタイミングだったようだ。
俺は、エレナの肩の上に手を置く。
そして、表向きの要件を終えたエレナはガリム邸を後にする。
その際、ガリムが一言。
「王様には、是非よろしくお願い致しますと口添えをお願いしますね。私めが教皇になることが出来れば、この里の生活を必ずや一変してみせますと」
「お父様は、皆に対して公平中立な立場にあります」
エレナがキッパリとそしてハッキリと返していた。
屋敷へ戻る道中、俺は透明化を解いた。
「エレナのおかげで無事にセリアを助け出すことが出来たよ。ありがとう」
セリアも出てきて、お礼を言っている。
「いえいえ、お二人の力に慣れて私も嬉しいです」
ガリム邸で見聞きした事は、屋敷に帰ってからエレナに話すことにした。
外だと、誰が聞いているか分からないしね。
帰る前に、ユイたちのお土産を買っておくのを忘れないようにしよう。
ユイは基本なんでも食べるのだが、中でも一番の好物は肉なのだ。
ということもあり、フライドチキンのような食べ物をお土産として数本購入した。
こっちの呼び名では、ビアブルと言うらしい。
鳥モンスターの足の骨付き肉だった。
道中、エレナと味見したが、中々に美味だったけど、若干ピリ辛だった。
屋敷へと戻ってきた俺たちを出迎えたのは、以外にもメイドのルナだけだった。
他の皆はどうしたのだろうか?
どうやら、あまりにもユイたちが暇だ暇だ言うものだから、執事のザンバドさんと夕飯の買い出しに付き添っているらしい。
食堂で、ルナにお茶を出してもらい、エレナと一緒にガリム邸で見聞きした内容について確認していた。
「ユウ様の言うように、彼が精霊を使って何をしているのか?また、何をしようとしているのかを暴く必要が有りますね」
エレナは続ける。
「あと、最後のサージャ様と言うのは、有名な人物ですよ」
エレナが教えてくれた。
なんと、邪神の名前らしい。
おいおい、邪神とかやめて欲しい。
しかし疑問がある。
「彼が教皇になることが邪神に対して何か影響するのだろうか?」
エレナは、ガリムから今日聞いた内容を思い出していた。
そういえば彼が興味深い内容を話していたそうだ。
なんでも、彼が教皇となり、やり遂げたい政策の一つにダークエルフと友好関係を結ぶというのがあるそうだ。
「ダークエルフ?」
「ユウ様はご存知ないですかね?ダークエルフというのは、祖先は我々エルフと同じなのですが、遥か昔に、我々エルフ族を裏切って、魔族側に寝返った者たちです」
俺自身もダークエルフという言葉は聞いたことがあった。エルフと同種で、肌が黒いという簡易な情報だけだが。
「現在もエルフとダークエルフはほぼ絶縁関係にあります。ガリムさんの政策は、この絶縁関係にあるダークエルフを過去の所業は水に流して、元々同種同士友好関係を築こうといったものでした」
内容としては、俺も悪くないと思う。
しかし、この里に住む人々の反応は半々だそうだ。
ダークエルフに直接的に何かをされた。というのはないのだが、子供のころから、学校や親たちから、彼らは裏切者だったという教育を皆受けて育って来ていた為だ。
しかし、エルフ族は本来心優しき種族の為、昔の事は水に流そうと思っている人たちがいる事もまた事実だ。
なるほどね、安易な考えだけど、俺の考えをエレナに伝えた。
「仮に、あの手紙の送り主がダークエルフだったとして、エルフ族をも巻き込み、一緒に邪神を崇めようという事なのだろうか?そもそも邪神って何者なんだ?」
「私も詳しくは知らないのですが、邪神というのは、たった一人で数千年前に滅びたと言われる存在です。この世の全てを破壊し尽す寸前まで陥れた存在だと言われています」
「化け物か・・・魔王とは違うんだよな?」
「はい、魔王ではありません。魔王は寧ろその邪神を倒すために一緒に戦ったと言われています」
「セリアはどう思う?」
俺の問いかけにセリアが出てきた。
「ダークエルフは、エルフの悪しき心が生み出したと言われています。しかし、それも遥か昔の話。今の彼ら彼女らには、そういう思想は根付いていないと思われます。仮にユウさん、エレナさんの推測通りだったとしても、ダークエルフ全体ではなく、一部の邪神信者たちの行動だと思います」
3人の意見は出揃ったな。
「エレナ、ダークエルフの里はこの近くにあるのか?」
「馬車で2日と行ったところです。もしかして、行くのですか?」
「こうなったら、行ってみないと分からないしね」
エレナは少し考えていた。
ダークエルフの里とは、現在絶縁関係にあり、関係を持つことは法律で禁止されていたからだ。
