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第六章 波乱の幕開け
転校生がやってきました
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「皆、夏休みは満喫出来たか? つもる話もあるだろうけど、今日はまず最初に転校生を紹介!」
先生の言葉に皆がザワザワしている。
私はその言葉に、心臓が飛び出そうな程緊張していた。
間違いなく転校生とは、カナちゃんの事だろう。何故こんなにも早く、そして同じクラスになってしまったのか。神様の悪戯にしては度が過ぎている。
「西園寺、入って~」
先生の言葉に「はいは~い」と陽気に返事をして入ってきた人物。
それは紛れもなく幼馴染みのカナちゃんだった。
ミルクティー色の柔らかなネコ毛は毛先がくるっとパーマがかかっておりふわふわとしている。
中性的な顔立ちで、パッチリとした二重瞼のブラウンの大きな瞳も鼻筋の通った高い鼻も、笑った時に頬に出るえくぼも、顔だけ見たら可憐な女の子に見えなくもない。
しかしスラッとした長身と、意外に広い肩幅など、顔に似合わない体型が彼が男であることをしっかりと主張しており、甘いマスクのイケメンへと変化させたのだろう。
「皆さん、初めまして~の方もそうでない方も『西園寺 奏』って言いま~す。今日からよろしゅうたのんますわ」
カナちゃんがニカッと笑って挨拶をすると、女子から黄色い歓声が上がった。
「(華高の『浪花の貴公子』がうちのクラスに来るなんて、夢みたい……)」
……もしかしなくても、カナちゃんの事だろうか。
そういえば昔は『浪花のエンジェル』って言われてたな。
「皆、仲良くしてあげるように。西園寺の席は……如月の後ろの空いている席だ」
先生の言葉に、カナちゃんはツカツカとこちらに近付いてきて、私の後ろの席に座る笹山さんの前で止まった。
「俺、ここがええ。目ぇ悪いから前の方がええんやけど、その席譲ってくれへんやろか?」
伏し目がちに憂いを帯びた瞳で笹山さんにお願いをするカナちゃん。
お、お願いします! 笹山さん、何が何でもそのお願いを断って!
しかし、そんな私の願いが届くはずもなく……
「全然いいです、代わります!」
「ほんま? おおきに、ありがとなぁ……笹山さん」
「わ、私の名前……」
「何言うてんの、同じ中学やったやん。勿論知ってんで」
嬉しそうに目を見開いて驚く笹山さんに、カナちゃんは少し大袈裟に驚いた後、笑顔でパチっとウィンクを放つ。
本日二度目のクラス中からキャーという黄色い歓声が響き渡った瞬間だった。
「これから楽しくなりそうやな、桜」
「そ、そうダネ……」
後ろから聞こえてきた悪魔の囁きに、片言でこたえるのが精一杯だった。
ど、どうしてこんなことに……
それから、体育館で全校生徒を集めた始業式が始まった。
無駄に長い校長先生の話が終わり、転校生の紹介が始まると、それまで退屈そうにしていた女子達が歓喜の声を上げ始めた。
所々から聞こえてくる『浪花の貴公子』やら『奏様』という単語がやけに耳に入ってきて、絶大な知名度を誇っているのがよく伝わってくる。
後で聞いた話だか、どうやらカナちゃんは高校生に人気の地元雑誌でよく取り上げられており、イケメン四天王なる者の一人に君臨し、そこでの通り名が『浪花の貴公子』と言うものらしい。
普段雑誌など読まない私は、そんな物があること自体知らなかった。
何だか急に、カナちゃんが遠い世界へ行ってしまったように思える。
昔のようにバカやって一緒に笑い合って、楽しく過ごす事はもう出来ないのだろうか。
体育館から教室に帰るまでの間でさえ、彼の周りは女の子であふれている。
昔は私がカナちゃんの隣を歩いていたのに……少しずつ亀裂が入ってきた幼馴染みの関係に、心が痛んだ。
さらには告白された事も拍車をかけ、尚更カナちゃんとどう接したらいいのか分からない気持ちで一杯だった。
そうこうしている内に、あっという間に放課後になってしまった。
「桜、帰ろう」
コハクがいつものように私に手を差し出してくる。私がその手を掴んだ時──
「桜、校内案内してや」
もう片方の手をカナちゃんに掴まれて、心臓が飛び出るかと思った。
振り返るとカナちゃんの真剣な眼差しに射ぬかれ、私の身体は固まったように動けなくなる。
