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第037話 大商い
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腹蔵なく話をしたので、改めて自己紹介ということで。
「アイシャです。薬師をやっています」
「エルディアです。野鍛冶やってます」
ちなみに、ディランドさんはディリータさんのお孫さんということで。
ディリータさんは現場を息子さんに任せて、現在は商会全体を俯瞰しての戦略や新開発を主に担当しているようで。
イメージ的には、ホールディングスの代表という感じだろうか。
「改めて、黒鹿屋の会頭ディリータと申します」
その屋号を聞いた瞬間、えぇぇっとエルディアさんが絶叫。
どうも元々は王都で流行っていた大店で殿下が辺境伯として着任する際に本店を領都に移したそうで。
引き続き王都にも系列店は構えており、影響は持ち続けているらしい。
「えらい人やで……。そんなんと丁々発止とか、ほんまかなわんわ……」
しょんもりと意気消沈したエルディアさんはさておき。
「金の多寡と付き合いだけの商いに飽き飽きしましてね。地方でやり直そうかと思って心機一転です。日頃から面白いものはないかと、孫をやっていたのですが」
それで昨日、ディランドさんが面白そうな物を持ち帰ってきた。
聞けば場末の市場で売りに出ていたと。
これは斬新なモノだし、儲けの匂いがすると顔を出してみたら……。
「長距離を移動する商会員に配ろうかと思っていたらこんな結果です。いやぁ、驚きました。ここまで先を見据えて市場で出してらしたとは」
契約締結はさておき、まぁ敵では無くなったので改めて情報を開示しようかなと。
「販売先は多岐に渡ります。例えば、鉱山。移動が土の上であり、踏ん張りを必要とするので作業効率は跳ね上がるでしょう。それに石工や大工の方は足元が命です。危険度はがくんと下がります。力仕事は全般が対象ですね。先程の国軍の件にしても、移動に特化して履いてもらい、開戦の際に履き替えるという選択肢もありますし……」
と、草鞋の実用的な使い方を延々羅列していくと、ぽかーんとしてしまった。
再起動したディリータさんが慌ててディランドさんに指示して書き留めてた。
「まぁ、何よりも大事な要件というのがありましてね」
真剣な表情で告げると、皆がごくりと見つめてくる。
「男性の足、臭いでしょ? あれなんとかならないかなって。もうね、あんなん嗅ぎたくないんですよ」
と言ったところ、うちの二人含めてきょとんとした後、大爆笑。
その後に女性陣には呆れられたが。
「そうですね。そればっかりは確かに。お客様の前で身だしなみを整えていても、不快にさせるのであれば意味はありません。確かに理に適っています」
ディリータさんが笑い涙を拭いながら、うんうんと頷く。
掴みはオーケーかなと。
「改めて、こんな事をやっていた経緯をお伝えします」
俺はオーバーパワーなポーション類などを卸せる事を伝えると共に、後ろ盾を必要としている事を明かす。
モノは売りたいけど、縛られる気はさらさらないので、その辺りをきちんと伝えた上、他にも商売のタネは幾らでもある旨を告げた。
ほけっと口を開けて驚いているディランドさんはさておき。
「そうですか……。いや、お伝え頂きありがとうございます。そこは腐っても黒鹿屋。全力でお守りする所存です」
正直、まだ利益の見積もりも出来ていないが、ほぼゴミを材料に価値を生み出せるのだから儲けは確実。
それに販路を一から考えずとも、明らかに売れそうな場所まで明示されているので、後は環境を作って売り捌くだけ。
商売的には大分奢っているので、なんぼかでも返さないとディリータさん側に利がありすぎると。
特に国に絡む話になってくると、ぼろ儲けが出来る種でもあり、他の商人への武器にもなる。
それに未知のモノを売っても、既知の犯罪には関わらないと告げたのが大きかったようで。
「何より、汚い事をしなくても国と渡り合えるという言葉に惹かれました。商売を誠実に大きく出来るのは私の悲願でもあります。どうか、これからもよろしくお願いします」
和やかな雰囲気のもと、商売が交わされる事になった。
取り敢えず、契約をどうしようかという話になったが、個人的には歩合制で良いと。
「単価はかなり安いですが……」
ディランドさんの言葉に、首をふりふり。
「製造工程の確立までの初期費用を考えれば、黒鹿屋さんが大変ですので。割合はお任せします」
と、うっちゃってみた。
正直な話、草鞋で稼ぐつもりはないので縁が出来ればどうでも良いのだが、歩合にしておけば売れた時に大きいかなと。
大まかな部分をしたためた仮の契約書を交わし、席を立とうとしたところ。
「こちらをお持ち下さい」
と、金属製のカードみたいなのを渡される。
なんぞいやと見つめていたら。
「黒鹿屋の通行手形になります。うちの系列が入っている町では問題なく出入りが出来ます」
と、えらく大層なモノを頂いた。
かなりの信用を得たようなので、裏切らないように動かないと駄目だなと思いつつ、バイバイしてお外へ。
