ヤクザと私と。~養子じゃなく嫁でした

盗聴器4

side 沙織

『お母さん、今は九州の方の居酒屋でバイトしてるみたい』


葛西さんの言葉にえ？と首をかしげる。

九州…？


『高校時代の友達でアテがあったみたいだな。友達に部屋を一室借りてるみたい。』


パサっと紙を机に置いた時の音がして調べて来た内容だ…と感付く。


『バイトをしてるって、借金を返す気はあったのかな』

駒井さんがそう言って椅子に腰をかける。

ドサっと座った拍子に、布の擦れる音が大きく聞こえて一瞬びっくりした。


『まだ接触はしてないからその辺はわからないけど、お金は必要最低限しか使わないようにして口座に貯めてるらしい』


どこの情報だよと突っ込みたくはなるけれど、お母さんが私を捨ててもっとひどい生活をしていると思って居たからなんとなくほっとする。

『春憂が会いに行けたらいいけど遠いし時間も無いだろ？明日にでも俺が行ってみるから聞きたいこととか伝えることがあったらまとめてメールで送っといて』


明日…！

私が行きたいっ。

なんて言えないけれど、心臓がばくばくしてじっとして居られない気持ちになる。


…駒井さんは今日帰ってきたらこのことを教えてくれるだろうか。

それとももう少しは黙って動くか…。


どちらにせよ、駒井さんがお母さんについて調べてくれているということとお母さんが無事だということを知って安心する。


…お母さんに早く再開できる日まで…


私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。