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第077話 糖分という魔物、あらわるあらわる
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甘味とは古来より人を魅了してきた。
脳の報酬系はエネルギーの供給を求めるため、強く糖分を希求する仕組みになっている。
依存性を考えれば、糖分はコカインにも匹敵するほどなのだ。
砂糖依存症なんて言葉が存在するくらいの一品。
要は、人間の仕組みの上で糖は抗えない要素となる。
まぁ、何が言いたいかといいますと。
「なんてものを持ってくるさね……」
はじめは恍惚と、暫くすると怪訝そうな表情でどら焼きを食べていたダリーヌさんが一息吐いた後に述べた。
この言葉に全てが集約する。
食べたら、食べた分だけ、もっと欲しくなるとか。
食の魔物というしかない。
そりゃ、戦国時代の人も甘柿をお殿様専用に囲い込んだりする訳だと改めて理解したのですよ。
「領主様でも、管理出来るか分らんさね」
眉を顰めながら呟くダリーヌさんの言葉に、そこまでかと一瞬思ったのだが。
便利な生活は取り上げられれば不満に思う程度で済む。
中毒なアイテムは取り上げられれば、殺してでも奪い取るに変わるのだ。
折角の甘味の前で、苦悩する私とダリーヌさん。
リサさん?
精霊さん達と分け分けしながら、どら焼きを楽しんでますよ?
和む。
「出元を隠す……のは無理ですよね?」
「最近の流行りにあんたが関わっているのは周知の事実さね。すぐに関連付けられるよ?」
実際にハンドクリームをはじめとして御用聞きに直接顔を出している。
市場に新発明というのが出回るケースは稀な事らしいので、ちょくちょく新商品を出している私は目立つだろう。
特に、燻製肉や干し魚の件もあるので食べ物関係を私に関連付けるのは容易だろう。
それでも。
どら焼きというか、麦芽糖に関しては推していきたい商品なのだ。
何といっても、精霊さんが介在する余地がほとんどない。
やろうと思えば、村の人達だけで運用出来るのだ。
村の自立計画の第一歩にふさわしい逸品と考えている。
出来れば、特産品として一手に握りたいのだが……。
「生産量が少ないので、無理です。という話にすれば良いのでは?」
と、こういう場ではあまり口を挟まないリサさんが唐突に告げる。
確かに、高価な果実は採取出来る数が決まっているので値段が上がる。
砂糖の供給に伴う大衆化の歴史を知っている私にとっては、逆に盲点だった。
「領主様に召し上げられて、村で食べる分もありませんというシナリオは……」
「なまじ、残している分がないというのが分かりやすいさね。なら……」
みたいな感じでダリーヌさんと調整し、カバーストーリーが出来上がった。
どうせあるだけ持って来いと言われるのは目に見えているので。
甘味という新発見をしたが、領主様に全量奪われる哀れな村という内容だ。
ダーティーな部分は領主様に被ってもらう。
その代わり流通の根っこはお渡しすると。
こっちとしては高値で継続的に売れてくれれば良いだけなので。
面倒事を領主サイドで被ってもらえるなら、異論はない。
ベストな回答になったなと功労者をちらっと見てみると、リサさんがにまにまとほくそ笑んでいるのが分かる。
これは、あれだ。
村の麦芽糖の流通を減らさないための一計だ。
それに気付いた時。
あまり欲を見せないリサさんすらも翻意させる糖分恐ろしい子と、改めて確信させてくれた。
いつになく慎重な面持ちで、ててーっとどら焼き片手に店を出るダリーヌさんをいつものように見送る。
これが上手くいけば、精霊さん達がいなくても魚と糖分の二つの柱が村に生まれる。
そうなれば、私がある程度手を放しても自活は出来るようになるな。
そんな事を考えながら、ダリーヌさんの吉報を待つことにした。
脳の報酬系はエネルギーの供給を求めるため、強く糖分を希求する仕組みになっている。
依存性を考えれば、糖分はコカインにも匹敵するほどなのだ。
砂糖依存症なんて言葉が存在するくらいの一品。
要は、人間の仕組みの上で糖は抗えない要素となる。
まぁ、何が言いたいかといいますと。
「なんてものを持ってくるさね……」
はじめは恍惚と、暫くすると怪訝そうな表情でどら焼きを食べていたダリーヌさんが一息吐いた後に述べた。
この言葉に全てが集約する。
食べたら、食べた分だけ、もっと欲しくなるとか。
食の魔物というしかない。
そりゃ、戦国時代の人も甘柿をお殿様専用に囲い込んだりする訳だと改めて理解したのですよ。
「領主様でも、管理出来るか分らんさね」
眉を顰めながら呟くダリーヌさんの言葉に、そこまでかと一瞬思ったのだが。
便利な生活は取り上げられれば不満に思う程度で済む。
中毒なアイテムは取り上げられれば、殺してでも奪い取るに変わるのだ。
折角の甘味の前で、苦悩する私とダリーヌさん。
リサさん?
精霊さん達と分け分けしながら、どら焼きを楽しんでますよ?
和む。
「出元を隠す……のは無理ですよね?」
「最近の流行りにあんたが関わっているのは周知の事実さね。すぐに関連付けられるよ?」
実際にハンドクリームをはじめとして御用聞きに直接顔を出している。
市場に新発明というのが出回るケースは稀な事らしいので、ちょくちょく新商品を出している私は目立つだろう。
特に、燻製肉や干し魚の件もあるので食べ物関係を私に関連付けるのは容易だろう。
それでも。
どら焼きというか、麦芽糖に関しては推していきたい商品なのだ。
何といっても、精霊さんが介在する余地がほとんどない。
やろうと思えば、村の人達だけで運用出来るのだ。
村の自立計画の第一歩にふさわしい逸品と考えている。
出来れば、特産品として一手に握りたいのだが……。
「生産量が少ないので、無理です。という話にすれば良いのでは?」
と、こういう場ではあまり口を挟まないリサさんが唐突に告げる。
確かに、高価な果実は採取出来る数が決まっているので値段が上がる。
砂糖の供給に伴う大衆化の歴史を知っている私にとっては、逆に盲点だった。
「領主様に召し上げられて、村で食べる分もありませんというシナリオは……」
「なまじ、残している分がないというのが分かりやすいさね。なら……」
みたいな感じでダリーヌさんと調整し、カバーストーリーが出来上がった。
どうせあるだけ持って来いと言われるのは目に見えているので。
甘味という新発見をしたが、領主様に全量奪われる哀れな村という内容だ。
ダーティーな部分は領主様に被ってもらう。
その代わり流通の根っこはお渡しすると。
こっちとしては高値で継続的に売れてくれれば良いだけなので。
面倒事を領主サイドで被ってもらえるなら、異論はない。
ベストな回答になったなと功労者をちらっと見てみると、リサさんがにまにまとほくそ笑んでいるのが分かる。
これは、あれだ。
村の麦芽糖の流通を減らさないための一計だ。
それに気付いた時。
あまり欲を見せないリサさんすらも翻意させる糖分恐ろしい子と、改めて確信させてくれた。
いつになく慎重な面持ちで、ててーっとどら焼き片手に店を出るダリーヌさんをいつものように見送る。
これが上手くいけば、精霊さん達がいなくても魚と糖分の二つの柱が村に生まれる。
そうなれば、私がある程度手を放しても自活は出来るようになるな。
そんな事を考えながら、ダリーヌさんの吉報を待つことにした。
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