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第一章 獣耳男子と恋人契約
いつもと違う日常(挿絵あり)
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「何してるの?」
教室内に低くて透き通った声が響いて、視線が一斉に声のするドアに集まる。
そこに立っていたのは、女子にモテモテの転校生。
嫌な場面を目撃されてしまった。
乱入されなければ、後十分もすれば解放されたのに。
「ねぇ、そこで何してるの?」
私を押さえつけてた女子たちは急いで手を離した。
「楽しくおしゃべりしていただけよ。結城君も一緒にどう?」
主犯格の桃井美香が、聞いたこともないような猫なで声で転校生に詰め寄った。
他の女子達もうっとりとした眼差しで彼のまわりに群がっていく。
「悪いけど、僕は一条さんに用があるから」
転校生が桃井達を相手にせず一直線にこちらへ歩いてきたせいで、笑顔の能面が剥がれ落ちた彼女達の鋭い視線が私を突き刺す。
学園内で私の名前を呼ばれたの、いつ以来だろう? それに、何故私の名前を知っているんだろうか。
転校してきたばかりで浮いた私の存在が異様に悪目立ちし、そのせいで逆に名前を覚えられてしまったのかもしれない。
「もう大丈夫だから、安心して」
転校生は私の目線の高さまでしゃがむと、琥珀色の綺麗な瞳で私を捉えてふわりと優しく微笑んだ。
男の人に使う言葉じゃないけど、『なんて綺麗な人』だと思った。
異国の血が流れている彼は、絹糸のような銀髪に、雪のように白い肌と端正な顔立ちをしている。
まるで、絵本の中から飛び出してきた王子様のようだ。
「怪我をしているね、保健室へ行こう」
私の腕から流れている血を見て、彼は眉を下げて悲しそうに表情を曇らせた。そしてポケットから取り出したハンカチを、何の躊躇いもなく私の傷口に巻こうとする。
「そんな事したらハンカチが汚れます!」
「君に使ってもらえるなら、このハンカチも本望だよ」
(この人は、何を言っているの?)
言葉の意味を理解出来ないまま、腕は綺麗にハンカチで巻かれてしまった。
呆然としていた私に、彼は「ごめんね」と謝った後、床に座ったままだった私の身体を優しく横向きに抱き上げる。
所謂、お姫様抱っこというやつで。
突然の事にフリーズする私の思考。
宙に浮いた身体の感覚がむずかゆくて、足がブラブラと揺れて落ち着かない。
その様子をポカンとした様子で見つめる桃井達を気にとめる事もなく、転校生はただ普通に長い足を動かして、私を抱えたまま教室から出て行ってしまった。
教室内に低くて透き通った声が響いて、視線が一斉に声のするドアに集まる。
そこに立っていたのは、女子にモテモテの転校生。
嫌な場面を目撃されてしまった。
乱入されなければ、後十分もすれば解放されたのに。
「ねぇ、そこで何してるの?」
私を押さえつけてた女子たちは急いで手を離した。
「楽しくおしゃべりしていただけよ。結城君も一緒にどう?」
主犯格の桃井美香が、聞いたこともないような猫なで声で転校生に詰め寄った。
他の女子達もうっとりとした眼差しで彼のまわりに群がっていく。
「悪いけど、僕は一条さんに用があるから」
転校生が桃井達を相手にせず一直線にこちらへ歩いてきたせいで、笑顔の能面が剥がれ落ちた彼女達の鋭い視線が私を突き刺す。
学園内で私の名前を呼ばれたの、いつ以来だろう? それに、何故私の名前を知っているんだろうか。
転校してきたばかりで浮いた私の存在が異様に悪目立ちし、そのせいで逆に名前を覚えられてしまったのかもしれない。
「もう大丈夫だから、安心して」
転校生は私の目線の高さまでしゃがむと、琥珀色の綺麗な瞳で私を捉えてふわりと優しく微笑んだ。
男の人に使う言葉じゃないけど、『なんて綺麗な人』だと思った。
異国の血が流れている彼は、絹糸のような銀髪に、雪のように白い肌と端正な顔立ちをしている。
まるで、絵本の中から飛び出してきた王子様のようだ。
「怪我をしているね、保健室へ行こう」
私の腕から流れている血を見て、彼は眉を下げて悲しそうに表情を曇らせた。そしてポケットから取り出したハンカチを、何の躊躇いもなく私の傷口に巻こうとする。
「そんな事したらハンカチが汚れます!」
「君に使ってもらえるなら、このハンカチも本望だよ」
(この人は、何を言っているの?)
言葉の意味を理解出来ないまま、腕は綺麗にハンカチで巻かれてしまった。
呆然としていた私に、彼は「ごめんね」と謝った後、床に座ったままだった私の身体を優しく横向きに抱き上げる。
所謂、お姫様抱っこというやつで。
突然の事にフリーズする私の思考。
宙に浮いた身体の感覚がむずかゆくて、足がブラブラと揺れて落ち着かない。
その様子をポカンとした様子で見つめる桃井達を気にとめる事もなく、転校生はただ普通に長い足を動かして、私を抱えたまま教室から出て行ってしまった。
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