61 / 186
第六章 波乱の幕開け
王子vs貴公子
しおりを挟む
カナちゃんとは告白されて以来、微妙に気まずくてまともに話せてなかった。
でも昨日の事で、長年胸の奥に引っかかっていたわだかまりみたいな物がとれて前より打ち解けられた気がする。
私は幼馴染みとして、友達として彼の事は好きだ。英語で言うなら、ラブではなくライクの方。
出来るなら、コハクともいがみ合わずに仲良くして欲しいけど、それを今のカナちゃんに求めるのは……凄く残酷な事だと思う。
分かってはいるが、このままだとろくにご飯も喉を通る気がしない。
「なんで西園寺君がここに居るのかな?」
不機嫌そうにカナちゃんをジト目で見るコハクに、「ええやん、転校してきたばかりで友達おらんねん。仲良うしてや」とカナちゃんはニコニコと人当たりの良い笑顔で答える。
たったそれだけの会話で、私はその場の体感温度が軽く五度ぐらい下がった気がした。
「その割にはいつも人に囲まれてるみたいだけど?」
「お互い様やん。気持ち分かるやろ? 察してや」
「僕は桜と二人で食べたいんだけど」
「皆で食べたが飯はうまいねんで。桜もそう思うやろ?」
突然カナちゃんに話を振られ「え、あ、うん。そうだね」と思わず肯定すると──
「桜……」
コハクが捨てられた子犬のような眼差しでこちらを見てくる。
「違うよ、コハク! 私もコハクと二人で居たいんだよ!」
慌ててフォローすると──
「桜……」
今度はカナちゃんが捨てられた子犬のような眼差しで私を見てくる。
「大丈夫、カナちゃん! 私たちほら、幼馴染みでしょ! 一緒に食べようよ」
お願いだからそんな眼差しを向けないでくれ。私はその哀しそうな瞳を見ると、放っておけない質なんだ。
「桜は優しいから君に気を遣っているだけだよ」
「俺にはお前に気ぃ遣って無理してるように見えるけどな」
左側にコハク、右側にはカナちゃんがそれぞれ私の隣に座っていて、目の前で両者がバチバチと火花を散らしている。
……胃に穴が開きそうだ。
そもそも、これが始まりではなかった。
朝、コハクと一緒に登校している途中、カナちゃんに会った。
昨日、クッキーを助けるために無理をしてカナちゃんは足を痛めている。
歩くのが少し辛そうに見えて、私が彼の元に駆け寄って肩を貸した事でコハクの機嫌は悪くなった。
事情を説明すると──
「じゃあ僕が西園寺君を支えてあげるから、桜はこっち」
コハクは右肩をカナちゃんに貸して、左手で私と手を繋いで歩き出した。
「コハク君、肩貸してくれるんはありがたいんやけど、桜がええ」
「残念だね、桜に触れていいのは僕だけだよ。歩くの辛いなら僕が肩貸してあげるからいつでもいいなよ」
頬をピクピクさせながら、かろうじてまだ笑顔を作っているカナちゃんのお願いを、コハクは何とも涼しげな顔で却下する。
「それはどうもおおきにな。じゃあ遠慮なくっ!」
そう言い終わるなり、カナちゃんはコハクの肩に、思いっきり力を込めて手をおいた。
一瞬ガクっと体勢を崩しそうになるも、コハクは体勢を立て直し、「そんな事したって僕は桜の手、離したりしないよ?」と余裕のある目つきでカナちゃんを見て喉で笑う。
「ひょろ長いわりには中々力あんねんな」
「君こそ小さいわりには中々やるね」
お互い不敵な笑みを浮かべながらも、バチバチと火花を散らして睨み合う二人。
このままでは遅刻しかねない。
なので私はコハクからそっと手を離し、「二人とも、早くしないと置いていくからね」と言い残して前を歩いてきた。
あの時は、何だかんだ言いつつもコハクはカナちゃんにきちんと肩を貸して、二人で喧嘩しながらも教室まで時間内にたどり着いた。
しかし今は昼休みで、ご飯を食べ始めたばかりだ。少なくとも、これを食べ終わるまではここを動けない。
「何で君は僕の桜にベタベタとまとわりつくの?」
「大事な幼馴染みが、悪い獣の毒牙にかからんよう守っとるだけや」
「それって君の事じゃないの?」
「何言うてねん、お前の事や! 俺は認めてへんからな、お前が桜の彼氏やなんて」
「別に君の許可は要らないでしょ。勝手な言いがかりは止めてもらえる?」
ガルルルルと獣の唸り声が聞こえてきそうなくらい、両者は威嚇しあっている。
片方を立てれば片方が傷つく。
関係は違えど、どちらも私にとっては大切な人だと再認識した今、出来れば傷付いて欲しくない。