だから、誰も里の現状がどうなっているかを知らないのだ。
もちろんセリアも知らなかった。
「教皇選挙まで、もう1週間を切っている。俺は真実が知りたいんだ」
真剣な俺の表情にエレナが承諾してくれた。
「分かりました。ユウ様の意思は固いようですね。こちらはこちらで調べておくことにします」
「ありがとうエレナ」
善は急げだ、早速明日の朝出発する事になった。
馬車の調達はエレナにお願いした。
巻き込みたくはなかったのだが、無断で屋敷を開ける訳にもいかない。
俺は、執事のザンバドさんやメイドのルナさんにもこの話をする。
ユイとクロは、もともと同行して貰うつもりだ。
戦力としては申し分ないからね。
最近俺が忙しくしているので、かまってやることが出来なかったのだが、ユイとクロは屋敷の裏手で毎日組手をやっているそうだ。
ザンバドさんの話だと、ユイはともかくクロの動きもユイに負けておらずなかなかのものだと言う。
もしかしたら、2人とも俺より強いんじゃね?なんて思ったりもしていた。
話をすると、ザンバドさんが私も着いていくと言い出したのだ。
「元々私は、王より勅命(ちょくめい)を受け、貴方に仕えるようにと言われています」
「だけど、ダークエルフとの接触は法律で禁じられているんじゃ・・」
「心配には及びません。私は王の命令通り、主人様のお供をしているだけに過ぎないのですから」
ザンバドさんがいれば、確かに何かと安心だ。戦力としても然(さ)ることながら、何よりダークエルフの里までの道のりを知っているそうだ。
ついでに言うと、馬車の操作までお任せ下さいという事だ。
有能すぎる・・。一家に1台は欲しいね。うん。
昔、里の任務でダークエルフの里近辺までの調査をしたことがあるそうだ。
この話を聞きながら、ユイとクロは、俺のお土産である、ビアブル(フライドチキンみたいなもの)を骨ごと美味しそうに食べている。
明日の朝、俺とユイ、クロ、ザンバドさんの4人でダークエルフの里に向かう事になった。
早速食料の買い出しを行う。
いつものように買ってはストレージに放り込んでいくだけの簡単な作業だ。
俺が食料調達から戻ってくると、馬車が屋敷の中庭に止めてあった。
仕事が早いな・・。
俺は、ある程度の食料を馬車に積み込んでおく。
夜が明けて、朝になった。
さぁ、出発だ。
時間が惜しいので、まだ早朝だったのだが、馬車は出発していた。
若干馬車のスピードが以前乗った馬車に比べて早い気がしていたのだが、進む速度が少しだけ速くなる、精霊の加護が掛かっている馬車だそうだ。
きっとザンバドさんの腕が良いのも速い理由の一つなのだろう。
道中は特にイベントも起こらず、時々モンスターが出てくる程度で、全てユイやクロが倒してしまった。
そして、エルフの里を出発して二日目の朝に、ダークエルフの里の近辺までやってきていた。
俺たちは旅の者で、ダークエルフの里を訪れたという設定だった。
途中立ち寄ったエルフの里で案内役を雇って、連れてきて貰ったことにする。
ダークエルフの里の前まで馬車が来たところで、門番と思われる若者が話しかけてくる。
俺の想像通り、エルフの肌を小麦色にしたような感じの外見だ。まだ若い青年のようだ。
間違いなく話に聞いていたダークエルフだろう。
「そこの馬車、止まれ!」
その声に反応してザンバドさんは、馬車を止める。
「貴様、エルフだな。ここがダークエルフの里と知っての来訪か!」
俺は慌てて馬車から降りる。
「私は、街から街を放浪している冒険者です。彼は、ここに来るための道案内役です。それとも、この里は同族以外は誰も通すなという決まり事でもあるのですか?」
門番の青年は少し考えていた。
「少し待て」と言い、建物の中に入ってしまった。
恐らく、誰かと相談しているのだろう。
暫くして、先ほどの青年と年配のダークエルフがやってきた。
そして、年配のダークエルフが口を開く。
「通行を許可しよう」
良かった、無事に通れそうだぞ。
「しかし、エルフ族はだめだ。それ以外の者のみ通行を許可する」
やはりそう来たか。予想はしていたけどね。
俺は、ザンバドさんと話す。
元々こうなる事は予想していた為、ザンバドさんは馬車と一緒にこの近くに停留しておくとの事だ。
ザンバドさん以外の俺たちは馬車から降りて、ダークエルフの里の中に入る。
入る際に、簡単な手荷物チェックを受けた。
こうしてようやく、里の中に入る事が出来た。
里の規模は、そこまで大きくない。エルフの里の1/4くらいだろうか?
