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一章:出逢イハ突然ニ
再会 04
しおりを挟む笑って15歳の生徒に宣った彼女は、榛伊の前からいなくなってしまった。
何処を探しても榛伊には掴めない場所に逃げたのだ。
許せなかった。
榛伊から彼女を奪った全てのものを憎んだ。
そして自分自身すら憎悪の対象だった。
「……アンタを殺した男は、法に裁かれて死を待っている。何人もの命を、たった一人の命で、どう償うって言うんだ? そんなもので、この痛みは消えるのか? アンタの無念は、晴らされるのか? 人の命を、命で償えるのか? なあ、先生。それなら俺も死ねば許されるのか?」
答える者などいないと解っていた。
それでも口を転がり落ちていく言葉は止まらない。
何故、会う日を他の日にしなかったのか。
どうして待ち合わせ場所を彼処にしたのか。
責めても責めても責め足りない。
ばしゃん、と勢い良く顔に水を掛ける。
だらだら、と顔から滴る水をそのままに唇を噛んだ。
「アンタが望んだ通りに、家族が出来た。それでも俺は、アンタ以外の女を好きになれない」
それだけを誰もいない空間に言い放っていた。
* * * * * *
目の前の二人を何となく眺めていた。
一人は同僚で、180cmと長身の榛伊よりも背が高く、無愛想な榛伊を越える仏頂面の男である。
エリート街道を突き進んでいた筈の中谷 宏哉(ナカヤ ヒロヤ)は、何故か地元警察署に勤務していた。
その訳を知ってはいるが、正直に言えば榛伊には興味すらない。
会議室の長机に肘を着いてボールペンを掌で遊ばせる。
平和続きで会議など開く必要もないのに無意味な議題が繰り広げられているのを右から左に流していく。
前の席で宏哉と一つ先輩の佐津井 綾吾(サツイ リンゴ)がいちゃついているのをぼんやりと見ていた。
白に近い茶髪は、ふんわり、と柔らかい。
儚げに見える綾吾は、見てくれだけは美人で目の保養にはなる。
中身を知っている榛伊はそそられもしないが、彼の外見に騙されている人間は多い。
本人はいつでも隠してはいないのだから、騙してはいないのだろう。
「うひゃー、またやってるっすね。中谷先輩、命知らずだなあ」
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恐らく彼は、榛伊に話し掛けている。
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「そっすねー」
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