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第035話 オペレーションわらじべ長者
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「えぇと、それって高く売れるのでしょうか……?」
「藁やろ? 解けるんちゃうの?」
二人は懐疑的な方向性。
「いや、物を売りたいというよりも製法を売りたいというのが大きくて」
村規模の商売に慣れたアイシャさんと、製造にかかりっきりで商売はあんまり気にしないエルディアさん。
まずもって俺自身が気にしていたのは、ポーションを売るにしたって直販は無いなと。
行きずりの小さな村なら良いけど、こんな大きな町でどれだけのポーションを売るのかと。
しかも、高品質なポーションをぼっかんぼっかん出してたら、絶対に目を付けられる。
そんな時に後ろ盾になってくれそうな商人とかがいればありがたいなと。
目端が利く商人なら、草鞋の価値を分かってくれそうなので。
というのも。
縄を編むなら、蔓草でというのがこの世界。
そこら中に長い蔓草が雑草として繁茂しているので、そちらを使うのがデフォ。
藁なんて着火剤か防寒用途、家畜の飼料などにしか思われていない。
そこに新たな用途を提示したら、金に換えられるんじゃないかなと。
しかし、現状で資本の無い俺達がそれをするには無理で。
出来れば、地位のある考えがシャープな人間に拾って欲しいなと。
後、今後のバリアになって欲しい思惑を説明してみた。
「「んーん……」」
結局二人には響かず、切なく一人でスライムさん達と戯れながら、藁を編むのでした。
スラ蔵君が藁を叩くのに秀でた才能を持っていてくれて、助かったけど。
にょいーんと体の一部分を伸ばして、器用に槌でとんとん。
めっちゃ便利だ。
という訳で、当面の生活費を稼ぐためにポーション片手にアイシャさんとエルディアさんは薬師のお店に。
流石に日中なら女性二人でも歩けるそうで。
そこは信用してみました。
俺は夜なべをして編んだ草鞋を市場で売りに行くことに。
話をしてみると常設の市場は売上税だそうで、単価と在庫の報告で良いとのこと。
ちょろまかすのが出るんじゃないかと思ったが、それも織り込み済みらしく。
少々は目を瞑るけど、大っぴらにやっていると周囲が告げ口するそうで。
人の文化というのはどこも変わらんなと思いながら、市場の端っこの指定された場所にお店を構えるのだった。
「どうもです。本日はよろしくお願いします」
残ったシカもどきの肉はジャーキーにして乾燥させていたのだけど。
隣近所の出店の人に、挨拶がてら配り歩く。
しがんでいた隣のおいちゃんが売り物かと聞いてくるので、ノーとは答えた。
ジャーキーなんて確かに見たことないなと思いながら、草鞋売りを始めてみた。
はい。
半日ほど売っていましたが、反応なしです。
呼び込みは禁止なので、説明だけに留めていたのですが。
全っ然反応ナッシング。
あかんのかぁと気落ちしながら、帰ってからの二人による嘲笑に耐える訓練をしていると、影が。
顔を上げると、早い時間に来た兄ちゃんが立っている。
「どうなさいま……」
「これ、一揃え貰える?」
と言われるので、渡すとちゃりんとお支払い。
ちょっと狐に化かされたような気持で見ていると、その場で履き替えた兄ちゃんがとんとんと飛び跳ねて、スキップしながら去っていった。
「毎度あり?」
口上は聞く人間が消えた後に、虚しく響いたとさ。
そこからは、再度客すら寄らず、延々とお座りタイム。
先鋭し過ぎたかと考えながら、宿屋に戻る事に。
税金?
売り上げを伝えたら、ぽんって肩を叩かれたのは良い思い出です。
「え……一つだけ……ですか?」
「あないに口上垂れとったのに?」
二人が口撃してくるので拗ねてみようかなと思ったら、慌ててとりなしてくるのでエステ沼は深いのだなと。
「いや、言った通り売るのが目的ではないので」
改めて方針を伝えると生暖かい目で見つめられたので、閉口して夕食に集中する。
本日も夜なべして、量産に明け暮れました。
とんとん、よじよじ。
明けて、本日。
もう既に用を済ませたアイシャさんとエルディアさんも店番に入るというので、一緒に市場へ。
市場の場所取りの申請の時にちょっと羨ましそうに見つめられたのは、美少女二人のせいということで。
本日も端っこに移動して、お隣さんやご近所にご挨拶。
別の顔ぶれでしたが、ジャーキーの評判は良くてみんなにっこり。
我々も夜なべして苦心した藁草履を並べて、販売開始。
飽きたら店番を交代して、市場散策などをしつつ。
「冷やかしばっかりですね……」
「まったく相手にされてへんな……」
全くその通りなので、ぐうの音も出ない。
あれぇ? 戦術を間違えたかな……。
若干不安を感じながらも、まだ慌てる時期ではないと泰然自若。
すーんっと女性陣の文句を無視していますと。
「あぁ、ありました。この店です」
聞き覚えのある声に顔を上げると、昨日の兄ちゃんがぱりっとした格好で立っていた。
その背後には、渋い老境に差し掛かった男性。
餌にかかったのかなと思いつつ、にっこり微笑んでみる。
「いらっしゃいませ、商品をお探しですか?」
アイシャさんの言葉に、男性が草鞋を手に取り、矯めつ眇めつ眺めている。
ぼそぼそと兄ちゃんと話し合い、こくりと頷き合って。
「済まないが、主人。商売の話をしても良いだろうか?」
兄ちゃんの言葉に、とりあえず首を傾げてみる。
「ここにある商品だけでは足りないので、指定数の納品をお願いしたいのだが」