他種族が珍しいのだろう。すれ違う者が皆、驚いた表情を見せていく。
観光をしたいのは山々なのだが、それはまた別の機会にするとしよう。
偉そうな事を言ってここまで来たが、アテがあるわけではなかった。そもそもダークエルフの里の住人がガリムと繋がっていると言う確証もないのだ。
しばらく歩いていると警備隊だろうか?いつの間にか俺たちを取り囲んでいた。
「旅の者。王が会いたいと申している。悪いが我々と同行して頂く」
半ば強制だったので、いい気分はしないが、俺にとってもこれは願っても無いチャンスだった為、素直に従う事にした。
警備隊に連れられ、俺たちは立派な屋敷の前に辿り着いていた。
エルフ里の王宮とは、比べ物にならないが、俺が住んでいる屋敷と同じくらいだろうか。
このダークエルフの里の王が待つと言う広間に案内された。
王と言われたので、てっきり、高齢の方だと思っていたのだが、今目の前にいるのは、どうみても20代の美しい女性だ。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
【完結】もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です
堀 和三盆
恋愛
「それじゃあ、ちょっと番に会いに行ってくるから。ええと帰りは……7日後、かな…」
申し訳なさそうに眉を下げながら。
でも、どこかいそいそと浮足立った様子でそう言ってくる夫に対し、
「行ってらっしゃい、気を付けて。番さんによろしくね!」
別にどうってことがないような顔をして。そんな夫を元気に送り出すアナリーズ。
獣人であるアナリーズの夫――ジョイが魂の伴侶とも言える番に出会ってしまった以上、この先もアナリーズと夫婦関係を続けるためには、彼がある程度の時間を番の女性と共に過ごす必要があるのだ。
『別に性的な接触は必要ないし、獣人としての本能を抑えるために、番と二人で一定時間楽しく過ごすだけ』
『だから浮気とは違うし、この先も夫婦としてやっていくためにはどうしても必要なこと』
――そんな説明を受けてからもうずいぶんと経つ。
だから夫のジョイは一カ月に一度、仕事ついでに番の女性と会うために出かけるのだ……妻であるアナリーズをこの家に残して。
夫であるジョイを愛しているから。
必ず自分の元へと帰ってきて欲しいから。
アナリーズはそれを受け入れて、今日も番の元へと向かう夫を送り出す。
顔には飛び切りの笑顔を張り付けて。
夫の背中を見送る度に、自分の内側がズタズタに引き裂かれていく痛みには気付かぬふりをして――――――。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
何故、わたくしだけが貴方の事を特別視していると思われるのですか?
ラララキヲ
ファンタジー
王家主催の夜会で婚約者以外の令嬢をエスコートした侯爵令息は、突然自分の婚約者である伯爵令嬢に婚約破棄を宣言した。
それを受けて婚約者の伯爵令嬢は自分の婚約者に聞き返す。
「返事……ですか?わたくしは何を言えばいいのでしょうか?」
侯爵令息の胸に抱かれる子爵令嬢も一緒になって婚約破棄を告げられた令嬢を責め立てる。しかし伯爵令嬢は首を傾げて問返す。
「何故わたくしが嫉妬すると思われるのですか?」
※この世界の貴族は『完全なピラミッド型』だと思って下さい……
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
小国の聖女エレナ
雪本 風香
ファンタジー
小国ルトニア。
自然豊かなこの国は、10年ほど前から隣国のアタナス帝国と戦争に明け暮れていた。
聖女として高い能力を持っているエレナは、辺境の町マルーンで兵士たちを癒してきた。
だがエレナには王命とは別に【彼】から命を受けていたのだ。
ただエレナは【彼】の命を遂行すればよかったのに。
敵国アタナスの王子、レオナルドを救ったことからエレナの運命の歯車は少しずつ狂っていくのだ。
聖女エレナとレオナルド、そして【彼】を軸に進むファンタジー作品です。
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる