189 / 242
第百九十話:合宿1
しおりを挟む
「ユウ殿、我がバーン帝国で勇者をやってはくれぬだろうか?」
予想通り勧誘だった。
国王の隣にいるムー王女は、何故だかニヤニヤしていた。
きっと俺が困っている姿が面白いのだろう。
「勿論、今回は特例として世界を旅する事は続けて貰っても構わない条件を出そうじゃないか」
考えるまでもなく、俺の答えは決まっている。
勇者になるつもりなど毛頭ないのだ。
しかし、ただ断ってもまた勧誘されるのは目に見えていた。
なら多少なりともこちらが譲歩するしかないだろう。
「すみません、勇者になるつもりはありません。しかし・・・」
俺は転移を発動させ、一瞬の内に部屋の後方まで移動してみせた。
「な、なんだ!一瞬で場所が変わったぞ」
人族の間では、あまり転移というのは、周知されていない。
魔族は当たり前のように全員が使ってるんだけど。
やはりこの場でもどよめきが挙がっていた。
「勇者への要請はお受けできませんが、俺はこの転移の力で、この国が危機に陥ろうとしている時は、最大限の協力を惜しまない事を約束します」
俺なりの最大限の譲歩だった。
国王様もどうやら勇者推しを諦めてくれたようで、以降勇者要請してくる事はなかった。
その後は、国定勲章授与に関しての打ち合わせだった。
この場には既にギルド長たちや、貴族の代表者たちの姿はなく、王族関係者のみとなっていた。
そういえば、いつの間にかムー王女の姿も見えなかった。
勲章授与は、双方色々と準備があるようで、1週間後となった。
式典に相応しい衣装で来るように言われたが、生憎とそんな衣装は持ち合わせていない。
後でムー王女にでも相談してみるかな。
拘束から解放された頃にはいつの間にか日が暮れ始めていた。
意外と時間が掛かっちゃったな・・みんなお腹を空かせてるだろう。帰り際に何か食料を調達しておくかな。
宿に戻ると、明かりが消えていた。
てっきり誰もいないのかと思いきや、机の上に肘をついて項垂れているルーがいた。
「ひもじいよぉ・・・死んじゃうよぉ・・・」
たった1日抜いたくらいでえらい大袈裟だな。
取り敢えずルーは無視だ。
アリスは、機能停止中だった。
正座で壁にもたれかかっていた。
他の三人はっと・・・あ、居た。
仲良く揃ってベッドで寝ているユイとミラとアニの姿が見えた。
朝出かける前は気不味い雰囲気だったけど、少しは打ち解けてくれてたら嬉しいんだけどね。
「ルー、帰ったぞ」
ルーがゆっくりとこちら側へ振り向き、ジト目を向けて来る。
「お腹が空きすぎてユウさんが、お肉に見えます・・」
「お前が言うと冗談に聞こえないからな。まぁ、取り敢えずあれだ。帰るのが遅くなって悪かったよ」
帰り際に買い漁った食料を机に並べる。
「お詫びにこれ全部食べていいから」
ルーは、獲物を見つけた狩人のようにその視線は、ガッチリと食料をロックしていた。
「言いましたね?本当に全部食べますよ?いいんですね?」
返事を待たずして食料にがっつくルー。
普段なら「もう少しレディらしくしろ」と文句の一つでも言ってやるのだが、今回は俺に非があるので、許す事にする。今回だけだからな?
「そう言えば他のみんなはいつから寝てるんだ?」
ルーは、食べる事が忙しいのか、俺の質問に答える暇がないようだ。
まぁ、起きたら分かるか。
今日は酷く疲れた気がする。
体力は使ってないけど、精神力を大量に使ったからな・・・。
早く休むことにしよう。
疲れは次の日まで残さない。
ベッドは一つしかない為、起こさないようにベッドに入り、眠りに就く。
「お兄ちゃんおはよう」
「旦那様おはようございます」
二人の可愛らしい声で目が覚めた。
「二人ともおはよう」
見れば、俺の両サイドをそれぞれ二人が陣取っていた。
「昨日は悪かったな、意外と長引いちゃって、戻ってきたら夜だったんだ」
「うん、大丈夫だよ。みんなで仲良くお留守番してたし、バスケットのパンもあったしね」
そういえば、こんもりと詰まっていたバスケットのパンが見事に完売していたっけな。
ん、みんなで仲良く?
聞き間違いか?
いや、そういえば、やけに二人とも仲が良いような気がする。
さっきから、お互いが着ている服の事について話してるし。
と言う事は、無事に打ち解けたのだろうか?
俺は一人ホッと胸を撫で下ろす。
「マスター。魔力の補給をお願いします」
「お、了解」
アリスが俺の膝の上にひょこんと座る。
主人契約を結んでいる俺に触るだけで、アリスは魔力を補給する事が出来る。
一定以内の距離に入れば補給は可能だが、それは微々たるものなので、実際に触れ合ったほうが効率的なのだ。
スキンシップは大切って事だね。
「ユイさん、あのアリスさんと旦那様とはどう言ったご関係なんですか?」
「あ、アリスはね、んー私も良く分からないけど、お兄ちゃんを守ってるすっごく強い騎士だよ」
アリスって騎士だったのか。俺も知らなかった。
「なるほど、騎士さんですか。きっと相当お強いのでしょうね」
「すっごく強いよ!私たちの中では、お兄ちゃんの次に強いよ」
アニが驚いた顔をしている。
「旦那様はやっぱり、お強いんですね」
「うん、お兄ちゃんすっごく強いよ!今回もあの不死の王を一人で倒しちゃったんだもん」
「不死?良く分かりませんが、旦那様がお強いのは良く分かりました。アニは凄く嬉しいです」
自分の事を褒められると言うか話されるのって、何だかむず痒い。
「あんまし俺を持ち上げるなよ。自分ではこの中で一番弱いと思ってるんだから」
謙遜ではない。
俺は基本的なスペックが高いだけで、動き的な面で言えば、まだまだ初心者のレベルだと思っている。
仮に皆が俺と同スペックだった場合、一番弱いのは間違いなく俺だ。
こればっかりは、この世界に来て2年程度しか経っていない俺と、この世界で何年も生きている皆とではそもそもスタートラインからして違う。
ましてや、限界突破などというチートスキルを得てしまってからは、人外なんて程度ではないだろう。
あれ以降、戦闘という戦闘はしていないが、自分がどんどん規格外になっていっているようで、正直怖い。自分がどうしようもなく自分で怖い。
仮に仲間たちがいなくて、自分一人だった場合、平静を保っていたかどうか怪しい。
そもそもここまで、生きてはこれなかったかもしれないな。
そこは感謝しなくちゃな。
「お兄ちゃん、どうして泣いてるの?」
言われて気がついたが、色々と考えているうちに涙を零していたようだ。
「ああ、目にゴミが入っただけだ、気にしないでくれ」
俺は、昨日の国王様にされた話を皆に説明する。
そう、国定勲章授与式の事だ。
「本当はすぐにでもミラの故郷探しをしたいんだけどな。授与式は、ただ参加するだけじゃなくて、色々とこっちも準備が必要みたいなんだ」
「珍しいですね、ユウさんはそう言うのにはあまり興味を示さないと思ってました」
「ああ、そうなんだけどな。今回に限っては俺に拒否権がなかっただけだよ。本当だったら、こんな面倒な話、すぐに断ってるところだよ」
ユイがミラとヒソヒソ話をしている。
「お兄ちゃん、ミラは大丈夫みたい。一緒に探す手伝いをしてくれるだけで、嬉しいみたいだから」
「そうか」
ミラの前に移動する。
「いいかミラ。約束する。俺たちが絶対にミラを故郷まで連れて行ってやるからな」
ミラは返事こそはしなかったが、小さく頷いた。
まだまだミラに信用されるには時間が掛かるようだ。
さて、俺はこれから厳しい合宿が待っている。
合宿なんてのは、高校時代の部活動の合宿以来だった。
なんでも、授与式は各国の王族を始め、貴族たちも多数訪れる。
これは、バーン帝国の偉大さを周辺国へ見せつけるのが狙いだとムー王女は言っていた。
早い話が、バーン帝国に手を出すと、俺が黙っていないって事らしい。
国お抱えの勇者にはならないと言ったんだけどね。
彼らはどうしても俺を政治利用したいらしい。
確かに窮地には駆けつけるとは言ったけど、国同士のイザコザに関わるつもりは毛頭ない。
それとは別に、授与式にはそれなりの作法が必要になるらしく、貴族でもなく、当然この国の住人ですらない俺には、王宮作法なんて知る由もないわけで、その辺りの所をムー王女に見透かされていた。
つまり合宿だ。
3日間の合宿で王宮作法の全てを叩き込んでくれるらしい。
有難い話なんだけど、何故かやる気が湧かない。
と言うか、3日間もそんな事出来るか!