放心している女性陣二人を連れて、宿に急ぐ。
流石に大きな商いをしたので、ちょっと疲れました。
「アイシャです。薬師をやっています」
「エルディアです。野鍛冶やってます」
ちなみに、ディランドさんはディリータさんのお孫さんということで。
ディリータさんは現場を息子さんに任せて、現在は商会全体を俯瞰しての戦略や新開発を主に担当しているようで。
イメージ的には、ホールディングスの代表という感じだろうか。
「改めて、黒鹿屋の会頭ディリータと申します」
その屋号を聞いた瞬間、えぇぇっとエルディアさんが絶叫。
どうも元々は王都で流行っていた大店で殿下が辺境伯として着任する際に本店を領都に移したそうで。
引き続き王都にも系列店は構えており、影響は持ち続けているらしい。
「えらい人やで……。そんなんと丁々発止とか、ほんまかなわんわ……」
しょんもりと意気消沈したエルディアさんはさておき。
「金の多寡と付き合いだけの商いに飽き飽きしましてね。地方でやり直そうかと思って心機一転です。日頃から面白いものはないかと、孫をやっていたのですが」
それで昨日、ディランドさんが面白そうな物を持ち帰ってきた。
聞けば場末の市場で売りに出ていたと。
これは斬新なモノだし、儲けの匂いがすると顔を出してみたら……。
「長距離を移動する商会員に配ろうかと思っていたらこんな結果です。いやぁ、驚きました。ここまで先を見据えて市場で出してらしたとは」
契約締結はさておき、まぁ敵では無くなったので改めて情報を開示しようかなと。
「販売先は多岐に渡ります。例えば、鉱山。移動が土の上であり、踏ん張りを必要とするので作業効率は跳ね上がるでしょう。それに石工や大工の方は足元が命です。危険度はがくんと下がります。力仕事は全般が対象ですね。先程の国軍の件にしても、移動に特化して履いてもらい、開戦の際に履き替えるという選択肢もありますし……」
と、草鞋の実用的な使い方を延々羅列していくと、ぽかーんとしてしまった。
再起動したディリータさんが慌ててディランドさんに指示して書き留めてた。
「まぁ、何よりも大事な要件というのがありましてね」
真剣な表情で告げると、皆がごくりと見つめてくる。
「男性の足、臭いでしょ? あれなんとかならないかなって。もうね、あんなん嗅ぎたくないんですよ」
と言ったところ、うちの二人含めてきょとんとした後、大爆笑。
その後に女性陣には呆れられたが。
「そうですね。そればっかりは確かに。お客様の前で身だしなみを整えていても、不快にさせるのであれば意味はありません。確かに理に適っています」
ディリータさんが笑い涙を拭いながら、うんうんと頷く。
掴みはオーケーかなと。
「改めて、こんな事をやっていた経緯をお伝えします」
俺はオーバーパワーなポーション類などを卸せる事を伝えると共に、後ろ盾を必要としている事を明かす。
モノは売りたいけど、縛られる気はさらさらないので、その辺りをきちんと伝えた上、他にも商売のタネは幾らでもある旨を告げた。
ほけっと口を開けて驚いているディランドさんはさておき。
「そうですか……。いや、お伝え頂きありがとうございます。そこは腐っても黒鹿屋。全力でお守りする所存です」
正直、まだ利益の見積もりも出来ていないが、ほぼゴミを材料に価値を生み出せるのだから儲けは確実。
それに販路を一から考えずとも、明らかに売れそうな場所まで明示されているので、後は環境を作って売り捌くだけ。
商売的には大分奢っているので、なんぼかでも返さないとディリータさん側に利がありすぎると。
特に国に絡む話になってくると、ぼろ儲けが出来る種でもあり、他の商人への武器にもなる。
それに未知のモノを売っても、既知の犯罪には関わらないと告げたのが大きかったようで。
「何より、汚い事をしなくても国と渡り合えるという言葉に惹かれました。商売を誠実に大きく出来るのは私の悲願でもあります。どうか、これからもよろしくお願いします」
和やかな雰囲気のもと、商売が交わされる事になった。
取り敢えず、契約をどうしようかという話になったが、個人的には歩合制で良いと。
「単価はかなり安いですが……」
ディランドさんの言葉に、首をふりふり。
「製造工程の確立までの初期費用を考えれば、黒鹿屋さんが大変ですので。割合はお任せします」
と、うっちゃってみた。
正直な話、草鞋で稼ぐつもりはないので縁が出来ればどうでも良いのだが、歩合にしておけば売れた時に大きいかなと。
大まかな部分をしたためた仮の契約書を交わし、席を立とうとしたところ。
「こちらをお持ち下さい」
と、金属製のカードみたいなのを渡される。
なんぞいやと見つめていたら。
「黒鹿屋の通行手形になります。うちの系列が入っている町では問題なく出入りが出来ます」
と、えらく大層なモノを頂いた。
かなりの信用を得たようなので、裏切らないように動かないと駄目だなと思いつつ、バイバイしてお外へ。
放心している女性陣二人を連れて、宿に急ぐ。
流石に大きな商いをしたので、ちょっと疲れました。
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