賢者の転生実験

東国不動

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第一章 書籍第一巻部分

④ダイジェスト ~覚醒と別離~ 第一巻部分

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嫌な夢を見た気がした。目を覚ますと、昨日と変わらずテントに勢い良く雨粒が弾ける音が響いている。
「朝か……」
どんな夢かはよく思い出せない。しかし、何か大事なことに間に合わないような夢を見た気がした。
前の世界の記憶に関する夢のような気もすれば、この世界で得た経験のような気もする。しかし、夢を見たことすら忘れてしまうことだって多いのだ。その内容を鮮明に思い出せるのは稀である。
虫の知らせを感じることは出来てもそれに対処することは出来ないということに似ているかもしれない。俺は、もどかしさと理由の分からない焦燥感にかられて、その日も一日テントの中で過ごした。
一日中豪雨。次の日、目覚めても雨だった。
もしこんなにもらされていないのなら、雨の日に遊具の中で好きな女の子と過ごすのも悪くないかもしれない。だが、今はそんな呑気のんきな気分にはなれなかった。

◆◆◆
森を出た次の日は雨、その次の日も雨、そして三日目。今日も朝は雨だった。
しかし、昼ごろには雨雲が切れて青空が見えはじめる。ようやく台風は逸れていったようだ。
テントを出れば、空に虹がかかっている。
「この世界の台風は歩みが遅いな。けど天馬の革靴は早いぜ」
「私は獣人なんだから、負けないよ」
天馬の革靴は早く走れるだけでなく、走る時の負担も極端に減らす。しかし四時間もぶっ続けで走ると、ルナが俺にペースをあわせてくれるようになっていた。
「大丈夫?」
「はぁっはぁっはぁっ! なんとか……」
雨上がりの道は泥濘ぬかるんでいる。当たり前だが、この世界は街道であってもアスファルトで舗装ほそうしてあるわけではないのだ。
もしかしたら、天馬の革靴も泥を浴びて効力が落ちているのかもしれないと思い、下を向いて足元を確認したら、バランスを崩して泥水につんのめってしまった。
打撲痛はかなりあるけれど、地面が柔らかかったおかげで骨折のようなダメージはない。
「怪我はなかったけど今日はもう休もうよ」
そう言って、ルナが俺の泥だらけの顔を拭いてくれた。多分、ルナはまだ走れる。俺のために言ってくれていることは分かっている。
「……走ろう」
「どうして? 結局着くのはどんなに頑張っても明日だよ」
「今、走ることを止めたら何かを失ってしまう気がするんだ。そうしたら俺はきっと後悔する。でも……もう二度と後悔はしたくないんだ。多分、俺は前の世界で悔やんでも悔やみきれない後悔したんだと思う」
そんなことをルナに言ってもわからない。転生者であることなど言ってないのだから。
でも、気持ちだけは伝わったようだ。
結局走り続けて動けなくなったところでキャンプした。

◆◆◆
次の日の朝が一番つらかった。ランナーズハイの効果も無くなっているし、全身は痛いし、泥だらけで寒くなってきたし。
「はぁっはぁっ。着いたよレオ。グマンの森が見えてきたよ!」
到着したが帝国軍が何処まで近づいているかも分からない。ルナがこの距離なら音で確認できると言って耳を澄ました。
「うん。軍隊の行軍の音もまだ聞こえない。もうお昼だから帝国が夕暮れまで行軍しても到着は明日だよ」
「そ、そうか」
俺は最後の力を振り絞って、森の中をうように歩いて獣人の村を目指す。
獣人の村といっても、もうミラ様以外は誰もいない。獣人達の家々が見えてきても、まるで時が止まったようにシーンと静まり返っている。
村に入ると、広場の岩の上に腰を掛けて足をぶらぶらさせながら目を閉じて歌を歌う少女がいた。
いや少女ではない。ミラ様だった。しかし、その歌声は余りにも美しく、軽やかだったし、緑の陽光に照らされたはかなげな姿が、純真な少女のように思えたのだ。
邪魔してはならない気がして歌を静かに聞き入った。ルナも呼び声をかけないのできっと同じ思いだったのだろう。
「♪~♪~んっ? な、なんじゃお前ら戻ってきたのか。それならそうと言わんか……」
どうやら歌を歌っている姿を見られて恥ずかしかったようで、ミラ様は顔を赤くして文句を言っている。しかし、俺達の姿を見て目を見開いた。
「ふ、二人とも、なんでそんなにボロボロなのよ! 早く社に入りなさい」
俺はそれに何かを答えた。何かを答えたが、自分でも何と答えたかはよく分からなかった。
視界が反転して空が広がる。視界が……アングルが……森の草と同じ高さになっていた。
「レオッ、レオッ!」
「レオ、おいレオ!」
遠くからルナとミラ様が必死に呼んでいるような気がする。返事をしないと。