投げ出して逃げたい気分に苛まれたが、王宮作法というのは、覚えていて損はない。
という事で言いくるめられてしまった。
「ユウ様、この方が新しいお仲間で、アニさんと、ミラさんですか?それと話には何度か聞いていたルーさんですね」
合宿というのは当然泊まり込みな訳で、3日間もユイたちだけにしておくのは、正直危なっかしくて見ていられない。
という事で、俺のいない間の助っ人を呼んでいた。
「ああ、そうだよエレナ」
エレナは、エルフの里、プラメルのお姫様だ。
以前、彼女の窮地を何度も助けた事があり、家族ぐるみで親しくさせてもらっている。
エレナには、時々、逐一旅の報告をしていたので、こちらの事情に関してはバッチリ把握していた。
と言うか、報告に来ないと、怒られると言うか、長時間の小言が待っている。
どうしても行けない時を除いては、なるべく週一で報告に行く様に心掛けていた。
自身の身の安全の為でもある。
「どうして、エレナさんがここにいるの?」
「ああ、俺が居ない間、代わりにみんなと一緒にいて貰うんだよ。出掛ける時とかさ、ご飯の世話とか色々とあるだろ?」
ユイが飛び上がって喜んでいる。
あれ、そんなに舞い上がる程だとは思わなかった。
「ほんと!?エレナさんの料理すっごく美味しいよ!」
なんだ、やはり食べる事に関してか。
だけど、それは俺も同感だ。
「私もユイさんからお話しか聞いていませんでしたが、それはもう、頬がとろける程の絶品料理だとか!」
「ユイちゃん、褒め過ぎです。多少、料理の心得があるくらいですよ」
その時、宿の入り口にノック音が聞こえた。
「ユウ、迎えに来たぞ」
この声は・・
予想通り勧誘だった。
国王の隣にいるムー王女は、何故だかニヤニヤしていた。
きっと俺が困っている姿が面白いのだろう。
「勿論、今回は特例として世界を旅する事は続けて貰っても構わない条件を出そうじゃないか」
考えるまでもなく、俺の答えは決まっている。
勇者になるつもりなど毛頭ないのだ。
しかし、ただ断ってもまた勧誘されるのは目に見えていた。
なら多少なりともこちらが譲歩するしかないだろう。
「すみません、勇者になるつもりはありません。しかし・・・」
俺は転移を発動させ、一瞬の内に部屋の後方まで移動してみせた。
「な、なんだ!一瞬で場所が変わったぞ」
人族の間では、あまり転移というのは、周知されていない。
魔族は当たり前のように全員が使ってるんだけど。
やはりこの場でもどよめきが挙がっていた。
「勇者への要請はお受けできませんが、俺はこの転移の力で、この国が危機に陥ろうとしている時は、最大限の協力を惜しまない事を約束します」
俺なりの最大限の譲歩だった。
国王様もどうやら勇者推しを諦めてくれたようで、以降勇者要請してくる事はなかった。
その後は、国定勲章授与に関しての打ち合わせだった。