カナちゃんの気持ちに応えられない部分があるのは仕方ないが、全てを頭からノーだと言ってしまっては友人関係すらままならない。
かといって何でもいいよと言ってしまえば、コハクに申し訳ない。
そもそも、どうしてカナちゃんがここまでコハクを毛嫌いするのか……そういえば、カナちゃんのコハクに対する誤解をまだ解いてなかった。
カナちゃんの中でのコハクの印象はきっと、遊び人に近い。
その誤解が解ければ少なくとも、ここまでいがみ合う事はないはずだ。
だが、きっと言葉だけでは伝わらない。
今言葉で説明しても、カナちゃんは私が騙されてるだけだと余計に躍起になって逆効果だろうから。
コハクの人となりを彼が自分の目で見て、そうではないと気付き私たちの関係を認めてくれたら理想的なんだけどな……
どうしたものかと頭を捻らせていると、カナちゃんのスマホがピコンと鳴った。
それを確認した彼は、画面を見てニヤリと口角を上げた。
「コハク君、俺と勝負せぇへか?」
顔を上げたカナちゃんは、口元に笑みをたたえてコハクに挑発的な視線を送る。
「勝負?」
「ここの学園祭、中々おもろいことやってるみたいやね。学園内のええ男を決める大会『プリンスコンテスト』これで一位獲った方が、桜の隣には相応しいと思わへんか?」
「そんなの興味ないよ」
鼻で軽くあしらうコハクに、「ええんか? お前出らんなら俺、簡単に優勝すんで?」と、カナちゃんはわざと大袈裟に驚いてみせた。
「勝手に優勝でも何でもしたらいいじゃない」
もう勝手にしてくれと言わんばかりにコハクは小さなため息をつく。
「優勝者には商品として、好きな女からあっついキスとペアの一日旅行券がもらえんのやで」
その言葉にコハクはピクリと眉をひそめた。
この学園で一番の盛り上がりを見せる聖蘭祭。
二日に分けて行われ、初日はクラス対抗で演劇やライブなどパフォーマンスで競うステージ部門か、展示や模擬店など集客で競うサービス部門のどちらかに参加しなければならない。
優勝したクラスには、全員に食堂の一ヶ月無料券が配付されるためどのクラスも結構本気で取り組んでいる。
しかし、本当の目玉は二日目に行われる学園内の姫と王子を決めるプリンセスコンテストと、プリンスコンテストだ。
学園の顔として新入生用のパンフレットに載るため、学園側もかなり力をいれて開催する。
容姿の美しさは勿論のこと、勉強やスポーツが出来るか、人望や思いやりはあるかなど、様々な観点からチェックされ一番相応しい男女がそれぞれ選ばれる。
優勝商品として、男女それぞれに好きな相手からキスとその相手と行けるペアの一日旅行券がもらえる。
指定された相手に拒否権はなく、絶対にそれを執行しなければならない。
それが、このイベント最大の肝であり、人気を博している理由だろう。
今まで全く無縁だったため、すっかり忘れていた。
「勿論俺は、そこで桜を指名する。コハク君はその様子を、観客席からただ黙って傍観してたらええ」
煽るようにカナちゃんが不敵に笑うと、とうとうコハクの闘志に火を灯してしまったらしい。
「そうはさせない。その大会、僕も出るよ」
そう言って、コハクは射ぬくような鋭い視線をカナちゃんに向けた。
「ええ返事や。当日、楽しみにしとんで」
してやったりと言わんばかりに満面の笑みを残して、カナちゃんは「ほなまた~」とヒラヒラと手を振って屋上を出て行った。
でも昨日の事で、長年胸の奥に引っかかっていたわだかまりみたいな物がとれて前より打ち解けられた気がする。
私は幼馴染みとして、友達として彼の事は好きだ。英語で言うなら、ラブではなくライクの方。
出来るなら、コハクともいがみ合わずに仲良くして欲しいけど、それを今のカナちゃんに求めるのは……凄く残酷な事だと思う。
分かってはいるが、このままだとろくにご飯も喉を通る気がしない。
「なんで西園寺君がここに居るのかな?」
不機嫌そうにカナちゃんをジト目で見るコハクに、「ええやん、転校してきたばかりで友達おらんねん。仲良うしてや」とカナちゃんはニコニコと人当たりの良い笑顔で答える。
たったそれだけの会話で、私はその場の体感温度が軽く五度ぐらい下がった気がした。
「その割にはいつも人に囲まれてるみたいだけど?」
「お互い様やん。気持ち分かるやろ? 察してや」