◆◆◆
「あれ、ここは?」
「レオ、よかった気がついた……」
黒い猫耳の女の子が目から雫を落とす。それが自分の顔に落ちて頬を流れた。
「ルナ?」
「ここはワシの社の寝室じゃよ。お前は疲れて倒れたんじゃ」
「あっ!」
辺りを見回すと、確かに床は板張りだが、どことなく和風に近い雰囲気の部屋に寝かされていた。
「ありがとうルナ……ミラ様も……」
「あ、いや……ワシは別に……」
ふと思い付く。
「それじゃあ、私はルドルフさんに、レオが帰って来たと報告してきます」
そう言うと、ルナは立ち上がった。俺の家に行くのだろうか?
「あ、じゃあ、俺も」
「引っ越しの準備は私とルドルフさんでやっておくから、レオはミラ様に泊めてもらいなよ」
ルナは言うが早いか、すぐに寝室を出て行ってしまった。
俺とミラ様が部屋に残される。確かに身体のあちこちが痛い。少し休んでから我が家に帰ろうか。
でも、ミラ様をここに一人にするのは可哀想な気もする。もう村には獣人の子供は一人もいないのだ。物音一つない、静かな空間になっている。
世界に俺とミラ様しかいないかのように錯覚してしまうほどだ。
ミラ様が静謐せいひつを破って立ち上がる。
「あれ? 何処に行かれるんですか?」 
「湯を沸かしてやろうかと思ってな。お前、顔や手は拭ってやったが身体中泥だらけじゃぞ」
「あ、すいません。布団を汚してしまいました」
「よいよい。どうせもう使わんものじゃ」
ミラ様はそういって部屋を出て行った。

◆◆◆
「風呂が沸いたぞ。入れ」
「ありがとうございます」
場所を知らないからミラ様に案内してもらう。脱衣所から浴室を眺めると、日本風の何人でも入れそうな風呂があった。
「へ~こんなお風呂があったんですね、いぃっ!?」
お風呂の感想を言うために振り返ると、ミラ様はすでに着物のような服を脱ぎ落としていた。
「な、なにか私の身体変?」
変どころか白磁はくじのような白い肌でとても美しい。
「い、いやそうじゃなくて、何で脱いでいるんですか?」
「お前は風呂場で服を脱ぐことに疑問が生じるのか?」
「いや、まあそう言われればそうって……」
ああっ。ここはミラ様の家なんだし――
「先に入るってことね! どうぞどうぞ」
「なーにを言ってるんじゃ。泥だらけの身体を洗ってやる」
「えええええ? い、いいよ」
「いいから。さあ」
手を掴まれて広い浴槽に物のように放り込まれた。獣人恐るべし。
そのまま湯船の中でミラ様にカンガルー抱きをされてしまった。
「ちょっちょっと恥ずかしいですよ」
「ワシも恥ずかしいんじゃ。洗ってやるから黙っとれ」

