114 / 186
第十章 悲しき邂逅
寝込みを襲うわけではありません
しおりを挟む
あれから、カナちゃんが家に結界を張ってくれて、とりあえず家の中ではいつも通り生活出来るようになった。
「開運のお札もろたんでお裾分けです。これ家に貼ると、運気がぐんぐん伸びてきっとええ事ありますよ」
もちろん、そんな効果は無い。
だけど、その言葉に母は何の違和感も持たない。
「どこに貼ったらいいかしら? カナちゃん教えて~」
ルンルン気分で尋ねる母に「何なら俺、やりますよ」と人当たりの良いスマイルを浮かべるカナちゃん。
そこに他意が含まれていることに、母はもちろん気付かない。
「いいの? 助かるわ~」
こうして、何の疑問も持たれずに彼は家に結界を張ってのけた。
私は彼に『浪花のペテン師』の称号を与えたい。
その日の夜、上機嫌で話しかけてきた母は
「桜、ほら見て! 無くしてた指輪が見つかったのよ! これもカナちゃんが貼ってくれたお札のおかげね!」
と、都合よく良い事はお札のおかげだと思い込んでくれている。
『母よ、それはお札のおかげではなく、元々見つかる運命だった指輪だ』と、私は心の中で一人つっこんでいた。
呪いをかけられても、私はいつもの日課をこなさねばならない。
左手の呪印がⅠの数字を刻んだ日に、プリンセスコンテストが行われる。
優菜さんという強力なライバル……と、私が言うのもおこがましい超絶美少女の天使様と戦わなければならない。
そのためには、呪いに屈している時間などないのだ。
美容体操をしながら、気合いを入れ直していると──
「なぁ、それスカートはいてやれよ。その方が見てて楽しいぞ」
背後から突如話しかけられ、寿命が三年ほど縮んだ。
「い、いつからそこに?!」
「お前が一人で回想し始めたくらい」
「最初からじゃん! ていうかシロ、体調大丈夫なの? よくテレポート出来たね?」
「ああ、これくらいなら平気だ。変化はうまく出来ないけど……」
コハクに化けようとして、知らないおっさんに変化したシロ。合ってたのは性別くらいで、それくらいアバウトにしか今はコントロールが出来ないらしい。
「俺の事はいいから、続きやれよ。ただし、これに着替えてからな」
そう言ってシロは、袖口から取り出した葉っぱを自信満々にあるものへと変化させる。
「それだと動きにくいから却下」
「動きにくいだと? そんなはず……何だこれは!?」
「タヌキの着ぐるみ」
「それならこれはどうだ!」
「……ひよこの着ぐるみ」
「くっ……ならこれは……っ!」
それから数々と着ぐるみコレクションを作り出したシロは、げんなりとした様子でベットに横たわっている。
どうやら葉っぱを変化させるのも上手く出来ず、力を使い果たしたようだ。
可哀想な気もするが、自業自得感が半端ない。
一日のメニューをこなし、途中コハクに呼び掛けたりして、時刻は軽く午前様を越えていた。
シロはそのまま寝てしまったようで、私のベットを軽く占拠している。
休んだら少しは霊力の回復はするんだろうけど、流石に補充してあげないと可哀想だ。
スヤスヤと眠る彼の寝顔に視線を移し、いざ試みようとするが、寝込みを襲っているみたいで気がひける。
でも、ここでやらなかったから朝になってもシロは目覚めないかもしれない。
だけど寝ている相手に自分からって、欲求不満みたいで何だか恥ずかしいよ!
シロの寝顔をじっと見つめながら、一人頭を悩ませること数十分。意を決してベッドに身を乗り出して、そっと口付けた。
離れようとした時、不意に手が伸びてきて腰を取らる。そのままシロの上に倒れこんでしまった。
「ずっと待ってたんだ、そう簡単に逃がすと思うか?」
「お、起きてたの?」
「いや、今起きた。待ちくたびれて寝てただけ」
「ごめん、遅くなって……」
「全くだ。罰として、今日はこのまま寝る」
シロはそう言うと、私の身体を抱き寄せて頭に顔を埋めてきた。
いつもなら何だかんだ言いつつも、結局白狐の姿で眠る彼が、こんな風に甘えてくるなんて珍しい。
このまま寝るって問題がある気がするけど、横になったら急に睡魔が襲ってきた。
思っていたより、身体は大分疲れていたらしい。
ああ、なんか……いい匂いがする。
とくん、とくんって……鼓動の音聞いてると、落ち着くな。
シロ、マイナスイオンでも出してるんじゃないのかな……なんか、癒される……すごく……気持ちい……。
「お前は頑張り過ぎだ。ゆっくり休め。おやすみ、桜」
頭に柔らかい何かが触れて、私はそのまま意識を手放した。
「開運のお札もろたんでお裾分けです。これ家に貼ると、運気がぐんぐん伸びてきっとええ事ありますよ」
もちろん、そんな効果は無い。
だけど、その言葉に母は何の違和感も持たない。
「どこに貼ったらいいかしら? カナちゃん教えて~」
ルンルン気分で尋ねる母に「何なら俺、やりますよ」と人当たりの良いスマイルを浮かべるカナちゃん。
そこに他意が含まれていることに、母はもちろん気付かない。
「いいの? 助かるわ~」
こうして、何の疑問も持たれずに彼は家に結界を張ってのけた。
