『偽りのチャンピオン～元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌ＶＯＬ．３』

「新たな賭けルール」

「新たな賭けルール」

決勝は６０分３本勝負の特別ルール。チャンピオン馬券のオッズは、稀世１．３倍、粋華１．７倍と僅差で大型ビジョンの左側の最上段に表示されている。
今回はその下に昨日までは無かった表記がいくつか追加され、観衆の注目を集めている。最初の追加項目は
「「C１」①「開始５分以内にサイキッカーＳＵＩＫＡ選手が１本獲る。」倍率７．２
　　　②「開始５分以内に安稀世選手が１本獲る。」倍率５．２
　　　③「開始５分以内には１本も決まらない。」倍率１．７」
と表示され、残り時間が「０５：００」で止まっている。
　更に「ジャンプアップ」項目として「Ｃ１」の①、②に賭けた者には「一本」が決まる要因により、「C１」での掛け金に２割上乗せをすることで獲得賞金がさらに倍増する旨が
「「JU」①フォール　　　２・１倍　
　　　　②ギブアップ　　３．２倍
　　　　③リングアウト　４．７倍
　　　　④反則　　　　　　６．９倍」
と表示され、「C１」で賭けた者に対するボーナスポイントがあることが示されている。

「タフな稀世姉さんが５分以内にやられる事は絶対にあれへんから私は一発狙いで②に５万円賭けるわ。陽菜ちゃんは保険で③に３万円以上賭けておいてくれる？」
「なっちゃん、ここはちょっと手堅く③に１０万いっとくわ。とりあえず７万取り返したらなっちゃんが外しても二人でトータルしたらプラス２万やん。」
「せやな、じゃあ私は「ジャンプアップ」させてもらっておこうかな？稀世姉さんは絶対反則はせえへんし、「締め技」はあるかもしれへんけど開始５分のことやからなぁ。
決めるなら一発大技で「フォール」で間違いないやろうから、更に①に上乗せするから、当たったら６万が６５万５２００円やで！この倍率は美味しいよな！陽菜ちゃんの１０万のマイナスを考えても開始５分で４９万５２００円獲得やで！」
「おーっ、それは凄いな！種銭たねせん」はたんまりあるんやから、卒業旅行でヨーロッパ行って、ブランドものを買い漁る資金をしっかりと稼ぐで！」
　夏子と陽菜はモニターを見ながら二人でスマホを操作した。

　新たな「賭け項目」に会場が盛り上がりを見せた。スマホアプリでは過去３戦の詳細データも閲覧できるようになっており、稀世、粋華の繰り出す技のシェアや「１本」の実績等がわかるようになっている。更には「ＡＩ」による予想解説まで添えられている。
各々が大金獲得の「夢」を見て、スマホの画面に引き込まれていく様子が昨日までと異なるところである。

決勝戦開始１時間前からのセレモニー開始予定時刻となった。一度、会場の照明が落ち、派手なビートの音楽がかかるとレーザー光線が会場内を激しく点滅しながら旋回する。
大型モニターに稀世と粋華の過去３試合の「フィニッシュ」シーンが交互に映し出され、観客から歓声が上がる。
レーザー光線がリング上に集まると大きなスモーク噴射があり、スポットライトが照らされた中から一人の男の姿が浮かび上がった。
その男は「セオドア・ルメイ」だった。

　ルメイはマイクを手に取ると挨拶を始めた。流暢な日本語で大会開催に協力してくれた事業者及び多くの観客が駆けつけてくれたこと、多くの選手が参加してくれたことに対する丁寧な礼と熱い気持ちがリング中央で語られ、オープニングセレモニーが始まった。
　過去３試合のハイライト映像が流され、敗退した選手たちの優勝予想インタビュービデオが流された。「ミスＪ・Ｆ」を除く１３人の予想は、７人が稀世の「タフ」さを理由に、６人が粋華の「技の切れ」を根拠に優勝者予想は分かれていた。

　リングアナウンサーがリング中央に立ち、青コーナーの「サイキッカーＳＵＩＫＡ」がコールされると、大きな歓声が巻き起こり粋華が花道に登場した。
通天閣の模型が上に乗った星条旗柄のシルクハットに、カラフルなスパンコールがちりばめられたノースリーブのタキシード姿で両手を客席に向けて振りながら、ゆっくりとリングに進みスポットライトに照らされてセカンドロープとサードロープの間からリングに入ると客席に向けて投げキスをしながらロープに沿ってリングを四角く一周した。

　続いて、稀世の名がコールされた。赤コーナー側の花道にスポットライトがあたるがそこに稀世の姿は無い。騒めく会場の雰囲気の中、特設２階席中央にスポットライトが照らされると客席の中から稀世がサプライズ登場した。
　周辺の観客と握手、ハイタッチを繰り返しながら一階アリーナ席まで下り、花道に戻ると大歓声の中、赤コーナー下に到着。リングシューズの裏に「マツヤニ」をつけると、いつも通りのコーナーポストに飛び乗り直立姿勢で右手の人差し指を天井に向けるパフォーマンスの後、ムーンサルトでリングに飛び降りた。リングの中央で四方に向けて順に丁寧に９０度のお辞儀を繰り返し、青コーナーで待つ粋華の元に進み両手でしっかりと握手を交わすと大きな拍手が起こった。