◆◆◆
寝室に戻ったミラ様は泥で汚してしまった布団を丸めて、予備の布団を敷く。
「レオ、予備の布団は一組しか無いから一緒に寝よう。おいで」
「ええ? 俺は帰りますよ」
「もう暗い。泊まっていけ」
「いや、体調もほとんどなおったしさ。灯りの魔法もできるし」
そう言って出ていこうとすると、後ろから抱きつかれた。
「頼む。もう少し一緒にいて。ルナにもそう頼んだの」
ミラ様は小さく震えていた。今日のミラ様は明らかに何かおかしい。
まさか、ひょっとして……。
「ミラ様は明日、一人で帝国軍と戦うつもりなんですか?」
そう尋ねると彼女はコクンと小さく頷いた。
「なんで!? 死にますよ。命あっての物種とか言っていたじゃないですか?」
「私も迷ったわ……。でも、他の獣人の大人達が殺されたのに、村の代表者の私だけが生きているわけにはいかないわ。きっと、森も焼かれてしまう」
「他の獣人達のことは悲しいけど、ミラ様が責任取る必要ないじゃないか」
「軍隊を動かしたのに村はもぬけの空で、一人の獣人もいませんでした……って、人間ってそれで通用するの? きっと、獣人が見つかるまで、どこまでも森を探し続ける。もし他の森にまで手が及んだら、あの子達だって……」
「それは……確かに……だけど!」
「戦って、傷ついて、やっと納得できるのが人間でしょう?」
ミラ様はこの世界の人間の有り様を見て言っているのだと思うけど、その有り様は前の世界も同じだった。人間の本質かもしれない。
「でも、戦ったらきっと……殺される」
「一度ぐらいなら追い返せるかも。私、結構強いのよ? 今じゃレオにも負けちゃうだろうけどね」
「強いことは知っています! けど、一人じゃ無理だ」
「私には、森の神様がついてるわ。それに、もし死んでも、きっと新しい命として生まれ変わるの」
森の神様? 生まれ変わる? 神なんて……。
「神なんていないよ。転生すら……俺の転生すら、人の手でおこなわれたんだ」
ついに、ルドルフ以外に俺の最も重大な秘密を話してしまった。でも、別にこの人なら構わない気がしている。
「やっぱり……レオは転生者なのね」
ミラ様は蚊の鳴くような声で言った。
「未来視で見たの……私、自身の死を」
「なんだって!?」
ミラ様の死!?
「ルドルフ殿によれば、未来視は本人が望んでいること、実現できることの予測らしいの」
「ミラ様は自分の死を望んでいるってことですか?」
「私はグマンの森の獣人村の最後の生き残りとして、帝国と戦う。でも、生き残って、捕まって、辱めをうけるなんて耐えられない」
「だから、死ぬまで戦うっていうんですか! 死ぬことを本心から願っているわけじゃないだろ」
「願っているのかも」
「それじゃあ、自殺じゃないか!」
ミラの答えを聞いて、反射的に声を荒げてしまう。
「……」
ミラ様は寂しそうに沈黙する。その様子を見ると少しだけ落ち着いたのでなるべく優しい声を出すように努めて聞いてみた。
「なにか理由があるんですか?」
「私が見たのは自分の死だけではないの」
「他には何を?」
「貴族風の〝人間の〟少女。身分が高い少女は立派なお城で何百人もの侍従に囲まれて生活しているのだけど、そんな生活を牢獄のように感じて絶望していたの」
突然、意味の分からない話になって、俺は相槌を打つしかなかった。
「牢獄……」
「そう魂の牢獄。でも、ある日青年が現れて少女を優しく抱きあげて、救い出すの。少女はそれをとても幸福を感じるの――」
ミラ様は楽しそうに話すが、内容は抽象的で漠然としている。それが占いとか未来予知というものなのかも知れないが、焦らされている気分になってしまう。
「人間の少女とそれを優しく抱く青年は……その、恋人同士だと思うの……」
しかし、まだ話は見えない。人間の少女と青年は、ミラ様の未来とどういう関係があると言うのだろう。
「今から言うことを笑わないでね」
「笑わないよ」
自分の声が苛立っているのが分かる。
どうせ何を言われても、今は笑うような心境ではない。
「人間の少女は私。そして、青年は……きっとレオなんだと思う」
「は、はぁ?」
話が急転する。未来視で見たという少女と青年がミラと俺?
「わからないよね。私も最初はよくわからなかったの。未来視でそんなことが見えたのは初めてだったし。でも死期が近づいて私の力が強まったのか、分かるようになった」
「でも……ミラ様は獣人で、大人じゃないですか。俺は成長すれば大人になるかもしれないけど……大人が子供にはならないよ」
「……それは私が転生した姿。きっとレオも転生して、遠い未来にまた出会うんだと思う」
ミラは顔を伏せたまま黙りこくっている。
「つまり、未来視で見えたのは何度も転生した、遥か未来の俺達ってことか? どうしてわかる?」
「多分ね。私とレオだって感じたの」
にわかには信じられないが。
「私はもう十分長く生きた。それに、いつかそんな幸せな来世があるのなら、私は明日死んでもいい」
「つまり、自分はここで死んでも俺との来世がある……だから今死んでもいいってことですか?」
ミラ様は小さく頷いた。
相変わらず、顔は下を向いていて表情は分からない。けれども、何だか楽しそうな声にも聞こえる。
未来視の話に納得したわけではないが、もう苛立ちは感じなかった。でも、不確定な未来に期待して、死を口にするミラ様の気持ちは変えたい。もっと近付いて今一度説得しようと思い、ミラ様の肩に手を置いた。その時だった。
「なっ……」
顔から嫌な汗が流れ落ちる。それは時間にすれば、瞬くほどのはずだ。しかし右手がミラ様の肩に触れた瞬間、俺の頭に大量の映像が流れ込んできたのだ。
――目の前に、まだ幼さの残る十代前半の少女がいた。華麗なティアラに純白のドレス。けれども、その瞳の輝きはティアラに飾られている宝石に負けず、透き通るような肌の白さはドレスの純白に勝っている。身につけたものから高貴な身分の少女ということが分かる。自分(?)の顔は分からないが、目線は高くて手足も大きい。成長した男だということだけは分かる。
俺の意思とは無関係に口が動き、目の前の少女に話しかける。
「ミラなのか?」
「うん……」
少女は自分の問いに頷く。だが、少女は幼く、そして獣人ではない。
「ずっと探していた」
「うん……ずっと待ってた」
手を差し伸べてその少女を抱き上げようとすると、待ちきれずに少女が胸に飛び込んでくる。少女の笑顔を見ているとその幸せな感情までもが自分の中に流れ込んでいるかのようで――
気が付けばミラ様の社の寝室だった。
「どうしたの? 大丈夫?」
大人で獣人のミラ様が、子供の俺の顔を心配そうに覗き込んでいた。もちろん人間の少女の姿ではない。先ほどのようにティアラもしていなかった。
「い、いや……なんでもないです」
ルナと、マリーと、クリスティーナの顔が交互に思い浮かぶ。ああああああああ。ちくしょう!
「……俺も戦うよ」
「ダメよ! レオは家族を大事にしなさい。前にそう言ったでしょう」
ミラ様の言っていることはよく分かる。よく分かるけど――
「ミラ様が戦うなら、俺も戦います。死ぬと分かっていて一人で行かせたりできないよ。そんなことしたら、俺はこの先ずっと後悔して生きることになる。二人で戦えば、一回ぐらいなら撃退できるかもしれない」
「でも、死んじゃうかもよ? マリーちゃんも、ルナも悲しむわ」
「そうはならないようにするけど、そうなったら、それこそ転生して……また逢えますよ」
もちろん俺は神など信じてはいない。転生だってルドルフがいなきゃできっこない。苦しくなったらミラ様を引きずってでも逃げるつもりだ。俺もいれば、それぐらいならできるはずだ。
それに、帝国の奴らにはそろそろ頭にきていた。獣人達やソフィア元王女の恨みを今ここで少しだけでも返してやろうじゃないか。
「何を言っても無駄なのね。……でもそれなら一つ条件があるの。条件って言うかお願い」
「ミラ様が俺にお願いですか?」
「……ミラって呼んでもらっていい?」
「え? ……それがお願いですか?」
「敬語もできればやめて……」
「あ、はい……い、いや、うん。ミラ。これでいい?」
「うん。ありがとう……その……私の事好き?」
へ? 好きというのはそういう意味だよな。ライクのほうじゃない気がする。ミラのことは嫌いではない、けど。頭にルナやマリーのことが浮かぶ。
「あっ、やっぱいい。やっぱいいや。それは見えたから」
そう言うと、ミラ様は目を伏せてしまった。
「……」
なにか言うべきだと思うけど、何を言っていいのかわからない。けど沈黙こそが唯一の回答のような気もする。

