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「申し立て取り下げ」

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「申し立て取り下げ」

 それから4週間が過ぎ、月末の裁判期日の予定日の前日を迎えた。朝8時50分、金城事務所に原が大量のハーゲンダッツを手土産にノーアポで飛び込んできた。
「副島さん、森先生、いったい何やってくれたん?今朝、突然「美人局離婚訴訟」の弁護士事務所から「訴訟取り下げの申し出」があったんやけど…。これって蘭ちゃんの仕業なんか?」
 興奮気味に応接室に上がり込むと、森の出した「冷茶」を一息で飲み干すと、興味津々に尋ねた。

 「まあ、おいちゃんの話よりも直接羽藤さんの話を聞きたいようやったら、適当に用事をつけて来てもらうけど?」
と副島が目を細めて誘いをかけると、原は一も二も無く頷いた。
 9時半に蘭が自転車でやってきて、事の顛末を原に対して説明を始めた。

 原からの「ウルトラマン出動」の依頼を受けたその晩に蘭はドイツの特殊警察や日本の警視庁の「SAT」も使用しているという高性能狙撃銃「PSG-1」に「消音器サイレンサー」をつけ、火薬量を減らした「弱装弾」で「盗聴器」を仕込んだ軟粘材の弾頭を換気扇と部屋の上部についている「吸排気口」に撃ち込んだ。
 そこで得られた情報は、「令和の美人局つつもたせ」役の「筒持瀬アーリン」の複雑な男性関係だった。まず、盗聴器を仕掛けたその日に会話から推測するに「イケメンやくざ」の「A」の存在が浮かんだ。
 「A」は自ら所属する「組」が経営する京橋のホストクラブの人気「イケメンホスト」のようだった。新暴対法により、それまでの「収入しのぎ」が無くなり、ホストで得た「客」のアングラな情報から「恐喝」、「詐欺」を業としているようで、「日開尾与多恵ひがいお・あたえ」は「A」の太客と言うことが分かった。

「あかんな。離婚裁判原告の奥さんは「A」が「やくざ」と知らんにしても、「ホスト」の「A」に対して資産状況や夫との不仲や取引先名やよく行くキャバクラまで全部を自分から話してしもてるがな。こりゃ、ガチガチ・・・・や。
 やくざは自分に火の粉がかからんように、自分の客で「買い掛け」溜めてる「筒持瀬」を「刺客」にして嫁さんから聞き出した取引先がお気に入りのキャバクラに送り込んだんやな。探偵もおそらく「A」の声掛けで雇った「えせ探偵」やろ。あーあ、「やり」始めよった。蘭ちゃんの耳には毒やから聞かんでええで…。」
副島は盗聴器からの音声を一緒に聞いていた蘭のイヤホンを外させたが蘭は「いや、「ベッドの中に秘密あり」やで。」と言い、再度イヤホンを耳に差し込んだ。

 筒持瀬の背後に「やくざ」がいたことを確信した副島が呟くと、60分程の濡れ場を一方的に聞かされうんざりした表情の副島の横で蘭が一言挟んだ。
「おっちゃん、ちょっと待って。「A」がもうすぐ帰るみたいやわ。さっきのピロートークの中でちょっと気になることがあってん。やくざホストとその客であり、「手下」の女の話として凄く違和感のある会話がいくつかあったんやけど…。あっ、「A」が帰ったで。窓から筒持瀬が「A」が完全に出ていったのを確認しとる。どこか電話かけとるな。少なくとも「A」ではなく「B」ってやつや。これは面白くなってきたで!」
と蘭は目を輝かせた。

 「へー、そんなことがあったんや。でも、相手がやくざやったんやとしたら、ますますもってなんで楽して儲けられる話やのに「訴訟」を引き下げんの?話には続きがあるんやろ?」
原がきっかけは掴んだにしても、その先の展開が今日の結論にどう繋がるのかわからずに再度質問した。

 話は盗聴器を仕込んだ2日後に飛んだ。蘭は、盗聴初日に筒持瀬が「A」が帰った後に電話をした「B」が部屋に来ることを聞き取っていた。その中で「一戦・・」終えた「A」がシャワーを浴びている間に、「A」のスマホにスパイアプリを入れることに成功したことを「B」に伝えていたことに気付いていた。
 「B」との会話によると、「A」はどうやら以前、蘭が「ウルトラマン契約」で「排除」した違法駐車のやくざのベンツの組の者であることが推測できたという。「親分オヤジのベンツが敵対組織にボコボコにされてから機嫌が悪くて困ってるねん。」の一言で蘭と副島の頭の中で切れた2本の糸が一本に繋がった。

