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第042話 大工さんが着任しました

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 という訳で、本格的な冬が到来しました。

 芽吹いた麦達はちょこんと頭を出して、冬の寒風に耐えています。

 湖近辺の開発状況としては。

 村と同じ程度の規模の開拓は完了しました。

 村には豆腐住宅が一軒増えて、フレッド君の到来を待っている状態です。

 順調に進んでいる感じですね。

 ちなみに、この辺りの冬について。

 雪は、湖の遥か彼方に見えた山脈が雲を遮るため、殆ど降らないそうです。

 ただ、その分風が強いらしく体感温度はかなり下がるそうで。

 毎年、病気にかかりがちなんだとか。

 今年はたんまりゲット出来た毛皮のお陰で。

 外出は勿論、敷物、掛布団としても使えるため、重宝しているようです。

 ビバ精霊さん。

 冬の訪れと共に、村も休止状態に入ります。

 基本的に家に籠って、最低限の家事以外はのんびりと暮らすというのが例年だそうです。

 が。

『ここにおいてほしいの』

『あじわいぶかい』

『しろをきずくの!!』

 今年は違います。

 いやぁ、初めは暇な村の人のために、内職でもあればなと考えたのが始まりなのですが。

 丸太を消費するため、積み木作りを奨励してみたのです。

 木工細工といえば、簡単な削り出しの像くらいしかなかったので。

 抽象的なブロック細工というのも良いかなと。

 その前段階として、積み木というのを流行らせてみようかと。

 子供達が木片を適当に積んでいたのを見て思いついた訳ですが。

 目の前にそびえ立つ、木目も美しい城。

 はい、精霊さんの頑張りの産物です。

 物作りは苦手なのですが、物を作るのは大好きという事で。

 出来合いの積み木を精緻に積むのは可能だったようで、一晩で建築が完了していました。

 これが本当の一夜城。

 いやいや。

 狭い豆腐住宅の生活空間。

 その半分近くを侵食されているのですが。

 あと、これ、商品なのです。

 精霊さん達に反省を促しながら、リサさんに状況を聞いてみたのですが。

「子供達も楽しんでいるし、売れそう」

 とのお墨付き。

 今のままだと子供達が使うには当たりがきついので。

 フレッド君が来たら面取りやサイズ調整など仕上げをお願いしようかなと。

 そんな事を考えている間に。

 フレッド君が親方に連れられて、村まで到着しました。

 親方は現場の確認と言っていましたが、出来たての燻製が目当てなのは知っています。

 なんせ、馬車に新物のエールの樽を差し入れ名義で積んでいるのを見てしまったからです。

 まぁ、そんな紆余曲折はありまして。

 村で初めての本格的な職人。

 大工のフレッド君が着任しました。

 素人が作った豆腐住宅に冬を越せるのか心配したり。

 中に入ったら、毛皮が豪奢に使われてて驚いたり。

 親方の別れの酌に付き合って、大惨事になってたり。

 次の日、親方の見送りの時に寝込んでいたり。

 中々の大物振りを発揮してくれました。

 面白かったので、ありとしましょう。

 そんな訳で、豆腐住宅フレッド邸の改修以来の初仕事。

 積み木作りが完了しましたので、行商に出ようかと思います。

 A3くらいの大きさの木箱にみっちり詰まる形で設計してますので。

 子供さんが遊ぶのも仕舞うのも楽しい感じです。

 輸送の際もガタつかないので破損の心配がありません。

 これが売れてくれると、丸太の使い道がちょっとは増えるのですが。

 そんな淡い不安と期待を胸に、ヤクの背中で鞭を鳴らしました。
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