「僕は桜と二人で食べたいんだけど」
「皆で食べたが飯はうまいねんで。桜もそう思うやろ?」
突然カナちゃんに話を振られ「え、あ、うん。そうだね」と思わず肯定すると──
「桜……」
コハクが捨てられた子犬のような眼差しでこちらを見てくる。
「違うよ、コハク! 私もコハクと二人で居たいんだよ!」
慌ててフォローすると──
「桜……」
今度はカナちゃんが捨てられた子犬のような眼差しで私を見てくる。
「大丈夫、カナちゃん! 私たちほら、幼馴染みでしょ! 一緒に食べようよ」
お願いだからそんな眼差しを向けないでくれ。私はその哀しそうな瞳を見ると、放っておけない質なんだ。
「桜は優しいから君に気を遣っているだけだよ」
「俺にはお前に気ぃ遣って無理してるように見えるけどな」
左側にコハク、右側にはカナちゃんがそれぞれ私の隣に座っていて、目の前で両者がバチバチと火花を散らしている。
……胃に穴が開きそうだ。
そもそも、これが始まりではなかった。
朝、コハクと一緒に登校している途中、カナちゃんに会った。
昨日、クッキーを助けるために無理をしてカナちゃんは足を痛めている。
歩くのが少し辛そうに見えて、私が彼の元に駆け寄って肩を貸した事でコハクの機嫌は悪くなった。
事情を説明すると──
「じゃあ僕が西園寺君を支えてあげるから、桜はこっち」
コハクは右肩をカナちゃんに貸して、左手で私と手を繋いで歩き出した。
「コハク君、肩貸してくれるんはありがたいんやけど、桜がええ」
「残念だね、桜に触れていいのは僕だけだよ。歩くの辛いなら僕が肩貸してあげるからいつでもいいなよ」
頬をピクピクさせながら、かろうじてまだ笑顔を作っているカナちゃんのお願いを、コハクは何とも涼しげな顔で却下する。
「それはどうもおおきにな。じゃあ遠慮なくっ!」
そう言い終わるなり、カナちゃんはコハクの肩に、思いっきり力を込めて手をおいた。
一瞬ガクっと体勢を崩しそうになるも、コハクは体勢を立て直し、「そんな事したって僕は桜の手、離したりしないよ?」と余裕のある目つきでカナちゃんを見て喉で笑う。
「ひょろ長いわりには中々力あんねんな」
「君こそ小さいわりには中々やるね」
お互い不敵な笑みを浮かべながらも、バチバチと火花を散らして睨み合う二人。
このままでは遅刻しかねない。
なので私はコハクからそっと手を離し、「二人とも、早くしないと置いていくからね」と言い残して前を歩いてきた。
あの時は、何だかんだ言いつつもコハクはカナちゃんにきちんと肩を貸して、二人で喧嘩しながらも教室まで時間内にたどり着いた。
しかし今は昼休みで、ご飯を食べ始めたばかりだ。少なくとも、これを食べ終わるまではここを動けない。
「何で君は僕の桜にベタベタとまとわりつくの?」
「大事な幼馴染みが、悪い獣の毒牙にかからんよう守っとるだけや」
「それって君の事じゃないの?」
「何言うてねん、お前の事や! 俺は認めてへんからな、お前が桜の彼氏やなんて」
「別に君の許可は要らないでしょ。勝手な言いがかりは止めてもらえる?」
ガルルルルと獣の唸り声が聞こえてきそうなくらい、両者は威嚇しあっている。
片方を立てれば片方が傷つく。
関係は違えど、どちらも私にとっては大切な人だと再認識した今、出来れば傷付いて欲しくない。
カナちゃんの気持ちに応えられない部分があるのは仕方ないが、全てを頭からノーだと言ってしまっては友人関係すらままならない。
かといって何でもいいよと言ってしまえば、コハクに申し訳ない。
そもそも、どうしてカナちゃんがここまでコハクを毛嫌いするのか……そういえば、カナちゃんのコハクに対する誤解をまだ解いてなかった。
カナちゃんの中でのコハクの印象はきっと、遊び人に近い。
その誤解が解ければ少なくとも、ここまでいがみ合う事はないはずだ。
だが、きっと言葉だけでは伝わらない。
今言葉で説明しても、カナちゃんは私が騙されてるだけだと余計に躍起になって逆効果だろうから。
コハクの人となりを彼が自分の目で見て、そうではないと気付き私たちの関係を認めてくれたら理想的なんだけどな……
どうしたものかと頭を捻らせていると、カナちゃんのスマホがピコンと鳴った。
それを確認した彼は、画面を見てニヤリと口角を上げた。
「コハク君、俺と勝負せぇへか?」