◆◆◆
ミラは未来視によって輪廻転生することでいつか俺と結ばれるビジョンを見たという。俺が一瞬見たあの映像と同じだったのだろうか。あんな幸せな転生があるのなら死んでもいいと思ったらしい。
俺はミラを止めたかったが、自分も転生者だったということを思い出す。俺は今、確かに転生して満足している。ほとんど前世のことをかえりみもせずに今生を楽しんでいた。来世に期待しているミラを批判することができるのだろうか。
それにあの映像。あの映像の自分とミラの感情は、確かに幸福そのものだった。
「まだ私が若い頃、大人の獣人が殺されたり捕まっちゃったりして、村長をしなくてはいけなくなったの。でも、私はまだ若くて村の皆を率いるには経験不足だった。村長だったら威厳があったほうが皆も安心できるでしょ? だから、せめて口調だけでもって、前任のおばば様の真似まねをしたの……」
枕元でミラが独り言のように語りだした。
「猫型獣人にはごくまれに長寿や不思議な能力を持っている者がいるの。私もそれだったみたい。だから前任のおばば様はまだ若い私に村長を託したのかな? とにかく、その力を使って皆と森を守ってきたわ」
ミラの半生を俺はただ、黙って聞いていた。
「何度も転生したずっとずっと先の未来かもしれないけれど、いつか私にそんな幸福な来世があるのなら……」
「その幸福な来世っていうのが、俺なのか?」
俺はあの映像を思い出しながら呟いた。ミラ悲しそうに目を伏せる。
「うん。ごめん。気持ち悪いよね」
「いや、そんなことないよ」
「本当?」
「本当だよ」
本心だった。それどころかミラを見ると映像の少女がダブって心が締め付けられるようになっている。
今、さっきのように、ミラから私のことを好きかと聞かれたら……。
そう思ってしまうのは、一時いっときの感情なのだろうか?
あの少女は一体どのくらいの時を経て、幸せに辿り着いたのだろうか?
「なあ……ミラ」
「うん?」
「今が大事じゃないか?」
「え? どういうこと?」
「未来を変えようぜ」
ミラを死なせない。もちろんそういう意味だけど……もっと強い意志で伝えたかった。
「俺が、ミラを守るよ」
ミラはびっくりした顔で俺を見ている。
これ以上、言ったらルナを裏切ることになるかもしれない。でも、俺は目の前の女性を放っておけなかった。その気持がどんな気持ちなのか、自分でも言葉に出来ない。
だけど……。
「その幸せってやつ、ずっと先の来世なんかに求めるなよ。今の人生で求めればいいじゃないか」
ミラがなにか言う前に抱きしめる。ミラのほうが体は大きいけれど、必死に。
「レオ……」
「俺がずっと一緒にいてやるから、運命に打ち勝とうぜ」
「もう……子供のくせに格好つけて。でもありがとう。凄く嬉しいよ」
「なら俺も明日、帝国と戦うからな」
「もう止めても無駄でしょ。勝手にしなよ」
気が付けばミラも一緒の布団でまどろんでいる。明日の戦いに思いを馳せながら俺は心地良い眠気に意識を委ねていった。

◆◆◆
どうやら俺は寝ていたようだ。目を覚ますと、社の寝室だった。
ん? 日差しが強い。朝の日差しじゃない? そんな馬鹿な、もう昼になっている。
俺は日が出たらすぐに起きるように覚醒の魔法を自分にかけたはずだ。
焦って辺りを見回すとミラではなく何故かルナがいた。
「ルナ! ミラ……様は!?」
「これ、レオが起きたらって渡せって」
ルナは俺と目を合わせずに、折り畳まれた紙切れを差し出した。
「手紙!?」 
――レオへ
――ごめんなさい。レオには眠り粉で眠ってもらうことにしました。
――全部私がやったことです。ルナを責めないで。
「ルナ。ミラ様は何処に?」
ルナを問い詰めても辛そうに首をふるばかりだった。
くそ! 聞かなくてもわかっている。ミラは一人で帝国軍のところに行ったに違いない。
俺は玄関に向かう。無い! 天馬の靴が無い! 隠されたんだ。
裸足で走るしか無い。
「レオ! ルドルフさんが馬車を用意しているから、私達はそっちで引越し先に!」
背後から呼び止めるルナの声を無視して、俺は走りはじめた。
――昨日話したように、私は自分の未来を見ました。どうも今生では帝国軍に殺されてしまうようです。
――それは失われる森と獣人村の代表者として、ある意味で私が望んでいることです。
裸足で走っても、まるで痛みは感じない。でも遅い。6歳の走りの遅さはもどかしい。
森をまだ出ていないにも関わらず、魔法による爆音が聞こえる。すでに帝国軍は森のすぐ近くまで迫っていたようだ。間にあえ!
――でも恥ずかしいことに、自分の死の未来を前にして、私は震えてしまいました。
――ただ、レオを見ている時だけはその怖さがまぎれました。
――昨日は守ってくれると言ってくれて凄く嬉しかった。私の幸せを求めようとしてくれたことも。
――けれど今、レオは人間で、私は獣人なのです。私は帝国に一矢報いねばなりません。
――全ての人間がそうでは無いということは分かっているけれど、帝国は私の親や仲間達を殺してさらって行きました。私は獣人の長なのです。そんな私がレオと一緒にいることは、レオに想いを寄せることは、やはり許されることではないでしょう。
足の爪ががれる。血が流れるが、痛くもなんともない……なんともないわけねえだろ、あのばああ! 何回走らすつもりなんだ!
ようやく帝国の兵士達の姿が視界に入ってくる。
だが、すでに爆音は鳴り止んでいた。それが何を意味するのか、俺はもう心の何処かで理解している。
――いつかは分からないけど、なるべく早くあの少女に転生したい。そして貴方と再会したい。
――レオは今の生で、家族とルナを大事にしてね。
「おい! なんだこのガキ!」
突然の俺の乱入によって、戦闘を終えた兵士達に動揺する。
「あぶねーぞ、近寄るんじゃない! ヤバイ獣人がいて沢山殺されたんだ!」
――貴方の成長をもっと見ていたかったけど。
――さようなら。レオ。
血だまりの中、何本もの剣を突き立てられた無残な姿で仰向けに倒れているミラがいた。
「何だコイツ。獣人の仲間か?」
「でも尻尾も耳も無いぞ?」
「気をつけろ。もし獣人なら子供でもかなり危険だぞ」
兵士たちがざわめく中、俺は放心して立ったままミラを見おろしていた。僅かにミラの手がピクッと動いた。まさかこんな状態で生きているのか?
血だまりを這いずって、ミラの顔に自分の顔を近づけて呼びかけた。
「お、おい! ミラ、ミラ!」
「レオ? なんで来ちゃったのよ。ばか……」
「しっかり。ルドルフなら回復魔法で傷は治せる」
「……無理。血が流れ過ぎたし、間に合わないわ」
わかっているけど納得ができない。
「……そんなことより聞いて……貴方の未来が見えたの……」
「こんな時に何を言っている? どうでもいいよ!」
ミラは何処までも優しい笑顔をして俺の頬を血だらけの手で撫でた。
「……貴方の未来は明るいわ。これから楽しいことが一杯。だから絶対に逃げてね。……ここで死なないで……」
俺の頬を撫でていた手が力を失って血だまりの中に落ちた。俺は剣が無数にささっているミラの胸に抱きついて泣いた。
「こいつ、やっぱりこの女の子供じゃないか?」
「ああ、そうだな。殺すしかない」
「今なら楽に殺せそうだな」
俺はミラの赤い胸に顔を埋めている。だから本来は俺を殺そうとして近寄ってくる兵士達の姿など見えるはずがない。
しかし俺の左目の視界は遥か上空、星の世界から兵士達の頭上を見ていた。
この兵士達を許さない、俺がそう思った刹那せつな、まばゆい光に包まれた。
俺の背を切りつけてようと剣を振りかぶった兵士が光の槍に頭蓋ずがいを撃ち抜かれる。
周りにいた兵士達も頭蓋から血を噴き出して次々に倒れていった。

