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第3章「ボランティアツアー編」

「交信」

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「交信」

 在羽咋市暦13年の「グレイ」系宇宙人の「サンダーくん」からの情報は「COSMO’s」のメンバーにとっては驚きのものであった。未来透視プレコグニション能力を持つ「グレイ」軍情報部のサイキック情報収集官による予言は35日後の2月15日にニコニーコ星から5人の父であるニコニーコ・ウトー・カズーシ大統領自ら指揮する巨大な宇宙艦隊が2800光年先から地球に大遠征してきて地球に宣戦布告するという予言であった。
 しかも2月16日、17日には先遣隊が成層圏内に突入し、日本の自衛隊、アメリカ第7艦隊の攻撃を受けるも、200年は差が有る科学力により地球側の攻撃は全く成果を上げることなく2月18日にはカズーシ大統領の名の元、石川県知事、日本国内閣総理大臣、そして国連事務総長あてに降伏勧告を出すであろうという事だった。日米安保協定に基づきアメリカ軍は最新の秘密兵器「地球版UFO」と呼ばれる「TR―3B」を発信させ先遣隊に攻撃を仕掛けるも、その効果は日本の航空自衛隊戦闘機、アメリカ海軍の戦闘攻撃機同様に全くなく、見せしめのために「撃墜」されることが語られた。

 そこから先の未来は最先端を行く「グレイ」のサイキック情報官の力をもってしても全く見えないという。
「これはあくまで私個人の推測ですが、2月18日以降の未来が見えないってことは、透視すべきものがない…。つまり「地球そのもの」が無くなっているのではないかという可能性もあると思います。」
と「サンダーくん」が言うと
「ごるぁ!うちの父ちゃんの事も知らんくせに何適当なこと言うてけつかんねん!根拠もない与太話して私らをビビらすつもりやったらしばき倒すぞ!」
 パニックを起こしたナチュコが「サンダーくん」の青いブルゾンの胸ぐらをつかみ上げた。ピナが後ろから羽交い絞めにして必死に止め、ピヨのナチュコの脳天へのエルボーでナチュコは気を失い倒れた。「すんません、うちの妹も決して悪い子や無いんですけど少し冷静さを欠いてしまうところがありまして…。ほんまにすみませんでした。」とピヨは「サンダーくん」に丁寧に詫びを入れた。
 
 「すみません。後半はあくまで私の推測でしかありません。根拠は全くありませんし、まあ、うちの星のサイキック情報官の正答率は過去実績で「82%」しかありませんから、全然当たらない可能性もあるかもしれませんけどね。」
と「サンダーくん」は慰めてくれた。
「でも、そんな18%に賭ける方がどうかしてるやろ!科学力は「ノルディック」は「グレイ」に及ばへんのは明白や。うちより上位の科学力を持つ「グレイ」情報部がそう予測してるんやったらそっちの可能性の方が断然高いやろ。
 確かに、石川に来て11日間。いろんなことがありすぎて本星への連絡を怠ってきた私たちに責任はある。けど、上陸用小型宇宙船リトルシップが水没した私達には連絡を取る手段はあれへんかった。うちの父の性格からすると私たちが帰らへん事を「誘拐」されたか、「拉致」されてるって考えよったら、頭に血がのぼって戦争仕掛けることは十分考えられるわな!
 そうや「サンダーくん」のUFOの無線を貸してもらえないですか?この13年で修理は進んではるんでしょ?」
マリーアは努めて冷静になろうとしたが、「サンダーくん」から聞かされた未来予想がリアルであり過ぎたがゆえにいつものマリーアの判断とはベクトルがずれ、複数の次善策を考えることなく、UFOから無線連絡を取れば自分たちの生存と無事が伝えられると考えたのだった。

 ピヨとチャプローは、マリーアの案に賛成した。ピナはなにか言いたげだったが末っ子という遠慮もあり発言を控えた。
 倒れたナチュコの介抱をピナに任せ、羽咋市の軽バンで「サンダーくん」とともに2011年に墜落したというUFOが隠されている「千里浜なぎさドライブウェイ」にマリーアとピヨ、チャプローは向かった。
 いつもであれば多くの観光客であふれている千里浜は通行止め規制の為、人影は皆無でひっそりとしていた。ドライブインの駐車場に軽バンを止めると砂浜を少し北に歩いた。一見、夏以外は締まっている海の家の資材倉庫に見える木造バラックにトタンの波板の屋根のボロ倉小屋の中に「サンダーくん」のUFOは隠されていた。

 「「サンダーくん」こんなところに13年間止めてて日本の警察や「月刊ムー」や並木伸一郎先生にばれへんかったん?」
ピヨが質問をすると、
「予想外過ぎて気が付かないもんなんでしょうね。まあ、ここの倉庫なら家賃もオフシーズンもハイシーズンもならして年18万…。平均すると月1万5千円なんで地球ではアルバイトの僕が払える限界でもあるんですけどね。カラカラカラ。」
と自虐的に笑った。
 小屋に入ると「本来は別の星人には見せちゃいけないものなんで、くれぐれも「写メ」撮ったり、後で「SNS」なんかにアップしないでくださいよ。」と少しずれた注意を受け、「サンダーくん」と一緒に操縦席に乗り込んだ。

