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第八章 暗黒王子と学園生活
先生、貴方は一体何者ですか?
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「桜……大丈夫? 少し顔色悪いよ。それに……結城君、一体どうしたの?」
休み時間、コハクの事を考えていて元気がない私の異変に気付いたのか、美香が心配そうに話しかけてきた。
「ここじゃ少し話せないから……美香、放課後私に時間くれないかな? ちょっと相談したい事があって」
「それは勿論いいけど、保健室行く?」
保健室……橘先生なら、何かコハクの事でアドバイスをくれるかもしれない。
「うん、ちょっと保健室行ってこようかな」
「私も付いていくよ」
「大丈夫だよ。もうすぐ授業始まっちゃうし、美香はここに居て。放課後きちんと話すから」
美香に見送られて教室を出ると、私は早足で保健室へと向かった。ノックをして扉を開けると、橘先生が心配そうに声をかけてきた。
「一条……お前さん、顔色が悪いな。少しそこで横になっていけ」
「いや、橘先生……あの、コハクの事で、折り入ってご相談が……」
保健室で休んでいる生徒が居ない事を確認して、私は橘先生にコハクの事を話した。
聞き終わった先生はひどく顔をしかめて口を開く。
「今、表にあいつが出てんのか……それは厄介だな」
「厄介というと?」
「コサメもそうだが……妖怪は基本、激しく感情が昂ると本能のまま動く性質があって周りの事などあまり気にしない。そのせいで、フォローに回る俺達は多大な迷惑をこうむるわけだ。一刻も早くコハクを目覚めさせないとヤバイな」
「シロには人前で変身したり、妖術は使わないように注意はしておいたんですが……」
「キレると忘れるな、それ。とりあえず、一条は極力男子と話すのを控えてくれ。あいつの行動原理の中心は基本お前さんだからな。下手に刺激を与えて感情を逆撫ですると達が悪い」
「分かりました」
「特に危険なのは西園寺、シロの前では極力会話しない方が無難だ。それと……」
橘先生は机の引き出しをごそごそ漁ると、一枚の封筒を取り出して、その中から御札を取り出した。
「これは、あいつが暴走した時に静める護符だ。もし、何かあってシロを止められないと思った時はすかさずシロにこれを貼るんだ」
差し出された護符と先生の顔を交互に見て、思わず言葉がもれた。
「……橘先生って、一体何者なんですか?」
私の質問に先生は眼鏡をクイッと持ち上げてこちらに視線を向けると、そっと口を開いた。
「こう見えて俺の実家、由緒正しい陰陽師の家系なんだよ」
驚いたのは、依頼で先生のお父さんが怪奇現象でその地方を騒がせていた妖怪退治をしようとした時、当時まだ中学生だった姉の雪乃さんに、その妖怪ことコサメさんが一目惚れしてとりついた事がきっかけで関わりが出来たらしいということだった。
先生曰く、妖怪白狐という種族は元々人々に幸福をもたらす存在として伝えられており、心に決めた一人の人間に尽くしすぎる習性があるらしい。
当時の雪乃さんはコサメさんの重たすぎる愛情にそれはそれは苦労したらしい。
そして妖怪は感情が昂るとたまに暴走する事があり、そんな時に静めるのがさっきの護符のようだ。
「普通にしてる分には害はない。むしろかなり優秀なパシリと呼べなくもない。だが、暴走すると一気に思考が変わる。例えるなら抱いていた感情が、純愛から狂愛へと成り果てるぐらいにおかしくなる」
先生の言葉に私はゴクリと生唾を飲み込んだ。
シロに妖術を使われ身体が動けなくなった時のどこか狂気じみた感じを思い出し、身体がブルッと震えた。
しかし、それと同時に私が泣き止むまでコハクのフリをして優しくしてくれた事も思い出し、震えが止まった。
「悪い悪い、少し脅しすぎたな。心配するな、ひどく拒絶さえしなければそこまで暴走する事はないだろう。あくまでこれはお前さんの護身用だ。シロもそこまで馬鹿じゃない。コハクと同じでお前さんが好きで仕方ないだけさ」
シロの行動原理が私に対する愛情なのだとしたら、裏を返せば彼を狂気に染めるのも優しさに染めるのも私の行動次第ということになる。
これは中々責任重大だ……もしかしてコハクの入院中、橘先生が『逃げるなら今のうちだ』と言ったのは、この事を危惧しての事だったのだろうか。
お礼を言って護符を受けとると、先生は真剣な表情で本題に入った。
「でだ、肝心のコハクを目覚めさせる方法だが……すぐにっていうのは、やっぱり無理だな」
「毎日呼び掛けてはいるんですけど、シロがからかってくるぐらいでコハクからは何も……」
「ん~とりあえず俺から提案出来るのは、毎日同じ時間に必ず一回強く念じ続けてみるって事ぐらいだな」
「同じ時間に、ですか?」
「ああ。それを繰り返していればそれもコハクの夢の一部として習慣化するはずだ。毎日同じ時間に聞こえる謎の声、そのイレギュラーな存在にコハクが興味を持つように仕掛けて、後はあいつ次第になるが信じて待つしかねぇな」
「早速今日からそれ、実践してみます!」
やはり橘先生に相談して正解だった。護身用の護符を大事に内ポケットに忍ばせ、私は保健室を後にした。
保健室を出た頃、ちょうど二限目が終わるチャイムが鳴り、教室に戻った私は心配そうに眉を下げたカナちゃんに話しかけられた。
「桜、体調はもうええんか?」
「あ、うん、もう平気」
「コハッ君一体どないしたんや……まるで別人みたいに、えらいイメチェンしとるみたいやけど……」
「うん。ちょっと色々あって……あ、ほら! もう授業始まるから、また今度話すよ。カナちゃんも席戻ったがいいよ」
「え……まだ五分前やけど」
「次の授業の予習しないと!」
「次、家庭科やん。予習とかあらへんやろ……」
「じゃあその次のやつ!」
「お、おうそうか……頑張りや」
カナちゃんとの話を無理矢理切り上げて、慌てて私はシロに視線を向けた。机に突っ伏して寝ているみたいで、どうやら会話している所は見られてないようだ。思わず安堵の息がもれる。
授業が始まってもシロは、先生の注意も聞かず寝ていた。
今までのコハクでは考えられない態度に、先生もかなり驚きを隠せないようだった。
あの優等生のコハクがいきなりぐれちゃったら、確かにびっくりするよね。
休み時間、コハクの事を考えていて元気がない私の異変に気付いたのか、美香が心配そうに話しかけてきた。
「ここじゃ少し話せないから……美香、放課後私に時間くれないかな? ちょっと相談したい事があって」
「それは勿論いいけど、保健室行く?」
保健室……橘先生なら、何かコハクの事でアドバイスをくれるかもしれない。
「うん、ちょっと保健室行ってこようかな」
「私も付いていくよ」
「大丈夫だよ。もうすぐ授業始まっちゃうし、美香はここに居て。放課後きちんと話すから」
美香に見送られて教室を出ると、私は早足で保健室へと向かった。ノックをして扉を開けると、橘先生が心配そうに声をかけてきた。
「一条……お前さん、顔色が悪いな。少しそこで横になっていけ」
「いや、橘先生……あの、コハクの事で、折り入ってご相談が……」
保健室で休んでいる生徒が居ない事を確認して、私は橘先生にコハクの事を話した。
聞き終わった先生はひどく顔をしかめて口を開く。
「今、表にあいつが出てんのか……それは厄介だな」
「厄介というと?」
「コサメもそうだが……妖怪は基本、激しく感情が昂ると本能のまま動く性質があって周りの事などあまり気にしない。そのせいで、フォローに回る俺達は多大な迷惑をこうむるわけだ。一刻も早くコハクを目覚めさせないとヤバイな」
「シロには人前で変身したり、妖術は使わないように注意はしておいたんですが……」
「キレると忘れるな、それ。とりあえず、一条は極力男子と話すのを控えてくれ。あいつの行動原理の中心は基本お前さんだからな。下手に刺激を与えて感情を逆撫ですると達が悪い」
「分かりました」
「特に危険なのは西園寺、シロの前では極力会話しない方が無難だ。それと……」
橘先生は机の引き出しをごそごそ漁ると、一枚の封筒を取り出して、その中から御札を取り出した。
「これは、あいつが暴走した時に静める護符だ。もし、何かあってシロを止められないと思った時はすかさずシロにこれを貼るんだ」
