89 / 106
第089話 腕相撲
しおりを挟む
森の薄い場所に陣取り、偵察を頑張っていた豪族さんの村の人達。
精霊さんの話では、お腹を鳴らしながらイライラしていたそうなので、大分可哀そうだと思う。
偵察に行ってこいと言われて、裏社会の人に案内されて、あるかないかも分からない村に、見つかると駄目だからと馬も使わず、森沿いに隠れながら、五日以上もかけて歩いてきたら。
村の周りには長城が築かれていて、中の様子も確認出来ず、ただただ炊事の煙の量で人の数を判断しつつ、美味しそうな匂いに燻されて、ぐーぐーお腹を鳴らしながらとぼとぼまた帰る。
状況を描写するだけで悲惨だなと。
ちなみに精霊さん曰く、あんまり村でも美味しいものを食べていないようで。
成功の暁には、腹いっぱい食べて、悪い事を沢山しようと決心していたそうなのですよ。
もうね、貧すれば鈍するというか、思考が完全に野盗の類いと一緒です。
これだから、蛮族は。
というか、今まさに蛮族ムーヴをしているのは、うちの村の面々なのですが……。
「飲んでらっしゃいますか!!」
陽気に肩を叩きながら、何度も同じ事を聞いてくるのは領軍の司令官さん。
飲める口っぽかったので、いっきいっきと進めていると、陽キャにチェンジしちゃいました。
まぁ、長城があるので一日や二日、お酒が苦手な人が梯子を外す簡単な仕事をしていれば持ちこたえますが。
中々、酔っ払いが量産される哀れな狩られる予定の村というのもシュールなもので。
あ、向こうでは領軍の人と村の人が腕相撲大会とか開催しています。
いや、元々は力比べって変形のモンゴル相撲みたいな感じだったのですが。
固い地面の上で、バックドロップとかバックブリーカーとかを炸裂させているのを見て肝が冷えた次第でして。
おいおい、そんなショーマンシップどころか生き死にがかかるデスマッチ、お金も取らずに爆誕させるの止めて下さいと。
どう考えても、戦争の前にけが人が出ます。
という訳で、懇々と説き伏せて、新たな文化である腕相撲を編み出した訳です。
で、こいつなんですが。
結構村の人に好評でして。
いや、技術の出る相撲ですと、村の人ってほぼ軍籍の人に勝てないんです。
だって、そのために訓練していますから。
ヤッパを無くしたからって敵が見捨ててくれる訳もなく。
徒手空拳でも人を無力化する術というのは大事でして。
特にこの世界なんて、魔法がありますので。
軽装主体という事もあり、地面を武器にしている人は多いのです。
で、翻って腕相撲なのですが。
こいつも技術は色々ありますが、基本は腕っぷしの強さ如何で決まります。
となると、結構村の人も善戦するんです。
というか、どちらかというと村の人の方が勝率良い感じですね。
これも理由がありまして。
軍というのは効率良く、団体行動と対象を無力化する術を学ぶのがお仕事なのです。
力を強くするのが目的ではありませんし、どちらかというと非力な人を基準にしてカリキュラムを組むくらいの世界です。
翻りまして、村の人。
固い地面は我らが仇。
鍬だけが友達さって感じで、腕力むっきむきな人ばっかりでして。
効率的な鍬の使い方というのは実際にあるのですが、やっぱり腕っぷしで大地をねじ伏せる方が楽なのです。
結論といたしましては、単純な腕っぷしに関しては軍の人よりも農業や林業を営んでいる側の方が有利なのです。
という訳で、技術の軍人さんが虚々実々の駆け引きをかますのに対し、パワーイズジャスティスの村の人が受けて立つ、熱い接戦を繰り広げている訳で。
はい。
もうね。
村は熱狂の坩堝です。
ちなみにね。
腕って、結構簡単にぽきっといくんですわ。
腕相撲の時って、筋肉優位なので拍子と角度によっては素晴らしく綺麗に関節が一つ増えます。
というか、何で戦争前に、飲み会で怪我してますか!!
でも、息抜きさせないと蛮族ムーヴされても大変なので、禁止も出来ず。
変形モンゴル相撲より怪我が少ない事を喜びながら、さっさと酔い潰して寝かしてしまう作戦にシフトすることにしました。
早く、豪族の村の人達、攻めて来て下さい!!
このままだと、同士討ちで滅びそうです!!
精霊さんの話では、お腹を鳴らしながらイライラしていたそうなので、大分可哀そうだと思う。
偵察に行ってこいと言われて、裏社会の人に案内されて、あるかないかも分からない村に、見つかると駄目だからと馬も使わず、森沿いに隠れながら、五日以上もかけて歩いてきたら。
村の周りには長城が築かれていて、中の様子も確認出来ず、ただただ炊事の煙の量で人の数を判断しつつ、美味しそうな匂いに燻されて、ぐーぐーお腹を鳴らしながらとぼとぼまた帰る。
状況を描写するだけで悲惨だなと。
ちなみに精霊さん曰く、あんまり村でも美味しいものを食べていないようで。
成功の暁には、腹いっぱい食べて、悪い事を沢山しようと決心していたそうなのですよ。
もうね、貧すれば鈍するというか、思考が完全に野盗の類いと一緒です。
これだから、蛮族は。
というか、今まさに蛮族ムーヴをしているのは、うちの村の面々なのですが……。
「飲んでらっしゃいますか!!」
陽気に肩を叩きながら、何度も同じ事を聞いてくるのは領軍の司令官さん。
飲める口っぽかったので、いっきいっきと進めていると、陽キャにチェンジしちゃいました。
まぁ、長城があるので一日や二日、お酒が苦手な人が梯子を外す簡単な仕事をしていれば持ちこたえますが。
中々、酔っ払いが量産される哀れな狩られる予定の村というのもシュールなもので。
あ、向こうでは領軍の人と村の人が腕相撲大会とか開催しています。
いや、元々は力比べって変形のモンゴル相撲みたいな感じだったのですが。
固い地面の上で、バックドロップとかバックブリーカーとかを炸裂させているのを見て肝が冷えた次第でして。
おいおい、そんなショーマンシップどころか生き死にがかかるデスマッチ、お金も取らずに爆誕させるの止めて下さいと。
どう考えても、戦争の前にけが人が出ます。
という訳で、懇々と説き伏せて、新たな文化である腕相撲を編み出した訳です。
で、こいつなんですが。
結構村の人に好評でして。
いや、技術の出る相撲ですと、村の人ってほぼ軍籍の人に勝てないんです。
だって、そのために訓練していますから。
ヤッパを無くしたからって敵が見捨ててくれる訳もなく。
徒手空拳でも人を無力化する術というのは大事でして。
特にこの世界なんて、魔法がありますので。
軽装主体という事もあり、地面を武器にしている人は多いのです。
で、翻って腕相撲なのですが。
こいつも技術は色々ありますが、基本は腕っぷしの強さ如何で決まります。
となると、結構村の人も善戦するんです。
というか、どちらかというと村の人の方が勝率良い感じですね。
これも理由がありまして。
軍というのは効率良く、団体行動と対象を無力化する術を学ぶのがお仕事なのです。
力を強くするのが目的ではありませんし、どちらかというと非力な人を基準にしてカリキュラムを組むくらいの世界です。
翻りまして、村の人。
固い地面は我らが仇。
鍬だけが友達さって感じで、腕力むっきむきな人ばっかりでして。
効率的な鍬の使い方というのは実際にあるのですが、やっぱり腕っぷしで大地をねじ伏せる方が楽なのです。
結論といたしましては、単純な腕っぷしに関しては軍の人よりも農業や林業を営んでいる側の方が有利なのです。
という訳で、技術の軍人さんが虚々実々の駆け引きをかますのに対し、パワーイズジャスティスの村の人が受けて立つ、熱い接戦を繰り広げている訳で。
はい。
もうね。
村は熱狂の坩堝です。
ちなみにね。
腕って、結構簡単にぽきっといくんですわ。
腕相撲の時って、筋肉優位なので拍子と角度によっては素晴らしく綺麗に関節が一つ増えます。
というか、何で戦争前に、飲み会で怪我してますか!!
でも、息抜きさせないと蛮族ムーヴされても大変なので、禁止も出来ず。
変形モンゴル相撲より怪我が少ない事を喜びながら、さっさと酔い潰して寝かしてしまう作戦にシフトすることにしました。
早く、豪族の村の人達、攻めて来て下さい!!
このままだと、同士討ちで滅びそうです!!
13
お気に入りに追加
4,564
あなたにおすすめの小説
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる