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25 おカネの問題は異世界でも切り離せないですよね……あと時間も
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「だが、それはそれ、むしろ実現できない可能性が高いからな。
高かろうが何だろうが、資金を調達して土地や諸々を購入する計画も進めるべきだろう」
堅砂一くんが周囲――食堂に集まったクラスの面々を見渡しての言葉に、皆はそれぞれ頷いた。
領主様に会っての解決策――確かに実現出来たらいいけどねぇ、正直厳しいよねとは私・八重垣紫苑も思う。
そちらも進めつつ、必要資金を集めて購入する計画も進行しなくてはならないのは厳しいかもだけど、やらねばならないのが現状の厳しさ。
「――網家、最低限の条件をクリアできそうな所はあったか?」
堅砂くんがクラス全体の経理を担当している網家真満さんに尋ねると、彼女は渋い表情で答えた。
「正直、それもかなり厳しい感じ。
一番可能性がある街外れの洋館でさえ、ふっかけられているのは金貨――」
上げられた数字に皆息を呑んだ。正直相当に厳しい数字だから当然である。
「ちなみに適正値段でもその半分は必要」
「俺達は各自で金貨貰ってたから――30人全員がいたら、どうにか買えはしたのか?」
「装備や生活品の購入に結構使ったから、全員いても厳しかっただろうね。
それに、ただ単純に建物と土地を手に入れればいいってもんじゃない。
維持費は勿論、食料や家具、生活費、もろもろ必要になる」
なんとなく指折り数えながらの守尋くんの言葉に、クラス委員長の河久くんが続く。
現在私達が持っている金貨を掻き集めても目標の半分以下。
最低でもこの倍、いや河久くんの言葉もごもっともなのでそれを考慮するとより多くお金を稼がねばならないだろう。
世知辛いなあ……異世界に来てもおカネからは逃れられないんだね。
というか、私もそうだったように、それぞれでお金を使うべき事の模索が始まってもいるだろうし、
可能なら私達がそれぞれに所持する金貨も手を付けない方がいいとは思うんだけど――厳し過ぎだねぇ。
ちなみに、私達が持っている全てでも相当に十二分に高額だ。
なんせ金貨1枚でも人ひとりが暫く楽に生活出来るレベルらしいので――ああ、考えるとすごく頭がクラクラしてくる。
「というか、ここの土地高くない?」
守尋くんの幼馴染である伊馬さんが呟く。
若干の憤りが込められていたためか、語気が強く感じられた。
その疑問に誰も答える人がいなかったので、一応事情を聴いていた私が声を上げる。
「え、うえうえうえ、えと」
「落ち着け八重垣、誰も君を取って食わないから」
「う、うん」
「なんか堅砂が猛獣使いみたいになってないか?」
「でも、紫苑は猛獣ってビジュアルじゃないよね」
「そこは同意だな」
「……ふぅぅぅん?」
河久くんの突っ込みから網家さんの突っ込みが入り、守尋くんの頷きに、伊馬さんの何とも言えない声音が上がる。
そ、それについて触れるべきかどうなのか……いや、うん、下手に触れるのはやめときます。
私ってば陰キャなので☆――はぁ(諦観の溜息)。
「は、話、元に戻すね?
ら、ららら、ラル――ラルエル様が言ってたけど、私達が召喚された神殿は由緒正しくて、ここはその最寄りの街だから、土地の価格自然に高くなっちゃったんだって。
わ、私達の世界でも色々な行事とかお参りとかで神社に行ったりするじゃない?
同じようにレートヴァ教の信者の人達も神殿に赴くから、そうする前の拠点というか――」
「遠地から来た信者が泊まったりする宿とかそういう連中向けの商売もあるんだろうからな。
利用できる事がたくさんある以上、土地はあればあるだけいい。
それこそ余所者に安くで売る理由はないんだろう」
説明に戸惑う私を見かねてか、堅砂くんが補足してくれたので私は内心で感謝する。
堅砂くんにはここの所、借りが積み上がり過ぎていて、いつかお返しできるだろうかと心配な今日この頃です。
……靴舐めようか提案したらドン引きされたからなぁ――なにがいいのやら。
「まして俺達は土地を買っても商売をするわけじゃないからな。
買うのなら、他の土地が欲しい連中よりも旨味が欲しい――値段の吊り上げも一部は理屈は通ってる。
ちなみに支払いは一括のみなんだろう、網家?」
「うん、分割払いは私達への信頼がないから無理だって」
「だろうな。つくづく面倒な事だ」
レートヴァ教の人達に保証してもらえれば話は早いんだろうけどね。
レートヴァ教は保護期間が終わった後の私達については完全にノータッチになるらしく、そういう保証も難しいらしい。
それゆえに、なのか、保護期間終了後についての助言もあまり出来ないとの事だ。
「今いる寮の買取自体出来たら一番話が早いが、そうもいかないからな」
ここはレートヴァ教の人達が準備してくれた異世界人全体の為の場所だ。
私達の次の人達の召喚がいつになるのかもわからない以上、今回の事がなくても私達がいつまでもここにいるわけにはいかないし、ましてや私達が使う為だけに買い取るわけにもいかない。
「他の町の土地を買うってのはどうだ?」
「それも一つの手ではあるんだが――時間が短過ぎる」
守尋くんの提案に対し堅砂くんを頭を振った。
「まだこの世界そのものや今いる街の事さえ把握できないのに他の町には行けないだろう。
せめて保護期間が万全のままなら、それについて時間を掛けて調査する事も出来たんだが――」
保護期間が大幅に短縮された事で、私達はお金を稼ぐ時間、住処を探す時間、そもそもこういった事を考慮する時間そのものが失われてしまっているのが現状だ。
ぐぐぐ、言いたくはないけど寺虎くんがやってくれちゃった影響は大きいなあ。
「難しいよな。
んで、とにもかくにもまずは金を稼がないといけない」
「で、でも、それも結構厳しいと思う。
この間皆で魔物退治にいった時で結構倒して金貨一枚分だったんでしょう?
私と堅砂くんで今日挑戦してみたけど、銀貨での支払いになったし――」
私と堅砂くんで今日倒したのはゴブリン11人、スライム7体、オークが2人。
受付の人によると初めてなら十二分の成果だという。
今回私達の保護者だけでなく公式な監査役も務めていた師匠もそう言って褒めてくれたので嬉しかったり。
しかしそれはそれ、これはこれ。目標の金額を考えると、相当に遠い。遠すぎる。
「仮に同じペースで最大限に稼いでも金貨二十枚強が限界、実際はそれ以下か」
「というか素朴な疑問なんだけど、冒険者さん達が結構日々退治してるのに、魔物っていなくならないものなの?」
「あ、一部の土地の魔物がが少なくなったら、それを感知して他の生息地域からどんどん流れてくるらしいよ?
あと、高位の魔族が住みかごと直接召喚して放置するケースもあるってラル――ラルエル様が言ってたし」
「うっげ、何それ」
「じゃあ、この間潰したゴブリンの巣もまた復活してるかもしれないのか――クソ」
守尋くん達もおそらくゴブリンが殺した人々の死体や肉片を見ていたのだろう。
だからこそ、それがまた蘇っている事に憤る守尋くんの気持ちは痛いほどよく分かった。
「――そ、それは、退治しないとだね、うん。何度でも何度でも」
微力だとしても、人々を脅かす存在を少しずつでも減らしたい。
それこそ私がしたい事に他ならない――だから私は守尋くんへの励ましも含めて、小さく呟いた。
「八重垣さん――ああ、そうだよな。何度でもやってやろうぜ。なぁ、皆」
守尋くんの言葉に、伊馬さんをはじめ、この間一緒に冒険したであろう人達は力強く頷く。