差し出された護符と先生の顔を交互に見て、思わず言葉がもれた。
「……橘先生って、一体何者なんですか?」
私の質問に先生は眼鏡をクイッと持ち上げてこちらに視線を向けると、そっと口を開いた。
「こう見えて俺の実家、由緒正しい陰陽師の家系なんだよ」
驚いたのは、依頼で先生のお父さんが怪奇現象でその地方を騒がせていた妖怪退治をしようとした時、当時まだ中学生だった姉の雪乃さんに、その妖怪ことコサメさんが一目惚れしてとりついた事がきっかけで関わりが出来たらしいということだった。
先生曰く、妖怪白狐という種族は元々人々に幸福をもたらす存在として伝えられており、心に決めた一人の人間に尽くしすぎる習性があるらしい。
当時の雪乃さんはコサメさんの重たすぎる愛情にそれはそれは苦労したらしい。
そして妖怪は感情が昂るとたまに暴走する事があり、そんな時に静めるのがさっきの護符のようだ。
「普通にしてる分には害はない。むしろかなり優秀なパシリと呼べなくもない。だが、暴走すると一気に思考が変わる。例えるなら抱いていた感情が、純愛から狂愛へと成り果てるぐらいにおかしくなる」
先生の言葉に私はゴクリと生唾を飲み込んだ。
シロに妖術を使われ身体が動けなくなった時のどこか狂気じみた感じを思い出し、身体がブルッと震えた。
しかし、それと同時に私が泣き止むまでコハクのフリをして優しくしてくれた事も思い出し、震えが止まった。
「悪い悪い、少し脅しすぎたな。心配するな、ひどく拒絶さえしなければそこまで暴走する事はないだろう。あくまでこれはお前さんの護身用だ。シロもそこまで馬鹿じゃない。コハクと同じでお前さんが好きで仕方ないだけさ」
シロの行動原理が私に対する愛情なのだとしたら、裏を返せば彼を狂気に染めるのも優しさに染めるのも私の行動次第ということになる。
これは中々責任重大だ……もしかしてコハクの入院中、橘先生が『逃げるなら今のうちだ』と言ったのは、この事を危惧しての事だったのだろうか。
お礼を言って護符を受けとると、先生は真剣な表情で本題に入った。
「でだ、肝心のコハクを目覚めさせる方法だが……すぐにっていうのは、やっぱり無理だな」
「毎日呼び掛けてはいるんですけど、シロがからかってくるぐらいでコハクからは何も……」
「ん~とりあえず俺から提案出来るのは、毎日同じ時間に必ず一回強く念じ続けてみるって事ぐらいだな」
「同じ時間に、ですか?」
「ああ。それを繰り返していればそれもコハクの夢の一部として習慣化するはずだ。毎日同じ時間に聞こえる謎の声、そのイレギュラーな存在にコハクが興味を持つように仕掛けて、後はあいつ次第になるが信じて待つしかねぇな」
「早速今日からそれ、実践してみます!」
やはり橘先生に相談して正解だった。護身用の護符を大事に内ポケットに忍ばせ、私は保健室を後にした。
保健室を出た頃、ちょうど二限目が終わるチャイムが鳴り、教室に戻った私は心配そうに眉を下げたカナちゃんに話しかけられた。
「桜、体調はもうええんか?」
「あ、うん、もう平気」
「コハッ君一体どないしたんや……まるで別人みたいに、えらいイメチェンしとるみたいやけど……」
「うん。ちょっと色々あって……あ、ほら! もう授業始まるから、また今度話すよ。カナちゃんも席戻ったがいいよ」
「え……まだ五分前やけど」
「次の授業の予習しないと!」
「次、家庭科やん。予習とかあらへんやろ……」
「じゃあその次のやつ!」
「お、おうそうか……頑張りや」
カナちゃんとの話を無理矢理切り上げて、慌てて私はシロに視線を向けた。机に突っ伏して寝ているみたいで、どうやら会話している所は見られてないようだ。思わず安堵の息がもれる。
授業が始まってもシロは、先生の注意も聞かず寝ていた。
今までのコハクでは考えられない態度に、先生もかなり驚きを隠せないようだった。
あの優等生のコハクがいきなりぐれちゃったら、確かにびっくりするよね。
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