 「B」が筒持瀬の部屋に来た時の会話で「推測」は「確信」に変わった。「A」と「B」は互いに競合する敵対中の「反社」であり、筒持瀬は二股をかけている。蘭が推測と自分の今後の作戦を副島に意見を求めると
「羽藤さんの観察眼には驚きやな。それは間違いないやろ。単なる「女の勘」っていうんやなく、科学的言語分析と状況分析から出る結論やな。
それを利用して「A」と「B」から情報を引きだして、それを利用して両方を潰す!まさに「二虎競食の計」に「離間の計」ってか?そんでもって原先生とこの依頼人さんは「漁夫の利」を得て、慰謝料無しで離婚できるってか?もしかしたら羽藤さんは「令和の諸葛亮公明」かもしれへんな。原先生は劉備で森君が関羽、そんでおいちゃんが「うっかり八兵衛」ってなもんやな。カラカラカラ。」

 そこから約20日間の情報収集の後、蘭と副島の考えた「A」、「B」を煽り、互いの知っている情報をこちらで労せず抜き取り、各々を弱体化させる「筒持瀬」を使った「二虎競食の計」と「日開尾与多恵」と探偵事務所をも巻き込んだ互いを疑心暗鬼にさせる「離間の計」に至るまでの経緯が蘭の口から語られた。

 まずは、偽の日開尾の持つ「A」、「B」ともに欲しがるであろう不動産売却情報を筒持瀬のマンションに定期的にポスティングした。日開尾から聞いていた筒持瀬の携帯にキャバクラの客の不動産屋を装い副島が直接電話で営業をかけた。
「あなたが直接お買いになられなくても、「優良不動産物件」をお探しになられてるお客様をご紹介いただけましたらご成約の際にはあなたにそれなり・・・・のお礼もさせていただきますので…。」
と言葉巧みに誘いをかけた。その営業トークの中に、「A」と「B」を離間させるヒントをそれとは無しに組みこんでいくことで、こちらに有利なよう「無意識誘導」をかけていった。

 日開尾享太にはキャバクラに行かせ、「妻との離婚の慰謝料を払うのに「東京」の大手不動産に資産をまとめて売却する。」といった嘘をつかせたり、「実は親の代の億単位の負債が発覚して自己破産を申し立てる予定だ。」などとかく乱情報を流させた。
 その結果、「A」と「与多恵」の関係にひびが入った。「A」は、早めの「離婚」を進め、不動産の売却を急いだが裁判になってる以上、進めようがない。
 「B」には「筒持瀬」が「A」と「与多恵」の悪だくみに乗り、「無かった不倫」を強要されたことを「ネタ」に「与多恵」が離婚裁判で勝訴した後、「A」と「与多恵」と「探偵事務所」を「詐欺罪」で訴えると「脅迫」し、「与多恵」が受け取った不動産を安く買いたたく策を「不動産営業から聞いた」と提案させた。

 3週間の間に「筒持瀬」を中心とした「犯罪行為」の「言質」が集まり、その骨格がほぼ揃った頃を見計らい、森と副島が「筒持瀬」と「A」、「筒持瀬」と「B」の会話を「再編集」の上、「再録音」した「与多恵」、「探偵事務所」も含めた各々5名に不利になる「音声データ」を作成し、「怪文書」と共に「A」、「B」の所属する組に対しても「共謀罪」で警察に「リーク垂れ込む」する準備があると思わせる内容で「すっぱ抜き」で有名な週刊誌名に似せた名前で電話を入れ、パソコンで作成した「でっち上げ記事」の「ゲラ刷り」を送りつけ、「組」にも脅しをかけた。
 どこがコケても全面倒壊の多角ドミノの駒とされた、「A」、「探偵事務所」に「B」、そして各々の所属する組にいたっても、この裁判が進むことで不利益が生まれる状況を作り上げたことが蘭と副島から語られ原は納得した。

 「なるほどなぁ…。確かにそれは「弁護士」ではできへん「仕事」やな。それにしても「ウルトラマン蘭ちゃん」は何でもできるんやな。それにしても「負け確定の離婚裁判」を慰謝料無しで終われたんは大きいわ。うちの報酬は殆ど「経費無し」で解決した分、しっかりと「ウルトラマン」に払わせてもらうわな。これからも「よーろーひーこー」ってなもんやな!カラカラカラ。」
と副島が持ち込んだビールを昼前にもかかわらず飲み始めた副島と森の笑顔を見ながら蘭は森と一緒に原が持参したハーゲンダッツに口をつけた。

 まさか、その後すぐ蘭の「不法行為犯罪」で門真に…、いや日本に居られなくなるような事件が起こるとは誰も予想はしていなかった。



「おまけ」
今日もクマちゃん蘭ちゃんです(笑)!
ワンパターンですみません!(。-人-。) ゴメンネ








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