顔を上げたカナちゃんは、口元に笑みをたたえてコハクに挑発的な視線を送る。
「勝負?」
「ここの学園祭、中々おもろいことやってるみたいやね。学園内のええ男を決める大会『プリンスコンテスト』これで一位獲った方が、桜の隣には相応しいと思わへんか?」
「そんなの興味ないよ」
鼻で軽くあしらうコハクに、「ええんか? お前出らんなら俺、簡単に優勝すんで?」と、カナちゃんはわざと大袈裟に驚いてみせた。
「勝手に優勝でも何でもしたらいいじゃない」
もう勝手にしてくれと言わんばかりにコハクは小さなため息をつく。
「優勝者には商品として、好きな女からあっついキスとペアの一日旅行券がもらえんのやで」
その言葉にコハクはピクリと眉をひそめた。
この学園で一番の盛り上がりを見せる聖蘭祭。
二日に分けて行われ、初日はクラス対抗で演劇やライブなどパフォーマンスで競うステージ部門か、展示や模擬店など集客で競うサービス部門のどちらかに参加しなければならない。
優勝したクラスには、全員に食堂の一ヶ月無料券が配付されるためどのクラスも結構本気で取り組んでいる。
しかし、本当の目玉は二日目に行われる学園内の姫と王子を決めるプリンセスコンテストと、プリンスコンテストだ。
学園の顔として新入生用のパンフレットに載るため、学園側もかなり力をいれて開催する。
容姿の美しさは勿論のこと、勉強やスポーツが出来るか、人望や思いやりはあるかなど、様々な観点からチェックされ一番相応しい男女がそれぞれ選ばれる。
優勝商品として、男女それぞれに好きな相手からキスとその相手と行けるペアの一日旅行券がもらえる。
指定された相手に拒否権はなく、絶対にそれを執行しなければならない。
それが、このイベント最大の肝であり、人気を博している理由だろう。
今まで全く無縁だったため、すっかり忘れていた。
「勿論俺は、そこで桜を指名する。コハク君はその様子を、観客席からただ黙って傍観してたらええ」
煽るようにカナちゃんが不敵に笑うと、とうとうコハクの闘志に火を灯してしまったらしい。
「そうはさせない。その大会、僕も出るよ」
そう言って、コハクは射ぬくような鋭い視線をカナちゃんに向けた。
「ええ返事や。当日、楽しみにしとんで」
してやったりと言わんばかりに満面の笑みを残して、カナちゃんは「ほなまた~」とヒラヒラと手を振って屋上を出て行った。
0
お気に入りに追加
456
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
OL 万千湖さんのささやかなる野望
菱沼あゆ
キャラ文芸
転職した会社でお茶の淹れ方がうまいから、うちの息子と見合いしないかと上司に言われた白雪万千湖(しらゆき まちこ)。
ところが、見合い当日。
息子が突然、好きな人がいると言い出したと、部長は全然違う人を連れて来た。
「いや~、誰か若いいい男がいないかと、急いで休日出勤してる奴探して引っ張ってきたよ~」
万千湖の前に現れたのは、この人だけは勘弁してください、と思う、隣の部署の愛想の悪い課長、小鳥遊駿佑(たかなし しゅんすけ)だった。
部長の手前、三回くらいデートして断ろう、と画策する二人だったが――。
片翅の火蝶 ▽半端者と蔑まれていた蝶が、蝋燭頭の旦那様に溺愛されるようです▽
偽月
キャラ文芸
「――きっと、姉様の代わりにお役目を果たします」
大火々本帝国《だいかがほんていこく》。通称、火ノ本。
八千年の歴史を誇る、この国では火山を神として崇め、火を祀っている。国に伝わる火の神の伝承では、神の怒り……噴火を鎮めるため一人の女が火口に身を投じたと言う。
人々は蝶の痣を背負った一族の女を【火蝶《かちょう》】と呼び、火の神の巫女になった女の功績を讃え、祀る事にした。再び火山が噴火する日に備えて。
火縄八重《ひなわ やえ》は片翅分の痣しか持たない半端者。日々、お蚕様の世話に心血を注ぎ、絹糸を紡いできた十八歳の生娘。全ては自身に向けられる差別的な視線に耐える為に。
八重は火蝶の本家である火焚家の長男・火焚太蝋《ほたき たろう》に嫁ぐ日を迎えた。
火蝶の巫女となった姉・千重の代わりに。
蝶の翅の痣を背負う女と蝋燭頭の軍人が織りなす大正ロマンスファンタジー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる