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第三章 悪の女帝の迫り来る罠
【閑話】これだからイケメンは……!(モブ視点)
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俺の名前は如月恭也。
イケメン王子こと結城コハクが俺の隣の席にやってきて、俺の日常は乱されっぱなしだ。
あいつが転校してきた初日。
クラス中、いや学園中の女子を虜にした奴の周りはそれはもう見事な数の女子であふれかえっていた。
隣の席の俺は休み時間の度に「ちょっと邪魔よ!」と知らない女子に机をどかされ続ける。
毎回机を正しい位置に戻すのが面倒になって、一人だけ変な位置に座ったまま授業を受けていた。
翌日、驚いた事に結城は一条と恋人宣言をした。
それでも女子は奴の周りに群がり、俺の机はどんどん変な位置にずらされる毎日だ。
だが初日に比べると、『あいつちょっと出っぱってないか』程度に緩和した。
それもこれも、一条が奴の傍に居てくれるおかげだ。
正確に言うと、結城が一条の回りを番犬のようにぐるぐるしているといった方が正しい気もするが。
奴の一条への溺愛ぶりは半端なかった。
見ているこっちが恥ずかしくて目を背けたくなる程に。
一言目には「桜」と名前を呼ぶ事から始まり、どこかへ移動する度にしっかりと彼女の手を大事そうに握りしめて嬉しそうに歩いて行く。
一条が「今日は暑いね」と言えば、奴は懐に常備しているらしい扇子を取り出してすかさず扇ぎ始める。彼女が日直で黒板を消しに行くとすかさず付いていき、一緒に消している。
更には一条が机から何か落とすと、教室の端から端まで席が離れているにも関わらず、目にも止まらぬ速さで「桜、これ落ちたよ」と拾いに行く。
それを受け取った一条の方がびびっている事に、奴は気付いていない。
恋は盲目と言うが、ここまで酷い奴を俺は見たことがない。
それ程までに学園の王子様を虜にした一条桜とは如何なる人物か。
一年の頃よくない噂が流れて、それ以来一人で過ごしている地味な女。
クラスの中に居ても居なくても誰も気付かないんじゃないかっていう程、影が薄い。
笑った顔を見た事もなければ、どんな声をしているのかも知らない。
全てが謎に包まれた奴、それが俺の中にある彼女の印象だった。
王子様がこの女のどこに惹かれたのか興味を持ち、俺はしばらく彼女を観察してみた。
しかし、それが全てもの不運の始まりだった。
体育の授業が終わった後、奴は満面の笑みを浮かべてこう言った。
「僕の桜を見ないでくれる? 桜の気を引こうとしても無駄だからね。僕がさせないから」
聞き間違いかと思ったが、どうやら違うらしい。
(何故俺は奴に敵意剥き出しで、こんな事を言われねばならぬのだ?)
一条に興味があったのは好奇心からであって、愛情など欠片も持ち合わせていない。
それなのに、「桜は絶対に渡さないからね」とライバル宣言までされてしまった。
むしろ、君達は付き合っているわけでフツメンの俺が略奪とか無理だろ。
冷静に考えてくれよ、王子様。
それからと言うものの、事ある毎に「今、桜の事見つめてたでしょ?」とチクチク言われ、課題ノートを一条が配っていて俺がそれを受け取っただけで、「今、桜の手に触れなかった?」と隣から声をかけられ続け、俺の胃には穴が開きそうだ。
そのせいか、奴がにこやかに笑顔で話しかけて来る度に、俺の身体は条件反射でビクビクするようになってしまった。
しかし、酷いのはここからだ。
あれは、一条が夏風邪で一週間休んだ時の事。一人で教室に入ってきた結城はこの世の終わりのような顔をしていた。
流石に見ていられなくて「大丈夫か?」と俺は声をかけた。
「僕に優しくしたって、桜は渡さないからね」
どこまでも一条の事しか頭にない王子様に、俺の開いた口は塞がらなかった。
そして、今が好機と言わんばかりに奴の周りに押し寄せた女子の大群が、初日より酷く俺の机をどかし始める。
俺の机は逆隣の硬派な鴻上君の机に、今にもくっつきそうな程近くにあった。
「おい、如月。一人出っぱりすぎてんじゃねぇよ」
シッシッと嫌なものを追い払うかのように鴻上君に手で払われ、俺は休み時間が終わる度に、机を元の位置に戻し続けた。
昼休みには我先にと駆け寄ってきた女子を撒くためか、「如月君、僕たち約束してたよね。さぁ行こうか」と、無理矢理俺を連行し教室から逃亡する王子。
仕方なくこいつと昼を一緒にすると、奴は延々と一条の魅力を語り続ける。
同意を求められ、迂闊に「ああ、そうだな」と頷いたら最後、「やっぱり桜に気があるんだね」と鬼のような形相で凄まれた。
半泣きで何十回も違うといい続け、奴はやっと信じたのか「如月君、僕たちいい友達になれそうだね」と、ニコニコと恐怖のスマイルで握手してきた。
(もしかして俺は、変な奴になつかれたんじゃないか?)
それからと言うもの、俺は王子の一番仲の良い友人という噂が広まり俺の元にも女子がやってくるようになった。
人生最大のモテ期がついに俺にも来たと喜んだ刹那、彼女達は王子に渡してほしいと貢ぎ物を俺の机へ置いていく。
(他人のもので出来上がったプレゼントやラブレターの山など、むなしいだけじゃないか!)
その中には、俺が密かに思いを寄せていた笹山さんもいて、軽く泣けてくる。
一条が学校を休んで三日が経った。
俺の隣席から禍々しいほどの哀愁オーラが流れてくるのを感じた。
日に日に生気を失って儚気になっていく王子の様子に、流石に女子達も戸惑いを隠せないようだ。
元気付けようと近寄る女子も、誰も王子から笑顔を引き出す事が出来ない。
結城にとって一条の存在がどれだけ大事なものか、ありありと見せつけられた瞬間だった。
「ちょっと、如月! アンタ王子と仲良いんだから元気付けてあげなよ!」
そして、クラスの女子から突然の無茶ぶり。
仕方なく俺は結城を屋上まで連れていき、外の空気を吸わせた。
「何があったんだよ? 一条は風邪で休んでるだけだろ?」
「桜が口を聞いてくれないんだ……」
「そりゃー風邪移すわけにはいかないからだろ?」
「桜がメールも、ラインも返してくれないんだ……」
「そりゃー風邪で身体が辛いからだろ?」
「桜に優しさが辛いから近寄らないでって言われたんだ……」
「……お前の愛情が重すぎんだよ」
「……っ」
王子なんて言われてるけど、中身はただの一人の女が好きで堪らない不器用な奴なんだな。
その時、結城の印象が俺の中で少しだけいい方に変わった。
とりあえず俺は、ありきたりなアドバイスをした。
「まずは、風邪がよくなるまで待て。話はそれからだ。がっついて話するんじゃないぞ、まずは適度な距離を保つんだ。相手の話をよく聞いて、自分の正直な気持ちを伝えろ。それで駄目なら諦めろ」
結城は静かに俺の話を聞いた後、「分かった、ありがとう」と綺麗な笑みを浮かべて俺の方を見た。
顔が整い過ぎてて、思わず男の俺でも見惚れてしまった。
(これだからイケメンは……全く羨ましいな、畜生)
それから、少しだけ結城は元気を取り戻したように見えた。
そして、事ある毎に俺を巻き込んで女子を撒くようになった。
女子に追いかけ回されて廊下を全力疾走したのも、正門通らずに塀をよじ登って学園から帰宅したのも初めてだ。
イケメンもイケメンなりに苦労してるんだな。
どれもこれも、フツメンの俺には出来ない貴重な体験だった。
まぁ、好きな子の気持ちは奴に奪われ、校内マラソンに付き合わされたせいで、精神的にも肉体的にも感じる多大な疲労感は否めないが。
一条が休んでからちょうど一週間が経った頃、結城が彼女と手を繋いで嬉しそうに教室へ入ってきた。
うまくいって良かったと、俺は一条に思わず声をかけた。
「一条さん、風邪は大丈夫? 心配してたんだよ」
「うん、もう大丈夫」
「君が居ない間、コイツの荒れようが凄いの何のって」
結城を指差しながら話していると、「僕の桜に何の用?」と言わんばかりの不機嫌な顔で奴が俺を見ている事に気付いた。
「如月君、君は何を言っているのかな? 桜に変なこと吹き込んだら……」
ニコニコと有無を言わせない笑顔を浮かべる結城に、「そ、そんな事するわけないだろ? 俺とお前の仲じゃないか!」と額からタラタラと汗を流して、どもりながら答えた。
「そうだよね、僕たち友達だよね?」と、これまたニコニコ笑顔の結城から俺はサッとは視線を逸らす。
「とりあえず、俺の平穏な学園生活のためにも、今後君は絶対コイツの傍を離れないでくれ、頼む!」
一条さんにそれだけ言うと、俺は脱兎の如く逃げ出した。
イケメン王子こと結城コハクが俺の隣の席にやってきて、俺の日常は乱されっぱなしだ。
あいつが転校してきた初日。
クラス中、いや学園中の女子を虜にした奴の周りはそれはもう見事な数の女子であふれかえっていた。
隣の席の俺は休み時間の度に「ちょっと邪魔よ!」と知らない女子に机をどかされ続ける。
毎回机を正しい位置に戻すのが面倒になって、一人だけ変な位置に座ったまま授業を受けていた。
翌日、驚いた事に結城は一条と恋人宣言をした。
それでも女子は奴の周りに群がり、俺の机はどんどん変な位置にずらされる毎日だ。
だが初日に比べると、『あいつちょっと出っぱってないか』程度に緩和した。
それもこれも、一条が奴の傍に居てくれるおかげだ。
正確に言うと、結城が一条の回りを番犬のようにぐるぐるしているといった方が正しい気もするが。
奴の一条への溺愛ぶりは半端なかった。
見ているこっちが恥ずかしくて目を背けたくなる程に。
一言目には「桜」と名前を呼ぶ事から始まり、どこかへ移動する度にしっかりと彼女の手を大事そうに握りしめて嬉しそうに歩いて行く。
一条が「今日は暑いね」と言えば、奴は懐に常備しているらしい扇子を取り出してすかさず扇ぎ始める。彼女が日直で黒板を消しに行くとすかさず付いていき、一緒に消している。
更には一条が机から何か落とすと、教室の端から端まで席が離れているにも関わらず、目にも止まらぬ速さで「桜、これ落ちたよ」と拾いに行く。
それを受け取った一条の方がびびっている事に、奴は気付いていない。
恋は盲目と言うが、ここまで酷い奴を俺は見たことがない。
それ程までに学園の王子様を虜にした一条桜とは如何なる人物か。
一年の頃よくない噂が流れて、それ以来一人で過ごしている地味な女。
クラスの中に居ても居なくても誰も気付かないんじゃないかっていう程、影が薄い。
笑った顔を見た事もなければ、どんな声をしているのかも知らない。
全てが謎に包まれた奴、それが俺の中にある彼女の印象だった。
王子様がこの女のどこに惹かれたのか興味を持ち、俺はしばらく彼女を観察してみた。
しかし、それが全てもの不運の始まりだった。
体育の授業が終わった後、奴は満面の笑みを浮かべてこう言った。
「僕の桜を見ないでくれる? 桜の気を引こうとしても無駄だからね。僕がさせないから」
聞き間違いかと思ったが、どうやら違うらしい。
(何故俺は奴に敵意剥き出しで、こんな事を言われねばならぬのだ?)
一条に興味があったのは好奇心からであって、愛情など欠片も持ち合わせていない。
それなのに、「桜は絶対に渡さないからね」とライバル宣言までされてしまった。
むしろ、君達は付き合っているわけでフツメンの俺が略奪とか無理だろ。
冷静に考えてくれよ、王子様。
それからと言うものの、事ある毎に「今、桜の事見つめてたでしょ?」とチクチク言われ、課題ノートを一条が配っていて俺がそれを受け取っただけで、「今、桜の手に触れなかった?」と隣から声をかけられ続け、俺の胃には穴が開きそうだ。
そのせいか、奴がにこやかに笑顔で話しかけて来る度に、俺の身体は条件反射でビクビクするようになってしまった。
しかし、酷いのはここからだ。
あれは、一条が夏風邪で一週間休んだ時の事。一人で教室に入ってきた結城はこの世の終わりのような顔をしていた。
流石に見ていられなくて「大丈夫か?」と俺は声をかけた。
「僕に優しくしたって、桜は渡さないからね」
どこまでも一条の事しか頭にない王子様に、俺の開いた口は塞がらなかった。
そして、今が好機と言わんばかりに奴の周りに押し寄せた女子の大群が、初日より酷く俺の机をどかし始める。
俺の机は逆隣の硬派な鴻上君の机に、今にもくっつきそうな程近くにあった。
「おい、如月。一人出っぱりすぎてんじゃねぇよ」
シッシッと嫌なものを追い払うかのように鴻上君に手で払われ、俺は休み時間が終わる度に、机を元の位置に戻し続けた。
昼休みには我先にと駆け寄ってきた女子を撒くためか、「如月君、僕たち約束してたよね。さぁ行こうか」と、無理矢理俺を連行し教室から逃亡する王子。
仕方なくこいつと昼を一緒にすると、奴は延々と一条の魅力を語り続ける。
同意を求められ、迂闊に「ああ、そうだな」と頷いたら最後、「やっぱり桜に気があるんだね」と鬼のような形相で凄まれた。
半泣きで何十回も違うといい続け、奴はやっと信じたのか「如月君、僕たちいい友達になれそうだね」と、ニコニコと恐怖のスマイルで握手してきた。
(もしかして俺は、変な奴になつかれたんじゃないか?)
それからと言うもの、俺は王子の一番仲の良い友人という噂が広まり俺の元にも女子がやってくるようになった。
人生最大のモテ期がついに俺にも来たと喜んだ刹那、彼女達は王子に渡してほしいと貢ぎ物を俺の机へ置いていく。
(他人のもので出来上がったプレゼントやラブレターの山など、むなしいだけじゃないか!)
その中には、俺が密かに思いを寄せていた笹山さんもいて、軽く泣けてくる。
一条が学校を休んで三日が経った。
俺の隣席から禍々しいほどの哀愁オーラが流れてくるのを感じた。
日に日に生気を失って儚気になっていく王子の様子に、流石に女子達も戸惑いを隠せないようだ。
元気付けようと近寄る女子も、誰も王子から笑顔を引き出す事が出来ない。
結城にとって一条の存在がどれだけ大事なものか、ありありと見せつけられた瞬間だった。
「ちょっと、如月! アンタ王子と仲良いんだから元気付けてあげなよ!」
そして、クラスの女子から突然の無茶ぶり。
仕方なく俺は結城を屋上まで連れていき、外の空気を吸わせた。
「何があったんだよ? 一条は風邪で休んでるだけだろ?」
「桜が口を聞いてくれないんだ……」
「そりゃー風邪移すわけにはいかないからだろ?」
「桜がメールも、ラインも返してくれないんだ……」
「そりゃー風邪で身体が辛いからだろ?」
「桜に優しさが辛いから近寄らないでって言われたんだ……」
「……お前の愛情が重すぎんだよ」
「……っ」
王子なんて言われてるけど、中身はただの一人の女が好きで堪らない不器用な奴なんだな。
その時、結城の印象が俺の中で少しだけいい方に変わった。
とりあえず俺は、ありきたりなアドバイスをした。
「まずは、風邪がよくなるまで待て。話はそれからだ。がっついて話するんじゃないぞ、まずは適度な距離を保つんだ。相手の話をよく聞いて、自分の正直な気持ちを伝えろ。それで駄目なら諦めろ」
結城は静かに俺の話を聞いた後、「分かった、ありがとう」と綺麗な笑みを浮かべて俺の方を見た。
顔が整い過ぎてて、思わず男の俺でも見惚れてしまった。
(これだからイケメンは……全く羨ましいな、畜生)
それから、少しだけ結城は元気を取り戻したように見えた。
そして、事ある毎に俺を巻き込んで女子を撒くようになった。
女子に追いかけ回されて廊下を全力疾走したのも、正門通らずに塀をよじ登って学園から帰宅したのも初めてだ。
イケメンもイケメンなりに苦労してるんだな。
どれもこれも、フツメンの俺には出来ない貴重な体験だった。
まぁ、好きな子の気持ちは奴に奪われ、校内マラソンに付き合わされたせいで、精神的にも肉体的にも感じる多大な疲労感は否めないが。
一条が休んでからちょうど一週間が経った頃、結城が彼女と手を繋いで嬉しそうに教室へ入ってきた。
うまくいって良かったと、俺は一条に思わず声をかけた。
「一条さん、風邪は大丈夫? 心配してたんだよ」
「うん、もう大丈夫」
「君が居ない間、コイツの荒れようが凄いの何のって」
結城を指差しながら話していると、「僕の桜に何の用?」と言わんばかりの不機嫌な顔で奴が俺を見ている事に気付いた。
「如月君、君は何を言っているのかな? 桜に変なこと吹き込んだら……」
ニコニコと有無を言わせない笑顔を浮かべる結城に、「そ、そんな事するわけないだろ? 俺とお前の仲じゃないか!」と額からタラタラと汗を流して、どもりながら答えた。
「そうだよね、僕たち友達だよね?」と、これまたニコニコ笑顔の結城から俺はサッとは視線を逸らす。
「とりあえず、俺の平穏な学園生活のためにも、今後君は絶対コイツの傍を離れないでくれ、頼む!」
一条さんにそれだけ言うと、俺は脱兎の如く逃げ出した。
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