この場には既にギルド長たちや、貴族の代表者たちの姿はなく、王族関係者のみとなっていた。
そういえば、いつの間にかムー王女の姿も見えなかった。
勲章授与は、双方色々と準備があるようで、1週間後となった。
式典に相応しい衣装で来るように言われたが、生憎とそんな衣装は持ち合わせていない。
後でムー王女にでも相談してみるかな。
拘束から解放された頃にはいつの間にか日が暮れ始めていた。
意外と時間が掛かっちゃったな・・みんなお腹を空かせてるだろう。帰り際に何か食料を調達しておくかな。
宿に戻ると、明かりが消えていた。
てっきり誰もいないのかと思いきや、机の上に肘をついて項垂れているルーがいた。
「ひもじいよぉ・・・死んじゃうよぉ・・・」
たった1日抜いたくらいでえらい大袈裟だな。
取り敢えずルーは無視だ。
アリスは、機能停止中だった。
正座で壁にもたれかかっていた。
他の三人はっと・・・あ、居た。
仲良く揃ってベッドで寝ているユイとミラとアニの姿が見えた。
朝出かける前は気不味い雰囲気だったけど、少しは打ち解けてくれてたら嬉しいんだけどね。
「ルー、帰ったぞ」
ルーがゆっくりとこちら側へ振り向き、ジト目を向けて来る。
「お腹が空きすぎてユウさんが、お肉に見えます・・」
「お前が言うと冗談に聞こえないからな。まぁ、取り敢えずあれだ。帰るのが遅くなって悪かったよ」
帰り際に買い漁った食料を机に並べる。
「お詫びにこれ全部食べていいから」
ルーは、獲物を見つけた狩人のようにその視線は、ガッチリと食料をロックしていた。
「言いましたね?本当に全部食べますよ?いいんですね?」
返事を待たずして食料にがっつくルー。
普段なら「もう少しレディらしくしろ」と文句の一つでも言ってやるのだが、今回は俺に非があるので、許す事にする。今回だけだからな?
「そう言えば他のみんなはいつから寝てるんだ?」
ルーは、食べる事が忙しいのか、俺の質問に答える暇がないようだ。
まぁ、起きたら分かるか。
今日は酷く疲れた気がする。
体力は使ってないけど、精神力を大量に使ったからな・・・。
早く休むことにしよう。
疲れは次の日まで残さない。
ベッドは一つしかない為、起こさないようにベッドに入り、眠りに就く。
「お兄ちゃんおはよう」
「旦那様おはようございます」
二人の可愛らしい声で目が覚めた。
「二人ともおはよう」
見れば、俺の両サイドをそれぞれ二人が陣取っていた。
「昨日は悪かったな、意外と長引いちゃって、戻ってきたら夜だったんだ」
「うん、大丈夫だよ。みんなで仲良くお留守番してたし、バスケットのパンもあったしね」
そういえば、こんもりと詰まっていたバスケットのパンが見事に完売していたっけな。
ん、みんなで仲良く?
聞き間違いか?
いや、そういえば、やけに二人とも仲が良いような気がする。
さっきから、お互いが着ている服の事について話してるし。
と言う事は、無事に打ち解けたのだろうか?
