ヤクザと私と。~養子じゃなく嫁でした

一方そのころ

side沙織

大事なものを忘れていたと言われ連れてこられた先は如何にも高価そうな黒いビルだった。

雰囲気としてはスーツや時計、宝石とかが売ってそうな…

…あ。
もしかして、

「結婚指輪、いいの選ぼうね」

私の予想はビンゴ。

有無を言わさず腕を引かれて中へ入った。


…明らかに場違いな雰囲気の私。

お店にはスーツをビシッときた働く女性って感じの方や時計に詳しそうなお兄さんが並び、回転直後な訳ではないのに皆通路に向かって「いらっしゃいませ」とお辞儀をする。


…はじめての空間に圧倒されながらも、ニコニコと店員さんに見守られながら駒井さんの後ろをついていく。


ビルの中、一際高級感が溢れる場所で駒井さんは足を止めた。


ガラスケースの中には指輪がたくさん並んでいて、ケース真ん中には店員さんが4人並んで立っていた。


「どれがいい？」

ばっと振り返って私に聞く駒井さんに急に振られた！と驚きながら「まだ一個も見てないですよー…」と苦笑いをする。


彼は「金属アレルギーとか無いよね。」と確認してからショーケースの中を一つづつ見てゆっくりとまわりはじめた。

値段を見ると丸の数がおかしくって倒れそうになりながら私もしっかりと指輪をみる。


値段がおかしいと思って見ていたのになぜか進むごとに値段が上がっていき、驚いていると指輪のダイヤが少しずつ大きくなっているのに気がついた。


一周回り終える頃には、指輪につけるには大きすぎない？というぐらいのダイヤなどがあり値段の丸を数える気にもなれずに駒井さんの後をおった。



「どう？」

そう言って振り返る彼に、「駒井さんはどれが良かったですか？」と聞いた。

駒井さんは少し困ったように笑った後で「お互いに譲り合いだよね」と言い私の手を引いて「こっちのやつかな」と足を進めた。