　リングアナウンサーから決勝戦の特別ルールが語られ、レフリーによるボディーチェックが行われた。
　ブルーを基調としたＨカップの胸を強調したセパレートのリングコスチュームの粋華と赤をベースに機能性重視のワンピース型のリングコスチュームの稀世はリング中央で再度握手を交わすと各々のコーナーに分かれていった。

　「ただいまより、第１回ＵＣＷＷチャンピオンシップ決勝戦、６０分３本勝負を開始します！」
のリングアナウンサーのコールの後、ゴングが鳴った。
　試合は開始早々、タックルに出た稀世が粋華の合気道技でリング上をコロコロと転がされ、蹴り技はいなされ攻めあぐむ中、粋華の繰り出す技に稀世は防戦一方で開始４分で入り身投げからうつぶせに倒れた稀世の腕を合気道の固め技である「一教「腕押さえ」」から「二教「小手回し」」へ、暴れて逃げようとする稀世の動きに合わせ最終的に「三教「小手ひねり」」へと移行した関節技から逃げることができず粋華の流れるような技の前に５分弱で稀世がギブアップした。

リング前最前席で見ていたエージェントの「ルメイ」は両手を叩き、大喜びして粋華にウインクして見せた。
「５分以内に粋華が１本獲る」のオッズは７．２という高倍率であったにもかかわらず、稀世のタフネスさを準々決勝で擦り込まれていた「ベッター」達からほとんど投票は無かった。
ほとんどの投票は賭け率１．７倍の「５分以内に決まらない」に集中し、いくらかが「稀世が獲る」に賭けられていたほとんどの掛け金が主催者の元に入った。
リング上の大型モニターには
「「C２」①「２本目５分以内にサイキッカーＳＵＩＫＡ選手が１本獲る。」倍率５．１
　　　②「２本目５分以内に安稀世選手が１本獲る。」倍率７．８
　　　③「２本目５分以内には１本も決まらない。」倍率１．３」
と表示され、残り時間が「０５：００」に戻っている。
　更に「ジャンプアップ」項目も同様に表示されている。
ベット締め切り時間は９０秒からカウントされ始め、負けた投票者に冷静な判断をさせない仕組みに夏子と陽菜もはまり込み、２人で１６万の負けを取り戻そうと、初回以上の掛け金を注ぎ込んでいた。

２本目は圧倒的な粋華の強さに、５分以内に「粋華が勝つ」にどんどんとベットされたが、不用意に組みつかなくなった稀世の作戦変更で試合は膠着した。
「Ｃ３」、「Ｃ４」、「Ｃ５」と５分ごとに新しい賭けが始まるも２本目は粋華優位のまま長引く中、事態は開始３２分で動いた。

不意を突いた稀世の２代目タイガーマスクの故三沢光晴張りの粋華の背中をダブルチキンウイングの体勢でクラッチし後方へ反り投げ、両肩をマットにうずめる「タイガー・スープレックス‘８４」で「カウント３」を取り、稀世が「一本」を返した。
ルメイは膝の上のタブレットの画面を確認して、満面の笑みをリング上の二人のファイターに送っている。
３本目に入る前、赤コーナーに戻った稀世は、直と三朗と太田が席からいなくなっていることを確認した。



「おまけ」
今日のおまけはみんなだいすき「ひいちゃん」さんのイラストでーす！
いつもありがとうございます。
(｡-人-｡) 


前にアップさせてもらった「セーター姿」の「陽菜ちゃん」と「なっちゃん」が好評だったんで再び生成してくれました！
ヾ(o´∀｀o)ﾉﾜｧｰｨ♪

「ひいちゃん」さんの描く「ぺったん娘」感が好き(〃▽〃)ﾎﾟｯ！

では、「陽菜ちゃん」から！

「ひいちゃん」さんは私と違って「パソコン版」の「PixAi」使ってるんで「R１８」ワードが使えるそうです。
私が使ってる「スマホアプリ版」では「ちっぱい」とかプロンプトに入れるとエラーがかかっちゃいますし「B地区」は出ません。

けど、「パソコン版」はそれがOKらしいです！
時間が取れたら、チャレンジしたいんですけど、今しばらくは「無理」かなー。(´・ω・｀)ｼｮﾎﾞｰﾝ

さて、「時間がない」アピールばっかりしてても仕方がないんで、続けて「なっちゃん」！
「なっちゃん」は「ピンク」が似合うね！Σ(ﾟ∀ﾟﾉ)ﾉｷｬｰ

ストーリー内ではこの先二人に「悲劇」が起こるのですが（※ネタバレ）、それを感じさせない「かわいさ」でしたね！
「ひいちゃん」さん、本当にありがとうございました。
(｡-人-｡) ﾀﾞｲｶﾝｼｬ!