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孤児と大罪を背負う英雄
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私とアルキアンは魚を売り財布の中身が厚く重くなったのを感じながらどこにも寄らずに今日泊まるための宿屋へと移動することとした。
宿屋は貴族が泊まる場所としてはボロく少し心配な場所ではあるが身分を隠しながら泊まる分にはいい隠れ場になるだろうという外見をしている。
まぁなんだ…隠れた名店と言えば良いのだろうかそんな雰囲気を感じる。
中へ入るとこういう宿屋というのは食事処と併設して営業されているのがこちらでの主流でありそこで酒も売られることからよく冒険者や町民が騒ぎながら食事をとっていることが多いのだが…ここではその食事処も見つからない。
そしてそのまま私とアルキアンはこの宿に泊まるために従業員に話しかけようとしたところで声をかける前にお辞儀を深々とし「こちらです」と淡々とした声で案内をされる。
この宿屋は外見は汚れておりボロくはあるが少し大きな一軒家ほどの大きさはあるため目に見えていた階段へ行くかと思ったのだが案内されたのは調理場の酒など調味料を保存するための氷室。
宿屋にこういったのがあるのは珍しいが…そんなことを思いながら従業員の後ろをついていくと地下へと続く階段がありその先には分厚い鉄の扉が鎮座していた。
霜がついており触るだけで凍傷しそうだが従業員はそれの取手を掴み易々と開く。
「本日はご利用ありがとうございます…この先『宿屋』であります。ごゆっくりお過ごしくださいませ」
鉄の扉の先は白で統一された内装で先にいる従業員も白のタキシードでこちらを待つように静止している。
アルキアンはそんな非常識な光景に何も言わずにその中に入っていくが私はというと驚きながら少し遅れながらアルキアンの後ろをついていくことしかできなかった。
少し速く歩いて何が起きているのか問い詰めようとアルキアンの顔を見るがまるでドッキリ大成功といった感じで私のことを面白がっている顔をしていた。
コレはどういうことだとその場でアルキアンに問い詰めたのだがアルキアンは少し笑いながらこの場のことを話してくれた。
この宿屋『宿屋』は世界を股にかける豪商が世界各地に展開する世界一見窄らしくそれでいて安全な場所をテーマとして作られた宿とのこと。
豪商は変わり者が多いとギルドでも聞いたことがあるがこんな要人しか入らない宿屋を世界に作ってしまうとは…やはりそういった変わったことができるからこそ豪商なのだろうと理解した。
因みにイードラ王国にもこの宿屋は展開されており他国から貴族や王族が来る際は必ずそこへと泊まるらしい。
それだと誰しも安全を確保するためにそこへと泊まりに来るため返って暗殺者が送られるのではと思うが何でもその豪商は暗殺者の総括もしているらしく従業員全員暗殺者であり奴隷とのこと。
その話を聞いて「え…案内してくれた人全員暗殺者なんだ」と思い少し従業員さんと喋るのが怖くなってしまった。
そんなこんなありつつ少し変わり過ぎた宿屋に泊まることとなった。
部屋は何故か予約では御者のレイノルドさんとアルキアンの二部屋しかとっていなかったのだが少しグレードは下がるが一般の人用の部屋も金を払えば泊まれるとのことだったので今日釣った魚の売り上げを使って個人で泊まることとした。
…少女休憩中…
早朝まだ日が上らない時間帯ではあるが目が覚める…いやまぁ止まっている場所が地下だから確認する手立てはないのだが実際のところはわからないがな。
そう思い虚空庫を開き貴族ですら買うのに少し躊躇う程の高価な時計の魔道具を手に持ち時間を見ると今は3時であると表示された。
確か今日は0時に就寝したはずだから3時間しか寝てない事になるのか…少し前までは4時に起きるのがいつものことだったが最近では3時に何時も目が覚めてしまうようになった。
「お腹…減ったなぁ。あぁまたか」
こんな速く起きてしまうのはやはりこれのせいだろう。
…兎に角お腹が減って仕方ないのだ。
睡眠欲よりも飢餓が目立ち食欲が勝る…私は虚空庫から固くなっているパンを取り出して口に詰め込む。
無我夢中で喰らうこと以外考えずに虚空庫から食べ物を取り出して喰らう。
次第に備蓄用のパンが無くなり普段では食べない魔物の生肉もこの時だけは何も考えずに食べる…売る用の毛皮も貪る。
理性は残っているが制御は殆ど出来ない。
それが理性が残っていると言って良いのかわからないが兎に角口に詰め込み欲望に忠実に飲み込む。
コレが私にとって苦痛で食べ物ではないものを食べてしまう自分に恐怖すら覚えるがそれが非常に美味しく感じソレを噛むたび飲み込むたび考える全てがぐちゃぐちゃに掻き回されるそんな感覚に苛まれる。
思い出したかのように虚空庫に手を入れ『飽食の胃袋』を掴み食べ物を取り出して食べる。
そうして時間は過ぎていき…ようやく解放される。
それは突然に終わりを告げる…突如食欲は失せ強烈な吐き気を催す。
前まではこんなこと無かったはずだが最近はもっぱらこんな感じで朝早く空腹を感じ起きては『暴食』のままに喰らい尽くす行為を繰り返す。
過去に戻れるなら戻りたいがもうそんなことしても…考えても意味がないことはわかっているので私は『飽食の胃袋』から食べ物を取り出しては虚空庫にいれて明日の飢餓に備えるしか出来ない。
改善策なんて無い…スキルの消去も考えて実際に消去をスキルオーブに変えてしまうことも実際にやってみたがオーブへ変えることすらできなかった。