「僕の桜から手を離してもらえるかな?」
異変に気付いたコハクは私の手を強く握り返すと、そう言ってカナちゃんに鋭い視線を向けた。
「へ~アンタがコハク君か、中々色男やねんなぁ」
カナちゃんはコハクを上から下まで一通り見て、ニコニコと人当たりの良い笑顔で陽気に誉めた後、スッと目を細めて「でも桜の事、遊びやったら手ぇ引いてくれへんか?」と揚々のない声で言った。
その言葉に、コハクは一瞬眉をピクリと動かして、「僕は桜の事本気だけど」と、カナちゃんを訝しげに睨みながら答える。
「でも、仮の彼氏なんやろ?」
「前はそうだったかもしれないけど、今は違う」
一瞬即発な空気に、私は背中に嫌な汗が流れていくのを感じた。
気がつくと、クラス中の視線がこちらに集まっている。
どうやら私のせいで、カナちゃんはコハクの事を遊び人だと勘違いしているようだ。
そんな事ないと否定したいが、説明が長くなりすぎる上に注目の的になっている状況で出来る話でもない。
悪目立ちしたこの現状に、今すぐ逃げ出したい衝動に駆られる。
しかし、両手をそれぞれコハクとカナちゃんに握られ板挟み状態のためそれも困難だ。
コハクと帰りたいけど、転校してきたばかりで勝手の分からないカナちゃんの頼みを無下に断るのも、幼馴染みとしては申し訳ない。
どうするべきか考えていると不意にこちらに話をふられた。
「せやの? 桜」
「え……あ、うん。今は正式にコハクと付き合ってるから」
しどろもどろになりながら何とか答えた。
私の言葉に、カナちゃんは悲しそうに目を伏せて、とんでもない爆弾を落としてきた。
「桜……一緒に風呂入って背中流し合いっこした仲やのに、そんな冷たい事言わんといてや」
今、このタイミングでそういう事言っちゃうの?!
皆(主に女子)の視線が一斉に私に突き刺さるのを感じた。
コハクが信じられないと言わんばかりに大きく目を見開いてこちらを見ている。
このままではいけない、何とか誤解を解かねば!
「ちょっとカナちゃん! それ幼稚園の頃の話でしょ!」
「ちゃうで、桜。小二まで一緒に入っとたやん。忘れてもうたん? 俺はよう覚えとるけどなぁ……」
「もう、恥ずかしいから止めて!」
懇願する私にカナちゃんはニッコリと微笑んだ後、視線をコハクへ移してさらに爆弾を投下する。
「何なら身体のどこにほくろがあるか、コハク君にも教えてあげたろか?」
「……その必要はないよ。人から聞くより、自分で確かめた方が確実だからね」
カナちゃんの挑発的な発言にコハクは軽く喉で笑った後、恐ろしく爽やかな表情で言葉を返す。
サラッと笑顔で発せられたその言葉の意味を考えると、私は顔から火が出そうになった。
穴があったら入りたい、そしてもう一生出たくない気持ちで一杯だ。
「そう言うて事はまだやってへんねやな」
ニヤニヤと薄ら笑いでそう言うカナちゃんに、「……だから何?」とコハクはうんざりしたようにため息をついて、ギロリと睨んだ。
「おおこわ、そんな睨まんでもええやん。別に桜の事取って喰おうとしてるわけやあるまいに。友達と遊ぶのも許さへんほど、コハク君は桜の事束縛してるんやね」
大袈裟に驚いてみせた後、カナちゃんは大きな瞳をパチクリとさせながら言った。
「男は別だよ」
「昔みたいに一緒に遊びたかっただけやねんけど、それももう難儀やなぁ……なんか悲しいわ」
冷たく言い放ったコハクの一言に、カナちゃんは眉を下げて悲しそうに笑う。
そんな幼馴染みの姿を見て、胸がチクリと痛むのを感じた。カナちゃんの一言に同じ想いを感じ取ってしまったせいであろうか。
昔はよく一緒にカナちゃんと手を繋いで帰っていた。というより引っ張られながら走っていたと言った方が正しいかもしれない。
空手の稽古がない日は、商店街をグルグルして遊んで帰ったりしていた。
懐かしい日々に思いを馳せつつも、それでも今の私はカナちゃんの手を昔のように取ることは出来ない。
「カナちゃん……ごめんね。また今度紹介するから」
申し訳ない気持ちで一杯になりながら謝ると、カナちゃんは柔らかく微笑んで手を離し、私の頭を優しく撫でてくれた。
「ええよ、桜は幼馴染みの俺よりその彼氏が大事なんやもんなぁ……気ぃつけて帰り」
「……うん」
「ほなまた~」
ヒラヒラと手を振ってカナちゃんはそのまま教室から出ていった。
