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孤児と大罪を背負う英雄
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平然と走る馬は何かを勘付いたのか御者の指示なく静かにその場に止まり道端の草むらが動いて人影が出てくる。
出てきたその姿は少々ボロボロな騎士の鎧一式を身につけ何処かの家紋を刻印された剣を手にコチラへとジリジリ歩を進めてくる。
顔は見えないがその挙動は何かに怯えたかのようにぶるぶると震えており手に持っている剣は振動しているかのようだ。
「ふーん…他の貴族の客か。差し詰め尻尾切りと言ったところだろう」
そんなことをアルキアンが発して頬杖を付き尻尾切りの方を見る。
どうせここで殺してもコイツらは雇い主である貴族の主人にはもういないものとしか考えられていないのだろう。
生き帰ってもいるべき職場はなくもしもアルキアンを殺せても勝手にやったことだと処理される。
なんと哀れなのだろうか…殺せもしない相手と戦う無意味な存在それがアイツらなのだ。
「助けな…いや助けれないのか?」
私がアルキアンにそう問うと静かにアルキアンは首を振る。
どうせ助けても暗殺されるのがオチってわけか。
…それに私があの刻印されている剣を主人である貴族に突きつけてもどうせ盗まれたとかで色々とのらりくらりと本題を流されて何も無かったことにされるってわけか?
本当に哀れで笑えない。
「ここは私が相手をいたしましょう…アルキアン様とレナ嬢様はどうぞゆるりとその場でお待ちくださいませ」
そう御者であるレイノルドさんが言うと手に持つ棒を前へ突き出した。
その瞬間に手に持つ棒は輝きを放ち白い棒…指揮棒へと変化を遂げる。
レイノルドさんが指揮棒を一度振い馬を昂らせる。
不明で理解もできないそんな状況に目を白黒させながら私はアルキアンの方を向く。
レイノルドさんと私以上に関わりがあり主人であるアルキアンなら今レイノルドさんがやっていることを知っていると思ったからだ。
だがその当の本人はというと先ほどまで頬杖をつきながら窓を眺めていた時とは一転して馬車に固定された椅子の足を掴みその身をうつ伏せのようにしているではないか。
「なんか変だぞ?」とそんなことを思いながらも私も真似をしてアルキアンと同じ態勢をすることとした。
まぁうつ伏せの状態でもレイノルドさんのことは僅かに椅子の足の隙間から見えるようになっていることだし存分にここで見学させてもらうこととしよう。
…でどうしてアルキアンは顔を青くして目を閉じているんだ?
そんなことを思っているとレイノルドさんは指揮棒を突き出して言い放ちその瞬間に視界がグルンと回った。
「さぁ伴奏は済みましたね…準備はいいですか?では参ります…馬に繋がれし我が愛車『残虐機構』よ…その真価を今ここに全てを轢き主人へ近づく者を踏みならせスキル発動『チャリオット』ッ!」
馬に鎖が繋がれそれに呼応するようにして馬車に繋がれた2頭の馬は甲高い声を上げ馬はここからでも見えるように暴れそれぞれが違う方向へと暴走して走り出す。
馬車はその2頭の馬に引きずられ左右にそして時に上下に揺れては時々金属音と何かがつぶれた音を出しながら地を走る。
操作するレイノルドさんはと言うと恍惚とし口の端が吊り上がった顔をしながら馬車の先頭で指揮棒を握り振るう。
まるで自らが馬を操る『馬の操者』…否、演奏のように指揮する正にそれは『馬の奏者』と言える姿。
尻尾切りを馬が踏み潰し馬が通った道の合間に避けようとする者は馬と馬車を繋ぐ鎖により弾き飛ばされ飛ばされた場所にて馬か馬車に轢き殺される。
そんな恐怖映像が馬車の隙間から見えている。
乗り心地は最悪と断言できる。
そしてレイノルドさん…コイツは戦闘とかさせちゃダメなタイプだろう。
明らかに戦闘する前と今とでは顔の表情が違う。
正直なところドン引きだ。
そんな感じで内心レイノルドさんにドン引きしつつジェットコースターのような速度で駆け回る馬車の中で「早く終わってくれー」っと叫びながら戦闘が終わるのを待った。
そうして数分後ようやく尻尾切りが全滅したのか馬は先ほどのような鼻息を荒くにはせずにコチラへと戻ってきて鎖は縄へと変わった。
「ふぅ…アルキアン様それでは処理が終了したので行きますよ~」
レイノルドさんはコチラへ何処かスッキリとした顔をした後平然と鼻歌をしながら馬を走らせた。
本来なら貴族の前で鼻歌だなんて処罰が下ることだろう…だが何も言えない。
怒らせてもしも戦闘になったらとあの無慈悲な行動が頭の中をよぎるからだ。
口に出したくない…アルキアンの方を向くと今でも目が回っているのか頭を抱えている。
「あのさアル…レイノルドさんってもしかしてアレな人?」
そう私がレイノルドさんには聞こえないようにアルキアンの耳元で呟くとアルキアンは深々とうなづいた。
やはりレイノルドさんは戦闘に入ると人格が変わってしまう系の人らしい。
そんな思いと共に学園へと馬車は走る。
はてさてこの後何回戦闘が行われることやら。
レイノルドさんは馬車の外にいる身であり一番初めに敵を見つけれる。
その度にアルキアンの身を案じて戦闘を自分と馬で敵を文字通り蹴散らす。
それはもう積極的にだ…敵意があってもなくても普通の人間以外は轢き殺して無理やり通過する快進撃だ。
そうしてその戦闘の度に私とアルキアンは恐怖を覚えるのだった。
「戦闘狂…怖い」
出てきたその姿は少々ボロボロな騎士の鎧一式を身につけ何処かの家紋を刻印された剣を手にコチラへとジリジリ歩を進めてくる。
顔は見えないがその挙動は何かに怯えたかのようにぶるぶると震えており手に持っている剣は振動しているかのようだ。
「ふーん…他の貴族の客か。差し詰め尻尾切りと言ったところだろう」
そんなことをアルキアンが発して頬杖を付き尻尾切りの方を見る。
どうせここで殺してもコイツらは雇い主である貴族の主人にはもういないものとしか考えられていないのだろう。
生き帰ってもいるべき職場はなくもしもアルキアンを殺せても勝手にやったことだと処理される。
なんと哀れなのだろうか…殺せもしない相手と戦う無意味な存在それがアイツらなのだ。
「助けな…いや助けれないのか?」
私がアルキアンにそう問うと静かにアルキアンは首を振る。
どうせ助けても暗殺されるのがオチってわけか。
…それに私があの刻印されている剣を主人である貴族に突きつけてもどうせ盗まれたとかで色々とのらりくらりと本題を流されて何も無かったことにされるってわけか?
