一坪から始まる新世界創造

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第029話 ドワーフが加わった

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 ウナギの蒲焼きじゃないんだから、知らない女の子に良い匂いと懐かれても怖い。

 必要な物を選んでささーっとお店を出たのに、ぴとっと付いてくる。

 こわっ!! と思いながら宿に逃げたのに、そのまま付いてきて、食堂に入っても横の席に座っているのだけど。

「嫌わんといてぇな」

「いや、純粋に怖いです」

 ノーサンキューポーズで告げるが、この女の子へこたれない。

「あれ……。ドワーフさんですか?」

「そうや、うちはドワーフよ?」

 くてんと首を傾げたアイシャさんにエルディアがむふーとドヤ顔で答える。

 ドワーフは背丈が肩までサイズくらいの人類で、主に鉱山で探鉱をしたり、鍛冶に精を出したりしている。

 男性は髭面なのだけど、女性は小さいだけなので、ちょっと紛らわしい。

 アイシャさんよりかなり年下だと思っていたのだけど、同い年だそうで。

「ぴっちぴちやで?」

 若干、ノリに付いていけない。

 眼前ではガールズトークが花開いており、すでにマブダチって感じになっている。

「ちなみに、いい匂いというのは……」

 恐々と聞いてみた。

「あのな。ドワーフちうのは鉱石の匂いが分かるっちゅう触れ込みなんや。そんであんたの体から鉱石にええ匂いが……」

 まとめると。

 ドワーフは鉱石を感じる先天的能力があるそうで、人によって味とか匂いとして知覚するそうなので。

 エルディアさんは匂い派で、俺の体からごっつええ匂いがするそうでついてきたと。

「作戦たーいむ!!」

 そう宣言して、席にエルディアさんを置いて、アイシャさんと食堂の隅へ退避する。

「それって、あれですよね」

「龍土とか、龍鉱だよね」

 もしょもしょと相談してみたが。

 ばれると色んな人に集られそうなのが嫌なので、ここは穏便に引いてもらうのが吉かなという結論に達した。

「そんないい匂いの原因とかシラナイヨ?」

「嘘や!! めっちゃぷんぷんさせとって、それはないで!!」

 白々しく頑張ってお引き下がりをお願いしたのだが、どこまでも食らいつくと逆宣言された。

「ドワーフの捜査網を舐めたらあかんで?」

 どこにでも鍛冶屋さんはあるので、中々にその手は広いらしく、面倒な事になったなと。

「内緒に出来ます?」

「ええよ。なんやったら、他のドワーフの相手もしたるさかい。はよ、教えてぇな」

 はふはふと期待に目を輝かせるエルディアさん。

 アイシャさんと顔を見合わせて、はぁと溜息一つ。

 うっきうきのエルディアさんを連れて、部屋に戻り、『一坪の世界』へご招待。

 一瞬呆然としたエルディアさんだったが、次の瞬間ぴきゅーんっと目を輝かせて、龍鉱を積んでいる区画に猛ダッシュ。

「なんやこれ!! なんやこれ!! なんで龍鉱がこないに無造作に、しかもようけ積まれてんねん!! ふんすふんす。はぁ、ええ匂いや。これや、この香りや。ごっつ懐かしいやん。って、ちゃうやろ、あほー!!」

 忙しなくかっちゃかっちゃ龍鉱の前で行き来していたエルディアさんが目前まで戻ってきてツッコミを繰り出す。

 おぉ、この世界で初めてのツッコミ。

「あのな、知ってるか知らんけど。龍鉱いうたらな、指先のこのっくらいで城が買えるっちゅう代物なんやで? なんでこないにぎょーさん、しかも無造作にお……い……て?」

 文句を言っていたエルディアさんがぎぎぎっと首をずらしてみた先には、奉納剣が刺さっている世界樹さんが。

 熱に浮かされたように挙動不審に進む、エルディアさん。

 剣を目前にして、摘んで、嗅いで、抱きしめた。

「あ、あぶな!!」

 流石に刃物にそれはと思ったら……。

「なんやこれ、なんやこれ!! こんな純度の神鉄ありえるんか!? うわーん、こないななまくらにされて!! はぁ、ええにおいや……。ちがーう!!」

 もう、なんだか分からない感じで泣き喚いているので、再びアイシャさんと一緒に溜息一つ。

「うち、ここに住む。ここの子になる」

 一通り喚いたと思ったら、すくっと立ってこの言葉である。

「いやいや」

 アイシャさんと二人でお断りのメッセージをアピールするのだが、我関せずで。

「住みたいんや。なんでもするさかい、な。な。」

 きゅっと上腕を締めて胸元をアピールするのだが、すとーんとしててアピールにもならない。

 のだが、横を見るとアイシャさんのギンっと迫力のある眼差しが俺を貫いており、怖い。

「あー、住むと言っても、そもそも何をしている人なのでしょうか?」

 聞くと、エルディアさん。

 そろそろ独り立ちの時期だという事で、家を出て修行にあちこちふらふらしているそうで。

 野鍛冶として村にお世話になったり、気に入った工廠があれば弟子入りしたりと。

 勿論閉鎖的な鍛冶師というのもいるので、叩きだされる事もあるそうで。

「あそこもけったいなところでな。あかんいうとるのに、それがでんとうやって……」

 出会った鍛冶屋さんもそんな一軒だったそうで、叩きだされていたと。

「色々手伝いとか、内緒にしないといけない事ありますけど、守れます?」

「こないな環境で仕事が出来るんやったら、なんぼでも守るわ!!」

 色々悩みつつも、三人くらいならこの広さでも生活出来るかなとアイシャさんもオーケーとなりまして。

 エルディアさんが仲間に加わった。
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