一坪から始まる新世界創造

第013話 カップルが誕生したよ？

「じゃあ、アフテラやベラージュなんかも刈れるのがあります。エティラマータなんて初めて見ましたが、それは触らないで下さい。貴重だし、弱いです」

　アイシャさんの指示の元、刈り取りを進める。

　アフテラとかベラージュと呼ばれているものは多年草らしいのだけど、種を散じた後っぽいのは刈っちゃっても良いそうで。

「ベルダインはね、傷に効くんだ。腕の良い薬師が薬を作ると、指が生えるなんてね……」

　エジライさんの知恵袋を披露してもらいながら、楽しくぷちぷち。

　昨日みたいな集中トランス状態という感じではなく、家族でよもぎ刈りって感じの行楽ムーヴを味わいつつ、小山をこしらえていく。

　日が大分傾いた時には、昨日と同じく小山が幾つも連なっていて、ちょっとびっくり。

　エジライさん、話が上手すぎて全然時間の経過を感じなかった。

「うーん……。干して保管は出来るけど。これだけあると、値崩れを起こしちゃいそうだねぇ」

　エジライさんがちょっと困ったように呟くので、相談してみる。

　実は、スライムさんが住んでくれたことによって十畳敷きくらいの空間はある訳で。

　上下も十畳と考えると、ドラゴンさんも十分に格納出来る。

　なので、『収納』の魔法でドラゴンさんの残骸を保管しちゃおうかと聞いてみた。

　『収納』の魔法は『一坪の世界』のようにモノを収納したり出したり出来る魔法だ。

　でも、生き物は駄目なようだし、ドラゴンさんの火球なんてのも収納は出来ない。

　色々劣化した魔法だけど、単純にモノを収納出来るという意味では便利で。

「そうかい？　うーん、でも困らないかい？」

「結構大きいので、出来る限りということで」

「分かった、頼むよ」

　『収納』の魔法は覚える時のスクロールの質で収納量が決まるそうで。

　収納量が多い『収納』のスクロールは高価らしい。

　それでも、一畳敷きの物置くらいの大きさなら手頃な値段で買えるらしいので。

　商人とかには必須だそうだ。

　エジライさん達が、荷物を背負ってとぼとぼ進むのを見送りながら、小山に向かう。

　あそこの下には血肉や骨が埋まっているそうなので、ごっそりと『一坪の世界』の下層に放り込む。

　後、スライムさんを何体か放り込んで移住を相談してみたのだけど、軒並みOKの回答。

　結構生の血肉が増えたから、腐敗が怖いなと相談して良かった、良かったと思っていると。

『一定以上の規模の生物が繁殖可能になりました。一坪の世界を拡張します』

　おぉぉ？

　スライムさんって単為生殖じゃないの？

　え、カップル出来たの？

　どゆこと？

　はてなマークを浮かべたまま、あんまりプライベートを聞くのも下世話かなとちょっと悶々としながら、荷物を倉庫まで往復しながら運んだ。