その言葉に目を丸くするアイシャさんとエルディアさん。
勿論俺の返事は。
「無理です」
ノーですね。
「藁やろ? 解けるんちゃうの?」
二人は懐疑的な方向性。
「いや、物を売りたいというよりも製法を売りたいというのが大きくて」
村規模の商売に慣れたアイシャさんと、製造にかかりっきりで商売はあんまり気にしないエルディアさん。
まずもって俺自身が気にしていたのは、ポーションを売るにしたって直販は無いなと。
行きずりの小さな村なら良いけど、こんな大きな町でどれだけのポーションを売るのかと。
しかも、高品質なポーションをぼっかんぼっかん出してたら、絶対に目を付けられる。
そんな時に後ろ盾になってくれそうな商人とかがいればありがたいなと。
目端が利く商人なら、草鞋の価値を分かってくれそうなので。
というのも。
縄を編むなら、蔓草でというのがこの世界。
そこら中に長い蔓草が雑草として繁茂しているので、そちらを使うのがデフォ。
藁なんて着火剤か防寒用途、家畜の飼料などにしか思われていない。
そこに新たな用途を提示したら、金に換えられるんじゃないかなと。
しかし、現状で資本の無い俺達がそれをするには無理で。
出来れば、地位のある考えがシャープな人間に拾って欲しいなと。
後、今後のバリアになって欲しい思惑を説明してみた。
「「んーん……」」
結局二人には響かず、切なく一人でスライムさん達と戯れながら、藁を編むのでした。
スラ蔵君が藁を叩くのに秀でた才能を持っていてくれて、助かったけど。
にょいーんと体の一部分を伸ばして、器用に槌でとんとん。
めっちゃ便利だ。
という訳で、当面の生活費を稼ぐためにポーション片手にアイシャさんとエルディアさんは薬師のお店に。
流石に日中なら女性二人でも歩けるそうで。
そこは信用してみました。
俺は夜なべをして編んだ草鞋を市場で売りに行くことに。
話をしてみると常設の市場は売上税だそうで、単価と在庫の報告で良いとのこと。
ちょろまかすのが出るんじゃないかと思ったが、それも織り込み済みらしく。
少々は目を瞑るけど、大っぴらにやっていると周囲が告げ口するそうで。
人の文化というのはどこも変わらんなと思いながら、市場の端っこの指定された場所にお店を構えるのだった。
「どうもです。本日はよろしくお願いします」
残ったシカもどきの肉はジャーキーにして乾燥させていたのだけど。
隣近所の出店の人に、挨拶がてら配り歩く。
しがんでいた隣のおいちゃんが売り物かと聞いてくるので、ノーとは答えた。
ジャーキーなんて確かに見たことないなと思いながら、草鞋売りを始めてみた。
はい。
半日ほど売っていましたが、反応なしです。
呼び込みは禁止なので、説明だけに留めていたのですが。
全っ然反応ナッシング。
あかんのかぁと気落ちしながら、帰ってからの二人による嘲笑に耐える訓練をしていると、影が。
顔を上げると、早い時間に来た兄ちゃんが立っている。
「どうなさいま……」
「これ、一揃え貰える?」
と言われるので、渡すとちゃりんとお支払い。
ちょっと狐に化かされたような気持で見ていると、その場で履き替えた兄ちゃんがとんとんと飛び跳ねて、スキップしながら去っていった。
「毎度あり?」
口上は聞く人間が消えた後に、虚しく響いたとさ。
そこからは、再度客すら寄らず、延々とお座りタイム。
先鋭し過ぎたかと考えながら、宿屋に戻る事に。
税金?
売り上げを伝えたら、ぽんって肩を叩かれたのは良い思い出です。
「え……一つだけ……ですか?」
「あないに口上垂れとったのに?」
二人が口撃してくるので拗ねてみようかなと思ったら、慌ててとりなしてくるのでエステ沼は深いのだなと。
「いや、言った通り売るのが目的ではないので」
改めて方針を伝えると生暖かい目で見つめられたので、閉口して夕食に集中する。
本日も夜なべして、量産に明け暮れました。
とんとん、よじよじ。
明けて、本日。
もう既に用を済ませたアイシャさんとエルディアさんも店番に入るというので、一緒に市場へ。
市場の場所取りの申請の時にちょっと羨ましそうに見つめられたのは、美少女二人のせいということで。
本日も端っこに移動して、お隣さんやご近所にご挨拶。
別の顔ぶれでしたが、ジャーキーの評判は良くてみんなにっこり。
我々も夜なべして苦心した藁草履を並べて、販売開始。
飽きたら店番を交代して、市場散策などをしつつ。
「冷やかしばっかりですね……」
「まったく相手にされてへんな……」
全くその通りなので、ぐうの音も出ない。
あれぇ? 戦術を間違えたかな……。
若干不安を感じながらも、まだ慌てる時期ではないと泰然自若。
すーんっと女性陣の文句を無視していますと。
「あぁ、ありました。この店です」
聞き覚えのある声に顔を上げると、昨日の兄ちゃんがぱりっとした格好で立っていた。
その背後には、渋い老境に差し掛かった男性。
餌にかかったのかなと思いつつ、にっこり微笑んでみる。
「いらっしゃいませ、商品をお探しですか?」
アイシャさんの言葉に、男性が草鞋を手に取り、矯めつ眇めつ眺めている。
ぼそぼそと兄ちゃんと話し合い、こくりと頷き合って。
「済まないが、主人。商売の話をしても良いだろうか?」
兄ちゃんの言葉に、とりあえず首を傾げてみる。
「ここにある商品だけでは足りないので、指定数の納品をお願いしたいのだが」
その言葉に目を丸くするアイシャさんとエルディアさん。
勿論俺の返事は。
「無理です」
ノーですね。
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