――ただ、それはそれとして。
「それは大変結構な事だが、俺達の問題も忘れるなよ」
「――そ、そうなんだよね……」
堅砂くんの冷静なツッコミに、私達は揃って溜息を吐いた。
自分さえ救えないものが他人を救えるものか、という言葉は物語でよく見かける。
実際の所、救える場合もありはすると思うけど、その後もし救った人が倒れたら救われた人はいたたまれなくなるわけで。
そう考えると、自分の事もしっかり生きなくてはならない、というのは実に正しいと思う。
――と、そこでふと浮かぶことがあった。
「あ、ああああ、あの。いいかな。ちょっとズレてる考えかもしれないんだけど」
「安心しろ。見当違いの方向性なら容赦なく突っ込んでやる」
実に頼れるお言葉である。
堅砂くんなら言葉どおりそうしてくれるだろう、という安心感を得て、私は言った。
「ま、街の外に家を作るっていうのは、ありなのかな?」
高かろうが何だろうが、資金を調達して土地や諸々を購入する計画も進めるべきだろう」
堅砂一くんが周囲――食堂に集まったクラスの面々を見渡しての言葉に、皆はそれぞれ頷いた。
領主様に会っての解決策――確かに実現出来たらいいけどねぇ、正直厳しいよねとは私・八重垣紫苑も思う。
そちらも進めつつ、必要資金を集めて購入する計画も進行しなくてはならないのは厳しいかもだけど、やらねばならないのが現状の厳しさ。
「――網家、最低限の条件をクリアできそうな所はあったか?」
堅砂くんがクラス全体の経理を担当している網家真満さんに尋ねると、彼女は渋い表情で答えた。
「正直、それもかなり厳しい感じ。
一番可能性がある街外れの洋館でさえ、ふっかけられているのは金貨――」
上げられた数字に皆息を呑んだ。正直相当に厳しい数字だから当然である。
「ちなみに適正値段でもその半分は必要」
「俺達は各自で金貨貰ってたから――30人全員がいたら、どうにか買えはしたのか?」
「装備や生活品の購入に結構使ったから、全員いても厳しかっただろうね。
それに、ただ単純に建物と土地を手に入れればいいってもんじゃない。
維持費は勿論、食料や家具、生活費、もろもろ必要になる」
なんとなく指折り数えながらの守尋くんの言葉に、クラス委員長の河久くんが続く。
現在私達が持っている金貨を掻き集めても目標の半分以下。
最低でもこの倍、いや河久くんの言葉もごもっともなのでそれを考慮するとより多くお金を稼がねばならないだろう。
世知辛いなあ……異世界に来てもおカネからは逃れられないんだね。
というか、私もそうだったように、それぞれでお金を使うべき事の模索が始まってもいるだろうし、
可能なら私達がそれぞれに所持する金貨も手を付けない方がいいとは思うんだけど――厳し過ぎだねぇ。
ちなみに、私達が持っている全てでも相当に十二分に高額だ。
なんせ金貨1枚でも人ひとりが暫く楽に生活出来るレベルらしいので――ああ、考えるとすごく頭がクラクラしてくる。
「というか、ここの土地高くない?」
守尋くんの幼馴染である伊馬さんが呟く。
若干の憤りが込められていたためか、語気が強く感じられた。
その疑問に誰も答える人がいなかったので、一応事情を聴いていた私が声を上げる。
「え、うえうえうえ、えと」
「落ち着け八重垣、誰も君を取って食わないから」
「う、うん」
「なんか堅砂が猛獣使いみたいになってないか?」
「でも、紫苑は猛獣ってビジュアルじゃないよね」
「そこは同意だな」
「……ふぅぅぅん?」
河久くんの突っ込みから網家さんの突っ込みが入り、守尋くんの頷きに、伊馬さんの何とも言えない声音が上がる。
そ、それについて触れるべきかどうなのか……いや、うん、下手に触れるのはやめときます。
私ってば陰キャなので☆――はぁ(諦観の溜息)。
「は、話、元に戻すね?
ら、ららら、ラル――ラルエル様が言ってたけど、私達が召喚された神殿は由緒正しくて、ここはその最寄りの街だから、土地の価格自然に高くなっちゃったんだって。
わ、私達の世界でも色々な行事とかお参りとかで神社に行ったりするじゃない?