私は彼に『浪花のペテン師』の称号を与えたい。
その日の夜、上機嫌で話しかけてきた母は
「桜、ほら見て! 無くしてた指輪が見つかったのよ! これもカナちゃんが貼ってくれたお札のおかげね!」
と、都合よく良い事はお札のおかげだと思い込んでくれている。
『母よ、それはお札のおかげではなく、元々見つかる運命だった指輪だ』と、私は心の中で一人つっこんでいた。
呪いをかけられても、私はいつもの日課をこなさねばならない。
左手の呪印がⅠの数字を刻んだ日に、プリンセスコンテストが行われる。
優菜さんという強力なライバル……と、私が言うのもおこがましい超絶美少女の天使様と戦わなければならない。
そのためには、呪いに屈している時間などないのだ。
美容体操をしながら、気合いを入れ直していると──
「なぁ、それスカートはいてやれよ。その方が見てて楽しいぞ」
背後から突如話しかけられ、寿命が三年ほど縮んだ。
「い、いつからそこに?!」
「お前が一人で回想し始めたくらい」
「最初からじゃん! ていうかシロ、体調大丈夫なの? よくテレポート出来たね?」
「ああ、これくらいなら平気だ。変化はうまく出来ないけど……」
コハクに化けようとして、知らないおっさんに変化したシロ。合ってたのは性別くらいで、それくらいアバウトにしか今はコントロールが出来ないらしい。
「俺の事はいいから、続きやれよ。ただし、これに着替えてからな」
そう言ってシロは、袖口から取り出した葉っぱを自信満々にあるものへと変化させる。
「それだと動きにくいから却下」
「動きにくいだと? そんなはず……何だこれは!?」
「タヌキの着ぐるみ」
「それならこれはどうだ!」
「……ひよこの着ぐるみ」
「くっ……ならこれは……っ!」
それから数々と着ぐるみコレクションを作り出したシロは、げんなりとした様子でベットに横たわっている。
どうやら葉っぱを変化させるのも上手く出来ず、力を使い果たしたようだ。
可哀想な気もするが、自業自得感が半端ない。
一日のメニューをこなし、途中コハクに呼び掛けたりして、時刻は軽く午前様を越えていた。
シロはそのまま寝てしまったようで、私のベットを軽く占拠している。
休んだら少しは霊力の回復はするんだろうけど、流石に補充してあげないと可哀想だ。
スヤスヤと眠る彼の寝顔に視線を移し、いざ試みようとするが、寝込みを襲っているみたいで気がひける。
でも、ここでやらなかったから朝になってもシロは目覚めないかもしれない。
だけど寝ている相手に自分からって、欲求不満みたいで何だか恥ずかしいよ!
シロの寝顔をじっと見つめながら、一人頭を悩ませること数十分。意を決してベッドに身を乗り出して、そっと口付けた。
離れようとした時、不意に手が伸びてきて腰を取らる。そのままシロの上に倒れこんでしまった。
「ずっと待ってたんだ、そう簡単に逃がすと思うか?」
「お、起きてたの?」
「いや、今起きた。待ちくたびれて寝てただけ」
「ごめん、遅くなって……」
「全くだ。罰として、今日はこのまま寝る」
シロはそう言うと、私の身体を抱き寄せて頭に顔を埋めてきた。
いつもなら何だかんだ言いつつも、結局白狐の姿で眠る彼が、こんな風に甘えてくるなんて珍しい。
このまま寝るって問題がある気がするけど、横になったら急に睡魔が襲ってきた。
思っていたより、身体は大分疲れていたらしい。
ああ、なんか……いい匂いがする。
とくん、とくんって……鼓動の音聞いてると、落ち着くな。
シロ、マイナスイオンでも出してるんじゃないのかな……なんか、癒される……すごく……気持ちい……。
「お前は頑張り過ぎだ。ゆっくり休め。おやすみ、桜」
頭に柔らかい何かが触れて、私はそのまま意識を手放した。
0
お気に入りに追加
456
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
片翅の火蝶 ▽半端者と蔑まれていた蝶が、蝋燭頭の旦那様に溺愛されるようです▽
偽月
キャラ文芸
「――きっと、姉様の代わりにお役目を果たします」
大火々本帝国《だいかがほんていこく》。通称、火ノ本。
八千年の歴史を誇る、この国では火山を神として崇め、火を祀っている。国に伝わる火の神の伝承では、神の怒り……噴火を鎮めるため一人の女が火口に身を投じたと言う。
人々は蝶の痣を背負った一族の女を【火蝶《かちょう》】と呼び、火の神の巫女になった女の功績を讃え、祀る事にした。再び火山が噴火する日に備えて。
火縄八重《ひなわ やえ》は片翅分の痣しか持たない半端者。日々、お蚕様の世話に心血を注ぎ、絹糸を紡いできた十八歳の生娘。全ては自身に向けられる差別的な視線に耐える為に。
八重は火蝶の本家である火焚家の長男・火焚太蝋《ほたき たろう》に嫁ぐ日を迎えた。
火蝶の巫女となった姉・千重の代わりに。
蝶の翅の痣を背負う女と蝋燭頭の軍人が織りなす大正ロマンスファンタジー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる