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十三話 精錬されし光りの輪

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ウルシにより、禁断の魔法陣から、呼び出された吸鬼達は、小柄ながらも、圧倒的な身体能力で、鳥鬼撲滅に向け徐々に、徐々に、その圧を強めていた。

 この凄まじき戦いの中、亜豆も又、種族存続を掛け、吸鬼の首領と空中を飛翔しては、反転し、相手の隙を伺い、呪文を唱え、解き放つ、吸鬼はこれを、翼を巧みに使い、スルリと交わし、まるで壁蹴り付けるかの様に、両足を空中でピーンと伸ばし、一気に亜豆に詰め寄り、口より火を噴く、この火の火力は凄まじく、骨の髄まで、焼きつくす。
 亜豆は、大きく回転し、これを交わす。

 この両者、ここまで幾度と無く、ほぼ同じ事を繰り返していた。
 これは戦さ場では、良く有る事で、一見攻撃を、行っている様に見えるが、守りを固める行動で、この両者は、起死回生の策を考えなから、その場凌ぎの攻撃を行っていた。
 この場合、先に講じた方が勝つ、これは、戦さ場での定石で有る。
「キャキャキャー」「見つけた、心の隙お前のな」「キャキャキャー」
 吸鬼が口より火を噴き掛けて来る際、焼かれまいと、一瞬だが翼をたたむ、これは、防衛本能で、空を飛ぶ者のサガだった。
この防衛本能で、必ず隙が生まれる。
「お前のその羽根、丸焦げにしてくれるは」


 「お前のその言葉、有り難く感謝する」「お陰で今俺の中の、何かが弾ける音が聞こえた、はっきりとな」 「悪いが次で決める」
 天才と呼ばれる、ササゲの遺伝子を引き継ぎ、ダイズの背中を、常に追いかけて来た亜豆は、たゆまぬ努力を重ね、自分でも知らず知らずの内に、武術の達人となっていた。
 今亜豆は、魔力のみに、頼る事を捨て、手に持つ杖を、まるで日本刀の様に持ち替え、吸鬼に襲い掛かると、吸鬼の首領は口を大きく開けた、次の瞬間、交わさず、攻撃に転じ、魔力を秘める杖で、吸鬼の胴を、叩き付る。

「攻撃こそ、最大の防御なり」亜豆のこの一撃で、吸鬼を地面に叩きつけ、怒りに満ちたその杖を、大きく振りかぶり、渾身の一太刀を浴びせ、荒ぶる心を静め、封印の呪文を唱え、杖を地面に突き刺す。

 すると、精錬されし光りの輪が、辺り一面を包みこみ、「」このむくろは、見る見るうちに、黒き灰となり、禁断の魔法陣を目指して飛んでいく、この地に居る全ての吸鬼も、まるで後を追うかの様に、黒き灰となり、禁断の魔法陣を目指し、飛んで行く、これは魂を吹き込まれる事無く、召喚されし者の運命さだめで、再び彼等は、禁断の魔法陣の中で、暗黒の住民として、暮らして行く事と成る。

 この魔力は、広き大地に於いて、今は亜豆のみが、使用する事の出来る、封印の大技で有った。

 この事により、全ての戦いが終わりを告げ、研ぎ澄まされた、緊張より解放され、飛翔していた、鳥鬼は、旋回しなから、「ウォー」と雄叫びを上げ、ススリは僅かに笑み、桃花は目に涙を浮かべ、乾達と抱き合い、鳥居の所に駆け寄り、桃花は「ありがとう」と、鳥居に感謝の言葉をかける。

 まだ完全に、傷が癒えない、鳥居も一緒に戦っていた事を、後方で、戦っていた、桃花には解って居た。
 
 ここには多くの戦争孤児が居るが、彼等は力を持たぬ故、岩陰に隠れ、ただひたすらに怯えていた。
 この怯えた眼差しが、桃花の心をチクリ、チクリと刺していたが、そんな者達を励まし、時には身を呈し飛び交う矢の盾となり、これを打ち落としていた。
鳥居のこの行動が、耐え凌ぐ者達に勇気を与え、前線で戦う者達に安堵を覚えさせていた。

 鳥居と桃花は、抱き合い、生きている事を感謝し、涙する。
 この、桃花のありがとう、と言う感謝の言葉が、耐え凌ぐ者達にも、戦いの終わりを告げたのである。


 そして、あれ程に、けたたまし音と、帯びただしい数の稲光、それがまるで嘘の様に、静まり返り、荒れ果てた大地に、残酷な光景だけを残し、日が沈もうとしていた。

 亜豆は、天を見上げ、大きく一呼吸し、「ススリ悪いが、倒れし者の治療を」「日が傾くその前に」「頼む」 ススリは大きくうなずき、寝ぐらを奥えと進み、鳥居の肩を優しくたたき、「貴方の力が必要なの」「手伝ってくれないかしら」
 鳥居は、ありがとうと言う、言葉を貰い力が湧いて来たのか、笑顔見せ、とても明るい声で、はっきりと答える。
 「了解です」
鳥居は、ススリより習った、呪文を唱え、鳥鬼の傷口に手をかざすと、白き魔力が溢れ出し、「傷口が徐々にふさがっていく」そう鳥居放つ魔力は、特殊な魔力で、ススリの様に邪悪なる魔力を吸い取る物ではなく、物理的な攻撃による、傷を完治させる物だった。

 この魔力により、尊い命を救う事となる。
 しかしながら、吸鬼との戦いで、多くの仲間を失った亜豆達は、彼等の葬いを、しめやかに行い、その葬いより、数日が過ぎ、亜豆は、首領と成るのだが、鳥鬼の歴史の中でも、最も重要で難しい、舵取りを任される事と成る。

 そして亜豆が首領となったこの日、桃花は意味有りげな顔を見せ、「ススリさん、お願いが有るのですが」彼女のこの言葉を切っ掛けに、桃花と乾、そしてススリは、ある目的の為、狩人の郷に向けて出発する事となり、飛猿と鳥居は、糸切りの里戻り、シゲにここまでの、経緯を報告の為に、一旦この地より離れてる事となる。
 
 「ならば、約束の地で会おう」



 
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