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第二百三十二話:魔界侵攻1
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ラドルーチ視点
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ここが件の魔界と呼ばれる場所か」
何とも殺風景な場所だな。
大地は歪に湾曲しており、まるで徒歩での侵攻を阻んでいるようだ。
魔族共は全員その背に翼を生やし、飛行する。
あながち理に適っているのだろう。
空は夕日のように赤く染まり、まさにこれから起ころうとしている惨状に憂いて血を流している。
「さて、お前達に命令する」
転移門を超えた先で、総勢200名の自軍を前にしてラドルーチは続ける。
「歯向かう者は皆殺しだ。降伏する者も皆殺しだ。殺して死術で縛る程、従順な者はない。それは、まさにお前達が実感しているであろう」
集団の一人の男が指を天に向ける。
「主人様。早速最初の生贄がやって来やしたぜ」
遥か上空からこちらの動向を探る者の姿を視認した。
手始めに我自らが手を下してやろう。
侵略者達に気付かれたと察知し、偵察していた魔族は背を向け彼等から距離を取った。
ふん、背を向けておめおめと逃げ出すか。
いいだろう。
ラドルーチは手にしていた大鎌を逃げ出す相手目掛けて狙いを定め投擲する。
相手との距離は、500メートルくらいは離れていただろう。
加えて、背を向けどんどんとその距離を伸ばしていく。
自動追尾でもあれば別だが、離れていく相手の行動パターンを読まない限り、ヒットさせる事など出来はしない・・・にも関わらず、大鎌はまるで対象に吸い寄せられるように背中へと追い迫る。
逃げ切れないと判断したのか、盾を前に構え、更には風の障壁を張り、防ごうと抵抗する。
しかし、その抵抗を物ともせず、回転しながら飛来する大鎌がいとも容易く盾諸共魔族を真っ二つにする。
投擲の正確さ、貫通力は凄まじいものだろう。
一部の魔族の連中は、今あっさりと仕留めた人物が、そこいらの雑魚ではない事を知っていた。
クオーツと呼ばれる魔界でも相当に実力が高い組織に所属した人物だったのだ。
「あいつがあんなに簡単にな…主人様の力は、圧倒的だ」
「ああ…」
我はすぐに死体を回収し、死霊の術を使い自軍の駒とする。
ふむ。こいつただの雑魚かと思ったが、中々に強者のようだな。
転移で逃げなかったのを察するに、絶対に防げると油断していたか。
我の必中一死の付与された大鎌からは何人たりとも逃れる事は出来ん。
その後も魔族を発見するや否や全勢力を持ってこれを破壊する。
それにしても殺風景で広大な大地だ。
既に魔界に進軍してから数時間が経過したと言うのに
何も見えて来ないとはな。
代わり映えしない景色というのは何ともつまらんものだ。
先行で向かわせている魔族の拙攻部隊とも連絡が途絶えてから1時間程度が経過した。
このままのんびりと進軍するつもりは更々ない。
先頭を歩いていたラドルーチが止まる。
それに合わせて後続の部隊が進軍の足を止めた。
「魔族共は転移が使えたな」
「はい、全員使えます」
「それは、他の者も一緒に転移する事は可能か?」
「対象者に触れていれば可能です。ただ、同時に転移した人数に比例して、連続使用までのリキャストタイムが伸びて行きます」
ならば、歩いて進軍など馬鹿馬鹿しいな。
「今から部隊をいくつかに分ける」
魔族を数人入れたチームを4チームとこの場での最高戦力となる5人と我を入れた5チームを編成する。
戦というのは、大将を落とせばそれで終わる。
故に魔王城にいる魔王を倒し、魔王城を占拠する事で魔界制覇の礎としようではないか。
まずは魔王城の四方にそれぞれのチームが散会し、四方から崩していくとするか。
我ら本陣は、真正面から攻め落とす。
それぞれのチームのリーダーに通信可能な道具を持たせ、我と連絡が取り合えるようにしておく。
「さて、行動開始といこう」
200人弱居たその殆どが転移でその場から消えた。
残っているのは、ラドルーチを含めた6人だった。
「さて、数は減ったぞ?襲うなら今ではないのか?」
姿を消し、気配を殺した程度で我の目を欺けると思ったのか。
甚だ哀れだな。
先程から監視されているのは分かっていた。
殺気を発している事から、只の偵察ではなく隙あらば攻撃をしかけてやろうという魂胆であろう。
「見事だな」
そう発した後に姿を現したのは、総勢12名。
発せられる気配を感じるに、中々の強者であろう。
「お前が侵略者の7大魔王だな」
「我を知っているとは、やはり何者かに情報が漏れていたのか」
「早速で悪いが、お前にはこの魔界に対する不法侵入、同胞の殺害をした罪を償ってもらう。しかし、そんな事は微々たるものだ。貴様の最も許しがたい罪は、我らの魔王様の身を危険に晒した事だ!」
酷い言われようだが、そんな事はどうでもいい。
あいつは最後になんと言った?
