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ALS・筋萎縮性側索硬化症でもプロレスラーになれますか?新人レスラー安江の五倫五常

「スーパー銭湯」

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「スーパー銭湯」
 店に入るなり、直は、安江の顔色に気がついた。
「おっ、安江ちゃん、なんかエロ話でもしてたんか?顔真っ赤やないか!まあ、後でわしが一から十まで聞いたるわ。まあ、はよ風呂行こ。わしがタクシー代持つから、大手温泉ホテルチェーンがやってるとこ行こな。ところでひまちゃんは?」
と皆を急かす。
「直さん、ひまちゃん、もう寝てしもて…。だから、今日はそのまま寝かせといたってもらってええですか?」
「ええー、そりゃ残念やなぁ。まあ、起こしたんのも可哀そうやから、今日は安江ちゃんをおかずに風呂を楽しむか。」
「「おかず」って何ですか?何か直さん怖いんですけど…。」
「まあ、気にすんな。女三人、楽しもう言う話や。じゃあ、三朗、稀世ちゃん借りていくで。」
「はい、ゆっくり楽しんできてくださいね。」

 スーパー銭湯に着き、直が三人分料金を支払い、更衣室へ入った。服を脱ぐふたりをまじまじと見て、
「稀世ちゃんは、相変わらずの見事なおっぱいやけど、安江ちゃんは、稀世ちゃんとは違う女の魅力があるわなぁ。やっぱりウクライナの血かのう。おっ?」
直が安江のショーツを引きずり下ろした。
「きゃっ!直さん、何するんですか!」
「いやー、金髪の子の下の毛は金髪なんかどうかって思ったんやけど、安江ちゃん、生えてないんか?」
稀世も安江の股間を覗き込む。
「ほんまや…、パイパンの子って初めて見たわ。最初から生えてへんの?それとも剃ってんの?」
「もう、稀世姉さんまでやめてくださいよ。私、柔道やってたんで…。」
「ん?それが?」
「柔道って、うつ伏せになった相手をおしりから手をまわして、下履きの股間部分を持って相手を持ち上げたり、ひっくり返したりするじゃないですか。その時に、質(たち)の悪い選手は、わざと陰毛を下履きの上から掴むんですよ。そしたら「ブチブチブチ」って大量に引っこ抜かれるんですね。一度に何十本もですよ。想像してくださいね。その痛みと言ったら。全身の意識が、股間に集中して、体の力が抜けてしまうんです。
 特に、私、自分で言うのもなんですが、目立つ選手だったんで、よくやられました。試合後、礼をしたときに、足元に金髪の縮れ毛が落ちてたら、一発で私のものってわかっちゃうじゃないですか。審判は男の人が多いですし、それが嫌で、中二の時に剃りだしたんです。そしたらどんどん濃くなるし、剃っても剃っても生えてくるんで、結局、お小遣い貯めて永久脱毛したんですよ。」
安江が照れくさそうに話していると、直が稀世の陰毛を引っ張った。ブチブチと数本の毛が一気に抜け、直の手に残った。
「痛っ!直さん何するんですか!仕返しですよ!」
と稀世が直の下の毛を掴み、引っ張った。
「がおっ!下の毛に白髪が出たときに一本ずつ抜くのとは、破壊力が違うな。安江ちゃんのおかげで、ひとつまた賢くなったわい。稀世ちゃん、今度、マチルダと会うことあったら、マチルダのあそこも見てみいや。」
「うん、見てみる。「つるつる」でも金髪で「もじゃもじゃ」でも見る価値あるわな。」
 バカな話をしている三人に周囲の目は冷たかった。
「まあ、下の毛の話はともかく、安江ちゃんもええプロポーションしてるやないか。スリーサイズはなんぼやねん。」
「はい、絶対に他の人に言わないでくださいよ。」
「あぁ、任せとけ。で、上からなんぼや?」
「89の58の87です。絶対に内緒ですよ。」
「稀世ちゃんの100センチのロケットおっぱいもええけど、真っ白な肌にピンクのぽっちの安江ちゃんのおっぱいもなかなかの絶景やな。後で、洗いっこするとき、ちょっと揉ませてくれな。」
「ええー、堪忍してくださいよ。稀世姉さん、いつも直さんに揉ませてるんですか?」
「うん、直さん、勝手に揉んでくるんよ。」
「まあええやないか。稀世ちゃんの「神乳」を三朗とひまちゃんしか触られへんって、天下の損失やないか。わしが揉んだところで減るもんやないしな。まあ、わしのヘチマおっぱいも安江ちゃんに触らせたるから、条件はいっしょや。
 わしも五十年若かったら、ふたりと勝負したんねんけどなぁ。こう見えて、昔は、ニコニコ商店街の「アグネス・ラム」って呼ばれとったんやで!かかかか。」
「わ、私は遠慮しておきます。お先に、失礼します。」
と安江はタオルとシャンプーセットを持って先に湯船に走っていった。
「うぶな子は、からかうと楽しいのう、なぁ、稀世ちゃん。」
「直さん、安江ちゃんは、いいとこの育ちなんやから、あんまり無茶苦茶せんといたってくださいよ。」
ふたりも、安江の後に続いた。

