夜空に星が流れるとき

浅黄幻影

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火の玉

火の玉(1)

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 星が落ちてしばらく経った頃、墓地に火の玉が出るという噂が立った。

 ときどき見回りをしている墓守が見つけたらしい。話では、墓石の前、ちょうど死人が眠る墓の周囲をゆらりゆらりと動いていたという。墓守は自分の臆病が露呈するとも知らず、驚きのあまり腰を抜かしたと言って回っては案の定、笑いものにされた。
 けれど、何日かして夜に通った人も火の玉を見たという話が出てくると、みんな信じるようになった。火の玉が出るのは本当のようだ、と。

 ぼくと友達もそのことを話していた。ちょうど街の広場を通っていたときで、ぼくは好奇心から友達に火の玉を見にいかないかと誘っていた。
「きみだって気になるだろう?」
「まあ、気になるよ。火の玉が出るようになってから墓守が怖がっちゃって、見回りもろくにしてないらしいよ。そのせいで不用心になるからって入り口がしっかり閉められてしまって、入れないって」
「そうかあ、でもこのまま黙っているのももったいない気がするなあ」
 そう話していると、近くでたむろしていたこどもがぼくらの方を見ているのに気付いた。以前にぼくが頭を殴ってやったヴェルナーだった。
 ヴェルナーはぼくが気付いたのを察し、さらに憎らしい顔で笑ってきた。ぼくは関わりたくないので通り過ぎようと思った。実際、それが賢いことだったと思う。けれど、
「噂だけして何もしないのかよ。臆病者だな、石がなけりゃ俺も殴れなかったんだろうな」
 と言うので、つい返事をしてしまった。
「臆病なんかじゃない。入れないんだから、仕方ないじゃないか。きみだって入れるわけないぞ」
「昼間だからそうなんだよ、夜だったら暗闇に紛れて入れるさ。正面だけじゃなく、どこからでも」
 それでヴェルナーとその友達とはニタニタしながら言った。
「俺たちは今夜、火の玉を捕まえに行く。おまえらも度胸があるんだったら来るといい、まあ、来ないのはわかってるけどな」
「臆病者なもんか、一緒にいってぼくも捕まえてやるよ」
 ぼくと友達もヴェルナーに対抗して、その日の深夜に墓地に集まることになった。ヴェルナーは逃げるなよ、と捨て台詞を吐いて去っていったけれど、ぼくは勢いでこんなことになってしまったのを少し後悔していた。
「本当に行くの? 大丈夫かな」
「当たり前だよ、火の玉なんて怖いもんか。捕まえたら街の英雄にもなれるさ」
 友達が不安そうに見てくるので、ぼくは彼にもつい威勢よく言ってしまった。言い切ってしまったぼくは、もう後戻りすることはできなくなった。
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