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七話  絶望を知らせる、悲痛の悲鳴

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昨夜里中島で行われた、余りにも凄ましい、戦の様子は、遠く離れた江戸の町からも、うかがい知る事が出来た。
 この異常にいち早く気付いたのが、徳川家の足軽を務める者で、この者より報告受けた家康は、シゲに里中島の偵察を命令する事となる。

 しかしこの時、シゲは糸切りの里を離れ、数人の忍びの卵達と、狩人のさとより招き入れた、若き弓の名手、岡田桃花とうかと言う者を連れ、江戸の山中で、弓道の練習と、忍びの者になる為の訓練を行っていた。

 そこで、家康の命令を、伺い知る事となり、「事は、急ぎなり、これより
里中島に上陸し、偵察を行う」ここでダイズと出会う事になるが、「一体何が有ったこの島で、愚かなる戦いの爪跡が、彼方此方あちらこちらに、刻まれてる」この賛辞を目の当たりにした、シゲは、忍びの卵達の危機を感じ、「お前達は、ここで待機してろ」「万が一この俺が朽ち果てたその時は、迷わずこの島を出ろ」「そしていぬいお前が全ての指揮を取り、何が何でもこの者達を、糸切りの里に連れて帰れ」

 そう言い残し、島の端より戦友のダイズに向かい疾風の如く駆け走るがしかし、この時シゲは、ユリカによる、仕組まれた罠により、左手を負傷し、とてもダイズを助太刀出来る状態では無いが、しかし目の戦友の危機に、見て見ぬふりなど、出来なかった。

 左手には、未来人サクラのたみ
の物と思われる、貝殻のシュシュで束ねられ、魔力を秘める髪の毛を、掴んでいた。
 その左手は、今も尚封印紙ふういんしで、グルグル巻きに、していたので有る、何故ならば、この髪の毛より封印紙の隙間から、怪しき魔力が溢れ出るかの様な勢いであった。 シゲの左手は、この怪しき魔力に、チクチクと針で刺れる様な痛みを、常に感じていた。
 しかもその痛みは、この里中島に上陸したその時より、更に増していた。

 「おいおいシゲよ、どうした腐りかけたその腕」そう言うと、
 ササゲの鈍く光るその眼孔は、シゲに狙いを定め、上段よりシゲの頭を狙い振り抜くが、シゲは無手にも関わらず、憶する事無く、身体能力の高き忍びの者、この一振り、紙一重で交わしたと、同時にササゲの頭に上段蹴りを繰り出すが、ササゲもこの一撃を、左腕で受けるが、シゲの蹴りは非常に、重く思わず仰け反り、シゲとササゲにより、この様な一進一退の攻防が、繰り広げられる。
 ダイズは、武人と刀を交わせつば迫り合いで、この武人の圧と力に押され、背後に倒されかけるが、ダイズは、足の爪で、武人の胸ぐらを掴み後ろに投げ飛ばす。
 それは、まるで柔道の、ともえ投げの様に、武人は綺麗に中に舞い、頭より地上に叩きつけられ、口より泡を吹き倒れた。

 これを見たシゲは、大声を出し、「ダイズここは任せろ、最前線に直ぐに行け」
 この時最前線のキントキ達に目をやると、信じられない景色が目に飛び込んで来た。
 まだ禁断の魔方陣より、鬼魄は、呼び出されては、居なかったが、ウルシの魔力により次々と、仲間の鳥鬼が、地面に落とされ、もがき苦しんでいのである。
 そもそも魔人の鬼は、戦闘民族で知能は、人間に比べ、かなり劣るが、魔力や破壊力は、ずば抜けていたが、鳥鬼の頭脳を持ってすれば、連携次第で、勝てなくは無い相手だったが、しかし陰の者の首領、ウルシは、明晰めいせきな頭脳の持ち主で、圧倒的な魔力の持ち主だった。

 キントキ達は、の禁断の魔方陣直ぐ側にいた、ウルシ目指し飛翔し、鳥鬼達は、上空より魔法練り、魔力を秘める杖を空中に突き刺し、その魔力を解き放つするとイナズマが発生し、ウルシを捕らえたかの様に見えたが、ウルシの強力な魔力により、その全てを弾き返される。
 しかも、ただ弾き返すのでは無く、自分の魔力も一緒に解き放つ、これがウルシが最も得意とする、魔力の技で有り、鳥鬼に取って、これが非常にまずかった。

 魔力を解き放った後、僅かな時間だが、動けず隙が生まれる為、危険と隣り合わせの魔法で有り、この一瞬の隙に、増幅されたイナズマが、鳥鬼達に襲い掛かり、次々と墜落し、彼らは、もがき苦しんでいた。
 ダイズは、この時判断を迫られていた
「前方に敵は、ウルシと、四人の術師」
「防衛に徹する、あの四人術師は、おそらく雇われし者達」「鬼魄を、呼び起こす。その一点のみで、雇わている間違い無い」
「我等の部隊上空に五羽」「シゲ様が、連れて来たあの者達、おそらく使えない」
 コンパスで円を、描くかの様に、ウルシを中心に、一定の距離を保ちグルグル回りながら、考えをまとめていた。

「地上で自由に動けるのは、俺のみ」「キビシイ、ヤレるか」「俺、シゲ様、キントキいずれか一人でも離脱すれば間違いなく、全滅」「引くが、正解か」
 
 「やる、やるしか無い」
 それは、絶対に引き戻る事を、許されない領域に、足を踏み入れた瞬間だったが、、、
この直後、ダイズは、シゲの悲鳴を耳にする
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