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「生い立ち」
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「生い立ち」
2006年12月25日に那依は生まれた。父は2005年に現在の「B.LEAGUE」の前身となる「bjリーグ」が立ち上がると同時に、入団3年の実業団チームから新プロチームの「浪速ビリケンズ」に入団し、国内プロバスケットボール選手として名をはせた人気プレイヤーの「幸賀温太」、母は温太の実業時代からの熱烈なファンの「麻衣」で「温太」のプロ入りと同時に結婚し、2年目で初めて「浪速ビリケンズ」が優勝した年に授かったのが那依だった。
温太はビリケンズのエース選手としてプロ化して10年の間、「bjリーグ」を支えてきた選手のひとりであった。2015年、2016年のbjリーグの最後の2年はひざの故障と闘いながら、温太が名命した「まんじゅう」の愛称でペアを組む人気者のドイツ人助っ人選手「フムトアンデル・トキント」とのコンビネーションで2年連続の優勝で花を飾り、35歳でプロバスケットを引退した。
温太の引退と同時に「まんじゅう」はヨーロッパのプロリーグに移籍し活躍し続けたが、その友情はその後も続いた。
引退後は、当時、流行り始めた「スポーツバー」の向こうを張って、ニッチなニーズを狙った「バスケットボール居酒屋 温太」を開店した。
麻衣は「バスケに特化しないで普通の「スポーツ居酒屋」の方がいいんとちゃうの?」と心配したが、「bjリーグ」を引き継いだ「B.LEAGUE」の日本の試合にこだわらず、NBAに渡った日本選手の出場試合の衛星放送や、伝説のプレイヤーのプレイを集めたDVD上映会に始まり、現役プロバスケ選手を招いてのトークショーや、人気バスケ漫画のアニメ上映日など、多種多様の企画を立てた結果、店は温太の麻衣の予想以上に繁盛した。その中で、バスケとは関係ない温太の趣味で「UFOナイト」、「つちのこナイト」、「UMAナイト」と銘打った月一回のニッチ企画も多くの「オカルトファン」や「ムー民」に受け入れられた。
2007年春の一号店開店から5年の間に引退した後輩選手を雇い入れた「バスケ居酒屋」は3店に増えた。
2015年冬、東京オリンピックを5年後に控えた年、那依は小学校3年生になりその12月に地元に小学生バスケットボールチームが発足し那依は即入部したことをきっかけにい温太は家族の為に戸建て住宅を購入した。
その年末のクリスマスと重なる那依の誕生日に、温太は9歳を迎えた「愛娘」に誕生日とクリスマスと入部祝いとお正月の前倒しを併せて4つのプレゼントを用意した。一つは、並列で車を2台止められる6メートル四方の家のガレージの奥に230センチから305センチの高さに変更可能のフルサイズのバスケットゴールを設置し、コンクリートの上に板を貼ったプレイフィールドをプレゼントした。
ゴールのバックボードは那依が成長しても将来にわたって使えるように幅180センチ、高さ105センチのプロと同じサイズのものを用意し、レイアップシュートも可能なモノだった。ゴールの角度は左右90度振ることができ、ガレージ前の道路に出ればゴールまで6.75メートル以上の距離がとれ、正面、右サイド、左サイドからのスリーポイントシュート練習も可能な造りになっていた。
温太はそのゴールボードを小学3年生の那依に対して、ミニバスケ用の260センチでなく、「無理」とも思える大人仕様の305センチの設定で設置した。
もう一つのプレゼントはゴールの高さと同様に小学3年生の内には無茶振り「の7号球」のバスケットボールだった。円周で77センチ、重量600グラムの「7号球」は、小学生が使う大人用のサッカーボールとほぼ同じサイズの「5号球」や中学女子が使う円周73センチ、重さ560グラムの「6号球」と比べると非常に重く大きかった。
最初は、フリースローレーンからゴールリングまでボールが届かなかったが、第2次成長期が人より早く来た那依は、ひと月で大きく重い「7号球」と高いゴールで10回に1回はシュートを決められるようになった。
「那依、このボールとゴールで今から練習することがきっとお前の役に立つ。何事も1歩先を見た練習が必要だ。お父さんとの「1オン1」でゴールが決められるように頑張って練習するんやで。」
と優しい言葉で「スパルタ」を強要する温太の教え方に麻衣はあきれながらも、日々背が伸び、体力もついて来た那依が次々とシュートを決めるようになるのを微笑んで見守った。
3つ目のプレゼントは、NBAの超スター選手のマイケル・ジョーダンの名前から元の飼い主が「ジョーダン」と名前をつけられた黒毛のレトリバーだった。
転勤が決まって飼えなくなったという店の客に譲ってもらったという3歳のラブラドールレトリバーは元々バスケットが好きな飼い主に鍛えられていたこともあり、那依のドリブルの最適の練習相手になった。
ドリブルする那依にまとわりついてくる「ジョーダン」を上手にフェイントでかわすうちに、レトリバーと比べれば敏捷性もスピードも劣る小学生レベルのプレイヤーでは誰も那依のドリブルを止められなくなった。
散歩では「駆け足」が好きな「ジョーダン」と走るうちに、那依は「スピード」と「持久力」を自然と身につけることができた。
そして、最後のプレゼントは、「青い5個組のトルコ石の髪飾りだった。髪を伸ばしポニーテールにしていた那依の前髪の横にたらした細い三つ編みに通すアクセサリーで、温太の好きなアメリカの女子バスケット選手がしているものと同じ物という事だった。
「トルコ石は「神が宿る石」であると同時に「人と人を結び付ける」と言われてるんや。バスケは一人ではできへんスポーツやろ。5人の信頼できる仲間が揃ってこそプレイができるわけや。その意味を含めて那依がこの先、良いチームメイトに恵まれるよう5つの石をプレゼントするから使ってな。」
と言って温太からプレゼントされて以来、8年間ずっとトルコ石は那依の髪を飾り続けているが、トルコ石の「云われ」については今の那依の頭には残っておらず、「12月生まれの誕生石」というだけの認識になっている。
4年生に上がると、人気バスケ漫画に影響を受け、「左手は添えるだけ」と言いながらフリーシュートの練習を繰り返し、7号球でのシュートの半分は入るようになった。
5年生になり身長は155センチを超えた那依は、3ポイントシュートも決められるようになった。中学に入るころには165センチを超え、中学校の女子の新入生では一番背が高かったがその後も背は伸び続け、高校に入学時は173センチ、現在は178センチとなりここ数カ月は落ち着いている。
温太との「1オン1」でも、絶妙のドリブルと「ジョーダン」に鍛えあげられた類まれな敏捷性と反射神経でのフェイントを交え、4対6くらいの差になってきている。
「うーん、やっぱりお父さんには敵わへんよなぁ…。」
と那依が呟くと
「心配すんな。さすがに192センチの女子選手は国内には居れへんやろ。カラカラカラ。」
とナイトの練習後、温太は旨そうにビールを飲むのが、いつもの休日だった。
その様子を見ながら麻衣は冗談交じりで温太に怒るのもいつものことだった。
「お父さん、那依とばっかり遊ばんとたまには私とも遊んでや!娘と「浮気」ばっかりしてたら私すねるで!ぷんぷん。」
3人で大きな声で笑い合えるのは2020年前半までだった。
2006年12月25日に那依は生まれた。父は2005年に現在の「B.LEAGUE」の前身となる「bjリーグ」が立ち上がると同時に、入団3年の実業団チームから新プロチームの「浪速ビリケンズ」に入団し、国内プロバスケットボール選手として名をはせた人気プレイヤーの「幸賀温太」、母は温太の実業時代からの熱烈なファンの「麻衣」で「温太」のプロ入りと同時に結婚し、2年目で初めて「浪速ビリケンズ」が優勝した年に授かったのが那依だった。
温太はビリケンズのエース選手としてプロ化して10年の間、「bjリーグ」を支えてきた選手のひとりであった。2015年、2016年のbjリーグの最後の2年はひざの故障と闘いながら、温太が名命した「まんじゅう」の愛称でペアを組む人気者のドイツ人助っ人選手「フムトアンデル・トキント」とのコンビネーションで2年連続の優勝で花を飾り、35歳でプロバスケットを引退した。
温太の引退と同時に「まんじゅう」はヨーロッパのプロリーグに移籍し活躍し続けたが、その友情はその後も続いた。
引退後は、当時、流行り始めた「スポーツバー」の向こうを張って、ニッチなニーズを狙った「バスケットボール居酒屋 温太」を開店した。
麻衣は「バスケに特化しないで普通の「スポーツ居酒屋」の方がいいんとちゃうの?」と心配したが、「bjリーグ」を引き継いだ「B.LEAGUE」の日本の試合にこだわらず、NBAに渡った日本選手の出場試合の衛星放送や、伝説のプレイヤーのプレイを集めたDVD上映会に始まり、現役プロバスケ選手を招いてのトークショーや、人気バスケ漫画のアニメ上映日など、多種多様の企画を立てた結果、店は温太の麻衣の予想以上に繁盛した。その中で、バスケとは関係ない温太の趣味で「UFOナイト」、「つちのこナイト」、「UMAナイト」と銘打った月一回のニッチ企画も多くの「オカルトファン」や「ムー民」に受け入れられた。
2007年春の一号店開店から5年の間に引退した後輩選手を雇い入れた「バスケ居酒屋」は3店に増えた。
2015年冬、東京オリンピックを5年後に控えた年、那依は小学校3年生になりその12月に地元に小学生バスケットボールチームが発足し那依は即入部したことをきっかけにい温太は家族の為に戸建て住宅を購入した。
