CHILDREN CRIME

Neu(ノイ)

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一章:出逢イハ突然ニ

再会 11

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知有は更に顔を赤くし、榛伊の服を掴んで背中に額を押し付けている。
京は気にした風もなく、追い付いて榛伊の後ろに立った安津に視線を投げて首を傾けていく。

「久し振りです、京さん。コイツ、倶利のクラスメイトの知有。昨日会ったそうですね。また倶利に会いたいとか吐かすから連れて来ました。で、此方の刑事は高校の同級生。知有の叔父なんですよ。よう、坂中。倶利に話があるんだってな? でも彼奴、刑事と話なんかしねぇぞ。だからわざわざ忙しい中、この俺が来てやった。感謝しろよ?」

直立不動で頭を下げる安津に知有の口があんぐりと開く。
気持ちは榛伊にも理解出来た。
安津という男は、他人に頭を下げさせはしても自ずから頭を下げることはしないのだ。
体勢を戻した安津の手が無遠慮に知有の頭を、がしり、と掴み榛伊から引き剥がす。

「忠樹君の生徒さんなのは、昨日プリントを持って来てくれて解っていたけれど。そう、個人的に忠樹君と仲良くしてくれていたのね。忠樹君の知り合いなら、あの子も会ってくれるかしら?」

うーっ、と唸り安津の手を何とか剥がそうと暴れる知有を微笑ましそうに眺める京は暢気に安津にと問い掛けている。
榛伊が安津を睨み彼の腹に肘を入れると、安津はあっさりと知有を解放した。

「おい、安津。どういうことだ? どうしてお前が」
「悪ぃな、坂中。言ってなかったが、京さんは俺の叔母さんだ。詰まりは、倶利は俺の従弟に当たる。お前から知有絡みのことで連絡があった時には、起訴されていたからな。特に言う必要性も感じなかったんだわ。お前も何にも言ってこないから、まあいいか、とそのままにしてた」

高校を卒業し疎遠になっていた安津に連絡を入れたのは榛伊からだった。
彼が教師を目指していることは知っていたし、大学も教育関係に進んでいたからである。
唯一と言える友人であり、幼児の相談を出来るのもこの男しかいなかったのだ。
知有の自閉症的な症状から進学の相談、食事について、榛伊が頼れたのは唯一この傲慢な男だけだった。
そして、知有を引き取った時には、確かに粟冠事件は容疑者逮捕、起訴されており、世間的には一応の終息をみせていた。

「……そうだったな。お前はそういう男だった。倶利君から当時の話が聞きたい。案内して貰えるか?」

正直、安津に頼るのは嫌だった。
彼に甘えることに罪悪感を抱き始めたのはいつだったか。
安津の瞳に友情以上の色があることに気付いてからだ。
想いに触れることすらしない癖に、その想いを利用してしまう罪悪感だ。

「坂中の頼み事を、俺が断れる訳ないだろ?」
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