魔王の身を危険に晒した?
何の事だ?
この世界の魔王など会った事もない。
いや、もしかしたら我以外の奴らが既に魔王と事を成したのかもしれんな。
「で、その魔王とやらはここにいるのか?」
一番の疑問を投げかけた。
我がこの1年で調べた限り、この世界で最も強固な存在となるのが、恐らく魔王だろう。
我が魔界を攻め落とすと決めたのも単に魔族共の個体値が地界の者共に比べて高いだけではない。その魔族を統べる魔王と言う存在。
其奴を何としても我の駒とするべくここまで乗り込んで来たのだ。
それを他の7大魔王に先を越されたなど、腹立たしいにも程がある。
「貴様に答える必要はない。どうせお前はここで我らの裁きを受けるのだ。知る必要はない」
「ふむ。まぁ、どのみち欲しい情報は殺してでも奪い取る。精々足掻いてみるがいい」
我自らが手を下すまでもないだろう。
ここは、我が死の呪印によって元より数段力を上げた駒共が魔族の奴らに何処まで通用するか試してみるのも一興であろう。
ラドルーチは一歩下がる。
それをチャンスと捉えたのか、魔族側の数人がラドルーチに向かって迫り来る。
「お前達で片付けて見せろ。生死は問わぬ」
現在この場にいるラドルーチの駒となっている者は、選りすぐるられたメンバーだった。
まさに魔界征服の為の最高戦力と言ってもおかしくはない。
結果は火を見るよりも明らかだった。
倍以上の人数が居たにも関わらず、ものの数秒で壊滅していた。
「何人かは転移で逃げたか。まぁ、想定内だ」
まだ息のある者が数人いる。
両足を捥がれて動けない者。
致命傷を受け、夥しい量の血を流している者。
全員に共通して言えるのは、背中の翼はバッサリと斬り落とされていた。
駒に聞いた情報だと、魔族は翼を斬られると転移が出来ないと言う。
こんな雑魚共、逃げられてまた歯向かって来ようが、何の痛手もないのだが、こんな奴等でも殺して駒と出来れば、貴重な戦力になる。
むざむざ逃す真似はしない。
「た、頼む…命だけは…」
「お、俺を殺したら、奴等が黙っていないぞ!」
「くそっ、殺るならとっとと殺りやがれ」
笑止。仮にも命を狩りに来た連中が何をほざいてやがる。
助けを乞う者、殺せと鼓舞する者、皆公平に殺してやった。
その後も何匹か我らの侵攻を止めようと飛び込んで来るが、全くもって相手にすらならん。
こんなものなのか?
魔族とは、この世界で最強の種じゃなかったのか?
正直期待外れだな。
魔族がこの程度ならば、他の種族も底が知れている。
まだ遥か前方だが、視界の端に巨大な城が見える。
あれが魔王代理とやらのいる城だろう。 代理を名乗るくらいだ、魔王の次に強者なのだろう。
新たに我の駒になった魔族の話では、魔王は我等の誰かとやり合い、現在行方不明となっているらしい。
誤算だ。
魔王となら唯一まともな戦いが出来ると期待していたのたがな。
勿論この世界の征服は最終目標だが、簡単に達成してしまってはつまらん。
「主人様、申し訳ありません」
愕然と項垂れている最中、魔王城南東担当の駒から連絡が入る。
「敵の猛攻に合い、部隊は壊滅。第4班での生き残りは私一人で――――」
やられてしまうとは何とも情けない。
いいぞ、もっと抵抗して見せろ!
