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あとがき
あとがき
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最後までお付き合い、ありがとうございます。この作品に込めた私の気持ちなどを、ささやかながらお話ししたいと思います。
本作「三二・七六八の響き」は二〇二〇年一二月一〇日発売「文藝マガジン文戯一三号」に掲載されたものです。巻頭企画の「結晶」あわせて制作したもので、物語は時計に使われる結晶=クォーツを物語のメインにしています。
結晶=クォーツ=和光で冷や汗をかいて時計を買った経験、というのは私の実体験と物語が重なるところです。そして大病もそうでした。本作を書いたのは一〇月~一一月末、私の母もちょうど最後の時を迎えようとしていたときでした。私の母は二〇一九年九月にガン告知を受け、それから治療を受けていたのです。
文藝マガジン文戯一三号の発売から一〇日ほどで母は他界しました。ガン告知から一年と少しで母は死にましたが、ガンというものは想像以上に人間の命を削るものです。なにせ、母はガン告知を受ける前までごく普通に過ごしていて、告知を受けても、しょげることはあっても、春くらいまでは元気に過ごしていました。つまり、検査をせずに気付かないでいると、ガンは「最近、ずいぶん体調が悪い」となって半年で命を奪うのです。
ですから、本作を書き上げた一一月末はガンの最後の一撃を知らずに「三月くらい、いや、夏までいけるのではないだろうか」と思っていたときでした。
私にしても、死に行く人間の魂や思い出を殊更に売りに出したわけではないのです。当時はまだ母が、書き上げて三週間で死ぬとは思ってもいなくて、まだまだ夏まで生きられるとさえ思っていて、最期まで生きる希望というものを最後の締めくくりにしました。
とりとめもなく、つい母の思い出を語ってしまいました。が、これがこの作品における私の気力であったことは間違いありません。私の母は他界しましたが、どうかぜひ、みなさんには今誰かと一緒にいる時間を、これまでよりさらに大切にしていただける助けになればと思います。
──時よ止まるな、停止は終わりしか意味しない。動き続けるからこそすべては美しい。すべては動き続け、生き続けなければならない……。
本作「三二・七六八の響き」は二〇二〇年一二月一〇日発売「文藝マガジン文戯一三号」に掲載されたものです。巻頭企画の「結晶」あわせて制作したもので、物語は時計に使われる結晶=クォーツを物語のメインにしています。
結晶=クォーツ=和光で冷や汗をかいて時計を買った経験、というのは私の実体験と物語が重なるところです。そして大病もそうでした。本作を書いたのは一〇月~一一月末、私の母もちょうど最後の時を迎えようとしていたときでした。私の母は二〇一九年九月にガン告知を受け、それから治療を受けていたのです。
文藝マガジン文戯一三号の発売から一〇日ほどで母は他界しました。ガン告知から一年と少しで母は死にましたが、ガンというものは想像以上に人間の命を削るものです。なにせ、母はガン告知を受ける前までごく普通に過ごしていて、告知を受けても、しょげることはあっても、春くらいまでは元気に過ごしていました。つまり、検査をせずに気付かないでいると、ガンは「最近、ずいぶん体調が悪い」となって半年で命を奪うのです。
ですから、本作を書き上げた一一月末はガンの最後の一撃を知らずに「三月くらい、いや、夏までいけるのではないだろうか」と思っていたときでした。
私にしても、死に行く人間の魂や思い出を殊更に売りに出したわけではないのです。当時はまだ母が、書き上げて三週間で死ぬとは思ってもいなくて、まだまだ夏まで生きられるとさえ思っていて、最期まで生きる希望というものを最後の締めくくりにしました。
とりとめもなく、つい母の思い出を語ってしまいました。が、これがこの作品における私の気力であったことは間違いありません。私の母は他界しましたが、どうかぜひ、みなさんには今誰かと一緒にいる時間を、これまでよりさらに大切にしていただける助けになればと思います。
──時よ止まるな、停止は終わりしか意味しない。動き続けるからこそすべては美しい。すべては動き続け、生き続けなければならない……。
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