同じようにレートヴァ教の信者の人達も神殿に赴くから、そうする前の拠点というか――」
「遠地から来た信者が泊まったりする宿とかそういう連中向けの商売もあるんだろうからな。
利用できる事がたくさんある以上、土地はあればあるだけいい。
それこそ余所者に安くで売る理由はないんだろう」
説明に戸惑う私を見かねてか、堅砂くんが補足してくれたので私は内心で感謝する。
堅砂くんにはここの所、借りが積み上がり過ぎていて、いつかお返しできるだろうかと心配な今日この頃です。
……靴舐めようか提案したらドン引きされたからなぁ――なにがいいのやら。
「まして俺達は土地を買っても商売をするわけじゃないからな。
買うのなら、他の土地が欲しい連中よりも旨味が欲しい――値段の吊り上げも一部は理屈は通ってる。
ちなみに支払いは一括のみなんだろう、網家?」
「うん、分割払いは私達への信頼がないから無理だって」
「だろうな。つくづく面倒な事だ」
レートヴァ教の人達に保証してもらえれば話は早いんだろうけどね。
レートヴァ教は保護期間が終わった後の私達については完全にノータッチになるらしく、そういう保証も難しいらしい。
それゆえに、なのか、保護期間終了後についての助言もあまり出来ないとの事だ。
「今いる寮の買取自体出来たら一番話が早いが、そうもいかないからな」
ここはレートヴァ教の人達が準備してくれた異世界人全体の為の場所だ。
私達の次の人達の召喚がいつになるのかもわからない以上、今回の事がなくても私達がいつまでもここにいるわけにはいかないし、ましてや私達が使う為だけに買い取るわけにもいかない。
「他の町の土地を買うってのはどうだ?」
「それも一つの手ではあるんだが――時間が短過ぎる」
守尋くんの提案に対し堅砂くんを頭を振った。
「まだこの世界そのものや今いる街の事さえ把握できないのに他の町には行けないだろう。
せめて保護期間が万全のままなら、それについて時間を掛けて調査する事も出来たんだが――」
保護期間が大幅に短縮された事で、私達はお金を稼ぐ時間、住処を探す時間、そもそもこういった事を考慮する時間そのものが失われてしまっているのが現状だ。
ぐぐぐ、言いたくはないけど寺虎くんがやってくれちゃった影響は大きいなあ。
「難しいよな。
んで、とにもかくにもまずは金を稼がないといけない」
「で、でも、それも結構厳しいと思う。
この間皆で魔物退治にいった時で結構倒して金貨一枚分だったんでしょう?
私と堅砂くんで今日挑戦してみたけど、銀貨での支払いになったし――」
私と堅砂くんで今日倒したのはゴブリン11人、スライム7体、オークが2人。
受付の人によると初めてなら十二分の成果だという。
今回私達の保護者だけでなく公式な監査役も務めていた師匠もそう言って褒めてくれたので嬉しかったり。
しかしそれはそれ、これはこれ。目標の金額を考えると、相当に遠い。遠すぎる。
「仮に同じペースで最大限に稼いでも金貨二十枚強が限界、実際はそれ以下か」
「というか素朴な疑問なんだけど、冒険者さん達が結構日々退治してるのに、魔物っていなくならないものなの?」
「あ、一部の土地の魔物がが少なくなったら、それを感知して他の生息地域からどんどん流れてくるらしいよ?
あと、高位の魔族が住みかごと直接召喚して放置するケースもあるってラル――ラルエル様が言ってたし」
「うっげ、何それ」
「じゃあ、この間潰したゴブリンの巣もまた復活してるかもしれないのか――クソ」
守尋くん達もおそらくゴブリンが殺した人々の死体や肉片を見ていたのだろう。
だからこそ、それがまた蘇っている事に憤る守尋くんの気持ちは痛いほどよく分かった。
「――そ、それは、退治しないとだね、うん。何度でも何度でも」
微力だとしても、人々を脅かす存在を少しずつでも減らしたい。
それこそ私がしたい事に他ならない――だから私は守尋くんへの励ましも含めて、小さく呟いた。
「八重垣さん――ああ、そうだよな。何度でもやってやろうぜ。なぁ、皆」
守尋くんの言葉に、伊馬さんをはじめ、この間一緒に冒険したであろう人達は力強く頷く。
――ただ、それはそれとして。
「それは大変結構な事だが、俺達の問題も忘れるなよ」
「――そ、そうなんだよね……」
堅砂くんの冷静なツッコミに、私達は揃って溜息を吐いた。
自分さえ救えないものが他人を救えるものか、という言葉は物語でよく見かける。
実際の所、救える場合もありはすると思うけど、その後もし救った人が倒れたら救われた人はいたたまれなくなるわけで。
そう考えると、自分の事もしっかり生きなくてはならない、というのは実に正しいと思う。
――と、そこでふと浮かぶことがあった。
「あ、ああああ、あの。いいかな。ちょっとズレてる考えかもしれないんだけど」
「安心しろ。見当違いの方向性なら容赦なく突っ込んでやる」
実に頼れるお言葉である。
堅砂くんなら言葉どおりそうしてくれるだろう、という安心感を得て、私は言った。
「ま、街の外に家を作るっていうのは、ありなのかな?」
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