その上で皆殺しにしてくれる。
我の行く手を阻む障害などありはしない。
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「ここが件の魔界と呼ばれる場所か」
何とも殺風景な場所だな。
大地は歪に湾曲しており、まるで徒歩での侵攻を阻んでいるようだ。
魔族共は全員その背に翼を生やし、飛行する。
あながち理に適っているのだろう。
空は夕日のように赤く染まり、まさにこれから起ころうとしている惨状に憂いて血を流している。
「さて、お前達に命令する」
転移門を超えた先で、総勢200名の自軍を前にしてラドルーチは続ける。
「歯向かう者は皆殺しだ。降伏する者も皆殺しだ。殺して死術で縛る程、従順な者はない。それは、まさにお前達が実感しているであろう」
集団の一人の男が指を天に向ける。
「主人様。早速最初の生贄がやって来やしたぜ」
遥か上空からこちらの動向を探る者の姿を視認した。
手始めに我自らが手を下してやろう。
侵略者達に気付かれたと察知し、偵察していた魔族は背を向け彼等から距離を取った。
ふん、背を向けておめおめと逃げ出すか。
いいだろう。
ラドルーチは手にしていた大鎌を逃げ出す相手目掛けて狙いを定め投擲する。
相手との距離は、500メートルくらいは離れていただろう。
加えて、背を向けどんどんとその距離を伸ばしていく。
自動追尾でもあれば別だが、離れていく相手の行動パターンを読まない限り、ヒットさせる事など出来はしない・・・にも関わらず、大鎌はまるで対象に吸い寄せられるように背中へと追い迫る。
逃げ切れないと判断したのか、盾を前に構え、更には風の障壁を張り、防ごうと抵抗する。
しかし、その抵抗を物ともせず、回転しながら飛来する大鎌がいとも容易く盾諸共魔族を真っ二つにする。
投擲の正確さ、貫通力は凄まじいものだろう。
一部の魔族の連中は、今あっさりと仕留めた人物が、そこいらの雑魚ではない事を知っていた。
クオーツと呼ばれる魔界でも相当に実力が高い組織に所属した人物だったのだ。
「あいつがあんなに簡単にな…主人様の力は、圧倒的だ」
「ああ…」
我はすぐに死体を回収し、死霊の術を使い自軍の駒とする。
ふむ。こいつただの雑魚かと思ったが、中々に強者のようだな。
転移で逃げなかったのを察するに、絶対に防げると油断していたか。
我の必中一死の付与された大鎌からは何人たりとも逃れる事は出来ん。
その後も魔族を発見するや否や全勢力を持ってこれを破壊する。
それにしても殺風景で広大な大地だ。
既に魔界に進軍してから数時間が経過したと言うのに
何も見えて来ないとはな。
代わり映えしない景色というのは何ともつまらんものだ。
先行で向かわせている魔族の拙攻部隊とも連絡が途絶えてから1時間程度が経過した。
このままのんびりと進軍するつもりは更々ない。
先頭を歩いていたラドルーチが止まる。
それに合わせて後続の部隊が進軍の足を止めた。
「魔族共は転移が使えたな」
「はい、全員使えます」
「それは、他の者も一緒に転移する事は可能か?」
「対象者に触れていれば可能です。ただ、同時に転移した人数に比例して、連続使用までのリキャストタイムが伸びて行きます」
ならば、歩いて進軍など馬鹿馬鹿しいな。
「今から部隊をいくつかに分ける」
魔族を数人入れたチームを4チームとこの場での最高戦力となる5人と我を入れた5チームを編成する。
戦というのは、大将を落とせばそれで終わる。
故に魔王城にいる魔王を倒し、魔王城を占拠する事で魔界制覇の礎としようではないか。
まずは魔王城の四方にそれぞれのチームが散会し、四方から崩していくとするか。
我ら本陣は、真正面から攻め落とす。
それぞれのチームのリーダーに通信可能な道具を持たせ、我と連絡が取り合えるようにしておく。
「さて、行動開始といこう」
200人弱居たその殆どが転移でその場から消えた。
残っているのは、ラドルーチを含めた6人だった。
「さて、数は減ったぞ?襲うなら今ではないのか?」
姿を消し、気配を殺した程度で我の目を欺けると思ったのか。
甚だ哀れだな。
先程から監視されているのは分かっていた。
殺気を発している事から、只の偵察ではなく隙あらば攻撃をしかけてやろうという魂胆であろう。
「見事だな」
そう発した後に姿を現したのは、総勢12名。
発せられる気配を感じるに、中々の強者であろう。
「お前が侵略者の7大魔王だな」
「我を知っているとは、やはり何者かに情報が漏れていたのか」
「早速で悪いが、お前にはこの魔界に対する不法侵入、同胞の殺害をした罪を償ってもらう。しかし、そんな事は微々たるものだ。貴様の最も許しがたい罪は、我らの魔王様の身を危険に晒した事だ!」
酷い言われようだが、そんな事はどうでもいい。
あいつは最後になんと言った?
