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第048話 泣く子と美に関わる女性には勝てない

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 取りあえず、貝殻さんは海の方から輸入しているそうで。

 焼いて畑に撒いたり、薬の材料として珍重されているご様子。

 後、紅とか、もったりした薬などを保存するケースとしても使われているようで。

 綺麗な柄が付いた揃いの貝殻は、結構な高値で仕入れているそう。

 閑話休題。

 それは、問題じゃなくて。

 え、何、このお金。

 すんごい額なんだけど。

 青汁、霞むよ?

「そもそも香油の考え方が違うんさね」

 聞くと、圧搾した香油を蒸発させて、僅かに残ったものを大事に使っているそうで。

 使い方も、水に入れてしゃばしゃばして、要所に着ける感じ。

 香水というより、オーデコロンみたいな使い方だったようです。

 で、今回お持ち致しましたこちらの逸品。

 香りははっきりぱっきりしているのに、塗る場所をびたっと決められる。

 しかも、保湿成分たっぷりで、お肌艶々のおまけつき。

 今なら何と、貝殻ケースを一個セットでお付けして。

 ハウマッチ?

「ちなみに、どなたへ?」

「そりゃ、やるなら一番頭を攻めるさ。領主婦人さね」

 おぉぅ……。

 流石、やり手。

 ダリーヌさんの商業的コミュニティを舐めていました。

 そりゃ、トップから営業するよね、と。

 ちなみに水仕事をしないからって荒れない訳もなく。

 領主婦人もこの時期の乾燥肌には悩まされていたと。

 そこに颯爽と現れる、良い匂いの化粧品。

 肌が艶々、しかも香りも良い。

 これで、領主を再度射止めるぞっと。

 張り込んだわけですね。

「結構、作るの面倒なのですが……」

「んー? 知らんさね。わんさか注文くるよ?」

 うわぁ……。

 この婆、煽ってきよる。

 しかし、青汁と違って、女性の美に関わる注文は怖いしなぁ……。

「蜂の巣、あるだけ頂戴」

「毎度」

 結局、日和った私でしたとさ。

 ちなみに、蜜蝋を使った蝋燭は領主邸レベルじゃないと維持出来ない代物でして。

 良い香りがして、煤が出ない蝋燭なんて高価に決まってます。

 ちなみに、町の人は普通、獣脂蝋燭です。

 なので、蜂の巣は高価ながら在庫はありまして。

 ただ、受け取る筈だった革袋の中身でも買える金額ではなく……。

 結局、私の甕は没収と相成りましたとさ。

「大丈夫。夫人の分が切れたら、きちんとケアするさね」

 そんなサービス、嬉しくなんかないんだからね。

 ちょっとツンデレ風味を纏いつつ、今回は負けっぱなしだなと、帰路に就くのでした。
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