廊下では「奏様、私がご案内します!」「いや、私が!」という女子の声が飛び交っていた。
先生の言葉に皆がザワザワしている。
私はその言葉に、心臓が飛び出そうな程緊張していた。
間違いなく転校生とは、カナちゃんの事だろう。何故こんなにも早く、そして同じクラスになってしまったのか。神様の悪戯にしては度が過ぎている。
「西園寺、入って~」
先生の言葉に「はいは~い」と陽気に返事をして入ってきた人物。
それは紛れもなく幼馴染みのカナちゃんだった。
ミルクティー色の柔らかなネコ毛は毛先がくるっとパーマがかかっておりふわふわとしている。
中性的な顔立ちで、パッチリとした二重瞼のブラウンの大きな瞳も鼻筋の通った高い鼻も、笑った時に頬に出るえくぼも、顔だけ見たら可憐な女の子に見えなくもない。
しかしスラッとした長身と、意外に広い肩幅など、顔に似合わない体型が彼が男であることをしっかりと主張しており、甘いマスクのイケメンへと変化させたのだろう。
「皆さん、初めまして~の方もそうでない方も『西園寺 奏』って言いま~す。今日からよろしゅうたのんますわ」
カナちゃんがニカッと笑って挨拶をすると、女子から黄色い歓声が上がった。
「(華高の『浪花の貴公子』がうちのクラスに来るなんて、夢みたい……)」
……もしかしなくても、カナちゃんの事だろうか。
そういえば昔は『浪花のエンジェル』って言われてたな。
「皆、仲良くしてあげるように。西園寺の席は……如月の後ろの空いている席だ」
先生の言葉に、カナちゃんはツカツカとこちらに近付いてきて、私の後ろの席に座る笹山さんの前で止まった。
「俺、ここがええ。目ぇ悪いから前の方がええんやけど、その席譲ってくれへんやろか?」
伏し目がちに憂いを帯びた瞳で笹山さんにお願いをするカナちゃん。
お、お願いします! 笹山さん、何が何でもそのお願いを断って!
しかし、そんな私の願いが届くはずもなく……
「全然いいです、代わります!」
「ほんま? おおきに、ありがとなぁ……笹山さん」
「わ、私の名前……」
「何言うてんの、同じ中学やったやん。勿論知ってんで」
嬉しそうに目を見開いて驚く笹山さんに、カナちゃんは少し大袈裟に驚いた後、笑顔でパチっとウィンクを放つ。
本日二度目のクラス中からキャーという黄色い歓声が響き渡った瞬間だった。
「これから楽しくなりそうやな、桜」
「そ、そうダネ……」
後ろから聞こえてきた悪魔の囁きに、片言でこたえるのが精一杯だった。
ど、どうしてこんなことに……
それから、体育館で全校生徒を集めた始業式が始まった。
無駄に長い校長先生の話が終わり、転校生の紹介が始まると、それまで退屈そうにしていた女子達が歓喜の声を上げ始めた。
所々から聞こえてくる『浪花の貴公子』やら『奏様』という単語がやけに耳に入ってきて、絶大な知名度を誇っているのがよく伝わってくる。
後で聞いた話だか、どうやらカナちゃんは高校生に人気の地元雑誌でよく取り上げられており、イケメン四天王なる者の一人に君臨し、そこでの通り名が『浪花の貴公子』と言うものらしい。
普段雑誌など読まない私は、そんな物があること自体知らなかった。
何だか急に、カナちゃんが遠い世界へ行ってしまったように思える。
昔のようにバカやって一緒に笑い合って、楽しく過ごす事はもう出来ないのだろうか。
体育館から教室に帰るまでの間でさえ、彼の周りは女の子であふれている。
昔は私がカナちゃんの隣を歩いていたのに……少しずつ亀裂が入ってきた幼馴染みの関係に、心が痛んだ。
さらには告白された事も拍車をかけ、尚更カナちゃんとどう接したらいいのか分からない気持ちで一杯だった。
そうこうしている内に、あっという間に放課後になってしまった。
「桜、帰ろう」
コハクがいつものように私に手を差し出してくる。私がその手を掴んだ時──
「桜、校内案内してや」
もう片方の手をカナちゃんに掴まれて、心臓が飛び出るかと思った。
振り返るとカナちゃんの真剣な眼差しに射ぬかれ、私の身体は固まったように動けなくなる。
「僕の桜から手を離してもらえるかな?」
異変に気付いたコハクは私の手を強く握り返すと、そう言ってカナちゃんに鋭い視線を向けた。
「へ~アンタがコハク君か、中々色男やねんなぁ」
カナちゃんはコハクを上から下まで一通り見て、ニコニコと人当たりの良い笑顔で陽気に誉めた後、スッと目を細めて「でも桜の事、遊びやったら手ぇ引いてくれへんか?」と揚々のない声で言った。
その言葉に、コハクは一瞬眉をピクリと動かして、「僕は桜の事本気だけど」と、カナちゃんを訝しげに睨みながら答える。
「でも、仮の彼氏なんやろ?」
「前はそうだったかもしれないけど、今は違う」
一瞬即発な空気に、私は背中に嫌な汗が流れていくのを感じた。
気がつくと、クラス中の視線がこちらに集まっている。
どうやら私のせいで、カナちゃんはコハクの事を遊び人だと勘違いしているようだ。
そんな事ないと否定したいが、説明が長くなりすぎる上に注目の的になっている状況で出来る話でもない。
悪目立ちしたこの現状に、今すぐ逃げ出したい衝動に駆られる。
しかし、両手をそれぞれコハクとカナちゃんに握られ板挟み状態のためそれも困難だ。
コハクと帰りたいけど、転校してきたばかりで勝手の分からないカナちゃんの頼みを無下に断るのも、幼馴染みとしては申し訳ない。
どうするべきか考えていると不意にこちらに話をふられた。
「せやの? 桜」
「え……あ、うん。今は正式にコハクと付き合ってるから」
しどろもどろになりながら何とか答えた。
私の言葉に、カナちゃんは悲しそうに目を伏せて、とんでもない爆弾を落としてきた。
「桜……一緒に風呂入って背中流し合いっこした仲やのに、そんな冷たい事言わんといてや」
今、このタイミングでそういう事言っちゃうの?!
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コハクが信じられないと言わんばかりに大きく目を見開いてこちらを見ている。
このままではいけない、何とか誤解を解かねば!
「ちょっとカナちゃん! それ幼稚園の頃の話でしょ!」
「ちゃうで、桜。小二まで一緒に入っとたやん。忘れてもうたん? 俺はよう覚えとるけどなぁ……」
「もう、恥ずかしいから止めて!」
懇願する私にカナちゃんはニッコリと微笑んだ後、視線をコハクへ移してさらに爆弾を投下する。
「何なら身体のどこにほくろがあるか、コハク君にも教えてあげたろか?」
「……その必要はないよ。人から聞くより、自分で確かめた方が確実だからね」
カナちゃんの挑発的な発言にコハクは軽く喉で笑った後、恐ろしく爽やかな表情で言葉を返す。
サラッと笑顔で発せられたその言葉の意味を考えると、私は顔から火が出そうになった。
穴があったら入りたい、そしてもう一生出たくない気持ちで一杯だ。
「そう言うて事はまだやってへんねやな」
ニヤニヤと薄ら笑いでそう言うカナちゃんに、「……だから何?」とコハクはうんざりしたようにため息をついて、ギロリと睨んだ。
「おおこわ、そんな睨まんでもええやん。別に桜の事取って喰おうとしてるわけやあるまいに。友達と遊ぶのも許さへんほど、コハク君は桜の事束縛してるんやね」
大袈裟に驚いてみせた後、カナちゃんは大きな瞳をパチクリとさせながら言った。
「男は別だよ」
「昔みたいに一緒に遊びたかっただけやねんけど、それももう難儀やなぁ……なんか悲しいわ」
冷たく言い放ったコハクの一言に、カナちゃんは眉を下げて悲しそうに笑う。
そんな幼馴染みの姿を見て、胸がチクリと痛むのを感じた。カナちゃんの一言に同じ想いを感じ取ってしまったせいであろうか。
昔はよく一緒にカナちゃんと手を繋いで帰っていた。というより引っ張られながら走っていたと言った方が正しいかもしれない。
空手の稽古がない日は、商店街をグルグルして遊んで帰ったりしていた。
懐かしい日々に思いを馳せつつも、それでも今の私はカナちゃんの手を昔のように取ることは出来ない。
「カナちゃん……ごめんね。また今度紹介するから」
申し訳ない気持ちで一杯になりながら謝ると、カナちゃんは柔らかく微笑んで手を離し、私の頭を優しく撫でてくれた。
「ええよ、桜は幼馴染みの俺よりその彼氏が大事なんやもんなぁ……気ぃつけて帰り」
「……うん」
「ほなまた~」
ヒラヒラと手を振ってカナちゃんはそのまま教室から出ていった。
廊下では「奏様、私がご案内します!」「いや、私が!」という女子の声が飛び交っていた。
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