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第3章 セイモーと偽善者狩り
第18話 責任放棄?と嫉妬
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「できる! できるし!」
「ほ~ぅ? じゃあ今回はローズに全部任せようかなぁ~?」
「上等よ! 絶対シダよりいい作戦立てて見せるんだから!!」
なにやらローズとシダが言い合いをしているようだ。クリスとヤグル、マギク兄弟は微笑ましくその光景を見ていた。
どうしてこうなったのかって? 事の始まりはシダのいつもと違う雰囲気からだった……
ーー15分前
「みんなありがとう。けど、今回の作戦なんだが、俺とクリスは直接参加するのは難しそうだ。すまん」
「どうしてですか?」
シダは真剣な顔をしながらみんなにお礼を言ったが、その後すぐに申し訳なさそうに謝った。
するとヤグルがクリスを一旦見た後、シダの顔を見ながら理由を確認した。
「1つは俺とクリスは顔が知れてるってことだ。街中で目立ったことをするには都合が悪い。もう1つは……」
「もう1つは何よ!」
最初はいつもより少し真剣な声のトーンで、普通に話していたシダだったが、もう1つ目を言おうとするあたりで声が小さくなっていった。
すぐに話出さないシダに、ローズが頬杖をしながら突っかかる。
「もう1つは……俺たち2人は、今こんな状態で戦闘になった際に、足手まといになる可能性が高いと言う事だ」
その時のシダは、とても悔しそうな顔をしていた。自分の作った組織の初仕事に参加できないなんて、誰でも悔しいだろう。だが、理由はそれだけではなかった。
「何よ! 1回失敗したくらいで! 今回はクリスのこと守りきれたんじゃない!」
「そーだな。悪い。リーダーが暗い顔するもんじゃないな。心配させて悪かった」
ローズは、ローズだけは見ていたから知っていた。シダが命をかけてクリスを守ろうとしたこと。そして弟の時とは違い、守りきったこと。でもそれは自分だけの力ではなかったこと。
だから励ましたのだ。自分を救ってくれた男にメソメソしてもらっては困るとでも言うように。
シダは正気を取り戻したみたいだ。
「べっ別に心配なんてしてないわよ! ……ったく、これじゃ頼りなさ過ぎるから、仕方なく励ましてあげたのよ。感謝しなさい!」
「あーはいはい」
シダに言われた言葉で、急に恥ずかしくなったローズは、照れ隠しに言い訳を言うと、プイッとそっぽを向いた。
シダは呆れた目でローズを見ていた。
「まっ、今のあんたじゃ作戦立てだって私の方がうまくできるわね!」
「ホェ~俺よりいい案があると? ていうか、ローズに作戦立てなんてできるのか?」
「できる! できるし!」
ちょっと調子に乗りすぎたローズが口走った言葉に、それはもう素早い食らいつきを見せるシダだったーー
とまぁこのような形で、現在に至るわけだ。
確認すると、今回のミッションは、ピクリットに制裁を下し、フレン爺を救い出す。と言うもの。
ローズが今回の作戦を立てる役、そして、その作戦に参加できるのは、ヤグル、マギク、ローズの3人だ。
シダとクリスは、直接この件には参加できないが、影からサポートしようとシダは考えていた。
話がまとまり、今日は一旦解散となった。
シダとクリスは一度王城に戻り、情報収集に当たることにしたようで、カランコエの基地を後にした。
「なぁ。本当に大丈夫なのか?」
「ん? 何がだ?」
王城への帰り道、竜馬で横に並びながら歩いていると、突然クリスが心配そうな顔でシダに確認した。
シダは何を確認しているのか半分わかってはいたが、わざとキョトンとした顔で聞き返す。
「ローズのことだ。本当に作戦任せて大丈夫なのかよ」
「心配すんな。お前は少しは分かってんだろ? アイツの行動力。それに、あの時俺の誘導に気づいたやつだ。頭もキレる奴さ」
シダはハダクトでの一連で、ローズのことをすでに信用しているようだが、クリスはローズのことをまだあまり知らないため、シダほどではなかった。
心配するクリスに、少し笑いながらシダは、横目でアッサリと答えた。
シダは気分良さそうに歩くペースを上げて先に行ってしまった。
……
クリスはすぐにはペースを上げようとはしなかった。ゆっくりと歩きながらクリスは俯いた。
(シダ……俺はお前みたいに、全てを前抜きに考えられるような人間じゃないんだ。また、あの時みたいなことが起きたらと思うと……)
「何トロトロしてんだよ! 早く行こうぜ!」
「はぁ~。あいよ!」
向こうから大きな声でシダが呼んでいた。クリスは下を向いていた顔を上げると、呆れた笑顔で返事をすると、竜馬に指示を出しペースを上げる。
(ったく。お前といると、前を向いていられるよ)
翌日、モノボルゥー王国王室ーー
「ボス。最近怪しい者がこの近辺をうろついているという噂をご存知でしょうか」
「いや、そんな情報は入ってきて……いや待て」
(前にオンラッシュとオーゴゥの言っていた少女の話か? クリスも見たというのか……)
シダが情報収集をする最中、クリスは1人、王室に来ていた。
クリスはその少女のことは知らない。つまり、オリバムに報告した情報は、作り話ということだ。しかしオリバムは、前にオンラッシュとオーゴゥから受けた報告のことと勘違いをし、クリスに話を続けさせた。
クリスは、最近町に怪しい者が出没する。という報告をピクリットから受けたと言った。
オリバムは悩んだ。
(傷を回復させるために休暇を取っているクリスとシダを使うわけには……しかし、その謎の少女とやらには何か嫌な予感がする……)
「私と、シダを警備に当たらせて下さい」
悩むオリバムを見て、クリスは名乗り出た。
オリバムは、クリスに何か強い意志を感じ取り、それを許可するのだった。
その後クリスは王室を出て、シダの方へと向かった。
「すまないシダ。お前の願いを叶えてやれなくて……」
歩きながらクリスは小さくそう呟いた。
「ほ~ぅ? じゃあ今回はローズに全部任せようかなぁ~?」
「上等よ! 絶対シダよりいい作戦立てて見せるんだから!!」
なにやらローズとシダが言い合いをしているようだ。クリスとヤグル、マギク兄弟は微笑ましくその光景を見ていた。
どうしてこうなったのかって? 事の始まりはシダのいつもと違う雰囲気からだった……
ーー15分前
「みんなありがとう。けど、今回の作戦なんだが、俺とクリスは直接参加するのは難しそうだ。すまん」
「どうしてですか?」
シダは真剣な顔をしながらみんなにお礼を言ったが、その後すぐに申し訳なさそうに謝った。
するとヤグルがクリスを一旦見た後、シダの顔を見ながら理由を確認した。
「1つは俺とクリスは顔が知れてるってことだ。街中で目立ったことをするには都合が悪い。もう1つは……」
「もう1つは何よ!」
最初はいつもより少し真剣な声のトーンで、普通に話していたシダだったが、もう1つ目を言おうとするあたりで声が小さくなっていった。
すぐに話出さないシダに、ローズが頬杖をしながら突っかかる。
「もう1つは……俺たち2人は、今こんな状態で戦闘になった際に、足手まといになる可能性が高いと言う事だ」
その時のシダは、とても悔しそうな顔をしていた。自分の作った組織の初仕事に参加できないなんて、誰でも悔しいだろう。だが、理由はそれだけではなかった。
「何よ! 1回失敗したくらいで! 今回はクリスのこと守りきれたんじゃない!」
「そーだな。悪い。リーダーが暗い顔するもんじゃないな。心配させて悪かった」
ローズは、ローズだけは見ていたから知っていた。シダが命をかけてクリスを守ろうとしたこと。そして弟の時とは違い、守りきったこと。でもそれは自分だけの力ではなかったこと。
だから励ましたのだ。自分を救ってくれた男にメソメソしてもらっては困るとでも言うように。
シダは正気を取り戻したみたいだ。
「べっ別に心配なんてしてないわよ! ……ったく、これじゃ頼りなさ過ぎるから、仕方なく励ましてあげたのよ。感謝しなさい!」
「あーはいはい」
シダに言われた言葉で、急に恥ずかしくなったローズは、照れ隠しに言い訳を言うと、プイッとそっぽを向いた。
シダは呆れた目でローズを見ていた。
「まっ、今のあんたじゃ作戦立てだって私の方がうまくできるわね!」
「ホェ~俺よりいい案があると? ていうか、ローズに作戦立てなんてできるのか?」
「できる! できるし!」
ちょっと調子に乗りすぎたローズが口走った言葉に、それはもう素早い食らいつきを見せるシダだったーー
とまぁこのような形で、現在に至るわけだ。
確認すると、今回のミッションは、ピクリットに制裁を下し、フレン爺を救い出す。と言うもの。
ローズが今回の作戦を立てる役、そして、その作戦に参加できるのは、ヤグル、マギク、ローズの3人だ。
シダとクリスは、直接この件には参加できないが、影からサポートしようとシダは考えていた。
話がまとまり、今日は一旦解散となった。
シダとクリスは一度王城に戻り、情報収集に当たることにしたようで、カランコエの基地を後にした。
「なぁ。本当に大丈夫なのか?」
「ん? 何がだ?」
王城への帰り道、竜馬で横に並びながら歩いていると、突然クリスが心配そうな顔でシダに確認した。
シダは何を確認しているのか半分わかってはいたが、わざとキョトンとした顔で聞き返す。
「ローズのことだ。本当に作戦任せて大丈夫なのかよ」
「心配すんな。お前は少しは分かってんだろ? アイツの行動力。それに、あの時俺の誘導に気づいたやつだ。頭もキレる奴さ」
シダはハダクトでの一連で、ローズのことをすでに信用しているようだが、クリスはローズのことをまだあまり知らないため、シダほどではなかった。
心配するクリスに、少し笑いながらシダは、横目でアッサリと答えた。
シダは気分良さそうに歩くペースを上げて先に行ってしまった。
……
クリスはすぐにはペースを上げようとはしなかった。ゆっくりと歩きながらクリスは俯いた。
(シダ……俺はお前みたいに、全てを前抜きに考えられるような人間じゃないんだ。また、あの時みたいなことが起きたらと思うと……)
「何トロトロしてんだよ! 早く行こうぜ!」
「はぁ~。あいよ!」
向こうから大きな声でシダが呼んでいた。クリスは下を向いていた顔を上げると、呆れた笑顔で返事をすると、竜馬に指示を出しペースを上げる。
(ったく。お前といると、前を向いていられるよ)
翌日、モノボルゥー王国王室ーー
「ボス。最近怪しい者がこの近辺をうろついているという噂をご存知でしょうか」
「いや、そんな情報は入ってきて……いや待て」
(前にオンラッシュとオーゴゥの言っていた少女の話か? クリスも見たというのか……)
シダが情報収集をする最中、クリスは1人、王室に来ていた。
クリスはその少女のことは知らない。つまり、オリバムに報告した情報は、作り話ということだ。しかしオリバムは、前にオンラッシュとオーゴゥから受けた報告のことと勘違いをし、クリスに話を続けさせた。
クリスは、最近町に怪しい者が出没する。という報告をピクリットから受けたと言った。
オリバムは悩んだ。
(傷を回復させるために休暇を取っているクリスとシダを使うわけには……しかし、その謎の少女とやらには何か嫌な予感がする……)
「私と、シダを警備に当たらせて下さい」
悩むオリバムを見て、クリスは名乗り出た。
オリバムは、クリスに何か強い意志を感じ取り、それを許可するのだった。
その後クリスは王室を出て、シダの方へと向かった。
「すまないシダ。お前の願いを叶えてやれなくて……」
歩きながらクリスは小さくそう呟いた。
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