●6 衛星次元魔法

「な、なんだ。そのガキを殺ろうとした奴らが倒れたぞ……ぐゎっ!」
「なにがどうなっている……がっ!」
「敵かどこか……らっ!」
異変に気づいたカンの良い帝国兵がその場から逃がれようとするが、半歩も走れないうちに俺の視界に表示された【enemy】の文字は緑になって消えた。
付近にいる帝国兵が全て血の海に倒れると、左目の視界の右上の『ライトジャベリン』の文字が明滅する。
『ライトジャベリン』の横にあるタブが開いて、魔法名が羅列られつされた。
=============
ライトジャベリン  ▼
ライトピラー ←
ライトキャノン
エクスプロージョン
メガエクスプロージョン
ギガエクスプロージョン
=============
カーソルが『ライトジャベリン』から『ライトピラー』、光の柱で攻撃する魔法を選択する。タブが閉じ、円形の視野の右上の文字の表示が切り替わった。その間も衛星からの視点のズームやピントの調整が続いていて、円の半径は増々大きくなっていく。
視野に入る赤い【enemy】が急増する。数個の【enemy】の塊に今度は光の柱が落ちたようだ。何かが地面と激突するような衝撃音が次々と巻き起こる。同時に、数十個の赤い【enemy】の文字が緑色になって消えた。
俺はミラの胸に刺さった剣を抜こうとゆっくりと立ち上がる。
その間も左目には人工衛星アーティファクトからの映像が流れこんできていた。右目で辺りを見ると、自分の周り半径30メートルぐらいは頭から血を流して倒れた帝国兵がしかばねになって転がっていた。30メートルから先は、帝国兵どもが地面ごと抉られた風景が広がる。
『警戒範囲の【enemy】は消滅しました。攻撃範囲を広めますか? YES← NO』
視界内で明滅する文字。俺は無意識につぶやいていた。
「死ね!!」
『了解。攻撃範囲を最大の半径50kmに設定』
左目の視界がせわしなくフォーカスしながら帝国兵を捉え、自動的に魔法を切り替えている。
その円形の視界の中心にいる俺に【ally】という二つの緑色の表示が近づいてきた。
敵の【enemy】に対して、同盟を意味する【ally】。
右目で一方の【ally】を見る。ルナだった。もう一人はルドルフだろう。
「レオ……ミラ様……」
小声で呼びかけるルナを無視する。俺はミラに振り向き直って胸の剣を一本ずつ抜いていった。もう血がほとんど流れ出ない。確実に死んでいることの証明だった。
ルナが俺の背中に抱きついて叫ぶ。
「レオ! 人が一杯死んでたけど、アレはレオがやったの?」
もう一つの【ally】、ルドルフが右目を押さえながら、ルナの後からゆっくりと俺に近づいて来た。ルドルフが俺の代わりにルナの問いかけに答える。
「レオは僕ですら1km以上の攻撃誤差を出してしまう衛星次元魔法の性能を完全に引き出したみたいだね。帝国兵は反撃の方法どころか、自分がどうやって死んでいるのかすら分からなかっただろう」
「分からなかった? 分からないの間違いだ。今も奴らは爆炎に焼かれているよ。なにが起きているかも分からずにな」
遠くの空が赤く染まる。ギガエクスプロージョンの爆炎の赤だ。
その間も俺の左目には様々な文字や映像が表示され、忙しくなく切り替わっていた。
「もうやめてえええええぇ!」
ルナが俺を強く抱きしめる。
「何故? むくいを受けるべき連中だろ。ルナの仲間を沢山殺したんだぞ。そしてミラも殺した……」
ルナは俺を更に強く抱きしめた。その意味するところは分からない。
左目が更に二つの新しい【ally】を捉えて表示する。隠れてこちらの様子を窺っているようだ。
その【ally】が、この異世界に来てから誰よりも大事にしていた〝二人〟だということに、冷静な自分は気が付いている。
しかし、今はそんなことはどうでもよかった。俺にはやることがある。
「ルドルフ、ミラを転生させろ」
ルナは抱きついている腕の力を弱め、俺を見上げた。
「レ、レオ……一体、何を言っているの?」
説明している時間はない。魂は時間が経つと何処かに消えてしまう。それは自分の経験によって知っていた。
「無理だよ。器がない。君の時は僕に子供がいたから――」
俺はルドルフの言葉を遮ってに言い放つ。
「やれよ」
「……準備も必要だ。それに本人が望まないかもしれない」
「構わない。虫でも動物でも人間でもいい……やれ……」
ルドルフが半身の体勢になる。
「もし断ったら?」
俺の左目は既に選択肢を表示している。
=============
【ally】ルドルフを【enemy】に設定しますか?
YES← NO
=============
「まずは耳から……それでもやらなければ最後には死ぬ」
「ちょっ、ちょっとレオ! 何を言っているの? 冗談でしょう……?」
ルナが俺を揺さぶりながら叫ぶ。
「俺は本気だ。ルドルフはミラを見捨てた。ミラが帝国軍に戦おうとするのを止めなかった」
それを聞いたルナは俺から手を話して座り込んだ。
「わ、私も……私もだよおぉぉぉぉぉぉぉ」
ルナの泣き叫び声が聞こえる。
「あれは彼女の意志だった。僕にもルナちゃんにも罪は無いと思うけどね」
「罪があるとかないとかじゃない。転生させろよ」
ルドルフは諦めたように溜息をついた。
「分かったよ。成功するかどうかわからないがやってみよう」
ルドルフはミラに近づいて魔法陣を展開させた。聞いたこともない古代言語の羅列。俺にすらその詠唱の意味はわからない。
だが、この場にはもう一人、ルドルフの他にその意味をおぼろげながら理解できる人物がいた。
「引っ越しの時にルドルフの資料を見たわ。転生の魔法なんて嘘だと思った」
先ほどから左目に表示されていた【ally】、クリスティーナだ。
そしてもう一人、遠くから幼い少女が近付いている。マリーだろう。
ルドルフにとって、転生の魔法の話はクリスティーナには聞かれたくもなかっただろうし、この状況は見られたくなかっただろう。
ひょっとしたら、ルドルフもクリスティーナがいることに気がついていたから転生の魔法を拒否したのかもしれない。しかし、転生の魔法は時間が命だ。時間が経過すれはミラの魂は消滅してしまう。
ミラは人為的なものとは別の輪廻転生があるかのように言っていたが、俺はそれを信じていない。魂は無になるのではないか。
「レオが異なる世界の魂を持っているっていうのは本当なのね? 帝国兵の死体の山もレオがやったの?」
クリスティーナが問いかけるが、ルドルフは顔中に脂汗を流しながら古代言語で魔法の詠唱をしている。事前の準備もない転生の究極魔法に、ルドルフは極限の集中を強いられていた。
答えられる人間は俺しかいなかった。でも、答えることはできない。
沈黙が流れる。しかし、当たり前のことだが、沈黙は肯定を意味した。
マリーが到着すると同時に、ルドルフとミラを囲んだ魔法陣からまばゆい光が立ち昇った。
「終わったよ。虫か鳥か人か……やっぱり獣人か。分からないけれども、とにかくこの世界の何らかの命の器に転生したはずだ」
ここには家族とルナがいる。しかしルドルフの術式終了の宣言の後は誰も言葉を発しなかった。
以前、ミラが言った。家族と何かを天秤にかけざるを得ない時が来ると、家族を大事にしろと。
俺はその忠告を聞かずに家族ではなく、ミラを取ってしまった。

