【完結！】「頑張ろう石川！」応援企画」！『COSMO’ｓ ～石川に墜落した５人のボランティア宇宙人アイドルの６７日の物語～』

第４章「宇宙艦隊地球襲来編」

「説得失敗」

「説得失敗」

　午前８時、テレビの中のＵＦＯ艦隊にその後動きは見えない。アメリカ軍も戦闘機、地対空ミサイルによる攻撃が「無力」であることを悟り、攻撃は中止されたままである。
　ニューヨーク現地時間午後６時、日が落ち地上からのサーチライトで照らされた艦隊母船に国連から交渉に入りたい旨を連絡したが「４人のプリンセスの返還が優先」と返答されたとして、国連本部は日本の「国家安全保障局」を通じてプリンセス達の身柄の引き渡しの要求をした。
　アイースは、逐次、状況をＳＮＳで世界に向けて発信を続けている。ライスは横須賀の米海軍基地を通じて空母ロナルド・レーガンだけでなく「三沢基地」、「横田基地」、「嘉手納基地」等に、今後、一切の武力行使の中止を上申した。
　誠子と米子は「サンダーくん」に連絡を試みるが、全くつながる様子はないため、コスモアイル羽咋のスタッフの一人が下宿のアパートを尋ねた。鍵は開きっぱなしでそこに「サンダーくん」の姿は無かったとの報告が入った。

　午前８時８分。マリーアと連絡を取り合ったノトドン中尉が操縦する「上陸用小型宇宙船リトルシップ」がコスモアイル羽咋の駐車場に着陸した。アイースのアップしたＳＮＳの情報から、マリーアが直接宇宙艦隊の総司令である「大統領」に交渉に向かうと知った金沢から集まったマスコミのカメラが一斉に向けられた。
　人類史上、初めて間近に見る「地球外生命体」の乗り物と、「地球外生命体」に目が向けられた。「上陸用小型宇宙船リトルシップ」のハッチが開くと、降りてきた地球人と変わらぬ見た目のノトドンにカメラのフラッシュが浴びせられた。
　ピヨ、ナチュコ、ピナ、チャプローとライス、アイースを従えてマリーアが本館から出てきた。ノトドンはライスに「よくぞ、プリンセス達を助けてくださいました。僭越ながらニコニーコ星の軍人の一人として感謝いたします。」と握手を求めた。その時、ライスは鼻の奥に「違和感」を覚えた。続いて、ノトドンはアイースに「いつもプリンセス達の情報提供ありがとうございました。すごく「役・」に立ちましたよ。」と優しくハグをした。

全世界に生中継が行われているコスモアイル羽咋の駐車場でマスコミを代表してマイクを向けた石川テレビ放送のリポーターに対しマリーアは
「今から、艦隊母船に向かい、私達の父であるニコニーコ星の最高責任者と話をしてまいります。必ずや誤解を解き、この誤った事実認識に基づく「危機」を回避してきます。皆さまには震災復興も途上の状況で、不必要な「不安」を与えてしまったことをお詫び申し上げます。では、行ってまいります。」
と話すと、ノトドン中尉のエスコートで「上陸用小型宇宙船リトルシップ」に乗り込んだ。
　ピヨ達は、不安な気持ちを抑えつつ、マリーアとノトドンを見送った。ライスはアイースの耳元で囁いた。「この後、少し時間あるか？大阪の心斎橋パルコで３月７日から５月１２日にかけて開催される「においの森」っていう企画で発表される「ＵＭＳ・・・」のサンプルを持ってるんだ。アイースにも確認して欲しいんだが…。」

　マリーアはノトドンの操縦する小型宇宙船で羽咋上空に留まる星間航行用の大型母船マザーシップに向かった。母船に着艦すると、従者の者達が「プリンセス、御無事でしたか？お父様がお待ちです。まずはお召し物の交換を…。」と声をかけるが、「着替えはええわ。まずは「大統領」に会わせて！」と羽咋市の作業ツナギのまま、ＣＩＣコンバット・インフォメーション・センターに向かった。
　「失礼します！」とＣＩＣの自動ドアをくぐると、半泣きのカズーシ大統領がいた。すっかり父の顔になったカズーシは椅子から立ち上がると同時にマリーアに駆け寄り、強く抱きしめ、耳元で囁いた。
「苦労したんやな。こんな粗末な奴隷着を着せられて…。お前たちの状況を聞いてからの２３日間は心配で心配でたまらんかったんやぞ。でも、お父ちゃんが来たからにはもう大丈夫やで。ピヨ、ナチュコ、ピナとチャプローを救出したら、速攻でこんな星は滅ぼしたるからな！大切なプリンセス娘達を奴隷扱いしやがった「低俗」なこの星の奴達に正義の鉄槌を喰らわせたるわな！」

　（あかん、やっぱりお父ちゃんには間違えた情報が行ってるんや。まずは、その誤解を解かんと…。）マリーアはカズーシに「静かなところで二人で話したいんやけど…。」と言うと、大統領執務室に通された。
「大統領、いや、お父ちゃん、まず最初に言うておくけど、私ら地球でなんの「虐待」も受けてへんし、「奴隷労働」なんか全く強要されてへんからな。せやから、地球を滅ぼすなんて絶対にやめてや。
　そりゃ、お父ちゃん達がいきなり現れて、何も言わんと上空に居座るからこの星の軍隊が動いたんはしゃあないやろ。まあ、実質上、こちらには何の被害もあれへんねんからそこは「良し」という事で目をつぶったってや。」
　マリーアは説得に入った。途端にカズーシは厳しい顔つきになり言った。
「やっぱり「洗脳」されとるんやな。この星の人間は捕虜に対して「思想教育」を行ったりするらしいやないか。それはこの星の歴史が物語っとる。可哀そうに、お前もそないされてしもたんやな。やっぱりこの星を許すわけにはいけへん！」

　取り付く島無く、「洗脳」されていると決めつけてかかるカズーシとの間で話は平行線のままである。「そんなことあれへんねんて！地球のみんなは優しくてええ人ばっかりやねんで。」とマリーアが繰り返し言うと、カズーシは執務室の内線電話を取り、叫んだ。
「ノトドン中尉を呼べ！プリンセス達の地球での虐待資料を持って来させるように！」

　（あれ？制服が違う？）大統領執務室に入ってきたノトドン中尉は先ほどまでと違う制服を着ていたことにマリーアは気が付いた。ノトドンはカズーシの指示に従い、執務室の量子コンピュータに映像記録媒体をセットすると大型のスクリーンに動画を映し出した。
　動画は４日の輪島でのマリーアとピヨの煤まみれになっての瓦礫撤去の動画から始まった。さらに水造りから避難所の年寄りたちへの足湯を提供し、肩揉みやフットマッサージするナチュコとピナの姿。夜明け前の早朝から調理と配食準備する５人。グラウンドに大きな穴を掘り、砂を投入し、糞尿処理をするピヨとマリーアと動画は続いた。
　さらに、珠洲での「バターづくり」でピヨが４０リットルのミルク缶を振るシーン。そして、ライブで繰り返される「アンコール」シーンが音声無しで再生されていく。
　明らかに「重労働」、「長時間労働」をイメージさせる編集になっているとマリーアは感じた。
　
　「大統領、このようにプリンセス達は今着ているような貧しい作業着でこの４９日間、地球人によって「奴隷労働」を強いられてきました。これを「虐待」と言わずに何というのでしょうか？我らがプリンセス達にこのような仕打ちを行った「地球人許すまじ」です。」
とノトドンは強い口調でカズーシに伝えた。
「ちょっと待ってよ！１月１１日の無線通信で私はノトドン中尉に「地球では有意義に過ごしてるって話したでしょ？大統領には心配しないように伝えてくれって言ったじゃない！どうしてそれを伝えてくれて無いのよ！」
　マリーアはノトドンの言葉を否定する様に割って入った。

　ノトドンは顔色一つ変えずに
「そんな話は聞いていません。今、プリンセスが言われた地球時間の１月１１日の映像がこちらです。本星と地球との２８００光年のタイムラグがありますので、大統領が本星を出動された後のものとお考え下さい。」と千里浜の上空からの映像が流された。
　「サンダーくん」に連れられて、千里浜の「ＵＦＯ」の隠し場所に無線連絡をするために訪れた時のものです。
「大統領、プリンセス達は地球人だけでなく、羽咋駐在員の「グレイ」により洗脳されたものと思われます。「グレイ」はテレパシーも使いますし、サイキック能力は我々「ノルディック」より優れている部分もあります。おそらく、このＵＦＯの中で完全に「洗脳」されてしまったんでしょう。事実、私が聞いてもない「伝言」をしたと言われてます。」

　大統領に解説を続けるノトドンに「あなた、なんでそんな嘘を言うの？」とマリーアは食って掛かって叫んだが、カズーシがマリーアに憐みの目を向けて呟いた。
「あぁ、なんて可哀そうなマリーア。このノトドン中尉は地球時間換算で１月２５日にニコニーコ本星に母船で訪れ、お前たちの惨状をわしに報告してたんや。１月１１日に地球にいたというのであれば、それはお前のたわごとや。ノトドン中尉は地球時間１月４日から６日迄のお前たちの映像を持ってワープを繰り返し、本星に来てたんや。
　きっとお前の「無線連絡」の記憶は「グレイ」により擦り込まれた架空の記憶なんやろ。もうええ、今日はゆっくりお休み。
　地球の「あほ」どもは、ピヨ達を「奪還」した後に、思いっきりきつい「お仕置き」したるから楽しみにしときや。」

　貴賓室までノトドンに連れて行かれたマリーアは（このままやったら絶対にあかん！今のままではお父ちゃんの説得は無理や。とりあえず、地球に戻って出直しや！）と思い、部屋を抜け出すと一番簡単な操縦の宇宙船を選ぶと羽咋に向けて飛び立った。



今日のおまけは
「マリーア」と「カズーシ」父ちゃんとの親子喧嘩イメージです。
「宇宙船の中」イメージがどうしても再現できなかったので困りました(笑)。