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第104話 再会……?

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 商売に出ていたのは、セベルさんとかリサさんですが。

 村と村の交流に関しては結構な頻度で皆さん訪れているようで。

 全然道が分からない身としましては、後ろに付いていくしかない状況なのです。

 という訳で、一か所目に到着しました。

 こちら現在の村の場所に一番近い村でして。

 私達の村が出来るまでは、辺境最前線という事で若い夫婦が数十組と子供しかいないこじんまりとした村となります。

 村の歴史が浅いだけにあまり豪族さん達とは交流は無かったのですが、それでもよしみというやつがありまして。

 どうひっくり返しても出すお金が無いだけに、人手を襲撃の時に出したという経緯となります。

 小さな村で小作扱いにされても、なる方も管理する方も困るようで。

 雰囲気だけが悪くなりながら春の用意が一向に進まないという悪循環を招いている状況で、困ってしまってわんわんわわんと町に訴え出た気概のある村なのです。

 という訳で、うちの村の人に村長を探してもらい、事情の説明タイムです。

 助力というのを理解してもらった途端、村民が集められ公知される中々のフットワークの軽さ。

 死中に活って感じで、泣かれたのには困りましたが。

 という訳で、農作業の開始です。

 まぁ、もやし系男子の私はものの役にもたたないので、進行役兼伝言係ですが。

 それでも余力のある村の男子達。

 荒れ気味の畑をものともせずに、耕していく姿は中々に頼もしいです。

 まぁ、最近は宴会で奥様方に耳を引っ張られながら、痛いよかーちゃんとか叫んでいる姿ばかり目にしていましたが。

 結局ものの数日で春蒔きの前段階までは作業が終わったので、急いで次の村へ。

 出ていく頃には、泣きながら祈られている状況で微妙に心が痛かったですが。

 これは、あれですね。

 領主さん的には、村々を納めて欲しいんじゃないかなという意図が透けて見えてきました。

 町で吸収するにはコストばっかりかかりますし。

 うちが合併しちゃえば、面倒を見る必要はなくなるし、交易のパイも広がると。

 そういう算段で態々依頼を出したのだろうなと。

 そんな領主さんの心の内を見透かしたのは、三件目の村を涙で見送られながら次の村に向かって走り去る辺りでした。

 精霊さん達の能力がありますので、余力はあります。

 将来、私がいなくなっても困らないだけの状況を作り上げるのは可能でしょう。

 でも、最近命を背負わないといけない相手が倍ほど増えたのに、その上に倍プッシュをされるのはいかがなものかなと。

 それでも、国を作り上げるというのはこういうのを飲み込んでいかないといけないのかと溜息を一つ吐き出したくなるような出来事でした。

 結局、春の手前くらいまでには各村の準備も完了し、お仕事を完遂した和やかな気分で村に帰ってきた訳ですが。

 数日後に、お客様現る、現る。

 訪問してきたのは、最近見知った村の人達。

 何かなと思えば、吸収合併の嘆願でして。

 詳細を聞いてみると、領主サイドからの入れ知恵のようで。

 管理の手や、復興支援も早晩に手を引くので、生き方は考えてねという事らしいのですが。

 結局こうやって退路は塞がれるのだなと思い知った次第です。

 形ばかりの村民会議を執り行いまして、民意の総意として吸収合併と相成りました。

 一気に、国らしくなってまいりましたって感じです。

 リサさんは忙しくなりがちなので、不満を溜めこみがちなので、要注意です。

 まぁ、当初の算段通り進んでいるのは良い事だなんて、ちょちょぎれそうな涙を抑えるために空なんかを眺めていたのですが。

 ぱきりぱきりと、ガラスに罅が走るかのように、天空が割れはじめまして。

 あれ、と思った瞬間。

『しんにゅうしゃなの』

『わーにん、わーにん』

『とーほーにげーげきのじゅんびあり!!』

 わらわらと精霊さんが集まってきて、周囲をネイティブアメリカンサークルで高速ダンシングをはじめます。

 すると、罅が入った空が修復され始めた訳なのですが。

 ほんの数秒後、びだんっと周囲に響き渡るような打突音が響き渡りまして。

 よくよく見てみれば、お空の彼方に自動ドアが開かなかった人みたいにべったりと張り付いたあの時の女神様の姿がありました。

 百年の恋も冷めそうな、ど根性な張り付き具合でしたがね。
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