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【番外編】バレンタイン8

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そんなこんな玄関でわちゃわちゃしていると、「ねぇ」とおっちゃん達とは明らかに違う綺麗な声が響いた。


「俺の沙織になにしてるの?」

そう言ってみんなの真ん中を通ってきて私の元へくる彼に、慌てて目をこする。

おっちゃん達は「?!」と言うように私と駒井さんを交互に見て目をパチパチする。

「あの…もしかして」


恐る恐ると言うように口を開いたおっちゃんに、駒井さんは満面の笑みを零す。

私の左手を握り胸に高さまで持ってきて
「俺、結婚しました」
と笑う。

…駒井さん、ここでは俺って言うんだな…。

駒井さんの「俺」が新鮮で少し感動していると、結婚しました報告に一斉にわぁ!!と声が響く。

「おめでとう!」
「若もやっとかぁあ…」


皆一瞬にして駒井さんを囲い頭をぐしゃぐしゃ、ハグをしたり、ハンカチを出して泣き真似をしたり。


それぞれ皆んな本気で喜んで駒井さんを祝福しているのがわかって私も自然と笑顔になる。


…反対は流石にされないと思っていたけれど、ここまでわかりやすく皆んなが祝福してくれることが嬉しかった。


「ありがと、わかったから髪崩すなって」


言葉は怒りながらもめちゃめちゃ笑顔でおっちゃん達と戯れる駒井さんをみて眼福する。

…若とか言いつつ、あんまり壁無く皆んなに愛されてるんだな…。

幸せそうなその景色をみて私まで幸せに浸っていると、突然その中の一人が「沙織ちゃんっ!」と名前を呼んだ。


「若を…どうか、幸せにしてやってくれな」

笑顔のまま、まるで娘が結婚で出て行くときの父のように涙を流しそう言う彼に大きく頷く。

「はい!」

ここに来て一番の声で返事をする。


…皆さんの想い全部分、駒井さんを幸せにします。


そこまでは口に出さなかったが、こっそりとここのみんなと約束をするように心で決意する。



「そろそろ入ろうよ」


美津さんの一言で、みんな「いやぁよかったなあ」なんて口々に家の奥へ進んで行く。



「よかったね。行こっか」


そっと駒井さんに手を引かれ斜め後ろを歩いて中へお邪魔する。


…私、組のみんなのこと好きになれそうです。
好きになりました。



そっと彼の背中とその奥にうつる彼らをみて笑顔を零す。

私も…いつかこの中に馴染めますように。

お願いしますと願いながら、駒井さんの手を少し握り返した。
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