本当に哀れで笑えない。
「ここは私が相手をいたしましょう…アルキアン様とレナ嬢様はどうぞゆるりとその場でお待ちくださいませ」
そう御者であるレイノルドさんが言うと手に持つ棒を前へ突き出した。
その瞬間に手に持つ棒は輝きを放ち白い棒…指揮棒へと変化を遂げる。
レイノルドさんが指揮棒を一度振い馬を昂らせる。
不明で理解もできないそんな状況に目を白黒させながら私はアルキアンの方を向く。
レイノルドさんと私以上に関わりがあり主人であるアルキアンなら今レイノルドさんがやっていることを知っていると思ったからだ。
だがその当の本人はというと先ほどまで頬杖をつきながら窓を眺めていた時とは一転して馬車に固定された椅子の足を掴みその身をうつ伏せのようにしているではないか。
「なんか変だぞ?」とそんなことを思いながらも私も真似をしてアルキアンと同じ態勢をすることとした。
まぁうつ伏せの状態でもレイノルドさんのことは僅かに椅子の足の隙間から見えるようになっていることだし存分にここで見学させてもらうこととしよう。
…でどうしてアルキアンは顔を青くして目を閉じているんだ?
そんなことを思っているとレイノルドさんは指揮棒を突き出して言い放ちその瞬間に視界がグルンと回った。
「さぁ伴奏は済みましたね…準備はいいですか?では参ります…馬に繋がれし我が愛車『残虐機構』よ…その真価を今ここに全てを轢き主人へ近づく者を踏みならせスキル発動『チャリオット』ッ!」
馬に鎖が繋がれそれに呼応するようにして馬車に繋がれた2頭の馬は甲高い声を上げ馬はここからでも見えるように暴れそれぞれが違う方向へと暴走して走り出す。
馬車はその2頭の馬に引きずられ左右にそして時に上下に揺れては時々金属音と何かがつぶれた音を出しながら地を走る。
操作するレイノルドさんはと言うと恍惚とし口の端が吊り上がった顔をしながら馬車の先頭で指揮棒を握り振るう。
まるで自らが馬を操る『馬の操者』…否、演奏のように指揮する正にそれは『馬の奏者』と言える姿。
尻尾切りを馬が踏み潰し馬が通った道の合間に避けようとする者は馬と馬車を繋ぐ鎖により弾き飛ばされ飛ばされた場所にて馬か馬車に轢き殺される。
そんな恐怖映像が馬車の隙間から見えている。
乗り心地は最悪と断言できる。
そしてレイノルドさん…コイツは戦闘とかさせちゃダメなタイプだろう。
明らかに戦闘する前と今とでは顔の表情が違う。
正直なところドン引きだ。
そんな感じで内心レイノルドさんにドン引きしつつジェットコースターのような速度で駆け回る馬車の中で「早く終わってくれー」っと叫びながら戦闘が終わるのを待った。
そうして数分後ようやく尻尾切りが全滅したのか馬は先ほどのような鼻息を荒くにはせずにコチラへと戻ってきて鎖は縄へと変わった。
「ふぅ…アルキアン様それでは処理が終了したので行きますよ~」
レイノルドさんはコチラへ何処かスッキリとした顔をした後平然と鼻歌をしながら馬を走らせた。
本来なら貴族の前で鼻歌だなんて処罰が下ることだろう…だが何も言えない。
怒らせてもしも戦闘になったらとあの無慈悲な行動が頭の中をよぎるからだ。
口に出したくない…アルキアンの方を向くと今でも目が回っているのか頭を抱えている。
「あのさアル…レイノルドさんってもしかしてアレな人?」
そう私がレイノルドさんには聞こえないようにアルキアンの耳元で呟くとアルキアンは深々とうなづいた。
やはりレイノルドさんは戦闘に入ると人格が変わってしまう系の人らしい。
そんな思いと共に学園へと馬車は走る。
はてさてこの後何回戦闘が行われることやら。
レイノルドさんは馬車の外にいる身であり一番初めに敵を見つけれる。
その度にアルキアンの身を案じて戦闘を自分と馬で敵を文字通り蹴散らす。
それはもう積極的にだ…敵意があってもなくても普通の人間以外は轢き殺して無理やり通過する快進撃だ。
そうしてその戦闘の度に私とアルキアンは恐怖を覚えるのだった。
「戦闘狂…怖い」
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