その年末のクリスマスと重なる那依の誕生日に、温太は9歳を迎えた「愛娘」に誕生日とクリスマスと入部祝いとお正月の前倒しを併せて4つのプレゼントを用意した。一つは、並列で車を2台止められる6メートル四方の家のガレージの奥に230センチから305センチの高さに変更可能のフルサイズのバスケットゴールを設置し、コンクリートの上に板を貼ったプレイフィールドをプレゼントした。
ゴールのバックボードは那依が成長しても将来にわたって使えるように幅180センチ、高さ105センチのプロと同じサイズのものを用意し、レイアップシュートも可能なモノだった。ゴールの角度は左右90度振ることができ、ガレージ前の道路に出ればゴールまで6.75メートル以上の距離がとれ、正面、右サイド、左サイドからのスリーポイントシュート練習も可能な造りになっていた。
温太はそのゴールボードを小学3年生の那依に対して、ミニバスケ用の260センチでなく、「無理」とも思える大人仕様の305センチの設定で設置した。
もう一つのプレゼントはゴールの高さと同様に小学3年生の内には無茶振り「の7号球」のバスケットボールだった。円周で77センチ、重量600グラムの「7号球」は、小学生が使う大人用のサッカーボールとほぼ同じサイズの「5号球」や中学女子が使う円周73センチ、重さ560グラムの「6号球」と比べると非常に重く大きかった。
最初は、フリースローレーンからゴールリングまでボールが届かなかったが、第2次成長期が人より早く来た那依は、ひと月で大きく重い「7号球」と高いゴールで10回に1回はシュートを決められるようになった。
「那依、このボールとゴールで今から練習することがきっとお前の役に立つ。何事も1歩先を見た練習が必要だ。お父さんとの「1オン1」でゴールが決められるように頑張って練習するんやで。」
と優しい言葉で「スパルタ」を強要する温太の教え方に麻衣はあきれながらも、日々背が伸び、体力もついて来た那依が次々とシュートを決めるようになるのを微笑んで見守った。
3つ目のプレゼントは、NBAの超スター選手のマイケル・ジョーダンの名前から元の飼い主が「ジョーダン」と名前をつけられた黒毛のレトリバーだった。
転勤が決まって飼えなくなったという店の客に譲ってもらったという3歳のラブラドールレトリバーは元々バスケットが好きな飼い主に鍛えられていたこともあり、那依のドリブルの最適の練習相手になった。
ドリブルする那依にまとわりついてくる「ジョーダン」を上手にフェイントでかわすうちに、レトリバーと比べれば敏捷性もスピードも劣る小学生レベルのプレイヤーでは誰も那依のドリブルを止められなくなった。
散歩では「駆け足」が好きな「ジョーダン」と走るうちに、那依は「スピード」と「持久力」を自然と身につけることができた。
そして、最後のプレゼントは、「青い5個組のトルコ石の髪飾りだった。髪を伸ばしポニーテールにしていた那依の前髪の横にたらした細い三つ編みに通すアクセサリーで、温太の好きなアメリカの女子バスケット選手がしているものと同じ物という事だった。
「トルコ石は「神が宿る石」であると同時に「人と人を結び付ける」と言われてるんや。バスケは一人ではできへんスポーツやろ。5人の信頼できる仲間が揃ってこそプレイができるわけや。その意味を含めて那依がこの先、良いチームメイトに恵まれるよう5つの石をプレゼントするから使ってな。」
と言って温太からプレゼントされて以来、8年間ずっとトルコ石は那依の髪を飾り続けているが、トルコ石の「云われ」については今の那依の頭には残っておらず、「12月生まれの誕生石」というだけの認識になっている。
4年生に上がると、人気バスケ漫画に影響を受け、「左手は添えるだけ」と言いながらフリーシュートの練習を繰り返し、7号球でのシュートの半分は入るようになった。
5年生になり身長は155センチを超えた那依は、3ポイントシュートも決められるようになった。中学に入るころには165センチを超え、中学校の女子の新入生では一番背が高かったがその後も背は伸び続け、高校に入学時は173センチ、現在は178センチとなりここ数カ月は落ち着いている。
温太との「1オン1」でも、絶妙のドリブルと「ジョーダン」に鍛えあげられた類まれな敏捷性と反射神経でのフェイントを交え、4対6くらいの差になってきている。
「うーん、やっぱりお父さんには敵わへんよなぁ…。」
と那依が呟くと
「心配すんな。さすがに192センチの女子選手は国内には居れへんやろ。カラカラカラ。」
とナイトの練習後、温太は旨そうにビールを飲むのが、いつもの休日だった。
その様子を見ながら麻衣は冗談交じりで温太に怒るのもいつものことだった。
「お父さん、那依とばっかり遊ばんとたまには私とも遊んでや!娘と「浮気」ばっかりしてたら私すねるで!ぷんぷん。」
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