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第056話 実食です!!
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いやね。
リサさんなのですが、筋が良い。
釣りという概念の無い世界なのですが、獲物相手に合わせる、無理をしない。
猟師の経験からくるのでしょうか、その辺りのさじ加減が非常に上手なのです。
やっぱり技術の水平展開ってあるんだなと。
岸辺に設けた人造池にぴちぴち泳いでいるお魚さん達を見ながら感慨にふけってしまいました。
「楽しい!!」
珍しく、ふんすふんすと興奮しているリサさんですが。
ぴちぴちと言ったな?
あれは、嘘だ。
何というか、うぞうぞ?
手を叩くと寄ってくるお寺の池の鯉みたいな状況なんですよ。
だって、1秒未満でフィッシュオンが延々続くんです。
釣り上げるのに時間がかかるったって、二人で釣ってれば引っ切り無しと変わりません。
結局、六十匹ちょっとを数えるような世界で。
そりゃ、適当に作った生け簀なんて、埋まっちゃいます。
網漁かよ、と。
スレてないを通り越して、餌が足りていないのかとも考えましたが。
みんな丸々と太って、良い型なのです。
これは食べるだけではもったいないなと。
干して、燻製にするのも良いかもしれない。
売れるようであれば、大々的に漁をしても良いですし。
流石に瀬戸内海規模の湖の水産資源の枯渇を心配しても無意味ですしね。
ちょっと高まってきました。
何はともあれ。
まずは。
「塩で焼いてみましょうか?」
味見ですね。
ぱちぱちと断続的に軽い音を鳴らしながら燃え盛る炎。
焚火の周りを囲むように並べられた魚達からは透明な雫が流れ、赤熱した薪に滴る。
じゅっと湿った音がした瞬間、辺りには脂が焼けた香りが広がり鼻腔をくすぐる。
ただでさえ、魚の皮を黄金色に変えて焙られたメイラード反応の香りにメロメロなのに、お腹が期待できゅっと縮むのが分かる。
魚の周囲では精霊さん達がいつものアグレッシブさをどこかに置き忘れてきたかのように炎へと魅入っている。
『やしゅあふれます』
『ほしみっつ、ごしんてい』
『むっしゅ・びばんだむもはだしでかけだすの』
あのマシュマロの塊みたいなのが走り去るのは、ちょっと怖いね。
いや。
精霊さん達。
厳密には魚に魅入っている。
まじまじと三等身の顔が炎に赤々と照らされているのは、ちょっとSAN値をチェックしたくなる。
と、そろそろ良いかなと。
串をあちあちと持って、リサさんにご進呈。
精霊さん達にててーっと配って、いざ実食です。
はむっとまずは腹身の辺りを狙ってみる。
川魚特有の薄いクリスピーな皮に歯が当たり、さくっとした食感。
そこを抜けると、途端に溢れ出る清冽な水の香りと甘い脂。
ほのかに香る苔の緑の香りが水を彷彿させるのだなと鼻腔から抜ける瞬間に気付く。
むしりっと噛み千切ると、身離れの良い肉に腹身の骨を僅かに感じる。
それすらもアクセントに咀嚼。
じゅわぁっとこれでもかと噛むたびに脂とお出汁と表現したくなるような肉汁が口中に溢れる。
「うわぁ……。瑞々しい。それに甘い。これは初めて食べたかも」
目を丸くしてリサさんが呟くのも良く分かる。
むっちりとした身もぱっつんぱっつんに詰まっており、食べ応えも十分。
アユに近い香りなのだが、肉質はサケとかマス相当なハイブリット川魚。
良いところどりである。
白身に僅かな桃が混じったその身は、苔とカワエビとかサワガニが主食なのかなと思わせる。
となると、そういうのも獲れるのかと俄然楽しみになってくる。
にやっと表情に出してしまうと。
「珍しい。美味しかったの?」
誤解なのだが。
ちょっと悪戯混じりに覗き込んでくるリサさんが可愛かったので、今日は川魚記念日。
リサさんなのですが、筋が良い。
釣りという概念の無い世界なのですが、獲物相手に合わせる、無理をしない。
猟師の経験からくるのでしょうか、その辺りのさじ加減が非常に上手なのです。
やっぱり技術の水平展開ってあるんだなと。
岸辺に設けた人造池にぴちぴち泳いでいるお魚さん達を見ながら感慨にふけってしまいました。
「楽しい!!」
珍しく、ふんすふんすと興奮しているリサさんですが。
ぴちぴちと言ったな?