 機内のスイッチを次々とオンにしていくとランプが点灯し、モニタ―が起動した。
「ちなみにプリンセス達の緊急避難通信の無線周波数はEHFミリ波ですかそれとももしかしてサブミリ波ですか。あと周波数はいくつになりますか?」
「EHFです。周波数は2525にこにこです。曇り空ですが通りますかねぇ?」
「きっとプリンセス達の捜索に成層圏内に来てるでしょうから大丈夫でしょう。あれ、暫く放ったらかしにしてたんでバッテリーが弱ってますね。ちょっと軽バン持って来てブースターで繋げますね。」
と「サンダーくん」は羽咋市の軽バンを取りに行った。

 「マリーア姉さん、さっきの話ってどうなん?マリーア姉さんは何回も外交関係で「グレイ」や「レプティリアン」系の宇宙人とも会ってきてるんやろ?信頼してええの?」
と「サンダーくん」不在を良いことに本音の質問を投げかけた。
「うん、私個人的には「レプティリアン」系よりは「グレイ」系の方が裏表なくて信頼はできるよ思うねん。少なくとも「サンダーくん」に怪しいところは感じへんな。とりあえずは無線機を貸してくれるために、こうして機密の操縦席に入れてくれてるんやから信じてええんとちゃうの?いや、ここは信じるしかあれへんやろ。」
 そこに軽バンの排気音が近づいてきた。ガチャガチャと表で音がすると赤と黒のブースターケーブルを引きずって小屋の中に「サンダーくん」が戻ってきた。

 バッテリーにケーブルを繋ぐと、「サンダーくん」はマリーア達に気を遣って言った。
「通信を聞かれるのも嫌でしょうし、僕は表で軽バンのアクセル踏みこんで電圧を上げますんでゆっくりと言う訳にはいきませんが通信してください。軽自動車のバッテリー補助ですので3分程しか持たないと思いますのであらかじめ伝えることはまとめておいてくださいね。」 
 小屋の中が3人だけになるとマリーアが操縦席に座り、無線機の周波数を合わせ発信ボタンを押した。
「コール!コール!こちらマリーアです。第1王女のマリーアです。誰か受信しましたら返信願います。」
 返答が受けられず3度繰り返した。(成層圏外に待機してるんやろか?いや、きっと迷彩リトルシップで直接捜査に来てるはずや。雲にさえぎられてミリ波が遮断されてるんやろか?)バッテリーレベルのモニターが下がってきているのを気にしながらマリーアは焦りを感じつつも、冷静に発信を続けた。
「コール!コール!誰か受信してくれてませんか?」

 残り時間が1分を切ったとき「キャッチ!キャッチ!こちらニコニーコ星太陽系艦隊情報将校のノトドン中尉です。プリンセスマリーアの発信で間違いないですか?本機ただいま珠洲市上空です。電波微弱ですがどちらからの発信ですか?」と高級情報将校でマリーア達の捜索隊のノトドン中尉を名乗る男性の声が無線機に入った。「よかった!繋がったで!」とピヨとチャプローはマリーアの後ろで抱き合った。マリーアは冷静に
「はい、マリーアです。ピヨと従者のチャプローも羽咋市にいます。ナチュコとピナも5キロほど離れたところにいます。全員無事です。そして元気にやっています。本星の父…、いやカズーシ大統領に私たちの無事をお伝え願います。」
「了解です。連絡が取れず心配してました。全員御無事なんですね。」
「はい、現地の大地震に巻き込まれましたが、全員元気に有意義な毎日を過ごさせてもらってます。リトルシップは羽咋沖に沈没しましたので、本来の予定通り、地球時間2月10日の日の出前に羽咋市の千里浜に迎えに来ていただけますよう母船の艦長にお伝え下さい。繰り返します。私たち5人は元気に過ごしています。大統領が心配しないようにそこだけはしっかりとお伝え願います。」
マリーアが話し切ると通話可能残り15秒の表示が出た。
「了解です。プリンセス達の無事が確認できてよかったです。プリンセス達の失踪の報を受けて、日本内の「グレイ」に不穏な動きが見えます。くれぐれも彼らとのコンタクトはご注意ください。では、2月10日午前6時にお迎えに上がらせていただきますので、それまでのバカンス・・・・をお楽しみください。オーバー。」
と受信すると同時に、機内のブレーカーが落ちた。

 「あー、マリーア姉さん良かったね!これでお父さんが勘違いすることも無くなったやん。あとひと月ゆっくりできそうで良かったわ。ただでさえも大地震で皆大変やのにうちの身内が「地球侵略」って洒落になれへんところやったもんな!
 でも、最後に「グレイ」には気をつけろってどういう意味なんかなぁ?「サンダーくん」がおらんで良かったよな。情報部って人を疑って見るのが仕事やと思うけど善意で手伝ってくれてる「サンダーくん」にしたら「気」が悪いよな。さあ、ピナちゃんも心配してるやろうから早く帰ろうや。」
と真っ先にピヨはUFOから降りた。

 小屋を出ると「サンダーくん」が「おっ、皆さんの表情を見るとうまくいったみたいですね。うちのサイキック情報官の予想が外れてくれるのが一番ですからよかったです。じゃあ、戦争回避祝いに今日は営業再開した「牛のもつ焼き屋・・・・・・・」で乾杯でもしますか!私も「地球を救った男」の裏方ですからね。カラカラカラ。」と声を上げて笑った。











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