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十話  追われし者の決意

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追いかけし者の殺気は凄まじく、乾達に徐々に詰め寄る。
 乾以外の者達は、まだ一度も戦さ場の経験が無く、これに圧倒される恐れが有る為に、乾は大声を出し、皆の士気を上げる。
「おそらく陰の者だ」「俺と、飛猿で迎えうつ」「鳥居は、吹き矢を持ち、その時を待て」「桃花は、高き所え進め」
 「散れ」
 追いかけし者は、数枚の手裏剣に魔力を吹き込み、飛猿に向け投げ、その足を止める事無く、乾に襲い掛かりる。
 乾は武術には、自信を持っていて、襲い掛かる一撃をスルリと交わし、反撃に転じる、左脇腹を狙い蹴りを入れるがしかし、弾き飛ばされる。

 大人と子供、直ぐに埋める事が、出来ぬ、圧倒的な体格の差、これに加え飛猿は、魔力を吹き込まれる手裏剣に追れ、徐々に乾の元から遠ざかる。
 全ては、追いかけし者の計算された、魔力の私注で、この私注に一番最初の犠牲となったのは、飛猿だった。
 飛猿は、飛びかう手裏剣の一つ、一つを交わし、これをクナイで落としながら、鳥居のはるか後方まで、逃げていたが、「グァーー」魔力を吹き込まれた手裏剣は、飛猿の腹部を確実に捉えていた。
 乾はこの声に、怯んでいる暇など無い、何故ならば、呪文を唱えられ、奥義の一つでも出され用物なら、一瞬で終わって仕舞う、その可能性が有る以上、前に出て戦うしか無い、一進一退の攻防が、続く中乾の周り蹴りが、頭部を捕えるが、追いかけし者は、口より流れる血を拭い、不快に満ち溢れた口調で、「流石だ、シゲが戦さ場に、連れて行くだけの事は有るな」「だか、次で終わりだ」

 両手の人差し指と中指を天に向ける様に重ね合わせ、他の指を絡ませたその瞬間、鳥居の吹き矢が、その指をかすめ、そこに唸りを上げ、桃花の渾身の一と張り飛んで来る。
 この一と張りを、思わず仰け反り交わし、鳥居を睨みつけ、飛び掛かる。

 それは、一瞬の出来事で、鳥居は抵抗する余地すら無く、吹き飛ばされ、その体は地面に叩きつけられ、二度、三度と転げまわり、気を失って仕舞う、追いかけし者は、ニヤリとわらい、大声でを出し「これで邪魔が、一つ減った」更に大声出し「次は、お前だーー」この声に反応し、不機嫌そうな声を出す者が、現れる。

 「おいおい、うるさいな」「ゆっくり昼寝も出来やしない」

 ここに居る全ての者が、声の出所の上空を見上げると、腕を組み静かに羽ばたく、亜豆達の姿が見えた。
 「クワ様じゃ無いか、陰の者が一体何用だ、まさか俺達、鳥鬼撲滅の噂が飛び交う中、良くノコノコと足を踏み入れたな」「ココは、俺たちの庭だぞ」「事と次第では、生かしては、返さない」
 この言葉を切っ掛けに上空を旋回していた鳥鬼達が、一斉に翼をたたみ、下降
をし始める。
 この状況に危機感じ取った、クワは煙幕を使用し、この場を去って行き、亜豆は、乾達助け、寝ぐらに招き入れると、「助かりました、ありがとう」「礼など要らない、それより何が有った」
 
 乾は、里中島で、行われた戦いの様子、ダイズや他鳥鬼の状態を、できる限り詳しく話し、その話を亜豆は、複雑な想いで、聞いていた。
 「当然顔など覚えて無い、遊んだ記憶などある訳も無い」「しかし名前は知ってる、その者の名はササゲ、我が父親、そして敵、たが亡くなったと聞き、喜びを哀しみが凌駕りょうがする」
彼も又、戦国時代と言う歴史の犠牲者なのやも知れない、思わず大きなため息が漏れる。

 「ふぅ」「こんな戯言たわごとを言ってる暇など無かったな、ご苦労だった乾君、礼を言う」亜豆は、乾に軽く頭を下げ、突然大声を出し、まくり立てるかの様に、「偵察班、コレより里中島に出向け、ダイズ様の危機やも知れない」
「俺からの命令は、ダイズ様の救出、この一点のみだ」「急げーーー」
 すると数羽の若い鳥鬼達が、我れ先とまるで競い合う様に、東西南北に各一つずつ設けられた、通路を駆け走り、大きな翼を広げ飛び出す。
 これを見届け亜豆は、「誰か客人の、怪我の治療を頼む」この言葉により二人の命は救われる事となる。
 鳥居は、動く事を許されない程の大怪我を負っていたが、鳥鬼達の手厚い看護のおかげにより、意識を取り戻し、飛猿は、魔力に長けた鳥鬼により、手裏剣に吹き込まれた邪悪なる魔力を吸い取りってもらうと見る見るその傷は癒え回復する。

 亜豆は、安堵の表情を見せる乾に、思いも寄らない事を口にする。「ススリさんに頼み、心に秘めた魔力を、解放しないか」亜豆はそう言と、ススリの生い立ち、キントキの占い、種族の危機など、ここまでの経緯を事細かく話し「しかし、無維持はしない」この言葉には、深い意味がある。

 鬼や鳥鬼は、生まれて、直ぐに魔力を使いこなす事が出来るが、人間は血の滲むような訓練が必要で、これを行なわず無理に、魔力の扉をこじ開けると死に至る事も有る、しかし陰の者に追われる可能性が有る彼等には、魔力は必要不可欠で、「ススリさんを呼んで、私の魔力の扉を開けて欲しい」桃花の心には、迷いなど無く、そしてこの言葉より、新たな物語を、継ぐみ行く事となる。



 圧倒的な魔力を持つ、赤き目をしたススリが、ゆっくりと乾達に近寄ると、この者が、ユリカと知りつつも乾は、精神に圧を感じ、僅かに指先が震えて出し、その後ろにいた桃花は、弓をギリリと握り締め、矢に片手を添える。
 これを見た亜豆は、桃花を手で制止し、「案ずるな、我らの仲間だ」「疑う気持ちも解るが、彼女の瞳を良く見ろ」この時のススリの瞳は、どこまでも真っ直ぐで、優しく暖かみをも、感じ取られ、案ずる必要など無い、そう思えた。

 ススリは、桃花の額に手を添え呪文を唱えると、桃花は顔を歪め悲鳴を上げる。
「ヌァーーーー」

 



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