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第062話 新しい道具

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 てちてちといつものお店に到着した訳ですが。

 今回は荷物をしっかりガード。

 扉をぎぃっと開けて、中を確かめる。

「こんにちはー」

 声をかけると、奥からダリーヌさんが。

「遅かったさね」

 にやっと笑っているのは、酒場の騒動を知っているからだろうか。

 いつも訳知り顔でいるので、良く分からないけど。

「聞いてるよ? まった騒ぎを起こしたんだって?」

 御存じなようなので、そっと民芸コンロを手渡す。

 暫くいじっていたダリーヌさん。

 瞑目して、ぽく、ぽく、ぽく、ぽく、ぽく、ぽく、ちーん。

「早計だったね?」

「仰る通りです……」

 やっぱり、領主案件だったようで。

 ダリーヌさん曰く、上流階級において宴会というのはよく開かれているそうで。

 物珍しいものを出してくるのは当たり前。

 その上で、いかに満足させるのかが重要と。

 で、やっぱり食事といえば、あつあつに勝るものは無いと。

「こいつがあれば、維持も出来る。目の前で完成させるというのも、面白そうさね」

 ビュッフェにおけるチェーフィングディッシュのような使い方。

 それに、コンロそのものの使い方。

 やっぱり目の付け所がシャープだ。

 一目見ただけで、使いどころを看破してくる。

 さすが、ダリーヌさん。

 年の功。

「ん? なんさね?」

 にぃっと鬼を食うような笑みで見られたのは、心を読まれた訳じゃないと思いたいです。

「出来れば、酒場には置きたいです。そもそも庶民の暮らし向けに作りましたので」

「ふーむ……。単価を上げずに、数を売る……かぁ。まぁ、労力がかかるのは自分らさね」

 呆れたように告げるダリーヌさんの唇の端に微かな笑みが零れているのが見える。

 自分の選択肢が正しいと補強された思いで、持ってきた荷物を預ける。

「交渉、お願い出来ますか?」

「少なくとも、市井で使うのを禁止されるのは免れるようにするさね」

 格好良く宣言し、ててーっと店を飛び出すダリーヌさん。

 良いお歳なのに元気だなと、毎回思ってしまう。

 眠そうなリサさんに肩を貸しながら、ゆったりとした時間を過ごす。

 次は、新しい料理が良いかな。

 お出汁がたっぷり手に入るなら、ブイヤベースみたいな汁物も良いし。

 干した甲殻類で色々試すのも良いなぁ……。

 ぽやぽやーっと思い浮かべていると、ばたんっと扉が勢いよく開く。

 にんまり笑顔のダリーヌさんに商戦の勝利を確信した。

 結論と致しましては。

 もうちょっと高級感のある仕上げを施したものを領主サイドに納品して欲しいとの事。

 機能的には申し分ないけど。

 あまりにも飾り気がなさ過ぎてテーブルに置くにはちょっと無作法な感じ。

 そこが課題だそうで。

「今の形で良いのなら、市井での販売は認めるとの事さね」

 重要な部分を聞けて、なむなむな気分です。

 さすが、ダリーヌ菩薩さま。

 取りあえず、今ある民芸コンロと点火棒を渡して、精算。

 民芸コンロに関しては、行商に出る人なんかを相手に貸し出して欲しい旨を伝え、今回の商いは完了という事で。

 お疲れモードのリサさんを連れて、足早に帰りましたとさ。

 帰路でそれなりに体力が回復したのか、元気なリサさん。

 二人で早速夜鍋して、出来上がりました。

 パッパカパッパッパーッパッパー鰻筌うなぎうけー。

 いや、爆釣なので釣りでも良いのですが。

 出来れば、色々捕りたいお年頃。

 ここは、勝手に捕れる仕掛けで攻めてみたいなと。

 それに村人でも保守が簡単で、材料と問わないと言えば、藁細工しかなくて。

 まぁ、継続性は大事です。

 どんな獲物が捕れるのか……。

 楽しみだなと思いながら、リサさんと一緒に仕掛けを沈めましたとさ。

 ふぉぉ。

 お風呂、お風呂!!
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