ポリス - POLICE

Neu(ノイ)

文字の大きさ
上 下
6 / 25
序章:俺、刑事辞めるわ

14:17、地震発生 04

しおりを挟む


あまりの八潮の怯え方が面白く、博信はついつい笑ってしまう。
はは、と笑いながら定義に凭れている状況から体勢を立て直そうとすると、掴まれた手首に抵抗を感じた。

「神田、少し良いですか?」
「あ? ここじゃあ出来ねぇ話か?」

そのまま手を引いて部屋から出ようとする定義に訝しむ目線を送る。
彼は曖昧に微笑み、躊躇する博信などお構い無しで手を引いて部屋の外にと向かって行く。
その様を眺めている八潮は困ったと眉尻を下げて頭を掻いている。
傍観者を決め込み無表情の榛伊ではあるが、定義と博信が揃う空間が苦手だと宣う彼は緊張したのか溜息を吐き出した。


 連れて行かれたのは、鑑識課を出てすぐにある自販機とベンチの置かれたちょっとした休憩スペースだった。
片手首を持たれたままの状況に居心地悪く唇を尖らせる。

「なんでい、荻原。俺は忙しいんだ。手短にしろや」
「僕だって忙しいですよ? 手続き頼むと勝手を言って電話を切った、上司を上司とも思っていない部下が一人いましてね」

くすり、と口角を持ち上げた定義の両手が博信の頬を包み込んだ。
咄嗟に体を退こうとして定義の目が笑っていないことに気付く。
表情は怒っていないが、ヒシヒシと圧を感じて動けなくなった。
普段は優男なのに定義には言い知れぬ迫力があるのだ。

「そりゃあ何か、俺のことか?」
「他に誰がいるんです? この業界広しとも僕をパシリのように扱うのは君しかいませんよ。まあ、そういうところも含めて好きなんですがね」

さわり、と指先が頬を撫でていく。
定義の始終ニコニコとした顔が近付いてくる。
にこやかな癖に相変わらず目だけは何かに怒っているようで、好意を伝えられても博信は怖くて身動き一つ取れない。

「ただ、八潮君の前で無防備にしている君を見ると、腸が煮えくり返って酷いことをしたくなります。僕が同じことをしたら嫌がるでしょうに大人しくされるがままにして。……消毒しますよ」
「は? 何の話……って、ちょっ、おい!」

何の話なのか理解出来ずに目を白黒させている間にも定義との距離は縮み体が密着していた。
顔が見えなくなったと思えば頬に湿った感触を感じ、眼を大きく見開く。

「なんで神田は昔から八潮君にだけ無防備なんです? 幼馴染なのは知っていますが、普通は幼馴染でも頬擦りなんてしないって、解ってます?」
「や、ちょ、落ち着けよ。八潮ちゃんは特別だろ。彼奴は家族同然だし、熊みたいで可愛いじゃねぇか。珍獣手懐けてるみたいで」

流石に顔を舐められ無抵抗ではいられず、定義の肩を掴み引き剥がそうとするが、離れていかない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

上司と俺のSM関係

雫@更新不定期です
BL
タイトルの通りです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...