上 下
10 / 106

第010話 収穫と不穏な雰囲気

しおりを挟む
 私が好きなキャラクターは言いました。

【戦いは数だよ兄貴】

 と。

 あんぐり口を開けたのは、致し方ないと思う。

 だって……。

『たいりょう』

『ほーねんまんさく』

『ちぇーんけいえいかのうです』

 大挙して押し寄せていった精霊さん。

 一体一体の大きさが小さいので油断していたけど、数の桁が違う訳で。

 目の前には、奇麗に分類された小山がそびえ立っているという事態に。

 しかも、柔らかそうな果実はきちんとクッションっぽい葉っぱの上に優しく置かれていたりと、芸が細かい。

「ミシマ?」

 リサさんの声にはっと振り向くと、ちょっと心配そうな不審顔。

「きちんと戻ってこられて良かった。収穫はあ……」

 くてんっと倒したリサさんの瞳に、小山が映ったのが分かった。

「こ……れ……ミシマが……集めたの?」

「ま、まぁ」

 後頭部を掻き掻き、照れ照れしていると、大きな溜息を一つ。

「魔法を使う人って良く分からないけど、凄いのね」

 その言葉に、ピクリと反応。

「どこで……それを聞きました?」

「私も女よ?」

 話によると、倉庫にいた女性陣から話は聞いたそうだ。

 まぁ、狭い村だし、便利使いしてくるような相手ではないから良いのかな。

「でも、こんなに持ち帰れないわね……」

 呆れたように小山を見上げながら、予備の袋を取り出すリサさん。

 流石に小山を収容出来るだけの袋は用意していない。

 ふるふると小山に縋りつきながら涙ぐみ小動物のような挙動をする精霊さん達。

「男手を借りて、往復するしかないわ」

 うむうむと頷くリサさん。

 周囲ではあげあげのナイトフィーバーが始まっており、勝訴と書かれた葉っぱを両手で掲げている精霊さんもいる。

 相変らず芸が細かい。

 でも、まだ夜には程遠いのでそんなにバイブスを上げられても困る。

 というか、寝る時にあんまり興奮されても困るので、適度に発散して欲しい。

 という事で、袋詰め作業が始まったのだが。

「あら、こんな果実まで……。って、このキノコは教えていないはずだし。これは説明した時に毒が入っているものと見分けが……んー、ついているわね」

 精霊さんネットワークによる判断なのか、毒の無い食物や薬草がてんこもりとなっていた。

 特に果実は熟れたものを選んで採取してきたのか、味見をしてみたがどれも絶品だった。


「これは……説明していなかったと思うけど。この森に生えていたのね」

 いくつかのキノコや果実、薬草はリサさんもこの森では採取した事が無いもので、ちょっと驚いていたのは印象的だ。

 まぁ、魔法って凄いで解決するので便利な事この上ない。

「じゃあ、売れそうなものと美味しいものを優先して、まずは持ち帰りましょ」

 ぽぽいっとリサさんが袋詰めするのを手伝う。

 美味しいものは動物も好きなので戻ってくるまでに食べられちゃうかもと笑っていたが、凄腕シークレットサービスみたいに警備している精霊さんがいるので大丈夫かと。

 よいしょとパンパンに詰まった袋を担ぎ、村に向かう。

 食い込む重みに荒い息を吐きながら村の柵を抜け、お家に戻ろうとしたのだが。

「ざわついている?」

 リサさんが眉根に皺を寄せて、村の中央の方を眺めている。

 何だか、人が集まっているのは分かるのだが、細かい違いが分からないためそれが良い事なのか悪い事なのか判別がつかない。

「ちょっと確認してくる。待ってて」

 小屋に戦利品を置くと慌てたようにリサさんが出ていく。

「ふむ。ちょっと不穏な」

 ぽつんと取り残された私は、椅子に座って一抹の不安を抱えたままリサさんを待つ事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~

夢幻の翼
ファンタジー
 典型的な社畜・ブラックバイトに翻弄される人生を送っていたラノベ好きの男が銀行強盗から女性行員を庇って撃たれた。  男は夢にまで見た異世界転生を果たしたが、ラノベのテンプレである神様からのお告げも貰えない状態に戸惑う。  それでも気を取り直して強く生きようと決めた矢先の事、国の方針により『ステータスプレート』を作成した際に数値異常となり改ざん容疑で捕縛され奴隷へ落とされる事になる。運の悪い男だったがチート能力により移送中に脱走し隣国へと逃れた。  一時は途方にくれた少年だったが神父に言われた『冒険者はステータスに関係なく出来る唯一の職業である』を胸に冒険者を目指す事にした。  持ち前の運の悪さもチート能力で回避し、自分の思う生き方を実現させる社畜転生者と自らも助けられ、少年に思いを寄せる美少女との恋愛、襲い来る盗賊の殲滅、新たな商売の開拓と現実では出来なかった夢を異世界で実現させる自由気ままな異世界生活が始まります。

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。 人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】 前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。 そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。 そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。 様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。 村を出て冒険者となったその先は…。 ※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。 よろしくお願いいたします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~

丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月 働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。 いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震! 悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。 対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。 ・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。 もう少しマシな奴いませんかね? あっ、出てきた。 男前ですね・・・落ち着いてください。 あっ、やっぱり神様なのね。 転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。 ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。 不定期更新 誤字脱字 理解不能 読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

異世界ラーメン屋台~俺が作るラーメンを食べるとバフがかかるらしい~

橘まさと
ファンタジー
脱サラしてラーメンのキッチンカーをはじめたアラフォー、平和島剛士は夜の営業先に向けて移動していると霧につつまれて気づけばダンジョンの中に辿りついていた。 最下層攻略を目指していた女性だらけのAランク冒険者パーティ『夜鴉』にラーメンを奢る。 ラーメンを食べた夜鴉のメンバー達はいつも以上の力を発揮して、ダンジョンの最下層を攻略することができた。 このことが噂になり、異世界で空前絶後のラーメンブームが巻き起こるのだった。

牛人転生:オッパイもむだけのレベル上げです。

薄 氷渡
ファンタジー
 異世界に転生したら牛人だった。外見は大部分が人間と大差なく、牛耳と尻尾がついている。  のどかなバスチャー村で、巨乳美少女達から搾ったミルクを行商人に売って生計を立てている。  9人家族の長男として生まれた少年カイホは、まったりとした日々を過ごしていたが1つの問題があった。ホル族の成人女性は、毎日搾乳しないと胸が張って重苦しくなってしまうのである。  女の乳房を揉むとLVが上がるニューメイジとしての才能を開花させ、乳魔術を駆使してモンスターとのバトルに挑む。愛するオッパイを守るため、カイホの冒険は続いていく。

処理中です...