俺は一人ホッと胸を撫で下ろす。
「マスター。魔力の補給をお願いします」
「お、了解」
アリスが俺の膝の上にひょこんと座る。
主人契約を結んでいる俺に触るだけで、アリスは魔力を補給する事が出来る。
一定以内の距離に入れば補給は可能だが、それは微々たるものなので、実際に触れ合ったほうが効率的なのだ。
スキンシップは大切って事だね。
「ユイさん、あのアリスさんと旦那様とはどう言ったご関係なんですか?」
「あ、アリスはね、んー私も良く分からないけど、お兄ちゃんを守ってるすっごく強い騎士だよ」
アリスって騎士だったのか。俺も知らなかった。
「なるほど、騎士さんですか。きっと相当お強いのでしょうね」
「すっごく強いよ!私たちの中では、お兄ちゃんの次に強いよ」
アニが驚いた顔をしている。
「旦那様はやっぱり、お強いんですね」
「うん、お兄ちゃんすっごく強いよ!今回もあの不死の王を一人で倒しちゃったんだもん」
「不死?良く分かりませんが、旦那様がお強いのは良く分かりました。アニは凄く嬉しいです」
自分の事を褒められると言うか話されるのって、何だかむず痒い。
「あんまし俺を持ち上げるなよ。自分ではこの中で一番弱いと思ってるんだから」
謙遜ではない。
俺は基本的なスペックが高いだけで、動き的な面で言えば、まだまだ初心者のレベルだと思っている。
仮に皆が俺と同スペックだった場合、一番弱いのは間違いなく俺だ。
こればっかりは、この世界に来て2年程度しか経っていない俺と、この世界で何年も生きている皆とではそもそもスタートラインからして違う。
ましてや、限界突破などというチートスキルを得てしまってからは、人外なんて程度ではないだろう。
あれ以降、戦闘という戦闘はしていないが、自分がどんどん規格外になっていっているようで、正直怖い。自分がどうしようもなく自分で怖い。
仮に仲間たちがいなくて、自分一人だった場合、平静を保っていたかどうか怪しい。
そもそもここまで、生きてはこれなかったかもしれないな。
そこは感謝しなくちゃな。
「お兄ちゃん、どうして泣いてるの?」
言われて気がついたが、色々と考えているうちに涙を零していたようだ。
「ああ、目にゴミが入っただけだ、気にしないでくれ」
俺は、昨日の国王様にされた話を皆に説明する。
そう、国定勲章授与式の事だ。
「本当はすぐにでもミラの故郷探しをしたいんだけどな。授与式は、ただ参加するだけじゃなくて、色々とこっちも準備が必要みたいなんだ」
「珍しいですね、ユウさんはそう言うのにはあまり興味を示さないと思ってました」
「ああ、そうなんだけどな。今回に限っては俺に拒否権がなかっただけだよ。本当だったら、こんな面倒な話、すぐに断ってるところだよ」
ユイがミラとヒソヒソ話をしている。
「お兄ちゃん、ミラは大丈夫みたい。一緒に探す手伝いをしてくれるだけで、嬉しいみたいだから」
「そうか」
ミラの前に移動する。
「いいかミラ。約束する。俺たちが絶対にミラを故郷まで連れて行ってやるからな」
ミラは返事こそはしなかったが、小さく頷いた。
まだまだミラに信用されるには時間が掛かるようだ。
さて、俺はこれから厳しい合宿が待っている。
合宿なんてのは、高校時代の部活動の合宿以来だった。
なんでも、授与式は各国の王族を始め、貴族たちも多数訪れる。
これは、バーン帝国の偉大さを周辺国へ見せつけるのが狙いだとムー王女は言っていた。
早い話が、バーン帝国に手を出すと、俺が黙っていないって事らしい。
国お抱えの勇者にはならないと言ったんだけどね。
彼らはどうしても俺を政治利用したいらしい。
確かに窮地には駆けつけるとは言ったけど、国同士のイザコザに関わるつもりは毛頭ない。
それとは別に、授与式にはそれなりの作法が必要になるらしく、貴族でもなく、当然この国の住人ですらない俺には、王宮作法なんて知る由もないわけで、その辺りの所をムー王女に見透かされていた。
つまり合宿だ。
3日間の合宿で王宮作法の全てを叩き込んでくれるらしい。
有難い話なんだけど、何故かやる気が湧かない。
と言うか、3日間もそんな事出来るか!
