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二十六話 私に読めない風は無い

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鬼魄の、じゃくなる一点の曇りを見つけた彼等は、二体、三体と確実に仕留めていた。 鳥居は術師を、自慢のクナイで、痺れさせ、その動きを確実に止め、シゲと、乾は、鬼魄のツノを切り落とし、その戦いを邪魔立てを目論む者達を、桃花は、マサマキ山より突き出た岩の上より、爆なる魔力で、追い払い、飛猿は、ススリの魂を吸い取り、そして鬼魄を、封印する。

 「ねえ、シラカバ君は、そこで何してるの?」

 シラカバは、桃花の居る岩の先端部で、チョコンと座り込み、唯ひたすら、戦さ場を見つめている。

 「これが、俺っちの仕事なんだ」
 シラカバは、甲高い声で、そう答え
 「桃花ちゃん、戦さ場に置いて、相手出方を伺い知る事は、戦機を優位に進める事が出来るんだよ」

 「へェーそうなんだ」「で、何か分かったの?」

「この戦さ場怪しき点が、三つ程有る」「一つは、槍を武器として、動くあの三体の鬼魄」「彼奴らの弱なる一点のその曇りは、ツノじゃ無い」
 
 この戦さ場で、シラカバは目を凝らし、この戦さ場を見つめ、相手の動き、仕草、僅かな異変による歪みすら、取りこぼす事無く、見ていた。

 「どこなの?解ったの」

 桃花は人並み外れた観察力で、相手の動きを読み、風を読み、一歩先を読み解き、最良の一と張りを放っている桃花すら、見抜く事が出来ない、僅かなほこびを、シラカバは見抜き、読み解く事が出来る。

 「足の裏だよ」「ちょこし、左足の踏込みが、浅い」シラカバはそう言うと、立ち上がり、ピッ、ヒューヒュ、ヒュヒュヒュと、指笛を数回繰り返し吹き鳴らし、シゲ達にその位置を知らせる。
 

 シゲは、この音を聞き、呟く「了解だ、シラカバ良く気づいたな」 「だが、ちょと厄介だな」「足の裏かよ」
 
 シゲのこの言葉通り、それは困難を極める物で、鬼魄が歩を進めるその瞬間に、滑る混む様に足の裏へと移動し、その動きを止めると同時に、鋭き刃を足の裏に突き刺し、再び動き出し、逃げ無ければならない、「乾のきらめきの早技を持ってすれば」「行けるか」

「イヤ 無理だ」

 シゲは、幾つかの策を頭の中で、考え抜き、練り上げ、一つの答えを導き出し、糸切りの里に伝わる手話用いて、シラカバに問い掛ける。

 シラカバは、少し困った顔見せ、シゲからの作戦を桃花に伝えると、桃花は、たすき掛けで背負う、えびらを外し、その中より最良の二本を選び、束ねる長い髪の毛を、赤い紐で、固く結び直し、そしてシラカバを見て、余裕のある顔を見せる。



 この時余裕ある顔を見せていた桃花だったが、シゲの作戦は困難極める物で、鬼魄の動きに合わせ、爆なる魔力で地面えぐり、同時に乾に金色の盾をまとわせ、きらめきの早技で、穴の下に潜り込み、足の裏に刃突き刺す計画で有った。
 つまり桃花は、二本の矢を寸分違わぬ様に、同時に放つ必要が有る事を、意味していた。

 一本の矢じりの先端に爆なる魔力を写し込み、更にもう一本の矢に金色なる魔力を吹き込む、そしてこの二本の矢を持ち、息をゆくっと吐き出し、左手で、弓を構え、二本の矢を同時に弦に掛ける。


 桃花は今まで、複数本の矢を一度も放った事など無いのだが、自信に満ちた顔付きと、全く迷いを感じさせ無い、その立ち姿は、皆んなに安堵を与える。

 「もう少し、北に移動出来る」「乾君は、私に合わせ」「動き」「そして仕留めて欲しい」桃花はそう言うと弦を弾き、その時を待ち、 シラカバそれをシゲに伝える。
 
 シゲはこの合図を受け、鬼魄を挑発し始めると、鬼魄は、大きな槍を持ち、ブンブンと振り回し、シゲに襲い掛かり、シゲはこの唸りを上げる一振り、一振りを後転し交わしながら、鬼魄を北へと誘う、そして春の爽やかな風が、桃花の頬をなでた、その時、桃花は動き出す。

 桃花が渾身の力で、放った二本の矢はシュタァーと唸り、金色の光を放ち、勢いよく飛び出したのだが、有ろう事か、爆なる魔力を秘める矢が、三、四メートル先行し乾に向け飛んで行く、当然の事ながら、爆なる魔力を食らえば、唯では済まないのだが、突然山よりやや強い風が吹き下ろし、矢の進路を変える。
 
 その爆なる魔力を秘める矢は、鬼魄の足の動きを、まるで最初はなより知っていたかの様に、ピシャリとその位置に突き刺さり、程よく地面をえぐり取る。
 これとほぼ同時に、もう一本の矢より金色なる魔力が、乾の目の前で吹き出し、乾を包み込むみ、役目を終えたその矢は、燃えて無くなる。

 桃花は全て計算していた、上下に並ぶ矢を放つ際に、弦の微妙なる張力の差が、二本の矢の速さを変え、時より地上を這う様な強い風を利用し、この作戦を成功させる。

「ひゃーすげーな」
「桃花ちゃん、もしかして、風が見えるの?」

「私に読めない、風は無い」

 乾は、金色なる魔力を身に纏い、きらめきの早技で、えぐり取られた穴に滑り込み、鬼魄の足の裏に清流の剣を、グサリと突き刺す。
 「お前の弱なる一点のその曇り、貰った」
 この時彼等の歯車が、確実に、そしてガッチリと噛み合い、目的に向け着実に進み出す。


 しかし、禁断の魔法陣のその中央で、ススリに似た青き鬼が、圧倒的魔力をバチバチと放ちながら、シゲ達を睨みつけ、「愚かな人間共よ、滅びろ」どすの利いた声で、そう言い放ち、禁断の魔力陣より、一歩足を踏み出す。

「俺っちの推測が、正しいければ」
「彼奴、ススリさんの魂を吹き込まれし、ウルシだ」
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