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序章:点ト点ト、ソノ先
虐待 01
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狂ッタ世界ハ、
廻リ続ケテイタ。
誰モ気付カナイトコロデ、
歯車ハ軌道ヲ変エルーー。
* * * * * *
一緒が良かった。
同等でいたかった。
なのにどうして大人は、邪魔をするの?
知有と七を較べる意味なんてないのに──
2.各々ノ始マリ
【虐待】
必要なことだったと思うのは、きっと都合の良い言い訳でしかない。
それでも、宇津井 七(ウツイ ナナ)にとってしてみれば、意味のあることだった。
双子の兄。
自分と同じ場所にいるべき存在。
其が七にとっての宇津井 知有(ウツイ チユウ)のあるべき姿であった。
いつからだったか、両親が七を特別視し始めた。
それからだ、知有と七の位置が崩れてしまったのは。
許されることではないのに、意図も簡単に知有は堕とされ、反対に七は持ち上げられていた。
馬鹿な両親には、知有と七が同等だと解らなかったのだろう。
別に知有は馬鹿でも何でもない。
偶々、メディアに取り上げられたのが七だった、それだけのことなのだ。
それなのに、彼等は知有を馬鹿にした。
七と較べては「馬鹿だ」「愚かだ」と罵り貶(けな)した。
其は、目前の利益に目が眩み、七を利用している罪悪感も手伝ってのことだと解ってはいる。
けれど、七には耐えられそうになかった。
知有と一緒が良かった。
同等でいたかった。
だから、七も堕ちてしまおうと想ったのだ。
純粋に知有と同じ場所に行きたかった。
結果として、更に知有を貶(おとし)めてしまうとは、思いもしなかった。
* * * * * *
六階建ての古いアパートは、寒さから身を守るにはあまりにも頼りなく、窓の隙間から風が通る音が聴こえてくる。
七は体を縮めては鉛筆を走らせた。
指先は悴(かじか)んで感覚がない。
それでも、知有への想いを一心に綴る。
許して貰えるとは思わない。
知有に負わせた傷は小さくない。
言葉も感情も、全てのものを彼から奪ってしまったのだから、許される筈もない。
それであっても、許されたいと願うのは勝手だろうか。
知有と幸せになりたいと想っての行動が、逆に更なる不幸を招いた。
其の責任は七にある。
だから、責任を果たすのだ。
仮令(たとえ)、七の人生が滅茶苦茶に壊れようとも、知有が幸せになれるのなら構わない。
其処に、両親への未練など微塵もなかった。
ただひたすらに知有の幸せだけを願う。
出来るならば知有と一緒に生きたかった。
同じものを見て、同じものに触れて、一緒に笑い合いたかった。
其が無理でも、せめて、笑顔だけは取り戻したい。
その為にも、消す必要があった。
一緒にいては幸せになれないのなら、最後に消してあげようと己に誓った。
知有を傷付けるもの全てを消し去ることが、七の果たすべき責任なのだ。
廻リ続ケテイタ。
誰モ気付カナイトコロデ、
歯車ハ軌道ヲ変エルーー。
* * * * * *
一緒が良かった。
同等でいたかった。
なのにどうして大人は、邪魔をするの?
知有と七を較べる意味なんてないのに──
2.各々ノ始マリ
【虐待】
必要なことだったと思うのは、きっと都合の良い言い訳でしかない。
それでも、宇津井 七(ウツイ ナナ)にとってしてみれば、意味のあることだった。
双子の兄。
自分と同じ場所にいるべき存在。
其が七にとっての宇津井 知有(ウツイ チユウ)のあるべき姿であった。
いつからだったか、両親が七を特別視し始めた。
それからだ、知有と七の位置が崩れてしまったのは。
許されることではないのに、意図も簡単に知有は堕とされ、反対に七は持ち上げられていた。
馬鹿な両親には、知有と七が同等だと解らなかったのだろう。
別に知有は馬鹿でも何でもない。
偶々、メディアに取り上げられたのが七だった、それだけのことなのだ。
それなのに、彼等は知有を馬鹿にした。
七と較べては「馬鹿だ」「愚かだ」と罵り貶(けな)した。
其は、目前の利益に目が眩み、七を利用している罪悪感も手伝ってのことだと解ってはいる。
けれど、七には耐えられそうになかった。
知有と一緒が良かった。
同等でいたかった。
だから、七も堕ちてしまおうと想ったのだ。
純粋に知有と同じ場所に行きたかった。
結果として、更に知有を貶(おとし)めてしまうとは、思いもしなかった。
* * * * * *
六階建ての古いアパートは、寒さから身を守るにはあまりにも頼りなく、窓の隙間から風が通る音が聴こえてくる。
七は体を縮めては鉛筆を走らせた。
指先は悴(かじか)んで感覚がない。
それでも、知有への想いを一心に綴る。
許して貰えるとは思わない。
知有に負わせた傷は小さくない。
言葉も感情も、全てのものを彼から奪ってしまったのだから、許される筈もない。
それであっても、許されたいと願うのは勝手だろうか。
知有と幸せになりたいと想っての行動が、逆に更なる不幸を招いた。
其の責任は七にある。
だから、責任を果たすのだ。
仮令(たとえ)、七の人生が滅茶苦茶に壊れようとも、知有が幸せになれるのなら構わない。
其処に、両親への未練など微塵もなかった。
ただひたすらに知有の幸せだけを願う。
出来るならば知有と一緒に生きたかった。
同じものを見て、同じものに触れて、一緒に笑い合いたかった。
其が無理でも、せめて、笑顔だけは取り戻したい。
その為にも、消す必要があった。
一緒にいては幸せになれないのなら、最後に消してあげようと己に誓った。
知有を傷付けるもの全てを消し去ることが、七の果たすべき責任なのだ。
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