 午後十時過ぎにもかかわらず、大浴場は結構な人だった。三人、横並びに湯船につかり、一息ついた。
「安江ちゃん、ニコニコの街には、もう慣れたか?」
「はい、みんないい人ばかりで。中には、いまだに「グッドモーニング」、「ハロー」って話しかけられることがありますけどね。サロンのおばあちゃんやおじいちゃんは、まだ私を外人やと思ってるみたいです。」
「まあ、その見た目やからなぁ。染めた金髪と違って、いわゆる「ブロンド」やもんなぁ。おっさんらがBARまりあに通うのもよおわかるわ。」
「せやね。まりあさんも安江ちゃん入ってから、売り上げ「爆上げ」って喜んでたもんなぁ。お客さんの扱いも丁寧やし、粋華がおった時以上の人気やって褒めてたで。」
「いや、そんなこと無いです。武藤さん以外は、おっぱい触ったりしませんし、みんな優しいですよ。」
「なにぃ!金義、まだそんなことしよんのか。わしから、粋華に教えたらなあかんな。」
「いや、直さんいいんですよ。触られたの一回っきりですから。ただ「やっぱり粋華ちゃんのおっぱいに勝るものはないな。」って。ひどいですよね、乙女の胸触っておいて。」
「うーん、微妙やなぁ。でも、おっぱい触らすなら、若いうちやぞ。稀世ちゃんも安江ちゃんも巨乳やから五十年たったら、わしみたいに「ヘチマ乳」になるんやからな。」
 稀世は大声で笑ったが、安江はボソッと呟いた。
「私、「ヘチマ」にはなれないですから…。」

 気まずい雰囲気が流れる中、直が「ちょっと、話させてもらってええかな?」とあらたまって安江に聞いた。「はい、なんでしょうか?」安江は答えた。
「前にも言うたかも知れへんけど、安江ちゃんは、自分の「寿命」や「身体」のことになると、考え込んでしまうわなぁ。「期限」が切られてることは、「マイナス」か?」
「はい、だって皆さんは、何十年先の話ができますけど、私にはそれができませんので…。」
「うーん、人は、病気以外でも「ぽっくり」逝ってしまうことかてあるやろ。その方が、残されたもんに、辛い思いをさせることもあるんやで。」
「えっ?どういう意味ですか?」
「ちょっと、長くなるけどええか?」
「はい…。」
(いったい、何を直さんは話そうとしてるのだろう。)安江は考えながら、直の顔を見た。

 直の話は、自分自身のことだった。十七歳で菅野電器店に嫁いだ直は、四年のうちに三人の娘を授かった。最初の娘「ひろ子」は、直の姉のところの娘として育ち、後に三朗の母になったと聞いた。そのことは、三朗には内緒にしているとのことだった。直の姉の嫁ぎ先は、農家を廃業し、当時伸び盛りだったアスベストを使った建材を製造していた。肺を患い、余命五年と告知を受けたのち、それを承知で三朗の父と結婚し、十七年後に笑顔で死んでいったと聞いた。
 向日葵寿司の先代である三朗の父と母と三朗の家庭は、常に笑顔が絶えない家庭で、ひろ子の死の直前でも全く暗さは無かったと直は昔を思い出しながらゆっくりと語った。
「直さんは、三朗さんの本当のおばあさんなんですね。どうして、そのことを教えてあげないんですか?」
「あぁ、わしの姉が生きてる間は、三朗に伝えるのは無しやな。そういうもんやろ。三朗にしても、近所のうるさい婆が、今更、「実の祖母」って言われても困るやろうしな。」
「…、そうですね。でも、三朗兄さんのお母さんが「余命五年」って言われてても結婚されたお父さんの気質が三朗兄さんにも受け継がれているのはよくわかりました。稀世姉さんも最初は三朗兄さんの求愛を断ったって言ってたのを、直さんの助言で結婚してよかったって言ってましたもんね。「まだ、半年も」あるやないか、って直さんの言葉が、私の頭にも強く残っています。」
「せやねん、だから、安江ちゃんの、二年だか五年だかいうのは、「まだまだ時間がある。」ちゅうことやとわしは思うぞ。それは、まだまだ、可能性があるっちゅうこっちゃ。突然ぽっくり逝ったらなんもでけへんからなぁ…。」
 直の目に光るものが浮かんだ。(えっ?直さん、泣いてる?)
 

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