◆◆◆
――そして10年の月日が流れた。
帝国兵3万が一瞬にして消えた謎の事件『裁きの日』以来、移り住んだ先で、俺はある目的のためだけに魔導研究を続けていた。
一日中、暗い地下室にルナと引きこもって魔導研究を続ける俺の前に、幼い頃の面影を残しつつも、美しく成長した金髪の少女が姿を見せた。
「お兄ちゃん、一緒に学校に行こう?」
それは『裁きの日』から10年ぶりに再開した妹、マリーが俺に言ってくれた言葉だった。
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それは、ある少年の物語。 ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。 『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』 『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』 そんな感じ。 『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。 隔週日曜日に更新予定。

異世界ライフの楽しみ方

呑兵衛和尚
ファンタジー
 それはよくあるファンタジー小説みたいな出来事だった。  ラノベ好きの調理師である俺【水無瀬真央《ミナセ・マオ》】と、同じく友人の接骨医にしてボディビルダーの【三三矢善《サミヤ・ゼン》】は、この信じられない現実に戸惑っていた。  俺たち二人は、創造神とかいう神様に選ばれて異世界に転生することになってしまったのだが、神様が言うには、本当なら選ばれて転生するのは俺か善のどちらか一人だけだったらしい。  ちょっとした神様の手違いで、俺たち二人が同時に異世界に転生してしまった。  しかもだ、一人で転生するところが二人になったので、加護は半分ずつってどういうことだよ!!   神様との交渉の結果、それほど強くないチートスキルを俺たちは授かった。  ネットゲームで使っていた自分のキャラクターのデータを神様が読み取り、それを異世界でも使えるようにしてくれたらしい。 『オンラインゲームのアバターに変化する能力』 『どんな敵でも、そこそこなんとか勝てる能力』  アバター変更後のスキルとかも使えるので、それなりには異世界でも通用しそうではある。 ということで、俺達は神様から与えられた【魂の修練】というものを終わらせなくてはならない。  終わったら元の世界、元の時間に帰れるということだが。  それだけを告げて神様はスッと消えてしまった。 「神様、【魂の修練】って一体何?」  そう聞きたかったが、俺達の転生は開始された。  しかも一緒に落ちた相棒は、まったく別の場所に落ちてしまったらしい。  おいおい、これからどうなるんだ俺達。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

運び屋『兎』の配送履歴

花里 悠太
ファンタジー
安心、確実、お値段ちょっとお高め。運び屋『兎』に任せてみませんか? 兎を連れた少女が色々なものを配達するほのぼの物語です。 他にも出てくる相棒の召喚獣たちと共に配達してまわります。 兎をもふりたい。 カバで爆走したい。 梟とおしゃべりしたい。 亀と日向ぼっこしたい。 そんな方は是非ご一読を。 転生もチートもロマンスもないお仕事ファンタジーです。 ーーーーーーーーーーー とある街の商業ギルド。 その一室にユウヒという名の少女が住んでいる。 彼女は召喚士であり、運び屋だ。 彼女がこなす運びは、普通の運び屋とはちょっと違う。 時には、魔物の中に取り残された人を運びにいき。 時には、誰にも見つからないようにこっそりと手紙を届けにいく。 様々な能力を持つ召喚獣を相棒として、通常の運び屋では受けられないような特殊な配送を仕事として請け負っているのだ。 彼女がいつも身につけている前かけ鞄には、プスプスと鼻息をたてる兎が一匹。 運び屋の仕事を受けるときも、仕事で何かを運んでいる時も。 いつでも兎と一緒に仕事をする様から、彼女はこう呼ばれていた。 運び屋『兎』 彼女に仕事を頼みたい時は、商業ギルドの受付で 「『兎』に荷物を届けてほしい」 と声をかければ兎と一緒に彼女が仕事を受けてくれる。 召喚した相棒と共に、運べるものなら、手紙でも、荷物でも、何でも。 仕事は確実にこなすが少し手荒め、お値段はかなりお高め。 ある時はカバで街道から山の中へと爆走。 ある時は梟と夜に紛れて貴族の屋敷に潜入。 ある時は亀にまたがり深海へと潜航。 仕事の依頼を通して色々なものを配送するユウヒ。 様々な出会いや、出来事に遭遇して成長していく異世界ファンタジー。 カバに轢かれたくなければ道を開けてください。

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

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