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第084話 戦争の名分

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 現場である兵士さん達に関しては融和ムードも漂いつつ、順調だという事で。

 作戦の部分を相談するために、町へてちてち。

 というのも、どら焼きと干し果実のクッキーを常時納品しないと駄目ですので。

 豪族さんだけに構っているわけにもいきません。

 それに、魚の干物やお肉関係は冬の貴重なたんぱく源として町の人に重宝されています。

 酒場のマスターもにこにこですよ?

 なんて事を考えつつ、リサさんと顧客巡りです。

 最後にダリーヌさんのところで情報収集をしてから、領主館へ。

 やはり一元だけの情報では不安ですので、ダリーヌさんの見解は重要です。

 今回も中々きな臭い話が聞けたので、満足ですよ?

 という訳で、領主館に訪問した途端、歓迎されて室内に。

 家令の人にご挨拶されて、いつもの納品です。

 その際に、少しだけ館の皆さんへという事で付け届け的なアイテムを渡すのは円滑な社会生活を送るのに重要なテクニックです。

 今回はハンドクリームと厳選干し果実のセットです。

 男性でも冬場は水仕事で手が荒れますので、使わない人はいませんし。

 甘味は男女問わず大好物間違いないです。

 ユニセックスな贈り物を意識しながらお渡しすると、家令の人も相好を崩してくれます。

 ダリーヌさんの話では、この付け届け。

 かなり好評でして、館の使用人の上位者からのご褒美として大分重宝されているようで。

 噂では、館に訪れる業者の人のご褒美にも使われたりとなんだか流通貨幣みたいな働きをしているようでちょっと不思議な上に微笑ましいです。

 で、訪問目的の作戦部分に関してですが。

 こちら通常であれば、領主ご本人を交えて話をするのですが。

 というのも、領兵の生き死に関わる内容は基本最高権力者を交えて話をします。

 ただ、領主様。

 どうも、昇進をしたようで。

 都の方に行っているそうなのです。

 話によると、この度めでたく周辺領域の切り取り御免を名実ともに頂いたそうで。

 それって、実質辺境伯っていうんじゃね、とも思いますが。

 本気で偉い人なんだなと。

 ちなみに今までですと、豪族の人が悪さをした場合。

 外交問題になりますので、一旦領主様から国にお伺いを立てて、それから命令を以って対処という形でした。

 でも、今後は自領周辺の治安維持の名目で豪族さんを対処出来ます。

 切り取り御免の根拠に外交問題を解決出来るだけの名分も含まれますので。

 煩わしいやり取りが無いので、タイミングが良かったなどとほっこりしちゃいましたが。

 で、実際に作戦をお話しするので領軍の長である、レイラックさん。

 御年五十ちょっとの方ですが、領主二代に渡り領の軍政を司っている方だそうで。

 現場主義の人なので話がスムーズなので非常にありがたく思います。

 こういう立場の人って政治が大事ってなっちゃうのですが、領の規模ですと政治(笑)なんですよね。

 今後、辺境伯としてやっていくにあたっては変わらないと駄目なのでしょうが、今は良かったと思う事にします。

 色々と相談してみたのですが、基本路線は追い込みと挑発による暴発狙いです。

 領主の遠縁の人ですが、現在網にかけられて追い込まれています。

 それに同調する人もですね。

 豪族さんは町の人間じゃないので関係ないですが、協力者が捕まるという事で勝手に追い込まれます。

 後は私達が適当に挑発して、豪族さんが兵を挙げたら名分は立ちます。

 領域近くでの戦争行為を追求するもよし、町の重要物資供給源に対しての武力行使へ介入するもよし。

 こういう時に、日頃の縁が生きるのだなと。

 やっててよかった、交易って感じちゃいます。

 という訳で、終始和やかに進んだ話し合いはさっくりと終わり、本格的な戦争モードへの移行です。

 さぁ、頑張ってさくさく挑発しなければ。

 追い詰めますよー。
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