投げ出して逃げたい気分に苛まれたが、王宮作法というのは、覚えていて損はない。
という事で言いくるめられてしまった。
「ユウ様、この方が新しいお仲間で、アニさんと、ミラさんですか?それと話には何度か聞いていたルーさんですね」
合宿というのは当然泊まり込みな訳で、3日間もユイたちだけにしておくのは、正直危なっかしくて見ていられない。
という事で、俺のいない間の助っ人を呼んでいた。
「ああ、そうだよエレナ」
エレナは、エルフの里、プラメルのお姫様だ。
以前、彼女の窮地を何度も助けた事があり、家族ぐるみで親しくさせてもらっている。
エレナには、時々、逐一旅の報告をしていたので、こちらの事情に関してはバッチリ把握していた。
と言うか、報告に来ないと、怒られると言うか、長時間の小言が待っている。
どうしても行けない時を除いては、なるべく週一で報告に行く様に心掛けていた。
自身の身の安全の為でもある。
「どうして、エレナさんがここにいるの?」
「ああ、俺が居ない間、代わりにみんなと一緒にいて貰うんだよ。出掛ける時とかさ、ご飯の世話とか色々とあるだろ?」
ユイが飛び上がって喜んでいる。
あれ、そんなに舞い上がる程だとは思わなかった。
「ほんと!?エレナさんの料理すっごく美味しいよ!」
なんだ、やはり食べる事に関してか。
だけど、それは俺も同感だ。
「私もユイさんからお話しか聞いていませんでしたが、それはもう、頬がとろける程の絶品料理だとか!」
「ユイちゃん、褒め過ぎです。多少、料理の心得があるくらいですよ」
その時、宿の入り口にノック音が聞こえた。
「ユウ、迎えに来たぞ」
この声は・・
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
【完結】もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です
堀 和三盆
恋愛
「それじゃあ、ちょっと番に会いに行ってくるから。ええと帰りは……7日後、かな…」
申し訳なさそうに眉を下げながら。
でも、どこかいそいそと浮足立った様子でそう言ってくる夫に対し、
「行ってらっしゃい、気を付けて。番さんによろしくね!」
別にどうってことがないような顔をして。そんな夫を元気に送り出すアナリーズ。
獣人であるアナリーズの夫――ジョイが魂の伴侶とも言える番に出会ってしまった以上、この先もアナリーズと夫婦関係を続けるためには、彼がある程度の時間を番の女性と共に過ごす必要があるのだ。
『別に性的な接触は必要ないし、獣人としての本能を抑えるために、番と二人で一定時間楽しく過ごすだけ』
『だから浮気とは違うし、この先も夫婦としてやっていくためにはどうしても必要なこと』
――そんな説明を受けてからもうずいぶんと経つ。
だから夫のジョイは一カ月に一度、仕事ついでに番の女性と会うために出かけるのだ……妻であるアナリーズをこの家に残して。
夫であるジョイを愛しているから。
必ず自分の元へと帰ってきて欲しいから。
アナリーズはそれを受け入れて、今日も番の元へと向かう夫を送り出す。
顔には飛び切りの笑顔を張り付けて。
夫の背中を見送る度に、自分の内側がズタズタに引き裂かれていく痛みには気付かぬふりをして――――――。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
何故、わたくしだけが貴方の事を特別視していると思われるのですか?
ラララキヲ
ファンタジー
王家主催の夜会で婚約者以外の令嬢をエスコートした侯爵令息は、突然自分の婚約者である伯爵令嬢に婚約破棄を宣言した。
それを受けて婚約者の伯爵令嬢は自分の婚約者に聞き返す。
「返事……ですか?わたくしは何を言えばいいのでしょうか?」
侯爵令息の胸に抱かれる子爵令嬢も一緒になって婚約破棄を告げられた令嬢を責め立てる。しかし伯爵令嬢は首を傾げて問返す。
「何故わたくしが嫉妬すると思われるのですか?」
※この世界の貴族は『完全なピラミッド型』だと思って下さい……
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる