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第34話『Q.バナナはお菓子に入りますか?』

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「合宿?」

 今俺たちは朝のホームルームを机に座って待っている。いつものように席に座ると、テューがどこからか入手してきた情報を俺へと漏らしていた。

「うん。なんか近くのダンジョンで強化合宿をするんだとさ」

「クラスで?」

「クラスで」

「全クラス?」

「全クラス」

 なんで俺が質問したことにしか答えてくれないんだよ。もーちょい情報くれよ。あれ?でも待てよ……

「お前それどっから手に入れた情報だ」

「ふっふっふ。あまとうよ、僕が誰だか忘れたのかい?」

 あんまり調子に乗っているのも見ていて不愉快なのでこの際はっきりと言わせてもらおう。

「パリピ」

「パリ……なんだって?」

「パリピ」

「あまとうよ、それはどんな食べ物だい?」

「別にお前のこと食べたくねぇよ」

 なんなんだこいつは一体。

「何なんだあまとうのそのヘンテコ語は一体」

 こいつ心でも読めるんだろうか……。まぁそんなことはいいか。えっとテューが誰かって? ……お調子者? アホ? だめだそれしか思い浮かばん。
 俺が本気でわからないというように唸っていると、テューは呆れた顔で言うのだ。

「細作の参謀。だろ?」

 ああぁ。そう言えばそうだった。
 顔に出ていたのだろう。テューが溜息を吐きながら「もー忘れてたのかよ」と言っている。ついでに馬鹿にもしていた。記憶力が何たらと。
 取り敢えず納得したところで鐘の音がなると、いつのまにか教壇に担任の先生が立っており出欠確認がとられ始めた。そして最後に先ほどまで話していた内容が皆の耳へと入ることとなった。

「えー、来週末に合宿を行います。クラスごとにキャンプを貼り、二泊三日でダンジョンに潜ります。準備しておくように」

「せんせー」

「はいトール君、何でしょうか」

「バナナはお菓子に入りますか?」

「…………さて、授業の準備を始めて下さい」

 おいこら! 無視するんじゃないよ! ここ大事なのに。――どうやらこの世界ではこのネタは通じないようです。あと一つだけ突っ込ませて下さい。話が急すぎです。もっと早くに教えて下さい。




 ■■■




 ――昼休み。

「で? あまとう、バナナって何よ」

「それ私も気になってたの。どこの国の食べ物?」

 現在俺たちはいつもの様に四人で机を囲んで昼食をとっている。俺の今日の弁当は唐揚げ弁当だ。この世界のもので俺なりに作って見た。俺は唐揚げを一つ口へと運びながらテューとティナからの質問に答える。

「えっと、南の国になる果物だよ」

 まぁ地球では、ね。なんだかすごい見られてるんだが……。

「トールは合宿にそれを持って来るつもりなの?」

 今度はユナから質問が飛んできた。まずい。そんなものこの世界にあるかどうかわかんないのに……。まぁ正直に答えておこう。

「俺の故郷では遠足の時に必ずあの質問するんだよ。お約束ってやつ」

「ふーん。なんだか頭悪そうね」

 やめて下さいティナさん。頭悪い人がするお約束の質問なんです。あれ? なんだかブーメランが飛んできた気がするぞ……まぁ気のせいか。うん。唐揚げはこっちの世界でも美味しい!




 ■■■




「よしみんな集まったな!」

 俺たちの前に立っている筋肉むきむきの騎士のような教官の名はアザルド・デイヴォリッド。灰色の短髪が似合うその男は、かつてこの国で二番目に強かったと言われている。つまり元国家騎士副団長であると言うことだ。
 そう言えば身近にこんなすごい人がいるんだった。

「さて、もう聞いていると思うが来週末に強化合宿が入っている。まだ剣の持ち方すらままならない者もいる自分たちが突然何故?と思ったものも多いだろう」

 そうだ。それはさっきからそこが引っかかっていた。知っていたのは情報に長けているテューだけ。来週からなんて話が早すぎる。

「理由についてはいくつかあるが、最大の理由は魔物の出現だろう。このクラスに四人、現場に遭遇して、無謀にも立ち向かったものがいる」

 あ、やばい。それ俺たちのことだ。無謀だとさ。まぁそうなるよね。
 俺たち四人は苦笑いをしながら後に続く先生の話を聞くこととなった。

「彼らは駆けつけた騎士にこう言ったそうだ。騎士を目指すものとして、町を守るのは当然だ。とな。とても良い心構えだと私も思う」

 あれ?なんか褒められてる?
 俺たち四人は頬を緩ませながら後に続く先生の話を聞くこととなった。

「しかし危険なことに変わりはない。今後このようなことがないとも限らない。そんな時君達ならどうする?」

 先生の問いかけに一人の生徒が手を挙げた。
 あれは確か、俺と一回戦目で戦った坊主君だ。

「失礼します。私なら、逃げずに戦うと思います」

「よく言った。だが今の君では力不足だ」

「はい」

「なに、攻めているわけではない。これはおそらく皆も同じなのではないか?」

 強く言い切った坊主君。すぐに先生に無茶であることを告げられるが、それでも坊主君を含め俺たちの意見は変わらない様子だった。ここにいる全員が国家騎士を目指しているのだ。俺たちは無言のまま先生へと向かい強い視線を向ける。

「我々は生き方を変えられない。その場に遭遇すれば身を呈してこの国を守るだろう。だからだ。君たちには学んでもらう。魔物と戦うすべを、ピンチを乗り越えるすべを、ダンジョンで学んでこい!」

「はい!!」

 俺たちは力強く返事をした。

「それでは本日の授業を始める」

 そんな今日の号令はいつもに増して気合が感じられた。
 俺も負けていられない。あいつらに置いていかれないように。そしていつか本当に誰かを守れるように。
 俺は再び一歩を踏み出した。
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