魔王の身を危険に晒した?
何の事だ?
この世界の魔王など会った事もない。
いや、もしかしたら我以外の奴らが既に魔王と事を成したのかもしれんな。
「で、その魔王とやらはここにいるのか?」
一番の疑問を投げかけた。
我がこの1年で調べた限り、この世界で最も強固な存在となるのが、恐らく魔王だろう。
我が魔界を攻め落とすと決めたのも単に魔族共の個体値が地界の者共に比べて高いだけではない。その魔族を統べる魔王と言う存在。
其奴を何としても我の駒とするべくここまで乗り込んで来たのだ。
それを他の7大魔王に先を越されたなど、腹立たしいにも程がある。
「貴様に答える必要はない。どうせお前はここで我らの裁きを受けるのだ。知る必要はない」
「ふむ。まぁ、どのみち欲しい情報は殺してでも奪い取る。精々足掻いてみるがいい」
我自らが手を下すまでもないだろう。
ここは、我が死の呪印によって元より数段力を上げた駒共が魔族の奴らに何処まで通用するか試してみるのも一興であろう。
ラドルーチは一歩下がる。
それをチャンスと捉えたのか、魔族側の数人がラドルーチに向かって迫り来る。
「お前達で片付けて見せろ。生死は問わぬ」
現在この場にいるラドルーチの駒となっている者は、選りすぐるられたメンバーだった。
まさに魔界征服の為の最高戦力と言ってもおかしくはない。
結果は火を見るよりも明らかだった。
倍以上の人数が居たにも関わらず、ものの数秒で壊滅していた。
「何人かは転移で逃げたか。まぁ、想定内だ」
まだ息のある者が数人いる。
両足を捥がれて動けない者。
致命傷を受け、夥しい量の血を流している者。
全員に共通して言えるのは、背中の翼はバッサリと斬り落とされていた。
駒に聞いた情報だと、魔族は翼を斬られると転移が出来ないと言う。
こんな雑魚共、逃げられてまた歯向かって来ようが、何の痛手もないのだが、こんな奴等でも殺して駒と出来れば、貴重な戦力になる。
むざむざ逃す真似はしない。
「た、頼む…命だけは…」
「お、俺を殺したら、奴等が黙っていないぞ!」
「くそっ、殺るならとっとと殺りやがれ」
笑止。仮にも命を狩りに来た連中が何をほざいてやがる。
助けを乞う者、殺せと鼓舞する者、皆公平に殺してやった。
その後も何匹か我らの侵攻を止めようと飛び込んで来るが、全くもって相手にすらならん。
こんなものなのか?
魔族とは、この世界で最強の種じゃなかったのか?
正直期待外れだな。
魔族がこの程度ならば、他の種族も底が知れている。
まだ遥か前方だが、視界の端に巨大な城が見える。
あれが魔王代理とやらのいる城だろう。 代理を名乗るくらいだ、魔王の次に強者なのだろう。
新たに我の駒になった魔族の話では、魔王は我等の誰かとやり合い、現在行方不明となっているらしい。
誤算だ。
魔王となら唯一まともな戦いが出来ると期待していたのたがな。
勿論この世界の征服は最終目標だが、簡単に達成してしまってはつまらん。
「主人様、申し訳ありません」
愕然と項垂れている最中、魔王城南東担当の駒から連絡が入る。
「敵の猛攻に合い、部隊は壊滅。第4班での生き残りは私一人で――――」
やられてしまうとは何とも情けない。
いいぞ、もっと抵抗して見せろ!
その上で皆殺しにしてくれる。
我の行く手を阻む障害などありはしない。
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