あれは、嘘だ。
何というか、うぞうぞ?
手を叩くと寄ってくるお寺の池の鯉みたいな状況なんですよ。
だって、1秒未満でフィッシュオンが延々続くんです。
釣り上げるのに時間がかかるったって、二人で釣ってれば引っ切り無しと変わりません。
結局、六十匹ちょっとを数えるような世界で。
そりゃ、適当に作った生け簀なんて、埋まっちゃいます。
網漁かよ、と。
スレてないを通り越して、餌が足りていないのかとも考えましたが。
みんな丸々と太って、良い型なのです。
これは食べるだけではもったいないなと。
干して、燻製にするのも良いかもしれない。
売れるようであれば、大々的に漁をしても良いですし。
流石に瀬戸内海規模の湖の水産資源の枯渇を心配しても無意味ですしね。
ちょっと高まってきました。
何はともあれ。
まずは。
「塩で焼いてみましょうか?」
味見ですね。
ぱちぱちと断続的に軽い音を鳴らしながら燃え盛る炎。
焚火の周りを囲むように並べられた魚達からは透明な雫が流れ、赤熱した薪に滴る。
じゅっと湿った音がした瞬間、辺りには脂が焼けた香りが広がり鼻腔をくすぐる。
ただでさえ、魚の皮を黄金色に変えて焙られたメイラード反応の香りにメロメロなのに、お腹が期待できゅっと縮むのが分かる。
魚の周囲では精霊さん達がいつものアグレッシブさをどこかに置き忘れてきたかのように炎へと魅入っている。
『やしゅあふれます』
『ほしみっつ、ごしんてい』
『むっしゅ・びばんだむもはだしでかけだすの』
あのマシュマロの塊みたいなのが走り去るのは、ちょっと怖いね。
いや。
精霊さん達。
厳密には魚に魅入っている。
まじまじと三等身の顔が炎に赤々と照らされているのは、ちょっとSAN値をチェックしたくなる。
と、そろそろ良いかなと。
串をあちあちと持って、リサさんにご進呈。
精霊さん達にててーっと配って、いざ実食です。
はむっとまずは腹身の辺りを狙ってみる。
川魚特有の薄いクリスピーな皮に歯が当たり、さくっとした食感。
そこを抜けると、途端に溢れ出る清冽な水の香りと甘い脂。
ほのかに香る苔の緑の香りが水を彷彿させるのだなと鼻腔から抜ける瞬間に気付く。
むしりっと噛み千切ると、身離れの良い肉に腹身の骨を僅かに感じる。
それすらもアクセントに咀嚼。
じゅわぁっとこれでもかと噛むたびに脂とお出汁と表現したくなるような肉汁が口中に溢れる。
「うわぁ……。瑞々しい。それに甘い。これは初めて食べたかも」
目を丸くしてリサさんが呟くのも良く分かる。
むっちりとした身もぱっつんぱっつんに詰まっており、食べ応えも十分。
アユに近い香りなのだが、肉質はサケとかマス相当なハイブリット川魚。
良いところどりである。
白身に僅かな桃が混じったその身は、苔とカワエビとかサワガニが主食なのかなと思わせる。
となると、そういうのも獲れるのかと俄然楽しみになってくる。
にやっと表情に出してしまうと。
「珍しい。美味しかったの?」
誤解なのだが。
ちょっと悪戯混じりに覗き込んでくるリサさんが可愛かったので、今日は川魚記念日。
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