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第010話 収穫と不穏な雰囲気
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私が好きなキャラクターは言いました。
【戦いは数だよ兄貴】
と。
あんぐり口を開けたのは、致し方ないと思う。
だって……。
『たいりょう』
『ほーねんまんさく』
『ちぇーんけいえいかのうです』
大挙して押し寄せていった精霊さん。
一体一体の大きさが小さいので油断していたけど、数の桁が違う訳で。
目の前には、奇麗に分類された小山がそびえ立っているという事態に。
しかも、柔らかそうな果実はきちんとクッションっぽい葉っぱの上に優しく置かれていたりと、芸が細かい。
「ミシマ?」
リサさんの声にはっと振り向くと、ちょっと心配そうな不審顔。
「きちんと戻ってこられて良かった。収穫はあ……」
くてんっと倒したリサさんの瞳に、小山が映ったのが分かった。
「こ……れ……ミシマが……集めたの?」
「ま、まぁ」
後頭部を掻き掻き、照れ照れしていると、大きな溜息を一つ。
「魔法を使う人って良く分からないけど、凄いのね」
その言葉に、ピクリと反応。
「どこで……それを聞きました?」
「私も女よ?」
話によると、倉庫にいた女性陣から話は聞いたそうだ。
まぁ、狭い村だし、便利使いしてくるような相手ではないから良いのかな。
「でも、こんなに持ち帰れないわね……」
呆れたように小山を見上げながら、予備の袋を取り出すリサさん。
流石に小山を収容出来るだけの袋は用意していない。
ふるふると小山に縋りつきながら涙ぐみ小動物のような挙動をする精霊さん達。
「男手を借りて、往復するしかないわ」
うむうむと頷くリサさん。
周囲ではあげあげのナイトフィーバーが始まっており、勝訴と書かれた葉っぱを両手で掲げている精霊さんもいる。
相変らず芸が細かい。
でも、まだ夜には程遠いのでそんなにバイブスを上げられても困る。
というか、寝る時にあんまり興奮されても困るので、適度に発散して欲しい。
という事で、袋詰め作業が始まったのだが。
「あら、こんな果実まで……。って、このキノコは教えていないはずだし。これは説明した時に毒が入っているものと見分けが……んー、ついているわね」
精霊さんネットワークによる判断なのか、毒の無い食物や薬草がてんこもりとなっていた。
特に果実は熟れたものを選んで採取してきたのか、味見をしてみたがどれも絶品だった。
「これは……説明していなかったと思うけど。この森に生えていたのね」
いくつかのキノコや果実、薬草はリサさんもこの森では採取した事が無いもので、ちょっと驚いていたのは印象的だ。
まぁ、魔法って凄いで解決するので便利な事この上ない。
「じゃあ、売れそうなものと美味しいものを優先して、まずは持ち帰りましょ」
ぽぽいっとリサさんが袋詰めするのを手伝う。
美味しいものは動物も好きなので戻ってくるまでに食べられちゃうかもと笑っていたが、凄腕シークレットサービスみたいに警備している精霊さんがいるので大丈夫かと。
よいしょとパンパンに詰まった袋を担ぎ、村に向かう。
食い込む重みに荒い息を吐きながら村の柵を抜け、お家に戻ろうとしたのだが。
「ざわついている?」
リサさんが眉根に皺を寄せて、村の中央の方を眺めている。
何だか、人が集まっているのは分かるのだが、細かい違いが分からないためそれが良い事なのか悪い事なのか判別がつかない。
「ちょっと確認してくる。待ってて」
小屋に戦利品を置くと慌てたようにリサさんが出ていく。
「ふむ。ちょっと不穏な」
ぽつんと取り残された私は、椅子に座って一抹の不安を抱えたままリサさんを待つ事にした。
【戦いは数だよ兄貴】
と。
あんぐり口を開けたのは、致し方ないと思う。
だって……。
『たいりょう』
『ほーねんまんさく』
『ちぇーんけいえいかのうです』
大挙して押し寄せていった精霊さん。
一体一体の大きさが小さいので油断していたけど、数の桁が違う訳で。
目の前には、奇麗に分類された小山がそびえ立っているという事態に。
しかも、柔らかそうな果実はきちんとクッションっぽい葉っぱの上に優しく置かれていたりと、芸が細かい。
「ミシマ?」
リサさんの声にはっと振り向くと、ちょっと心配そうな不審顔。
「きちんと戻ってこられて良かった。収穫はあ……」
くてんっと倒したリサさんの瞳に、小山が映ったのが分かった。
「こ……れ……ミシマが……集めたの?」
「ま、まぁ」
後頭部を掻き掻き、照れ照れしていると、大きな溜息を一つ。
「魔法を使う人って良く分からないけど、凄いのね」
その言葉に、ピクリと反応。
「どこで……それを聞きました?」
「私も女よ?」
話によると、倉庫にいた女性陣から話は聞いたそうだ。
まぁ、狭い村だし、便利使いしてくるような相手ではないから良いのかな。
「でも、こんなに持ち帰れないわね……」
呆れたように小山を見上げながら、予備の袋を取り出すリサさん。
流石に小山を収容出来るだけの袋は用意していない。
ふるふると小山に縋りつきながら涙ぐみ小動物のような挙動をする精霊さん達。
「男手を借りて、往復するしかないわ」
うむうむと頷くリサさん。
周囲ではあげあげのナイトフィーバーが始まっており、勝訴と書かれた葉っぱを両手で掲げている精霊さんもいる。
相変らず芸が細かい。
でも、まだ夜には程遠いのでそんなにバイブスを上げられても困る。
というか、寝る時にあんまり興奮されても困るので、適度に発散して欲しい。
という事で、袋詰め作業が始まったのだが。
「あら、こんな果実まで……。って、このキノコは教えていないはずだし。これは説明した時に毒が入っているものと見分けが……んー、ついているわね」
精霊さんネットワークによる判断なのか、毒の無い食物や薬草がてんこもりとなっていた。
特に果実は熟れたものを選んで採取してきたのか、味見をしてみたがどれも絶品だった。
「これは……説明していなかったと思うけど。この森に生えていたのね」
いくつかのキノコや果実、薬草はリサさんもこの森では採取した事が無いもので、ちょっと驚いていたのは印象的だ。
まぁ、魔法って凄いで解決するので便利な事この上ない。
「じゃあ、売れそうなものと美味しいものを優先して、まずは持ち帰りましょ」
ぽぽいっとリサさんが袋詰めするのを手伝う。
美味しいものは動物も好きなので戻ってくるまでに食べられちゃうかもと笑っていたが、凄腕シークレットサービスみたいに警備している精霊さんがいるので大丈夫かと。
よいしょとパンパンに詰まった袋を担ぎ、村に向かう。
食い込む重みに荒い息を吐きながら村の柵を抜け、お家に戻ろうとしたのだが。
「ざわついている?」
リサさんが眉根に皺を寄せて、村の中央の方を眺めている。
何だか、人が集まっているのは分かるのだが、細かい違いが分からないためそれが良い事なのか悪い事なのか判別がつかない。
「ちょっと確認してくる。待ってて」
小屋に戦利品を置くと慌てたようにリサさんが出ていく。
「ふむ。ちょっと不穏な」
ぽつんと取り残された私は、椅子に座って一抹の不安を抱えたままリサさんを待つ事にした。
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