豆まきの悲劇

朽木昴

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豆まきの悲劇

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「鬼は外! 福は内」
「そこのキミ、鬼が何をしたっていうんだい! 署まで来てもらおうか」

 今日は節分の日。
 豆まきをしていたはずの僕は、警察官に腕を掴まれ警察署へ連行された。こんなのは不当な逮捕であり、すぐに釈放されるはずであった……。

「キミね、何時代の人間だい? 今の時代、豆まきのルールは法律で定められているんだよ」
「そんな法律知りませんよ! だいたい、豆まきの法律ってなんですかっ」
「授業で習ってないのか。いいかい、豆まきの法律というのはね……」

 警察官が言うには、豆まき規制法というモノが成立して十年が経つとのこと。
 その内容は──。

 1.鬼を悪役にしてはならない。
 2.豆を投げてはいけない。
 3.豆を鬼もしくは、その代役となる人にぶつけてはならない。
 4.豆まきはイメージで実施すること。

 まったく聞いたことのないルールに、僕の頭からは疑問符が浮かんでいた。

「そ、それで、そのルールを破るとどうなるんですか?」
「安心するといい、実刑や罰金などないから。ただ……」

 実刑や罰金さえなければ、簡単な注意で帰れる。僕は安易な答えを導きだしていた。

「鬼ヶ島へ島流しされるだけだね。もちろん、死ぬまでだよっ」
「ま、待ってください。そんなの知りませんよ! そうだ、弁護士、弁護士を呼んでください」
「残念ながら……裁判なんて存在しないんだ。今からキミを鬼ヶ島へ島流しするだけだから」

 こうして僕は鬼ヶ島へ連れて行かれた。本当の鬼はこの法案を可決した人たち。だから僕は……この国に復讐しようと決意したのだ。
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