上 下
22 / 71
第3話 自由なきお嬢様

お礼はホテル!?

しおりを挟む
「ではお父様、『ホテル紅』の予約をお願いしますね?時間は・・・・・・そうね、十八時で構いませんので」
『ホテル!?何ホテルって!へぇ~、助けた上から、ディナーの後はホテルでお泊まりですか・・・・・・そうですか・・・・・・、もう・・・・・・知らないわよ、直哉のバカあああ』

 優子の叫び声と共に電話をきられてしまい、直哉は何が起こったのか理解出来なかった。だが、優子が何故ホテルやらディナーの話をしてきたのかすぐに分かる事なったのだ。

「あら、神崎様、電話は終わりましたの?先程、お父様を説得致しまして、お詫びにディナーをご馳走する事にしましたの。この後のご予定とか・・・・・・ございましたか?」

潤んだ瞳で直哉を見つめ、断りづらい状況を作り出した沙織の思惑通り、直哉は断れずにディナーをご馳走になる事にしたのだ。

「特に予定は・・・・・・ないです」
「それは良かったですわ。神崎様とお食事なんて・・・・・・今から楽しみで待ち遠しいですわ」

 心の底から喜んでいる様に見え、直哉もその場の雰囲気に流されるかの如く笑顔になっていた。ディナーまでまだ時間があるので、直哉の服を召し替える為クローゼットへと案内されたのだ。

 そこは、直哉のアパートと同じぐらいの広さにビッシリ服が仕舞われており、その中から直哉に合いそうな服を沙織が選んでいた。

 せっかくのディナーなので、正装で行こうと沙織は考えており、沙織の着るドレスと合わせようとしたのだった。


 一方、直哉の電話を怒りで切ってしまった優子は、不貞腐れながら亜子と紗英に慰められていた。

 直哉の言い分を聞かずに一方的に電話を切った事を後悔しながら、優子は亜子と紗英に相談をしたのだ。

「うぅ・・・・・・。はぁ・・・・・・」
「優子、切ってしまった事はしょうがないわよ。それで、これからどうするつもりなのかな?」
「電話越しの声・・・・・・可愛かったよぉ・・・・・・。直哉はきっと、性悪女に騙されてるんだよ・・・・・・。うぅ・・・・・・」
「もう、優子は放って置いて、紗英さん二人で行きましょうか。直哉君を返してもらわないとね」
「は、はい・・・・・・。直哉君・・・・・・大丈夫かな。私・・・・・・頑張って直哉君を連れ戻すね」

 心ここに在らずの優子を放って置き、亜子と紗英は直哉がディナーに行く為『ホテル紅』へ向かう準備を始める。

買った荷物を一度家に置いてから、ホテルに向かおうとした時、優子の生気が戻り突然大声をあげたのだった。

「あー、もう、こうなったら直接文句言わないと気がすまないわ。『ホテル紅』には私も行くからねっ」
「あら、やっと元に戻ったのね。では、三人で行くとしましょうか」
「あの・・・・・・その前に一つ質問が・・・・・・。確か・・・・・・『ホテル紅』って・・・・・・物凄く高いってテレビで紹介されていたと思います」

 一介の高校生に、そんな高級店に行けるだけの財力がある訳がない。優子と紗英が諦めかけた時であった、亜子は財布から光輝く一枚のカードを取り出したのだった。

 まるでカード自体が光っている様に思え、優子と紗英は眩しさのあまり目を閉じてしまう程なのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

白雲八鈴
恋愛
 私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。  もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。  ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。 番外編 謎の少女強襲編  彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。  私が成した事への清算に行きましょう。 炎国への旅路編  望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。  え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー! *本編は完結済みです。 *誤字脱字は程々にあります。 *なろう様にも投稿させていただいております。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

無自覚愛されキャラの天使は今日も気づかずあの子を堕とす

なかの豹吏
恋愛
 灰垣空(はいがきそら)高校一年生。  小柄な体躯とその愛らしい容貌から、別名「天使」と呼ばれている。   彼の周囲を取り巻くのは、それぞれに劣等感や悩みを持つ女性達。   そんな彼女達は、無自覚愛され系天使によって少しずつ変わっていく。   周りの人々を笑顔にする空だったが、彼も当然天使ではなく人間。 抱えているものや、願望だって持っている筈。  日常がほんの少し上向きになる、ほのぼの系恋愛ラブコメ(予定)。 ※ この作品は他サイトでも掲載されております。

旦那様の不倫相手は幼馴染

ちゃむふー
恋愛
私の旦那様は素晴らしい方です。 政略結婚ではございますが、 結婚してから1年間、私にとても優しくしてくださいました。 結婚してすぐに高熱を出してしまい、数ヶ月は床に伏せってしまっていた私ですが、元気になったので、心配してくださった旦那様にお礼の品を自分で選びたく、城下町にお忍びで買い物へ出かけた所見てしまったのです。 旦那様と、旦那様の幼馴染のカレン様が腕を組んで歩いている所を、、、。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

処理中です...