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一章:出逢イハ突然ニ
再会 14
しおりを挟むそれは突然のことだった。
だんっ、と扉に何かがぶつかり、がこん、と床に落ちる音がした。
「帰って下さい。ボクは会いたくない。大体、どうして叔父と一緒に来るんです? 保護者は関係ないでしょう?」
感情を押し殺すような、揺さぶられている想いを隠すかのような、震えた声が聞こえる。
「本題は叔父の方だ。泣き虫知有はおまけ。つぅかな、倶利。知有のこと泣かせたんなら保護者が出てきても文句は言えねぇぞ? コイツ、とんでもない叔父バカだからな。可愛い甥が泣かされたって、それはもうお怒りなんだよ。なあ、坂中」
同意を求められ咄嗟に安津を睨んでいた。
いきなり巻き込まれても、どうしていいものか見当もつかない。
警察と言うよりは知有の保護者としての方が会って貰える確率は高いのだろう。
彼の魂胆は解るが唐突過ぎるのだ。
「勝手に泣いたんですよ。ボクは泣かせていない」
硬い声で返す倶利を、安津が追い詰めていく。
普段のふざけた態度が嘘みたいに思える程に教師じみていた。
「いや、お前が悪い。七と間違えた上に比べるようなことを言ったんだってな? それは、知有には酷だ。誰にだって触れて欲しくない傷がある。倶利、お前はその傷を無断で踏み付けたんだ。正論なら何を言っても許されるだなんて勘違いするなよ、餓鬼が」
冷たく言い放つ安津に返事は返って来ない。
暫時、間を空けてから息を吐き出す重々しい音が聞こえてきた。
「解りました。謝ればいいんでしょ? 本人に謝りますから、叔父さんにはお引き取り願って下さい。保護者であれ当人同士の問題に口出しをする権利などありません」
小学生に思えない返しをする倶利に安津がニヤリと笑う。
人の悪い笑みを浮かべ、安津の腕が知有を呼び寄せる。
「残念だったな、倶利。坂中は叔父バカだが、知有はもっと甥バカでな。叔父さん大好き、叔父さんがいないと死んじゃう、叔父さんが一緒じゃないと怖くて会えない、って泣くんだよ。何たって知有は、ハル依存症だ」
困り顔で「あ、安ちゃん」と呟いた知有の顔は真っ赤だ。
怒りたくても事実と言えば事実で、否定することも出来ずに固まる知有に安津がウインクを投げる。
「……そうですね。確かに、ハルハルと煩く喚いていましたが。毎日会いに来ると言っていたのに、叔父さんと一緒でないと会えないとか、とんだ間抜けの腰抜けですね」
何故か納得してみせる倶利に、昨日の倶利と知有の会話が気になってしまう。
後に続いた馬鹿にする響きに知有の唇が尖っていく。
「家に帰って思い返してみたら怖くなったんだろ。お前がイジメるから」
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