もう私は手を尽くしたがこの問題を解消する手立ては何も無いと思い知ってしまった。
宿屋は貴族が泊まる場所としてはボロく少し心配な場所ではあるが身分を隠しながら泊まる分にはいい隠れ場になるだろうという外見をしている。
まぁなんだ…隠れた名店と言えば良いのだろうかそんな雰囲気を感じる。
中へ入るとこういう宿屋というのは食事処と併設して営業されているのがこちらでの主流でありそこで酒も売られることからよく冒険者や町民が騒ぎながら食事をとっていることが多いのだが…ここではその食事処も見つからない。
そしてそのまま私とアルキアンはこの宿に泊まるために従業員に話しかけようとしたところで声をかける前にお辞儀を深々とし「こちらです」と淡々とした声で案内をされる。
この宿屋は外見は汚れておりボロくはあるが少し大きな一軒家ほどの大きさはあるため目に見えていた階段へ行くかと思ったのだが案内されたのは調理場の酒など調味料を保存するための氷室。
宿屋にこういったのがあるのは珍しいが…そんなことを思いながら従業員の後ろをついていくと地下へと続く階段がありその先には分厚い鉄の扉が鎮座していた。
霜がついており触るだけで凍傷しそうだが従業員はそれの取手を掴み易々と開く。
「本日はご利用ありがとうございます…この先『宿屋』であります。ごゆっくりお過ごしくださいませ」
鉄の扉の先は白で統一された内装で先にいる従業員も白のタキシードでこちらを待つように静止している。
アルキアンはそんな非常識な光景に何も言わずにその中に入っていくが私はというと驚きながら少し遅れながらアルキアンの後ろをついていくことしかできなかった。
少し速く歩いて何が起きているのか問い詰めようとアルキアンの顔を見るがまるでドッキリ大成功といった感じで私のことを面白がっている顔をしていた。
コレはどういうことだとその場でアルキアンに問い詰めたのだがアルキアンは少し笑いながらこの場のことを話してくれた。
この宿屋『宿屋』は世界を股にかける豪商が世界各地に展開する世界一見窄らしくそれでいて安全な場所をテーマとして作られた宿とのこと。
豪商は変わり者が多いとギルドでも聞いたことがあるがこんな要人しか入らない宿屋を世界に作ってしまうとは…やはりそういった変わったことができるからこそ豪商なのだろうと理解した。
因みにイードラ王国にもこの宿屋は展開されており他国から貴族や王族が来る際は必ずそこへと泊まるらしい。
それだと誰しも安全を確保するためにそこへと泊まりに来るため返って暗殺者が送られるのではと思うが何でもその豪商は暗殺者の総括もしているらしく従業員全員暗殺者であり奴隷とのこと。
その話を聞いて「え…案内してくれた人全員暗殺者なんだ」と思い少し従業員さんと喋るのが怖くなってしまった。
そんなこんなありつつ少し変わり過ぎた宿屋に泊まることとなった。
部屋は何故か予約では御者のレイノルドさんとアルキアンの二部屋しかとっていなかったのだが少しグレードは下がるが一般の人用の部屋も金を払えば泊まれるとのことだったので今日釣った魚の売り上げを使って個人で泊まることとした。
…少女休憩中…
早朝まだ日が上らない時間帯ではあるが目が覚める…いやまぁ止まっている場所が地下だから確認する手立てはないのだが実際のところはわからないがな。
そう思い虚空庫を開き貴族ですら買うのに少し躊躇う程の高価な時計の魔道具を手に持ち時間を見ると今は3時であると表示された。
確か今日は0時に就寝したはずだから3時間しか寝てない事になるのか…少し前までは4時に起きるのがいつものことだったが最近では3時に何時も目が覚めてしまうようになった。
「お腹…減ったなぁ。あぁまたか」
こんな速く起きてしまうのはやはりこれのせいだろう。
…兎に角お腹が減って仕方ないのだ。
睡眠欲よりも飢餓が目立ち食欲が勝る…私は虚空庫から固くなっているパンを取り出して口に詰め込む。
無我夢中で喰らうこと以外考えずに虚空庫から食べ物を取り出して喰らう。
次第に備蓄用のパンが無くなり普段では食べない魔物の生肉もこの時だけは何も考えずに食べる…売る用の毛皮も貪る。
理性は残っているが制御は殆ど出来ない。
それが理性が残っていると言って良いのかわからないが兎に角口に詰め込み欲望に忠実に飲み込む。
コレが私にとって苦痛で食べ物ではないものを食べてしまう自分に恐怖すら覚えるがそれが非常に美味しく感じソレを噛むたび飲み込むたび考える全てがぐちゃぐちゃに掻き回されるそんな感覚に苛まれる。
思い出したかのように虚空庫に手を入れ『飽食の胃袋』を掴み食べ物を取り出して食べる。
そうして時間は過ぎていき…ようやく解放される。
それは突然に終わりを告げる…突如食欲は失せ強烈な吐き気を催す。
前まではこんなこと無かったはずだが最近はもっぱらこんな感じで朝早く空腹を感じ起きては『暴食』のままに喰らい尽くす行為を繰り返す。
過去に戻れるなら戻りたいがもうそんなことしても…考えても意味がないことはわかっているので私は『飽食の胃袋』から食べ物を取り出しては虚空庫にいれて明日の飢餓に備えるしか出来ない。
改善策なんて無い…スキルの消去も考えて実際に消去をスキルオーブに変えてしまうことも実際にやってみたがオーブへ変えることすらできなかった。
もう私は手を尽くしたがこの問題を解消する手立ては何も無いと思い知ってしまった。
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